DeFi(分散型金融)とは?Web3時代の金融サービスのあり方のメリット・デメリットを解説​

DeFi(分散型金融)とは?Web3時代の金融サービスのあり方のメリット・デメリットを解説​

目次

早い段階から金融業界ではテクノロジーの導入が進んでおり、2010年代半ばには「Fintech」と呼ばれる“金融 × テクノロジー”の動きが加速し始めました。

日本においては金融庁でも2018年より「FinTech Innovation Hub」が設置され、利用者利便と保護、市場の公正性・透明性の確保、金融システムの安定と金融仲介機能の発揮、さらには市場の公正性・透明性の確保と活性化に向けた取り組みを開始しています。

そんな金融領域において、Web3時代の金融サービスとして新たに注目されているのが「DeFi(分散型金融)」です。今回は、このDeFiの概要や仕組み、利用する上での留意点などについて解説します。

DeFi(分散型金融)とは?

DeFi(読み方:ディーファイ)とは「Decentralized Finance」を略した言葉で、日本語では「分散型金融」と表現し、特定の管理者が存在せず誰でも参加できる金融サービスという特徴があります。

従来であれば、金融機能は銀行や証券会社などの金融機関が中央集権的に管理することで維持されることが金融法制上の前提であり“常識”でした。しかし昨今では、ユーザー同士が直接ブロックチェーン上で暗号資産に関する取引を行うことが、技術レベルで可能になってきました。

特に、イーサリアムに実装されている「スマートコントラクト」という機能を使うことで、取引の実行をプログラマブルに自動化できるようになってきたことから、中央管理者が不在でも決済等の金融取引が実現できる基盤が整ってきました。これが、DeFiが注目され、また実際に金融サービスのDeFi化が進んでいる背景です。

スマートコントラクトとは

スマートコントラクトとは、「所定の条件が満たされた場合に特定のプロセス・処理が自動実行される仕組み」のことを指します。

これは、イーサリアムの提唱者であるVitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)氏が2013年に発表したホワイトペーパー「Ethereum: A Next Generation Smart Contract & Decentralized Application Platform」を通じて、イーサリアムの機能として提示したものです。

あらかじめ設定された条件が満たされた場合、自動でプログラムが履行されるシステムであることから、承認が中央管理者による判断ではないという点において、契約の意思決定に関する透明性が担保されているといわれています。また、契約等の締結などでかかる多くの作業を効率化することにもつながるため、コストの削減も期待できます。

CeFiとは(DeFiとの違いとは)

DeFiに相対する概念が「CeFi(シーファイ)」です。これは「Centrailzed Finance」を略した言葉で、日本語では「中央集権型金融」などと表現します。

先ほどお伝えしたような銀行や保険会社、証券取引所といった伝統的な金融機関が中央集権的に管理する金融サービスのことを指します。

中央管理者が介在して取引が行われるCeFiでは、上述した特定の組織に管理や運営の主導権が集約されているため、ユーザーは管理者に個人情報を預けた上で、基本的には管理者の設定したルールに沿った運用の範囲内でサービスを利用する必要があります。当然ながら取引可能な時間に制限がでてきたり、取引手数料が高くなったりが起こります。また、行動の決定権や主導権は中央管理者が握っているため、中央管理者の意向に従わない場合にはユーザーの使用を停止する場合もあり、それが人によっては「公平ではない」と感じることにもつながっています。

一方でDeFiでは、先述のスマートコントラクト機能によって手続きの自動化が可能となるので、人の手の介在率が圧倒的に低くなります。よって、CeFiで前提となっていた取引時間の制限は無くなりますし、手数料もより低く設定できると言えます。

さらに、取引の内容は全てブロックチェーン上に刻まれるので取引の透明性が高く、またブロックチェーンそのものの特徴に鑑みてデータの改ざんもほぼ不可能である点も特徴だと言えます。

DeFiのメリットについては後述するとして、CeFiとDeFiの違いは、このように管理や運営が中央集権化しているかしていないかという点に収斂されます。

DeFiの歴史とDEX(分散型取引所)

具体的なDeFiのサービスとして最初に注目されたのは「DEX(分散型取引所)」だと言われています。DEXとは、暗号資産の取引について、トレーダー間で直接実施できるピアツーピアの取引所です。

先述したスマートコントラクトによって暗号資産取引に関する様々なルールがアルゴリズムベースで設定されているので、暗号資産の価格も人の手の介在なしに決まりますし、決済についても直接ブロックチェーン上でなされます。

DEXについては2017年頃からイーサリアムでの議論が始まっており、「EtherDelta」と呼ばれるDEXが立ち上がりました。EtherDelta自体は仕組みとUI共に複雑な板取引であったこともあり大きく発展することはありませんでしたが、その後2018年11月には有名なDEXである「Uniswap(ユニスワップ)」が立ち上がることになります。

