DXとは?注目の背景から行政/民間/生活者への影響、活用技術、推進のポイント、最新トレンドまでを体系的に解説

DXとは?注目の背景から行政/民間/生活者への影響、活用技術、推進のポイント、最新トレンドまでを体系的に解説

目次

「DXは単なるデジタル化のことではない」

「DXの本質はトランスフォーメーションにあるのであって、デジタルは手段に過ぎない」

DXという言葉が一種のバズワードとして数年が経過する中、多くのビジネスパーソンはこのようにおっしゃいます。しかし、DXという概念そのものの範囲が非常に広大で、かつ誰もが納得するような明確な定義づけがなされているわけでもないことから、発信者によってその意味するところが変わりやすいテーマでもあると感じます。

本記事では、このフワフワとしたDXの輪郭をある程度クリアにすべく、注目されている背景や定量的なデータ、活用される技術、各レイヤーにおける現状や課題、進めるためのポイント、そして未来を考えるにあたってのトピックについて、xDX編集長がどのWeb記事よりも詳しく解説します。

記事の合間合間で、参考となるデータや記事、書籍等をご紹介していますので、ぜひ併せてご覧いただき、DX理解を深めていただければと思います。

DXとは

このメディアをご覧の方にとっては言わずもがなですが、DXとは「Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション」の略で、一般的には「デジタル技術を活用して組織体のあり方そのものを変革(トランスフォーム)すること」だとされています。英語圏ではTransという接頭辞を「X」で表現することが多いことから、DTではなく「DX」という略し方になっています。

DXという言葉そのものは、スウェーデンのUmeå(ウメオ)大学にいるエリック・ストルターマン(Erik Stolterman)教授が、2004年1月に発表した「Information Technology and the good life」という論文で初めて使ったと言われています。

同氏はその論文で以下のように記述し、デジタルトランスフォーメーションが企業と生活者、それぞれにとって非常にインパクトのある概念であることを説明しています。

Digital transformation is a complex and radical form of enterprise transformation and refers to a disruptive process that change profoundly the way companies compete, interact and create value. It is defined as "the use of technology to radically improve performance or reach of enterprises". Another well-known, more holistic definition of the term is that it can be understood "as the changes that digital technology causes or influences in all aspects of human life".

 

日本語訳)
「デジタルトランスフォーメーションとは、企業の競争・交流・価値創造の方法を大きく変える破壊的プロセスのことで、複雑かつ根本的な企業変革の一形態となり、「テクノロジーの活用によって企業の業績や到達範囲を根本的に改善すること」と定義されています。また、もう一つよく知られた、より全体的な定義として、「デジタル技術が人間の生活のあらゆる側面に引き起こす、あるいは影響を及ぼす変化」として理解することができます。」

 

引用:Information Technology and the good life

  

総務省と経済産業省が捉えるDXの定義

冒頭で「DXには誰もが納得するような明確な定義づけがなされていない」と記載しましたが、総務省と経済産業省の方では、それぞれの定義づけがなされています。

まず経済産業省では、2018年に発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」(DX推進ガイドライン、後述)にて、以下のように定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

 

引用:経済産業省「DX推進ガイドライン」p2より 

  

また同省による別のペーパーだと、以下のとおり「顧客起点」という文言が強調されています。

「組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革」

 

引用:経済産業省「DXレポート2」p25より

  

一方で総務省では、以下の内容で定義しています。こちらは2020年7月17日に閣議決定された「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」での注釈内容を踏襲しているとしています(こちらの1ページ目に記載)。

「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること。」

 

引用:総務省「令和3年 情報通信白書」デジタル・トランスフォーメーションの定義より 

  

表現方法は異なりますが、いずれにおいても企業活動が前提にされており、そこでの新しいビジネスモデルの創出と、それによる競争優位性の確立が目的として掲げられています。

平成30年版の情報通信白書では、デジタルトランスフォーメーションはこちらの図にあるように「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という文脈で紹介されており、ビジネス変革の色合いは決して高くなかった

(画像出典:総務省「平成30年 情報通信白書」デジタルトランスフォーメーションより

  

似た言葉を理解する

ここで、DXと混同されやすい似たような言葉として、デジタイゼーション、デジタライゼーション、IT化、デジタル化について、それぞれ見ていきましょう。

デジタイゼーション

デジタイゼーション(Digitization)とは、総務省によると「既存の紙のプロセスを自動化するなど、物質的な情報をデジタル形式に変換すること」と説明されています。つまり、会社内の特定の工程における効率化のためにデジタルツールを導入することを示しています。

アナログな媒体で記録されているデータや情報をデジタルな形へと変換することの例として、たとえば、これまで紙帳票で管理していた情報をExcelなどを活用してデジタル管理することなどが、このデジタイゼーションにあたります。

デジタライゼーション

デジタライゼーション(Digitalization)とは、同じく総務省によると「組織のビジネスモデル全体を一新し、クライアントやパートナーに対してサービスを提供するより良い方法を構築すること」と説明されています。つまり、​​自社内だけでなく外部環境やビジネス戦略も含めた“プロセス全体”をデジタル化するという点で、デジタイゼーションの一歩先をいくアクションであると言えます。

そして、先ほどお伝えしたとおり、DXとは「デジタル技術の活用による新たな商品・サービスの提供、新たなビジネスモデルの開発を通して、社会制度や組織文化なども変革していくような取組を指す概念」となるので、デジタライゼーションのさらに先をいく取り組みだと言えます。

(画像出典:総務省「令和3年 情報通信白書」デジタル・トランスフォーメーションの定義より

  

(画像出典:経済産業省「DXレポート2」p25より

  

一点注意が必要なこととして、DXを進めるプロセスの中にデジタイゼーションもデジタライゼーションもある、ということです。

よく「そんなのただのデジタイゼーションゼーションだから意味ないよ」という表現がなされることがありますが、DXのビジョンやロードマップを明確に策定した上で、それを達成するためのデジタイゼーションであるならば、むしろ歓迎すべきDX施策だと言えます。一方で、DXのビジョンやロードマップの策定なく、「何かやる必要があるから」という理由だけでデジタイゼーションだけを行っているようでは、本質的なDXにはいつまで経ってもたどり着かないでしょう。

要するに、「デジタイゼーションやデジタライゼーションはダメでDXはOK」のような、二項対立的なものではないということを覚えておくと良いでしょう。

IT化/デジタル化

DXと並行してよく表現されるものが「IT化」や「デジタル化」でしょう。こちらについては特に、明確な定義がなされているわけではありませんが、多くのビジネスパーソンの用途を見ていると、デジタイゼーションからデジタライゼーションまでを広く示す用語として使用している印象です。

だからこそ冒頭で記載した「DXは単なるデジタル化のことではない」という発言につながると言えるでしょう。

このように、デジタイゼーション・デジタライゼーション・IT化・デジタル化は、DXのための手段の一つだと捉えると、多くのDXプロジェクトを見る際の解像度が上がるでしょう。

なぜDXがここまで注目されているのか?

