【超簡単説明】Web3がよく分からないというあなたへ

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解説者プロフィール

G.G(ジージと発音)

現在高齢者向けDAOを準備中。高齢者が健康的、社会的な生活をすればトークンを稼げるAge To Earnのアプリを幾つか開発することを企画中。

新しい時代の始まりなんて、普通は分からない

Web3という言葉を耳にする機会が増えてきました。岸田首相を始めとする一部政治家からも「Web3で日本経済再生を」という声が聞かれるようになってきたので、Web3に関してご自身でいろいろと調べている方が増えているのではないかと思います。

ところが「何本かWeb3関連の記事を読んだけど、何がすごいのか今一つピンとこない」と感じておられる方も一部にいらっしゃるのではないでしょうか。

それも仕方がないことだと思います。Web3の中核技術であるブロックチェーンは、どちらかと言えばインターネットのインフラに近い技術。一般ユーザーの目に触れない部分の技術なので、その領域の技術者でない限りピンとこないのも無理もない話なんです。

ブロックチェーンとは簡単に言ってしまえば、だれもが見ることのできるオンライン台帳技術。特徴は改ざんするのが困難なこと、そして、全体を統括する責任者のいない非中央集権であるということです。

思いっ切り簡単に説明しましたが、分かりましたか?いや、分かりづらいですよね。

基本技術の画期的な発明ってどんな技術であっても、それに詳しい技術者以外、分かりづらいものなんです。

例えばトランジスタが発明されたのは70年ほど前の話ですが、発明された当初、技術者たちは大騒ぎしたそうです。そこでニューヨークタイムズの記者が取材をしたところ、トランジスタは「電気の回路にオン・オフのスイッチをつけることができる装置」ということが分かりました。記者としては、それがどの程度すごいことなのか分からなかったので、紙面としては小さな記事にしたそうです。

でもこの「スイッチをつける」ことでできたおかげで、電子回路を組むことが可能になり、その結果コンピューターができ、インターネットやスマホができて、今日の情報化社会があるわけです。

トランジスタの発明は、新しい時代の始まりだったわけです。でも当時のほとんどの人は、その歴史的瞬間の重要性にまったく気づけませんでした。

同様に、ブロックチェーンという技術がWeb3という新しい時代を引き連れてきたと言われますが、それを実感できなくて当然。分からないのが普通だと思います。

盛り上がるシリコンバレー、北欧、そしてベトナム

でもWeb3がどの程度のパラダイムシフトか理解したい。そう考える方が多いのだと思います。

ではどうすればいいのでしょう。

私は、技術を理解している人たちの熱気と、先行事例で判断するしかないと思っています。

トランジスタについては、電子回路に搭載されパソコンに搭載されるころになると、人々が未来の可能性を想像しやすくなりました。Web3も、未来の可能性を想像しやすくなる先行事例が出始めています。先行事例は後で詳しく見るとして、まずは人々の熱狂ぶりを見てみましょう。

以下の文は、シリコンバレーで有名なベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツに勤めるクリス・ディクソン氏のブログ記事の一部です。

「ほとんどのコンピュータサイクルには、新しい才能、実現可能なインフラ、コミュニティの知識など、適切な組み合わせが揃う黄金期がある。

前回の黄金期はInstagramなどの企業が誕生した2009年から11年。伝説的なチームが結成され、大きなアイデアが生まれ、素晴らしいプロダクトが作られた。

私たちは今、web3の黄金時代に突入している。プログラム可能なブロックチェーンは十分に進化し、多種多様なアプリが数千万人のユーザーを獲得している。さらに重要なことは、昨年から世界レベルの人材が大量にweb3に入ってきたことだ。彼らは優秀で情熱的で、より良いインターネットを作りたいと考えている」

何年かに一度の大きな黄金期が来ているというわけです。世界トップクラスの人材がWeb3に取り組み始めたとありますが、事実、シリコンバレー在住の友人たちに話を聞くと、シリコンバレーはWeb3で相当盛り上がっているらしいです。各地で開かれている勉強会はWeb3をテーマにしたものがほとんどで、新しいベンチャー企業もWeb3関連のものばかりだということです。