その頃には、DeFiのコミュニティも複数誕生し、イーサリアムのDAppsが増加して、DeFiのエコシステムは順調に発展していきます。2020年にはDeFiプロトコル上のTVL(預かり資産)が100億ドルを突破しています。

一方で、このようなDeFiに集まったお金を目当てにしてハッキングや、仕組みの上で発生する事故も複数回発生しています。ステーブルコイン「DAI」を発行するMakerDAOの債務超過などは有名な事故と言えるでしょう。

このようにDeFiの歴史は、分散型で組織運営ができるDAOの歴史でもあると言えます。

DeFiの前提となる「DAO」とは

続いては、DeFiを取り扱うための前提となるDAO(ダオ)について説明します。

DAOは「Decetralized Autonomous Organization」の略称で、日本語では「分散型自立組織」と呼ばれています。DeFiは「DAOの運営形態組織をとる金融サービス」と言い換えることができます。

組織に関するルールや運営方針に関する決まり事などは、基本的にアルゴリズムとして表現されて自動実行プログラムとして実装されます。参加者の属性や数は関係なく、DAOごとに実装されたルールが淡々と実行されることになります。

このように完全プログラマブルな世界の上に、DAOに参加してコントリビューションする参加者が存在することになります。

DAOの取り組みの1つに「プリンシパル=エージェント理論の解決」があります。プリンシパル=エージェント理論とは、個人またはエージェントが他の個人またはプリンシパルに代わって権限を持って意思決定を行ってしまうことで、経済学において問題視されています。意思決定の所在が固有の人物に依存することで、その人物が支配的な権限を持つことになってしまうからです。

特に金融取引においては、こうした権限の独占のような状況を生み出さないために契約の合意形成をプログラム上で行っており、それがDeFiの根本思想となっています。

DAOの特徴①:中央管理者が存在しない

繰り返しになりますが、DAOの思想の根本となっているのが「中央管理者の不在」です。

たとえば現在一般的な法人形態の一つである株式会社では、株主総会での任命を受けた取締役会が、業務執行の意思決定機関として存在します。一方でDAOでは、取締役会などの組織は存在せず、DAOに参加する一人ひとりの個人がスマートコントラクトで設計されたルールの上で活動することになり、それぞれの判断のもとで意思決定等をしていきます。

もちろん、一人ひとりが意思決定すると言っても、個人に何か大きなことを決める権限が与えられるわけではなく、DAOごとに決められた多数決等の方法によって民主的に決められていきます。

このようにDAOでは、同じ考えを持つ個人が集結して自律的に活動することで、中央管理者が存在しなくても事業やプロジェクトの推進が可能です。

DAOの特徴②:各メンバーに公平に決定権がある

前述のとおり、DAOでは各メンバーにガバナンストークンが発行・配布されるので、より公平に意思決定に参加することができます。しかし、ここで注意すべきは、決定権は平等ではなく公平に与えられているという点です。

ガバナンストークンとは一種の投票権であるため、DAOで議題が出て議決を取る際に使用することになります。投票権にどれくらいの影響力があるかについては、各メンバーがDAOにどれだけ貢献(コントリビューション)したかによって異なります。貢献度の高いメンバーの影響力が強くなることから、「平等」ではなく「公平」であるといわれているのです。

このガバナンストークンでの議決を実現するためにも、ここまでの説明で再三登場しているスマートコントラクトの仕組みが必要不可欠です。スマートコントラクトによるアルゴリズムがあることで、透明性が高く公平な意思決定が行えるのです。

DAOの特徴③:パーミッションレス

パーミッションレスとは、ブロックチェーンにおいて管理者の許可なく誰でもネットワークにアクセスできることを意味します。

DAOは原則、パーミッションレスでの取引参加方法を採用しているため、誰でもコミュニティに参加しプロジェクトに携わることができます。参加へのハードルが低くなっている一方で、プロジェクトやDAOの組織自体への貢献度が低い場合には、運営などに関する投票に必要なガバナンストークンの影響が低くなるように設計されています。

もちろん、パーミッションレスではなく有限責任会社の組織形態である場合もあります。その場合には、DAOに参加するために許可が必要なので、あくまで「多くのケースではパーミッションレスとなっている」と理解してください。

※DAOの詳細については、以下の解説記事「DAO(分散型自律組織)とは?Web3時代に必須となるプロジェクト型組織運営のあり方を解説」も併せてご覧ください。

金融サービスがDeFiになるメリット3点

続いて、金融サービスがDeFiになることによって起こるメリットについて解説します。

手数料が相対的に安い

CeFiでは中央管理者が存在していることから、銀行や証券会社などの金融機関に対して仲介手数料を支払う必要があります。

一方でDeFiでは中央管理者が存在せず、基本的には当事者間で直接取引をすることになるので、これまで金融機関に支払っていた仲介手数料が、多くの場合において不要になります。もちろん、ブロックチェーンを利用する上で欠かせないガス代は必要となりますが、レガシーな記入サービスとの相対比較では安くなると言えるでしょう。