デジタル技術を活用した新規ビジネスモデルの創出と競争力の向上については、20年以上前にインターネットが民主化して一気に広がっていった頃から、その必要性が叫ばれ続けてきました。では、なぜ今になって、デジタル技術を活用した「トランスフォーメーション」がしきりに叫ばれているのでしょうか。

ここではその国内的な要因について、7つの大きな背景について、時系列的に説明していきます。

①生産年齢人口と労働力人口の減少トレンド

(画像出典:総務省「平成28年版 情報通信白書」人口減少社会の到来より

  

多くの方がご存知のとおり、日本では少子高齢化が急速に進展しており、2008年をピークに総人口が減少し続けています。それに併せて、生産年齢人口(生産活動の中心にいる15歳以上65歳未満の人口層のこと)も1997年頃から減少し続けており、1986年では8,315万人だったのに対して、2016年には7,665万人と、実に650万人も減少している計算になります。

さらに、労働の意思と労働可能な能力を持った15歳以上の人(いわゆる労働力人口)も大幅な増加は見込めない状況となっています。

一方で、企業や生活者が求めるニーズは日々多様化しています。商品・サービスの受け取りサイドの要望が増えているにもかかわらず、提供サイドの人口が減少しているので、従来までの人力に頼った生産活動だけでは到底間に合わないことになります。

このことから、提供サイドの生産活動を効率化するためのツールとして、デジタル技術への期待が高まっています。

②海外のビッグテックの存在

また別の観点から見ると、海外のビッグテック企業の存在も大きいでしょう。いわゆるGAFAM(2021年10月29日以降はFacebookの社名変更に伴ってGAMAMが正式)やBAT(百度(バイドゥ)、阿里巴巴集団(アリババ )、騰訊(テンセント))などのことです。

これらビッグテックをはじめとする大資本が国内各市場に新規参入することで、既存企業のシュリンク、すなわち「デジタルディスラプション」が多く発生していることも、大きな要因であると言えるでしょう。

ビッグテック等によるデジタルディスラプションが進み、市場環境が刻々と変化するVUCA(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity)の時代だからこそ、既存企業のDXは待ったなしの状態になってまいりました。

③データ主導社会としてのSociety 5.0の策定

このような状況に対して、内閣府が2016年1月22日に閣議決定した「第5期科学技術基本計画」において、今後の国が目指すべき未来社会の姿として提唱した概念が「Society 5.0」です。

(画像出典:内閣府「Society 5.0」より

  

内閣府による定義としては、以下のとおりです。

「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」

 

引用:内閣府「Society 5.0」より

  

Society 4.0では、インターネット技術やそれにまつわるハード技術の発達・普及によって、人々は様々な情報へとつながる社会で生活できるようになりました。一方で大量の情報同士は有機的に繋がっているわけではないので、分野横断的に情報を探し、個別に連携させる必要がありました。

これに対してSociety 5.0では、5G(第5世代移動通信システム)をはじめとする強力な通信網を前提に、あらゆる人・モノがつながった社会を想定しています。Society 4.0時代の課題であった「情報の共有・連携」をシームレスに行えるようにして、「経済発展と社会的課題の解決の両立」を進めると、内閣府は提示しているわけです。

Society 5.0時代では、情報の高度な連携やロボエィクス技術の発達によって、人々は必要な人に必要なタイミングで必要な量の情報が提供されることになるとされている

(画像出典:内閣府「Society 5.0」より

  

なお、Society 5.0の前提となるデータ駆動社会について分かりやすく解説した書籍が以下となりますので、ぜひこちらも併せてご覧ください。

▷ 書籍『アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る』(藤井保文、尾原 和啓:日経BP)

④サービス・ドミナント・ロジックの台頭

これらの動きと並行して進んだパラダイムシフトの一つが、「サービス・ドミナント・ロジック」(以下、SDL)の台頭です。これは、一言でお伝えすると「モノからコトへ」の考え方を説いたもので、2004年に米国のマーケティング研究者であるRobert F. Lusch(ロバート・F・ラッシュ)とVargo, Stephen L.(スティーブン・L・バーゴ)によって提唱された考え方となります。

従来の社会では、売り手となる企業が有形財である商品・製品(モノ)の価値/価格を決定して販売し、顧客は提示された価値/価格に対して支払いを行うことでその商品・製品を獲得する、という購買フローがなされていました。このように、モノを中心として考えられる経済活動のことを「グッズ・ドミナント・ロジック」(以下、GDL)と言います。

これに対して、全ての経済活動を「サービス」起点で捉えるという考え方がSDLになります。有形財であるモノと無形財であるコトを区別せず、全てをサービスと捉えた上で、そのサービスの価値/価格を顧客と一緒に考えていくという考え方です。従来の購買フローでは、あくまでモノが中心にあってサービスがそれに付随して存在するというあり方が主流でしたが、そうではなく、サービスこそが主体となるわけです。

考えてみると、後述するサブスクリプションビジネスやシェアリングエコノミーサービスは、どれもこのSDLを前提に組まれたビジネスモデルだと言えるでしょう。

このような、GDLからSDLへのパラダイムシフトに適応するために、企業は小手先のデジタル化ではなく、より本質的にビジネスモデルを再構築するようなDXが求めらているわけです。

なお、このSDLの詳細については、以下の書籍で詳しく解説されています(筆者もSDLを提唱した上述のお二人です)。

▷ 書籍『サービス・ドミナント・ロジックの発想と応用』(R.F.ラッシュ、S.L.バーゴ:同文舘出版)

⑤経済産業省「DXレポート」の衝撃

(画像出典:経済産業省「DXレポート」より

  

ここまでDXの必要性について見ていきましたが、産官学のあらゆるレイヤーにとってDXが喫緊の課題であることを印象付けた存在が、2018年秋に経済産業省が発表した「DXレポート」でしょう。ここで初めて、「2025年の崖」という考え方が提示されました。

レガシーシステムの存在と「2025年の崖」

経営者が本質的なDXを望んでいたとしても、企業内には様々な障壁が存在します。その中の一つが「レガシーシステム」です。レガシーシステムとは、導入から随分と時間が経過し、最新技術の恩恵を十分に受けるための拡張性等が著しく低くなっているようなシステムのことです。

このレガシーシステムは、数十年単位で運用が続いていることから、システム構造の複雑化が進んでおり、また地方の温泉旅館の如く統一のアーキテクチャ構造に則らない増築(機能追加/修正等)を加えているので、属人化・ブラックボックス化も進んでいます。

さらに、そのようなシステムの運用にフィットさせた業務設計を現場サイドでは行っているため、最新技術を伴う新しいシステム構造へと抜本的に入れ替えるプロジェクト(いわゆるマイグレーション等)がなかなか進まないことになります。

(画像出典:経済産業省「DXレポート」より

  

そのような企業がたくさんあることから、2025年以降に現在の約3倍となる最大12兆円/年の経済損失が生じる危険性があるということが、レポートでは赤裸々に語られています。これが「2025年の崖」というわけです。

この「2025年の崖」を回避するためにも、企業は2025年までの間に複雑化・ブラックボックス化した既存システムについて、廃棄や塩漬けにするもの等を仕分けしながら、必要なものについて刷新しつつ、DXを実現することが重要な命題になりました。

(画像出典:経済産業省「DXレポート」より

  

⑥COVID-19パンデミックによるニューノーマル対応

さらに、2020年に決定的なパラダイムシフトとなる事象が発生しました。COVID-19パンデミックです。人々はかつてないレベルでの非対面生活を余儀なくされ、それに引っ張られる形で、様々な生活事象がオンライン化・デジタル化されていきました。リモートワークやワーケーション、宅配、Web会議などの普及は、その一例と言えます。

ここで政府は、「新しい生活様式」という形で、ニューノーマルへの対応の実践例を発表しています。ニューノーマルとは、何か社会的影響の大きな事象が発生した際にもたらされる変化が、そのまま新しい常識となることです。

(画像出典:厚生労働省「「新しい生活様式」の実践例」より)

  

ここでは当然ながら生活者起点の目線で実践例が描かれていますが、これに対応するような各種商品・サービス提供者である企業としては、既存の提供方法やスキームを改め、場合によってはサプライチェーンや組織構造そのものを再構築する形で対応する必要がありました。まさに、強制的にDXを進めざるを得ない状況になったわけです。

⑦デジタル庁の発足と運営開始

そして、最後の大きな要因は、2021年9月1日に設立された「デジタル庁」の存在でしょう。

詳細は後述しますが、デジタル社会形成の司令塔となるデジタル庁は、国内における産官学あらゆるプレイヤーのDXを推進する際の象徴的な存在であり、また主に行政DXのハブとしての役割を担うことになります。

デジタル化・DXの主管機関ができたことで、国内のDXへの機運がますます高まったことは間違いないでしょう。

DXがもたらす価値

ここまでご覧いただいたとおり、DXは「やった方が良いこと」ではなく「やらねばならないこと」として広く認知されるようになったわけですが、DX実施に付随する価値はなんなのでしょうか?