シリコンバレー以外では、北欧やベトナムなどで盛り上がっているという話を聞きます。ベトナムはシリコンバレーの開発業務を多く受注しているので、最近では技術力をめきめきとつけてきているそうです。またシリコンバレーの企業との付き合いの中で、最新の情報を受け取り、新しい時代の波を感じ、それに乗ろうという若者が増えていることも大きいようです。

残念ながら日本ではまだそこまでの盛り上がりが見られません。ですので、Web3がどの程度の技術革新なのかをつかみ切れないんだと思います。

NFTのポイントは「所有者を示す」機能にあり

どの程度の技術革新なのかを知るもう一つの手がかりは先行事例です。

Web3の先行事例としては、まずはビットコインに代表される暗号資産があります。暗号資産技術を中心とした金融関連の技術はかなりのペースで進化しているのですが、日本を含む先進国では暗号資産に投資する一部の人を除き、多くの人がその恩恵を感じていません。なぜならば、先進国では金融インフラが十分に整っているからです。

ほとんどの人が銀行口座を開設していますし、クレジットカードも所有しているので、ブロックチェーンをベースにした新しい金融技術の出る幕がありません。ところが、まだ金融インフラが十分に整っていない途上国では、Web3の金融技術は大活躍だということです。

暗号資産の次に出てきたWeb3技術はNFT(非代替性トークン)です。アート作品などデータの所有者であることを示す技術ですが、老舗オークションハウスのサザビーズが2021年に総額で約100億円のNFTアートを売り上げたなどのニュースで、NFTをいう言葉を耳にした方もいらっしゃることでしょう。

でもWeb3の可能性を理解する上で、NFTが高額で売買されたというニュースは、まったく意味がありません。無視してだいじょうぶです。多分に投機的な要素を含みますので、気にする必要はありません。事実最近では、NFTの取り扱い件数が激減したというニュースがありました。ブームが落ち着いたわけです。

より重要なことは、「所有者を示す」という機能です。別の言い方をすればデジタル作品をコピーしても所有者にはなれない、ということです。これまで文書やアート、音楽、動画は、デジタルであれば複製し放題でした。複製し放題なので、だれもクリエーターからデジタル作品を購入しようとはせず、クリエイターは広告収入など別の収益手段に頼るしかありませんでした。よほどの人気クリエイターでない限り、作品を作るだけで生活するのが困難な状態が続いていました。

ところがNFTのおかげで、多くのクリエイターが作品を販売することで生活できるようになり始めています。

またデータの所有者を示すことで、データが本物であることを示すこともできます。中国では、独自にNFTのネットワークインフラを整備し、ビジネス関連の証明書や口座管理に中国版NFTを利用できるように技術開発を進めているようです。

ただこれもまたインフラの話。われわれ一般人には、ピンとこないでしょう。

「何かを継続すればお金が稼げる」というビジネスモデルの破壊力

ところがここにきて、われわれ一般人にも関係しそうなWeb3アプリが登場しました。「STEPN」(読み方:ステップン/ステプン)と呼ばれるアプリで、運動すればするほど暗号資産がもらえるというものです。中国系オーストラリア人のチームが開発したアプリなのですが、日本人ユーザーも増えてきています。ユーザーは主に20代から30代が中心です。周りの20代、30代の方に聞いてみてください。STEPNで運動している方が一人、二人いらっしゃるかもしれません。

運動すればお金が稼げるといっても、どうしてそういうことが可能なのでしょう。実は、最初に数万円の入会金を支払う必要があります。その入会金が原資となり、運動量に応じてメンバーの中で再分配されるわけです。運動すればするほど暗号資産がもらえるので、毎日欠かさず運動し続けていると、やがて自分の入会金分ぐらいはすぐに回収できて、その後は純粋な儲けになります。

また新規加入者が増えれば、原資が流入し続けますし、報酬としてもらえる暗号資産の価格が取引市場で上昇すれば、日本円に換算した際の儲けがより大きくなります。5月初旬には、運動するだけで一日に数万円稼いだ人もいるという話を聞きました。