場所・時間を問わずに運営・利用できる

これまで多くの金融機関は「物理的なロケーション」を据えることが前提になっていたので、店舗の窓口に直接行って手続きを行う必要があるものが多く存在しました。

最近でこそeKYC(オンライン本人確認)の普及によって銀行口座の開設がオンラインで完結できるところが増えていますが、少し前までは本人確認書類とハンコを持って銀行の支店等の窓口に行かないと口座開設ができませんでした。

一方でDeFiには物理的な組織が存在しないので、場所なども関係なく利用することができます。また、CeFiは運営主体の営業時間内に手続きをする必要がありますが、DeFiはインターネット環境さえ整っていれば、時間を問わずに利用できます。

このように場所や時間を問わずに運営・利用できる点も、DeFiのメリットだと言えます。

透明性が高い

DeFiはブロックチェーン上に構築されるものであるため、取引の透明性が高く、不正が起こりにくいとされています。

特にイーサリアムのようなパブリックブロックチェーン上に構築されている場合は、「パブリック(公共の)」という名の通り誰でも参加することが可能なので、取引の透明性は非常に高いと言えます。

DeFiのユースケース

次に、DeFiのユースケースについてご紹介します。

貸借契約(レンディングサービス)

DeFiのユースケースとして最も多いものの一つがレンディングサービスです。

ここまでお伝えしたとおり、スマートコントラクトによって取引のルールがアルゴリズムベースで組まれているので、人の手を介するCeFiによるレンディングサービスと比べて、低コストかつスピーディーに契約を交わすことが可能です。

代表的なDeFiのレンディングサービスは、2018年8月に稼働開始した「Compound」です。ユーザーはCompoundを経由して、任意の暗号資産を貸し出して利息を得ることができるようになっているのですが、この処理は全てスマートコントラクト機能を使ってプログラム的に定義されています。双方の金利はその時々の需給状況によって変動調節されるようになっていることから、人の手が不要になるよう設計されているのです。

2021年には機関投資家向けの「Compound Treasury」も設立され、2022年5月には米S&P Global Ratingsから信用格付け(Credit Rating)を受けたことを発表しています。DeFiトークンを運用資産に組み入れるケースはそれまでも存在しましたが、DeFiそのものへのアクセスを提供するというのはレアケースであり、機関投資家向けDeFiとして注目されています。

銀行が担う役割の大半はDeFiになるかもしれない

中長期的な目線で考えると、DeFiには、現在銀行が担っている業務の大半を置き換えるポテンシャルがあると言えます。

前述したレンディングサービスのDeFi化はもちろん、為替取引についても、すでにビットコインで実現できていると言えます。国際送金を考えてみても、DeFiは世界中のコンピューターによる分散型運用を前提としているので、問題なく行えることが想定されます。

もちろん、既存の枠組みで行われているAML/CFT(マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策)への対応など、既存の法制対応は前提になりますが、ユーザーはより利便性の高いサービスを利用することは間違い無いでしょうから、銀行業務のDeFi化は今後のトレンドになっていくことが想定されます。

DeFiを利用する上での留意事項・デメリット5点

最後に、DeFiを利用する上での留意事項やデメリットについてもご紹介します。

「ガス代」のボラティリティの高さ

Gas(ガス)とは、イーサリアムの送金(トランザクション)にかかる手数料、およびスマートコントラクトの実行に必要な手数料のことです。

ガスの料金はGasPriceと呼ばれ、基本的には取引する場合にユーザーが自由に価格設定できます。イーサリアムのトークンであるEther(イーサ:ETH)には、以下の表のように様々な単位があり、1Gasあたりの料金を「gwei」などで表現します。

単位

ether

wei(最小)

0.000,000,000,000,000,001ether

kwei

0.000,000,000,000,001ether

mwei

0.000,000,000,001ether

gwei(shannon)

0.000,000,001ether

szabo

0.000,001ether

finney

0.001ether

ether

1ether

kether

1,000ether

mether

1,000,000ether

gether

1,000,000,000ether

tether

1,000,000,000,000ether

記事執筆時点でのガス代はさほど高くありませんが、将来的にDeFiを活用する人間の数が多くなれば、その分ガス代が高騰する可能性があるでしょう。

トラブル発生時は自己責任で対応する必要あ

DeFiでは中央管理者がいないことからさまざまなメリットがありますが、同時に中央管理者がいないことで起こるデメリットもあります。

銀行や証券会社など中央管理者を介した取引では、トラブル発生時にユーザーの代わりに中央管理者が対応をしてくれます。一方で、DeFiを活用していてトラブルが発生した場合、自己責任で対応しなければならないのです。