ここでは、現場と経営、それぞれのレベル感で言える効果・価値についてご紹介します。

現場レベル:生産性向上によるタスクの省力化・効率化

現場レベルでのDXの価値は、なんと言っても生産性向上によるタスク・プロセスの省力化と効率化でしょう。デジタル技術を導入することで、日々行っているルーティン業務を自動化し、作業時間を短縮化させることで、そのぶん別の「人が本来的に行うべき業務」へと集中することができるようになるでしょう。

また、デジタル技術が得意とするのは「正確性」と「速度」です。人が行っていたルーティン業務をデジタル化することは、すなわち人為的なミス(ヒューマンエラー)を削減し、より作業の正確性を高めることにも貢献すると言えます。もちろん、それが品質の向上にもつながり、不具合等によるプラスアルファの工数発生も未然に防止できるので、さらに工数削減にもつながり、生産性向上に寄与することになります。

経営レベル:競争力と持続性の向上

一方で経営レベルでのDXの価値は、冒頭のDXの定義でもお伝えしたとおり、自社の競争力の向上にあります。

また、競争力を向上させるには、持続性(サステナビリティ)を前提にした事業構築も不可欠でしょう。後述するESG投資や世の中のSDGs認知の拡大に付随して、これからの時代はいかにエシカルで持続性のある事業かが評価されることになります。

すなわち企業としては、DXとサステナビリティを両輪として、これからビジネスモデルを構築していく必要があると言えます。逆に捉えると、DXを進めるということは、自社が貢献できるサステナビリティは何かを考える大きなきっかけにもなる可能性があると言えます。

DXの取り組み状況にまつわる定量データの紹介

ここで、日本におけるDXの現状を、定量データを用いてチェックしてみましょう。ここでは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発行する『DX白書2021』から、何点か引用して解説します。

※本レポートでは、各トピックに対する日米企業の比較という切り口で解説が進んでいます

DXへの取り組み状況

まずは日米企業でのDXの取り組み状況です。以下のグラフからもお分かりのとおり、米国企業でDXに取り組んでいない企業は15%ほどであるのに対して、日本企業は34%近くということで、相対的に低い状況となっています。

(画像出典:DXへの取組状況「DX白書2021」第2部_DX戦略の策定と推進 p22より

  

従業員規模別で見てみると、日本企業の場合は企業規模が小さいほどDXへの取り組みが進んでいないことが分かります。国内の企業分布を考えると、圧倒的に300人以下の企業が多いことから、その50%近くが取り組んでいないことは、ある意味で由々しき事態だと言えるでしょう。

(画像出典:DXへの取組状況(従業員規模別)「DX白書2021」第2部_DX戦略の策定と推進 p25より

  

DX推進組織の有無と部門間協力の現状

DXを進める際は、行政でデジタル庁が設置された例からも分かるとおり、DX推進を主管する部門・組織の存在が不可欠です。

そのような専門部署の設置状況が以下となります。米国企業では「専門部署がある」割合が71.2%、「専門部署はないが、プロジェクトチームがある」割合が26.7%であるのに対して、日本企業は「専門部署がある」割合が41.6%、「専門部署はないが、プロジェクトチームがある」割合が35.2%であり、また専門部署が「ない」割合は21.1%との結果を示しています。つまり、相対的に考えると、専門部署の設置率はまだまだ高くはありません。

(画像出典:DXの推進やデジタルビジネスの強化などをミッションとする専門部署の有無「DX白書2021」第2部_DX戦略の策定と推進 p50より

  

また、DXのような構造変革を伴うプロジェクトを進めるには、単一部署の努力だけでは難しく、全社・全部署の協力体制が重要です。このような、組織の壁を超えた協力・協業の状況をリサーチした結果が以下となります。日本企業は「十分に

できている」「まあまあできている」を合わせて36.8%となっているのに対して、米国企業は「十分にできている」割合が39.8%であり、「まあまあできている」43.1%と合わせると全体の8割以上で部門間の協調ができているということになります。

(画像出典:組織の壁を越えた協力・協業「DX白書2021」第2部_DX戦略の策定と推進 p51より

  

評価とガバナンス体制の現状

DXを推進する協力体制が整ったとして、その実行具合を評価するためのKPI等の指標やガバナンス体制の構築も不可欠です。

具体的な指標項目として、こちらのレポートでは「①企業価値創造に係る指標(企業が目標設定に用いるあるいは戦略的なモニタリング対象とする財務指標)」、「②戦略実施により生じた効果を評価する指標」、「③戦略に定められた計画の進捗を評価する指標」の3点が挙げられています。

では、その評価状況はどうでしょうか。評価頻度という観点での調査データを見てみると、最上段の「アプリのアクティブユーザー数」から最下段の「製品やサービスに対する顧客からのレビュー」まで、すべての評価項目で日本企業は「評価対象外」としているケースが大半であることがわかります。つまり、どのように評価をするか“以前”の問題なのです。

(画像出典:顧客への価値提供などの成果評価の頻度「DX白書2021」第2部_DX戦略の策定と推進 p68より

  

また評価項目を見直す頻度についても、日本企業は上記と同様に「評価対象外」であるケースが最も多く、日本人が特に強く持っているとされる「失敗は恥」文化が、トランスフォーメーションの妨げになっていることが推察されます。

(画像出典:評価や見直しの頻度「DX白書2021」第2部_DX戦略の策定と推進 p69より

  

DXで活用/期待される4大技術

次に、DXを進めるためのツールとして、活用がなされている、もしくは今後活用が期待されている技術について、4つに絞ってご紹介します。

クラウド・コンピューティング

DXを進める際の前提となる技術の一つがクラウド・コンピューティング(通称「クラウド」)でしょう。クラウドとは、ネットワーク上に存在するサーバが提供するサービスを、それらのサーバ群を意識することなしに利用できるというコンピューティング形態のことです。

クラウド以前は、ユーザーが何かしらのデジタルサービスを使おうとすると、コンピューターやサーバをはじめとするハードウェアを購入したり、ソフトウェアやそのライセンスを個別に購入してパソコンにインストールしたりする必要がありました。

これがクラウドの登場によって、個別の購入・対応をせずとも各デジタルサービスを利用できるようになりました。例えばホームページを立ち上げるケースを考えた場合、従来は自分でサーバを用意して通信等を確立して設計する必要がありましたが、現在はレンタルサーバーやドメイン取得サービス企業等を経由することで、簡単に立ち上げることができるようになっています。

アマゾン ウェブ サービス(AWS クラウド)のように、信頼性と拡張性に優れたクラウドコンピューティングサービスを低料金で提供する事業者が現れたことで、オンラインでの事業展開が従来に比べて格段に難度が下がったと言えるでしょう。

物理的なロケーションを問わずに、様々な情報を瞬時に取得・加工・共有等ができる技術として、DXにクラウドは欠かせないものとなります。

なお、DXに使えるクラウドという観点では、以下の書籍が参考となるでしょう。

▷ 書籍『DXを成功に導くクラウド活用推進ガイド CCoEベストプラクティス』(黒須 義一 、酒井 真弓、遠山 陽介、伊藤 利樹:日経BP)

AI(機械学習・ディープラーニング等)

AI(Artificial Intelligence)と聞くと、「ドラえもん」のような汎用人工知能(人間のような意識や心のようなものも含めて自律的に動く人工知能)を思い浮かべる人がいるかもしれませんが、ここでいうAIとはそうではなく、特定の課題にのみ対応できる特化型人工知能技術のことを指します。

3つのAIブーム

そもそも、AIには3つのブームがあると言われており、その最初の火付けは1950年代後半にまで遡ることになります。

(画像出典:総務省「平成28年版 情報通信白書」人工知能(AI)研究の歴史より

  

現在、特に注目されているのが、1980年代より研究がなされてきた「機械学習(Machine Learning)」の代表的なアルゴリズムであるニューラルネットワークを活用した「ディープラーニング(Deep Learning)」でしょう。2016年に、人工知能の囲碁プログラム「AlphaGo(アルファ・ゴー)」が、世界トップレベルの実力を持つ韓国のプロ棋士に勝利したことが衝撃的なニュースとして報じられたわけですが、その際に用いられていたのが、このディープラーニング技術を搭載したAIでした。