運動するだけで稼げるという話が口コミで広がり、STEPNはサービス開始から半年しか経っていないのに数十万人のユーザーを記録。運営するオーストラリアのFind Satoshi Lab社のネイティブトークンの時価総額は1000億円を超えています。お金というインセンティブには桁外れの集客力がある、ということです。

ただ、やがて新規加入者が伸び悩むようになれば、分配する原資が減少して、このスキームが破綻する可能性があります。マルチ商法のようなものだからです。

運営者もこのことには最初から気づいていて、バーチャルなマラソン大会などのイベントを多数開催して参加費を集めたり、NFTを発売したりして、メンバーのコミュニティー内で成立する経済圏を作ろうとしています。

また最初はお金目当てで運動していた人も、運動が習慣化することの気持ちよさを覚えて、お金がそれほど儲からなくなっても、アプリの利用を続けるのではないか、という読みもあります。きっかけはお金でも、最終的にユーザーの「行動変容」を実現できれば、すごいことだと思います。

果たして運営者の思惑通りになるのかどうか。STEPNの事例は、まだ現代進行形なので予断を許しませんが、この「何かを継続すればお金が稼げる」というビジネスモデルの破壊力に注目が集まり、同様のサービスが次々と生まれてきています。

2021年はNFT、2022年はX2E、2023年はDAOの年になる

何かをすれば稼げるというビジネスモデルは「〇〇 To Earn」と呼ばれ、既にいろいろな〇〇 To Earnがスタート、もしくは開始準備を進めている段階です。

例えばゲームで遊ぶだけでお金になる「Play To Earn」や、学習すればお金になる「Learn To Earn」、よりよく睡眠を取れば儲かる「Sleep To Earn」、健康的な食事をとればお金をもらえる「Eat To Earn」など、いろいろな〇〇 To Earnが出てきています。こうしたビジネスモデルを総称して、〇〇To Earnの〇〇の部分をXにして、「X To Earn」と呼ばれたり「X2E」と表記されたりしています。

X2Eは、今年のIT業界で最も注目されるイノベーションの1つになりそうです。

個人的にはLearn To Earnの可能性に興味を持っています。Learn To Earnのアプリに、英語を勉強すればするだけ稼げるLet Me Speakというのがあります。まだ日本語に対応していないので使い勝手は悪いのですが、私の家族はおもしろがって一生懸命英語学習に取り組み始めています。

そして素晴らしいのは、こうしたWeb3系のスタートアップやサービスは、ほとんどが社会課題解決を目指しているということです。

たとえば先ほどお伝えしたSTEPNは、健康増進と脱炭素を事業目的に挙げています。車に乗る代わりに歩いていけば、二酸化炭素の排出量を減らすことができるというわけです。

このように、社会課題の解決がWeb3の1つの共通の価値観と言えます。

昨年がNFTの年で、今年がX2Eの年だとすれば、来年はDAO(非中央集権自立型組織)の年になると言われています。

DAOは、株式会社に代わる組織形態だと表現されます。株式会社は株主が会社の所有者ですが、DAOはトークンを所有する人が所有者になります。社会課題を解決するために組織されたDAO。それに参加する生産者、消費者、労働者、投資家、全員でDAOを運営し社会貢献を目指します。

世界中には既に数百以上のDAOが存在しますが、DAO運営のためのツールを開発しているDAOがたくさん存在します。来年にはツールが出揃い、より多くのDAOが誕生し、社会貢献を目指すことになるでしょう。

まだまだ黄金期は始まったばかり

ここまでWeb3に集まる人の熱気と、先行事例を見てきました。

それ以降の未来についてはまだ見通せていません。ただ、前出のディクソン氏の言うように、Web3の中核にあるのはプログラム可能なブロックチェーンであり、それを進化させるために世界のトップレベルの人材が大量に集まってきています。ブロックチェーンに新しいプログラムが搭載されれば、また新しいビジネスモデルが登場するのだと思います。

まだまだ黄金期は始まったばかり。これからディクソン氏の言うように「伝説的なチームが結成され、大きなアイデアが生まれ、素晴らしいプロダクトが作られ」るのだと思います。

今はまだWeb3の凄さが分からなくて当たり前。今からがスタートです。

文:G.G

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