ウォレット操作などを間違えて誤送金をしたとしても、担保は何もないため自己責任で対処して解決しなければなりません。

将来的な法整備による制限を受ける可能性あり

DeFiはまったく新しい仕組みであることから、各国で法整備が追いついていない状態です。実際、ある程度自由に取引が行えている現状がありますが、将来的には各国で法整備されていくことで、DeFiの概念自体に影響を与える可能性もあります。

仮想通貨が突然消失してしまうなどのトラブルの対処方法が明確になる一方で、取引の管理・運営がこれまでの「非中央集権化」で実現できなくなることも考えられます。

法整備の内容次第ではDeFiが根本から変化する可能性も持っているため、一概にすべてが順調に進行していくとはいえません。

セキュリティリスクの存在

DeFiではハッキングなどをされないように多くの対策が講じられてはいるものの、オンライン前提のサービスであるがゆえに、常にセキュリティリスクがあることを理解する必要があります。実際に2022年2月には、セキュリティの脆弱性につけこまれ攻撃・突破された事例があります。

また、サイバー犯罪等の発生による損失を受けても、前述の理由によって保証体制が確立されていないので、返金される可能性がほとんどないことも、ユーザーにとっての注意点と言えます。

日本におけるDeFiの活用に期待

DeFiは新しい金融のあり方として、非常に注目されています。金融機能において、組織における非中央集権化という新しい仕組みをスマートコントラクトといった技術によって確立するという観点から、Web3の中でも、中心的な役割を担うことは間違いありません。

最後の章でご紹介したような様々な留意点があるのも確かですが、たとえば日本においては2022年6月の参院本会議で改正資金決済法が可決・成立し、ステーブルコインの流通の仲介を担う業者に対する登録制度(電子決済手段等取引業等の創設)が世界に先駆けて導入されています。

レギュレーションという観点で、他国に比べて当局を筆頭に非常に積極的な動きがあるからこそ、今後の日本におけるDeFiの展開が非常に楽しみだと言えます。

リスクに対する理解を深めつつ、ぜひ、さまざまな分野から注目を集めるDeFiを利用してみましょう。

文:xDX編集部 画像:Getty images

関連記事

  • 麹や旨味など、日本古来からの「食の智慧」に盛り上がる欧米市場を探る 〜Food-Tech Webinar Fall 2022レポート

    麹や旨味など、日本古来からの「食の智慧」に盛り上がる欧米市場を探る 〜Food-Tech Webinar Fall 2022レポート

  • 社会性にセキュリティを組み込むことで、デジタルな人格(ソウル)は復元できる 〜G.GのSBT解説 #4

    社会性にセキュリティを組み込むことで、デジタルな人格(ソウル)は復元できる 〜G.GのSBT解説 #4

  • 効率化だけが論点ではない。AIによる「特許DX」に向けた専門家ディスカッション 〜超DXサミットレポート

    効率化だけが論点ではない。AIによる「特許DX」に向けた専門家ディスカッション 〜超DXサミットレポート

  • ステーブルコインはDXに向けた一丁目一番地か?金融の未来に向けた官民ディスカッション 〜超DXサミットレポート

    ステーブルコインはDXに向けた一丁目一番地か?金融の未来に向けた官民ディスカッション 〜超DXサミットレポート

  • Soulboundトークンはデジタル時代の「社会的包摂の基盤」になるかもしれない 〜G.GのSBT解説 #3

    Soulboundトークンはデジタル時代の「社会的包摂の基盤」になるかもしれない 〜G.GのSBT解説 #3

  • 東京ガールズコレクションのメタバース戦略とは?「バーチャルTGC」が目指す次世代ファッションショーを探る

    東京ガールズコレクションのメタバース戦略とは?「バーチャルTGC」が目指す次世代ファッションショーを探る

News

  • ㍿Borderlessが、株式投資型クラウドファンディングサービス「FUNDINNO」において、募集による投資申込みの受付を開始することを発表

  • ㍿情報基盤開発が、従業員の心身の健康管理に関するサービスを提供する㍿メンタルヘルステクノロジーズと業務提携契約を締結

  • NTT印刷㍿が、新たに「まるごと電子化日報業務効率化パッケージ」をサービスラインアップに追加し、提供を開始

  • ㍿カヤックが、㍿リビングハウスの一部株式を取得し、資本業務提携を締結

  • サグリ㍿が、これまで目視で行われていた農地パトロール調査を、衛星データとドローンを活用することで、農業委員会が効率的な調査を行うことを実現

FREE MAILMAGAZINEメルマガ登録

DXに特化した最新情報配信中