ディープラーニングのすごさとDXへの応用について

ディープラーニングの特徴を一言でお伝えすると、十分なデータ量さえあれば、機械が自動的にデータから特徴を抽出できるようになるということです。これまでは「このデータ群の特徴はこれだろう」という形で人間が個別にラベルを付与していたわけですが、そんなことをせずとも、機械が自動で確率の高いラベルを算出・付与してくれるようになるわけです。

このディープラーニングが社会実装されることで、たとえば画像から文字や顔などの特徴を検出したり、音声をテキスト化したり、動画からイレギュラーな事象を検出(異常検知)したりすることが可能となりました。

特に最後の異常検知領域で考えると、生産工場のカメラ筐体そのものにAIを搭載することで(このようなAIを「エッジAI」と言います)、これまで人が対応しなければならなかった動画の監視を、全てAIに任せることができるようになります。

もちろんこれは一例で、AIを活用したデジタライゼーションは、製造・物流・医療・金融など多岐に亘ります。

AI活用の現状

このようなAIの導入は、多くの企業にとっての関心の的です。実際にビジネスシーンで活用できる技術として認知が広がっていったのが2015年〜2018年あたりと考えて、ここ数年でどこまで普及していったのでしょうか。

先ほどご紹介したIPAによる「DX白書2021」では、「AI白書2020」および「AI白書2019」との調査結果を比較しています。

(画像出典:AI技術の活用状況「DX白書2021」エグゼクティブサマリー p14より

  

これによると、日本企業では現状「導入している」企業の割合が20.5%であり、米国企業の44.2%との差は依然として大きいです。ただし、前年に公表された「AI白書2020」の調査結果であった4.2%と比較すると、実に5倍に増加していることが分かります。またAI活用の課題感については、AI白書2020では「自社内にAIについての理解が不足している」が55.0%で1位でしたが、DX白書2021ではそれが39.8%に減少しており、代わりに「AI人材が不足している」が34.6%から55.8%へと増加しています。

このことから、AIの理解は進んだものの、それを扱える人材が不足しているという点が、AI活用の課題へとシフトしていると言えるでしょう。

AIにまつわる様々な書籍

AIについては様々な書籍が出版されていますが、以下のものは読みやすく、AIがなんたるかを理解するのに非常に役立つと言えます。

▷ 書籍『教養としてのAI講義 ビジネスパーソンも知っておくべき「人工知能」の基礎知識』(メラニー・ミッチェル:日経BP)

▷ 書籍『超AI入門―ディープラーニングはどこまで進化するのか』(松尾 豊、NHK「人間ってナンだ?超AI入門」制作班:NHK出版)

またAIの社会実装を進めるにあたっては、倫理的な側面についても、規制(法律)と併せて検討する必要があります。このような「AI倫理」について詳しく知りたい方は、以下の書籍がおすすめです。網羅的に解説がなされているので、ある程度のページ数がありますが、技術の特徴から具体的な論点まで、グローバルな議論内容も加味して説明がなされています。

▷ 書籍『Q&A AIの法務と倫理』(古川 直裕、渡邊 道生穂、柴山 吉報、木村 菜生子:中央経済社)

さらに、AIの活用に関する社会像をより哲学的に捉えたいという方は、ゲームAI開発者である三宅陽一郎氏と哲学研究者の大山匠氏による書籍も、深い学びを得ることができるでしょう。

▷ 書籍『人工知能のための哲学塾 未来社会篇 〜響きあう社会、他者、自己〜』(三宅陽一郎、大山匠:ビー・エヌ・エヌ新社)

xR(VR、AR、MR)

xRとは、VR(Virtual Reality:仮想現実)、AR(Augmented Reality:拡張現実)、MR(Mixed Reality:複合現実)などの技術の総称です。このxR技術は「次なるスマホ」と目され、現在多くの企業が技術開発の投資をしています。

VR(仮想現実)の概要

VRとは、専用のゴーグル(ヘッドマウントディスプレイ:以下、HMD)を頭に装着することで、コンピューター上に生成された仮想空間・映像空間の中に、実際にいるかのような体験ができる技術のことです。

HMD市場は、「VR元年」と言われる2016年に急速に拡大開始し、2018年にはスタンドアローン型HMDとして「oculus Go(オキュラスゴー )」がリリースされたことでデバイスの低価格化が進み、主にゲーム領域で急速に利用が広がっていきました。

とは言え、ビジネスでの活用も随分と進んできています。たとえばシミュレーションをサポートする技術としては、自動車の製造現場における衝撃シミュレーションや、特定の技能を習得するためのシミュレーショントレーニング用途で活用されています。また福祉の現場においては、VR動画を見ながら足こぎペダルで仮想散歩をするようなソリューションも開発されています。

AR(拡張現実)の概要

アイルランド出身の天体望遠鏡設計者であるハワード・グラッブ(Sir Howard Grubb)氏が、1901年に雑誌『The Scientific transactions of the Royal Dublin Society.』で発表した論文「A new collimating-telescope gunsight for large and small ordnance.」で描いた小型のコリメータ反射式照準具。ARの概念として最初に登場したと言われる技術で、軍人による射撃行為を支援するものとして、人が何かを視認する際に一度に一つの照準深度だけにフォーカスするという問題の解決に寄与した(画像出典:Wikimedia Commons File:Grubb reflector sight - third version.png

  

次にARとは、現実世界の視野に対して、ディスプレイ等を通してデジタル情報を重ねて見せる技術のことです。イメージしやすい例としては、かつてスマホアプリとして人気を博した「セカイカメラ」や、2016年夏にリリースされて一斉を風靡した「Pokémon GO」などが挙げられるでしょう。

こちらは視界を完全に遮るHMDはほとんど使われず、メガネのようにかけて使用する「スマートグラス」の他に、スマートフォンやタブレットといったカメラ付きのデバイスでの活用が期待されています。

ちなみに、今し方少数派とお伝えしたHMDを使ったARは「ビデオシースルー型」と呼ばれ、HMDの正面に設置されたカメラでリアルタイムに撮影された映像をディスプレイに投影し、そこに生成したデジタル情報を重畳表示させることになります。現実世界とデジタル情報の融合具合は非常に高いですが、一方で映像酔いのような現象が発生しやすくなると言われています。

ARグラスを活用すると、基本的にはハンズフリーでさまざまな操作を行えることになるので、マニュアル参照が必要な作業を行う現場で、楽に作業を進めることができることが挙げられます。また、現実の風景にデジタル情報を補足情報として付加できるので、よりリッチな情報を参照しながら判断等を下すことができるようにもなるでしょう。

MR(複合現実)の概要

米MagicLeap社が提供するAR・MRグラス「magic leap 1」。独自OSを採用したデバイスとなっており、搭載された9つのセンサーを通じて、どんな場所でも空間を把握できるようになっている

(画像出典:magic leap 1日本語公式サイトより

  

最後のMRとは、現実世界を3D空間としてデジタル情報化し、その中に架空のオブジェクト等のデジタル情報を配置して、自由に操作できる技術のことを指します。よく「ARとMRの違いが分からない」という言葉を聞きますが、現実世界の空間把握ができるか否かが、ARとMRの違いだと言えます。

現実世界の空間把握についてもう少し詳しく説明しますと、たとえばPokémon GOに表示されたスマホ画面上のモンスターは、現実空間に存在するかのように見えますが、モンスターを触ろうと思っても、その手はモンスターをすり抜けてしまいます。つまり、デジタルで表示されたモンスター映像と現実の世界には接点がなく、鑑賞もしないということになります。これがARです。

対してMRによるPokémon GOがあるとするならば、アプリが現実世界の座標などをしっかりと把握することになるので、現実世界の自分がモンスターに向けて手を伸ばせば、その手の動きに合わせてモンスターが反応し、まるで触っているかのような動きを見せることになるでしょう。つまり、デジタル世界のモンスターとリアル世界の手が、しっかりと情報としてリンクしているというわけです。

(画像出典:Pokémon GO公式サイトより(2022.4.20時点のトップ画面)

  

xRにまつわる様々な書籍

xRについても様々な書籍が出版されていますが、VRについては以下のものが読みやすく、未来像も含めたイメージングに役立つでしょう。

▷ 書籍『未来ビジネス図解 仮想空間とVR〈メタバース〉』(株式会社往来:エムディエヌコーポレーション)

また、ARについて体系的に技術とケーススタディを学びたいという場合は、以下の書籍が参考になるでしょう。辞書的に活用するのも良いかもしれません。(こちらの他に基礎編として『ARの教科書』という書籍もありますが、こちらはより技術的な仕組みの解説にフォーカスした内容になっている印象です)

▷ 書籍『ARの実践教科書』(Steve Aukstakalnis:マイナビ出版)

さらに、VRがいかにして発展してきたかというプロセスを深く学びたい場合は、こちらの書籍が良いでしょう。著者である服部 桂氏は、ケヴィン・ケリー氏(『Wired』誌の創刊編集長等を歴任した人物)の出版物の翻訳を多数手掛けてきた人物であることから、非常に丁寧な取材に基づいた技術の経過が分かるでしょう。

▷ 書籍『VR原論 人とテクノロジーの新しいリアル』(服部桂:翔泳社)

ブロックチェーン

ブロックチェーンとは、邦訳で「分散管理台帳技術」と呼ばれるもので、複数のオンライン上のコンピューターにまたがって、一定期間内のさまざまな取引データ(専門的に「トランザクションデータ」と言います)を「ブロック」単位でまとめて記録・管理する技術のことです。

ビットコインやイーサリアムなどの「暗号資産」を構成する基盤技術として有名ですが、暗号資産領域以外でも様々な用途での活用が進んでいます。

ブロックチェーンの特徴①:自律分散性

ブロックチェーンには、技術として大きく3つの特徴があり、そのうちの1つが「自律分散性」です。こちらは、後述するWeb3の基盤技術として注目されている所以でもあります。

一般的に何かサービスを提供しようとすると、そこには必ず「管理者」となる企業や団体、ないしは個人がいます。つまり、その管理者が何らかの要因でシステム的に落ちてしまうと、そのままサービスも利用不可になります。

一方でブロックチェーンベースのシステムは、先ほどお伝えした複数のノードが繋がりあってデータを管理しているため、どれか一つのノードがダウンしたとしても、サービスそのものが止まることはありません。

また、ブロックチェーンを活用したイーサリアムでは、「スマートコントラクト」と呼ばれる仕組みが実装されています。これは、取引を進める中で「所定の条件が満たされた場合に特定のプロセス・処理が自動実行される仕組み」です。つまり、あらかじめ想定ができる取引内容については、自動処理をすることができるものとなります。

このようにブロックチェーン技術を使ったシステムは、運営主体を分散させることで持続的に動き、かつスマートコントラクト機能を活用して自律的に動くシステムであると言えるので、中央管理者がいない状態でもワークする仕組みを実現できるわけです。

(画像出典:経済産業省「平成27年度 我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに 関する国内外動向調査) 報告書概要資料」p3より

  

ブロックチェーンの特徴②:耐改ざん性

ブロックチェーンの特徴、2つ目は「耐改ざん性」です。

一般的なデータベースを考えると、データベースの管理者権限をもつユーザーは情報の追加や修正、削除を実行することができるので、もしも悪意をもった第三者がユーザー権限のID/パスワードを見破った場合、意図しない形で情報を改ざんできてしまいます。

一方でブロックチェーンの場合、過去にあったデータを遡っての改ざんは、実質的に不可能です。まず、ブロックチェーンでは取引者を確認するために、公開鍵暗号方式を用いた「デジタル署名」の仕組みが利用されています。また、その暗号化されたデータを改変しようとすると、その改変したいタイミングの情報から後の“全て”のブロックの情報も、整合性が取れる形で改ざんする必要があるのです。

現実的にこのような改ざんを行うことは非常に困難なので、ブロックチェーンは非常に耐改ざん性に優れた技術であると言えます。

ブロックチェーンでは、トランザクション情報の集合等を含んだブロックがチェーン状に連なっており、ネットワーク上にある複数ノードが新しいブロックを相互に承認し、チェーンを⾜していくことになる。もしもある時点の情報の改ざんを行う場合は、その時点以降の全てのブロックの情報(タイムスタンプや全プロっくのハッシュ値など)を改ざんしていく必要がある

(画像出典:経済産業省「平成27年度 我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに 関する国内外動向調査) 報告書概要資料」p4より

  

ブロックチェーンの特徴③:トレーサビリティ

ブロックチェーンには、処理に関わる情報として「誰が」「いつ」「何を」「どのくらい」「どのようなプロセス/ルートで」取引を行ったのかという記録が刻まれており、その情報には誰でもアクセスすることができます。

つまり、極めて取引透明性(トレーサビリティ)の高い技術となります。

ブロックチェーンにまつわる様々な書籍

ブロックチェーンがどのように世界を変えるのかを、具体的にイメージしてテンションを上げたい、という方にはこちらの書籍がおすすめです。

▷ 書籍『ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか』(ドン・タプスコット、アレックス・タプスコット:ダイヤモンド社)

また、ブロックチェーンの日本におけるビジネス活用を検討されたい場合は、以下の書籍が良いでしょう。

▷ 書籍『ブロックチェーンをビジネスで活用する』(PwCあらた有限責任監査法人:中央経済社)

さらに、ブロックチェーン技術の要素となっている暗号技術や認証技術について理解を深めたい方は、以下の書籍がオススメです。暗号と認証についての様々なパターンが丁寧に、かつわかりやすく解説されています。

▷ 書籍『図解即戦力 暗号と認証のしくみと理論がこれ1冊でしっかりわかる教科書』(光成 滋生:技術評論社)

なお、黒鳥社という出版社から発売されていた『Blockchain Handbook for Digital Identity 2018 volume1』という書籍も、とてもわかりやすいブロックチェーンの入門書として愛読していたのですが、現在はAmazonをはじめどのECサイトでも販売されていないようです。書店にはまだ存在するケースがあるようなので、見つけたらぜひ読んでみていただきたいです。

行政DXの現状(GovTech)

DXを考える上では、どのレイヤーで捉えるかがとても重要になります。ここでは、国家全体の経済活動を構成する要因として、行政・法人・個人(生活者)という3つのレイヤーに分けて、それぞれのDXの現状を見ていきます。

まずは行政のDXについてです。ここでは、最初にこれまでの行政のデジタル施策について見ていきましょう。

2001年「e-Japan戦略」から始まった

(画像出典:内閣官房IT総合戦略室「これまでの経緯とIT基本法の概要」p5より

  

日本で最初にデジタル領域の規制としてできたのは、2000年11月に公布(2001年1月施行)された「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」、通称「IT基本法」です。またこれと同時に制定されたのが、2001年1月発表の「e-Japan戦略」です。こちらは主にIT基盤整備を進めていくというもので、そこから2003年には「e-Japan戦略Ⅱ」、2006年には「IT新改革戦略」と、主に「インフラ整備とIT利活用の推進」が柱として進められていきました。

さらに2013年には「世界最先端IT国家創造宣言」が発表され、内閣情報通信政策監(政府CIO)が設置され、府省庁の横断的な課題に対して横串で取り組みを推進していくための体制が整えられました。翌2014年には、サイバーセキュリティに関する施策についての基本理念や基本的事項等をまとめた「サイバーセキュリティ基本法」が、その2年後の2016年には「官民データ基本法」がそれぞれ整備され、「データの利活用とデジタル・ガバメント」が、戦略の新たな柱となっていきました。

2018年には「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」が閣議決定され、ここで今も続く以下の「行政サービスのオンライン化実施の3原則」が掲げられることになります。

  • デジタルファースト
  • ワンスオンリー
  • コネクテッド・ワンストップ

そして2019年には、行政手続を原則として全て電子化する目的を掲げた「デジタル手続法」(正式名称:情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律案)が公布。先述した3原則が、改めてここで基本原則として定められることになりました。

「デジタル・ガバメント実行計画」からデジタル庁へ

(画像出典:政府CIOポータル「デジタル・ガバメント実行計画 2020年12月25日 改定(閣議決定)概要PPTX」より

  

先述したとおり、2016年の官民データ基本法の整備からデータの利活用とデジタル・ガバメント戦略の柱となったわけですが、その具体的な推進方針を定めたものが、2017年5月30日に高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)および官民データ活用推進戦略会議で決定した「デジタル・ガバメント推進方針」です。

こちらは、国民や事業者が行政サービスの生み だす価値を享受できるように、サービスのあり方に焦点を当て、デジタル社会に向けたデジタル・ガバメントの目指す方向性を示すものとして策定されました。そして、ここで示された方向性を、より具体的に実行計画としてまとめたものが「デジタル・ガバメント実行計画」です。

デジタル・ガバメント実行計画は、2018年1月に初版が策定された後、複数回の改定を経て、2020年12月25日に最新の計画(上図の内容)が策定され、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」をキーワードとして、デジタル庁の設置を見据えた「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を踏まえ、国・地方デジタル化指針を盛り込む等デジタル・ガバメントの取組を加速させることを示しました。

ここまで非常に駆け足ではありますが、デジタル庁設置までの我が国のデジタル関連施策の経緯についてまとめました。

デジタル庁のミッションとTODO

(画像出典:デジタル庁「デジタル庁の概要」より

  

以上のような経緯を経て、前述したとおり、2021年9月1日に「デジタル庁」が設立されました。組織としては上図のとおり、戦略・組織グループ、デジタル社会共通機能グループ、国民向けサービスグループ、省庁業務サービスグループの4グループから構成されており、2021年12月24日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に沿う形で、各政策分野への取り組みを加速させています。

以下が主な政策内容として記載されています。(2022年4月20日時点の情報

  • デジタル社会に必要な共通機能の整備・普及(マイナンバー制度、公金受取口座登録制度、GビズID、電子署名、電子委任状、ガバメントクラウド、ガバメントソリューションサービス、地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化、サイバーセキュリティ、データ戦略、DFFT(Data Free Flow with Trust:信頼性のある自由なデータ流通))
  • 国民目線のUI・UXの改善と国民向けサービスの実現(UI・UX/アクセシビリティ、マイナポータル、公共フロントサービス(ワンストップサービス等)、政府ウェブサイトの標準化・統一化、準公共分野のデジタル化、相互連携分野のデジタル化、新型コロナワクチン接種証明書アプリ、Visit Japan Webサービス、その他国や地方公共団体の手続等のデジタル化)
  • 国等の情報システムの整備及び管理(国等の情報システムの統括・監理、デジタル庁・各府省共同プロジェクトの推進)
  • その他(デジタル人材の育成・確保、シェアリングエコノミーの推進、調達における公平性・透明性の確保/新技術を活用するための調達改革、デジタルの日)

これらの政策による行政DXを進めるにあたって、デジタル改革基本方針で掲げられている「デジタル社会を形成するための10原則」は非常に大切な内容なので、ここに記載しておきます。各項目の詳細はこちらの内閣府資料をご覧ください。

  1. オープン・透明
  2. 公平・倫理
  3. 安全・安心
  4. 継続・安定・強靭
  5. 社会課題の解決
  6. 迅速・柔軟
  7. 包摂・多様性
  8. 浸透
  9. 新たな価値の創造
  10. 飛躍・国際貢献

なお、デジタル庁の取り組みについては、以下の記事でも紹介されているので、ぜひ併せてご覧ください。

▶︎ D(デジタル)よりもX(トランスフォーメーション)の方が大事。DX時代の人材育成談義

▶︎ VUCA時代の行政サービスデリバリーとは。デジタル庁統括官とグラファーCEOが考える「国DX」の論点

▶︎ CivicTech × GovTech。強みを活かし合う「官民連携」が公共DXを加速させる

他府省庁におけるDXの動き

当然ながら、国全体のDXを進めているのはデジタル庁だけではありません。ここでは、経済産業省と農林水産省によるDXの動きについても簡単にご紹介していきます。

経済産業省

経済産業省によるDX施策を司る部署は「METI DX」と呼ばれており、先ほどご覧いただいた「DXレポート」の他、「DX推進指標」の取りまとめも行っています。

DX推進指標とは、各企業が簡易な自己診断を行ってDXの取り組みを可視化していくためのツールであり、各項目について経営幹部や事業部門、DX部門、IT部門などが議論をしながら回答することを想定して作られているものです。

DX推進指標の内容。DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標(「DX推進の枠組み」(定性指標)、「DX推進の取組状況」(定量指標))と、DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標(「ITシステム構築の枠組み」(定性指標)、「ITシステム構築の取組状況」(定量指標))で構成されている

(画像出典:経済産業省「DX推進指標について」より

  

また2020年からは、2015年から過去5回実施してきた「攻めのIT経営銘柄」をDXに焦点を当てる形で「DX銘柄」に改め、上場企業の中から企業価値の向上につながるDXを推進するための仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業の選定をスタートさせています。

さらに別の切り口として、経済産業省では教育領域においても「未来の教室」実証事業を推進しており、新しい学びの社会システム実現に向けて、EdTech(後述)の活用等による新たな教育プログラムの開発等に向けた実証事業を、2018年7月から本格的にスタートしました。

この「未来の教室」実証事業における「教育dX」(未来の教室ではDXではなくdXと記載)の詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。

▶︎ 今と未来の日本に真に必要な「教育dX」を考える〜「未来の教室」フォーラム

また、同実証事業の目指す姿や具体的なプロジェクト内容については、以下の書籍でも詳しく語られているので、教育改革に興味がある方にはオススメです。

▷ 書籍『教育DXで「未来の教室」をつくろう―GIGAスクール構想で「学校」は生まれ変われるか』(浅野大介:学陽書房)

農林水産省

農林水産省では2021年3月25日に、農業・食関連産業の関係者が「農業DX」を進める際の羅針盤として、また取組全体を俯瞰する見取り図として活用するための「農業DX構想」を発表しました。

(画像出典:農林水産省「農業DX構想~「農業×デジタル」で食と農の未来を切り拓く~(概要)」より

  

この中でキーワードとなるのが「FaaS(Farming as a Service)」です。こちらは同省によると「データ駆動型の農業経営により消費者ニーズに的確に対応した価値を創造・提供する農業」のことを指すオリジナルの造語で、ドローンをはじめとするロボティクス技術やIoT技術などの先端テクノロジーを活用して高い生産効率の営農を実現することが、この中で語られています。

一つの事例として、同省では「農林水産省共通申請サービス(eMAFF)」と呼ばれる、申請や補助金・交付金の申請をオンラインで行うプラットフォームを運営しています。2021年12月時点で1,300を超える手続きのオンライン化が完了しており、窓口に行かなくとも自宅や職場のパソコンやスマートフォン、タブレットから申請ができるようになっています。

産業界DXの現状【9業界】

次に、産業界におけるDXの現状をご紹介します。すべての業界について詳細に紹介すると膨大なボリュームになってしまうので、ここでは業界(クロステック)と、それにまつわるトピックタグ、そして関連する記事やオススメの書籍について、それぞれご紹介していきます。

※タグの詳細については、解説記事が完成次第、関連記事としてリンクを貼り付けていく予定です

業界

トピックタグ&補足情報

金融業界DX

(FinTech)

【トピックタグ】

#組込型金融 #暗号資産 #APIエコノミー #CDBC #ESG投資 #暗号資産 #DeFi(分散型金融) #継続的顧客管理 #RegTech&SupTech #BNPL #ソーシャルレンディング #金融包摂

 

【参考書籍】

▷ 書籍『BANK4.0 未来の銀行』(ブレット・キング:東洋経済新報社)

 

【参考記事】

▶︎ あらゆるサービスへと「金融機能」が埋め込まれる日

▶︎ 社会のDXを加速させるために、「規制のサンドボックス制度」が果たす役割とは

▶︎メルペイ、Paidy、Kyash。各代表と考える、スタートアップが語るべき資金調達後のストーリー

食品業界/農業DX

(FoodTech & AgriTech)

【トピックタグ】

#クライメートテック #代替タンパク質 #パーソナライズドレシピ #垂直農法 #植物工場 #ゴーストキッチン #FarmtoTable #スマートキッチン #発酵

 

【参考書籍】

▷ 書籍『フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義』(田中宏隆、岡田亜希子、瀬川明秀:日経BP)

 

【参考記事】

▶︎ DXの鍵は「抽象化」。農業を起点に考える社会のあり方

▶︎ パン屋と販売店、そして食べる人の「三方よし」を実現するプラットフォームを目指す|パンフォーユー

教育業界DX

(EdTech)

【トピックタグ】

#個別最適学習 #GIGAスクール構想 #STEAM教育 #EdTechライブラリー #校務支援 #教育データ利活用ロードマップ #PBL #学習ログ

 

【参考書籍】

▷ 書籍『EdTechが変える教育の未来』(佐藤昌宏:インプレス)

 

【参考記事】

▶︎ イトーキ × 武蔵野大学、データを活用した教育DXへのアプローチ談義

▶︎ データの利活用が、教育DX〜生涯にわたるWell-beingの実現を支える

医療・ヘルスケア業界DX

(MedTech&HealthTech)

【トピックタグ】

#オンライン診療 #マイクロバイオーム #妊活 #不妊治療 #AI画像診断 #見守り #メンタルヘルスケア #医療記録のデジタル化 #フェムテック

 

【参考書籍】

▷ 書籍『デジタルヘルストレンド2022: 「医療4.0」時代に向けた111社の取り組み』(加藤 浩晃:メディカ出版)

 

【参考記事】

▶︎ 線虫の活用から内視鏡AIまで、がん患者を救う最先端ヘルステック

▶︎ コロナ禍以降、企業が考えるべき「デジタルメンタルヘルス」とは

▶︎ 私が看護をしている理由、それは「美しい」から|ファミワン

小売・物流業界DX

(RetailTech)

【トピックタグ】

#D2C #OMO #オムニチャネル #スーパーアプリ #3D計測サービス #AIカメラ #LEDビジョン #RaaS(Retail as a Service) #サプライチェーン最適化 #冷凍技術 #SIPスマート物流サービス

 

【参考書籍】

▷ 書籍『リテール・デジタルトランスフォーメーション D2C戦略が小売を変革する』(三嶋憲一郎、FABRIC TOKYO:インプレス)

▷ 書籍『テクノロジー×プラットフォームで実現する 物流DX革命』(北川 寛樹:日経BP)

 

【参考記事】

▶︎ 本質的なD2C実現には、評価制度を含む抜本的な「組織変革」が必要|FABRIC TOKYO

▶︎ 業界への深い理解なしには、DXはうまく進まない|パンフォーユー

人材業界のDX

(HRTech)

【トピックタグ】

#タレントマネジメント #ギグワーク #ダイレクトリクルーティング #健康経営 #D&I(ダイナーシティ・アンド・インクルージョン) #フルリモートワーク #ジョブ型雇用 #外国人雇用

 

【参考書籍】

▷ ムック『まるわかり! HRテクノロジー(日経ムック)』(日本経済新聞出版)

 

【参考記事】

▶︎ システムは手段。目的は、働くひとと組織が健康で活躍できる「仕組み」を創ること|iCARE

不動産業界DX

(PropTech)

【トピックタグ】

#不動産クラウドファンディング #コーリビング #オンラインエージェント #デジタルレンダー #VR内見 #スマートロック #リノベーションマーケットプレイス #不動産価格推計/査定サービス #スマートシティ

 

【参考書籍】

▷ 書籍『100兆円の巨大市場、激変 プロップテックの衝撃』(桜井 駿:日経BP)

製造業DX

(FactoryTech)

【トピックタグ】

#製造業サービス化 #エッジAI #スマートファクトリー #スマートマニュファクチャリング #技能承継 #異常検知AI #生産プロセス最適化 #ドローン #ジェネレーティブデザイン #プレファブリケーション

 

【参考書籍】

▷ 書籍『B2Bのサービス化戦略: 製造業のチャレンジ』(C.コワルコウスキー、W.ウラガ、戸谷 圭子、持丸 正明:東洋経済新報社)

建設業界DX

(ConTech)

【トピックタグ】

#BPO #リソースマネジメント #技能承継 #図面管理 #CO2削減 #デジタルツイン #ミラーワールド #建設ロボット #垂直統合

 

【参考書籍】

▷ 書籍『建設DX デジタルがもたらす建設産業のニューノーマル』(木村 駿:日経BP)

生活者にとってのDXの現状【4キーワード】

続いては、生活者にとってのDXの影響と現状について、4つのキーワード・トピックをもとに説明していきます。

シェアリングエコノミー

シェアリングエコノミーとは、一般社団法人シェアリングエコノミー協会によると、以下の定義がなされている概念です。

シェアリングエコノミーとは、インターネットを介して個人と個人・企業等の間でモノ・場所・技能などを売買・貸し借りする等の経済モデルです。

 

引用:一般社団法人シェアリングエコノミー協会トップページより 

  

シェアする対象としては、大きく分けて5つ、空間・スキル・移動・お金・モノが挙げられ、以下のようなサービスが国内で展開されています。

(画像出典:一般社団法人シェアリングエコノミー協会ホームページより

  

シェアリングエコノミーが普及していったことで、生活者はモノを購入をしないでも利用することができたり、遊休資産となっていた自身のスキルを積極的に活用して経済活動へと反映することができるようになりました。

このようなシェアリングエコノミー普及の背景には、様々な要因が考えられますが、先述したサービス・ドミナント・ロジックの台頭の他に、適切なタイミングで個人間のシェアを実現するようなマッチングのためのテクノロジーが進化したことも考えられるでしょう。

さらに、eKYCをはじめとする身元確認や当人認証の実施も、シェアリングエコノミーのようなCtoCマッチングを安心・安全に実現するには不可欠であることから、この領域の技術・サービスの進歩も大事な要因だと言えます。

なお、シェアリングエコノミーから考える未来像については、以下の記事でざっくばらんに同協会主催のセッションをレポートしているので、ぜひ併せてご覧ください。

▶︎ 【安宅和人 × 斎藤幸平】人類のあり方のトランスフォーメーションによせて

サブスクリプションサービス

サブスクリプションサービスとは、月額のような一定期間ごとに応じて料金を支払い、継続的にサービスを教授するようなビジネスモデルを指します。NetFlixやSpotify、Amazonプライムなどは、いずれもサブスクリプションサービスだと言えます。

このように説明すると、新聞の定期購読のようなものもサブスクリプションサービスの一つだと考えるでしょうが、書籍『サブスクリプションで売上の壁を超える方法』(西井 敏恭:翔泳社)によると、「定期的な利用があり、かつデータが活用されている商品・サービスのみ」が、サブスクリプションであると記載しています。

つまり、顧客に関するデータ(氏名や住所、メールアドレスの他、商品・サービスの使用履歴やそこから読み取れる嗜好情報、アンケート結果など)をもとに、顧客が「もっと使いたい」と思うような事業スキームを構築しているサービスのことを、サブスクリプションサービスと呼ぶことが、最も抵抗のない解釈だと言えます。

このサブスクリプションサービスが広く普及していったことで、人々はたとえば好きな映画のDVDを購入しなくても、毎月一定の金額で好きなだけ該当の映画を鑑賞することができるようになったわけです。上述したサービスを契約している方でしたら、その便利さは説明せずともお分かりいただけるでしょう。

こちらも先述したサービス・ドミナント・ロジックへの移行が生んだビジネスモデルの代表格と言って良いでしょう。

テレワーク/リモートワークとワーケーション・デュアルライフ

COVID-19のパンデミックをきっかけに、人々の働き方は大きく変わることになりました。主にオフィス勤務の従業員について、急速にテレワーク/リモートワークの文化が築かれていったのです。本記事の読者も、自宅から業務時間で読んでいるという方も多いのではないでしょうか。

また、テレワーク/リモートワークが普及するにつれて、ワーケーションやデュアルライフという働き方も、よりハードルが低くなったと言えます。働き方の自由度が高まったことで、従業員満足度が向上したという声を聞くことも増えてきました。

一方で、企業は従業員のメンタルヘルスとセキュリティに、これまで以上に注意する必要が出てきたことも確かです。

前者については、こまめなやりとりや心理的安全性の確保、適度な出社によるリアルなコミュニケーション機会の創出など、マネジメント層のフォローが欠かせません。

また後者のセキュリティについては、従来のオフィス空間への出社を前提にしていた境界型セキュリティ、通称「ペリメタモデル」の延長線上で考えるのではなく、ここ最近で注目されている次世代セキュリティモデル「ゼロトラスト」を前提に組むことも不可欠な検討事項だと言えます。

ゼロトラストとは

ゼロトラストとは、その名の通り「全トラフィックが信用できないものであることを前提に、社内システムの検査やログ取得等を行う」というネットワークセキュリティの概念です。明確なソリューションの定義があるものではなく、以下に記載する米NISTが掲げる原則に従って構築されるセキュリティ基盤の総称だと捉えていただければと思います。

  • すべてのデータソースとコンピューティングサービスはリソースと見なされる
  • ネットワークのロケーションに関係なくすべての通信は保護される
  • 個々のエンタープライズリソースへのアクセスはセッションごとに許可される
  • エンタープライズリソースへのアクセスは、要求者のIDやアプリケーション、要求している資産の監視可能な状態、そのほかの行動属性等を含む動的ポリシーによって決定される
  • エンタープライズは、所有もしくは関連する全てのデバイスが可能な限り最も安全な状態にあることを確認し、資産を監視して、可能な限り最も安全な状態にあることを確認する
  • すべてのリソース認証と承認は動的であり、アクセスが許可される前に厳密に適用される
  • 企業は、ネットワーク・インフラストラクチャと通信の現在状態について、可能な限り多くの情報を収集し、それを使用してセキュリティ体制を改善する

DX成功に向けた【4ポイント】

ここまで、各レイヤーのDXの現状や影響等について見ていきました。では、実際にDXを進めるためには、どんなことに気をつければ良いのでしょうか?

DX推進のコツには様々な流派や主張が存在するので、どれか確実なものに絞ってお伝えすることはできません。当然ながら会社や団体によって背景事情は異なるでしょうから、パッケージ化したプロセスがそのまま再現性高くDX成功に結びつくはずがありません。

よってここでは、よく「ポイントだ」と記載されるDX成功に向けた要因について、4つに絞ってお伝えします。

パーパスの策定

ここまでお読みになった方はお分かりのとおり、DXそのものは目的ではありません。何か会社として達成したいことがあって、そのために行うアクションがDX、問う順番になるはずです。

この会社として「達成したいこと」「社会に対して成したいこと」を最上位の概念として策定したものが、企業のブランドパーパス、もしくは単純にパーパスであると言えます。邦訳では「存在意義」となります。

このパーパスが不明瞭だと、あるべき会社の指針が定まらず、DXなんてブレブレのプロジェクトになってしまうでしょう。

自社のパーパスは何なのか。この問いに対して明確に答えることができないのであれば、DXプロジェクトを進める前に、まずはここを確認ないしは策定する必要があるでしょう。

なお、パーパスを起点とするビジネスのあり方を学ぶ際は、以下の書籍が大いに参考となるでしょう。

▷ 書籍『パーパス経営: 30年先の視点から現在を捉える』(名和 高司:東洋経済新報社)

トップダウンとボトムアップの両輪

DXを進める際はトップダウンかボトムアップか。この議論が巷でよくなされていますが、多くのケースでは、どちらも並行して進めることが大切だと言えそうです。

トップダウンで物事を進めるメリットとしては、意思決定をスピーディーかつ大胆に行い、また組織全体で一貫した動きをとることができる点にあります。一方でボトムアップで物事を進めるメリットとしては、現場レベルの課題感をダイレクトに反映しやすく、また従業員の「自分ごと化」やモチベーションの向上に大きく寄与することが期待されます。

そのように考えると、DXプロジェクトにおいては、この2つのアプローチをバランスをとりながら両舵で進めることが大切だと言えます。トップダウンだけでは現場の意向を汲み取れず、指示待ちの姿勢の従業員が増えることになるでしょう。またボトムアップだけだと、プロジェクトのスピード感が出ず、また大胆な意思決定なく小さなデジタイゼーションに留まるリスクがあります。

それぞれのメリットをうまくすくいながら進めることが、DX成功に向けたポイントの一つになります。なお、こちらについては、以下の楽天の事例が参考になりますので、ぜひボードメンバー(当時)と現場メンバーの両面の記事をご覧ください。

▶︎ その問いに"興奮"できるか。リーダーが身につけたい「本質を見抜く力」|楽天グループ 北川 拓也

▶︎ 楽天流 DXの進め方 前編「部門の壁を乗り越え、DXを推進する方法」

ユーザー中心設計

DX成功に向けたポイント3つ目は、「ユーザー中心設計(UCD:User-Centered Design)」です。これはデザイン領域の言葉で、商品・サービスを設計する際に、デザインの各段階でユーザーのニーズや要求等に注意を払って進めることを指します。

「そんなこと当たり前じゃないですか」と思うかもしれませんが、実際にプロセスとしてしっかりとできている組織は、まだまだ多くはないでしょう。ユーザー中心設計を実現するためには、商品・サービスの開発フェーズはもちろん、リリース後して実際に利用されている間も、常にエンドユーザーからのフィードバックを受けて改善を繰り返すというPJサイクルを回せるような体制が構築できている必要があります。

そこで重要となるのが、カスタマーサクセス部門やマーケティング部門、商品・サービス開発部門、セールス部門など、各部門による高度な連携とエンドユーザーデータのシームレスな共有だと言えます。そのために、MAやCRM、SFAといったシステムの活用が重要となるわけです。

一般社団法人行情報システム研究所が実施した「行政におけるデジタル・トランスフォーメーションの推進に関する調査研究」の成果物であるハンドブック『GDX:⾏政府における理念と実践』でも、「ユーザー中心」という表現で解説を進めています。こちらの冊子は行政DXにテーマを絞っての内容となっていますが、本質的にはどのレイヤーであっても変わらない、重要な視点だと言えます。

サステナビリティ・トランスフォーメーションを前提にした推進

サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)とは

(画像出典:経済産業省「「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間取りまとめ概要」p3より

  

経済産業省では2019年から2020年にかけて、「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」を催し、2020年8月に発表された中間とりまとめにおいて、「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」という言葉を発表しました。

サステナビリティ・トランスフォーメーションとは、上図にあるとおり、企業のサステナビリティ(稼ぐ力)と社会のサステナビリティ(社会課題・将来マーケット)を同期化し、その内容について企業と投資家が中長期の目線で対話を続けることで、ビジネスとしてのレジリエンスを強化するという考え方です。

昨今では、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の要素を考慮した「ESG投資」が日本においてもスタンダードな潮流になってきており、この3要素を十分に配慮できていないビジネスにお金が集まりにくい環境の整備が、どんどんと進んでいます。

つまり、いくらDXを進めるとなっても、サステナビリティのあるスキームになっていなければ、結果としてお金が集まらず、競争力も減退することになります。

DXを進める際は、サステナビリティ・トランスフォーメーションとの両輪で進めるべき時代に突入したと言えるでしょう。

なお、サステナビリティを前提にした循環型経済、いわゆるサーキュラー・エコノミーについては、以下のインタビュー記事で詳しく解説されているので、ぜひ併せてご覧ください。

▶︎ 循環もDXも「手段」でしかない。本質的な「目的」をしっかりと見極めよ|中石和良

最も大切なことは「熱量」と「自分ごと化」

ここまでDXを進める際のポイントや具体的な技術、各レイヤーの動向等について見ていきましたが、DXを進める上で最も大切なことは、各推進メンバーが確固とした「熱量」をもち、またDXの推進を「自分ごと」として捉えることです。

これまでxDXでインタビューしてきたDX推進メンバーの方は、いずれも強烈な「自分ごと」の意識があり、また熱量を持って取り組んでいました。

以下の記事で、JR九州の会長である唐池恒二氏は、どんな逆境もはねのけるために必要な「リーダーの資質」について、以下の10か条を掲げていました。

▶︎ 逆境をバネにして「夢」をみよ!DX時代にこそ響くJR九州会長の言葉

  • 第一条:逃げない
  • 第二条:逆境をバネにする
  • 第三条:夢をみる
  • 第四条:本質に気づく
  • 第五条:まず行動する
  • 第六条:勉強する
  • 第七条:伝える
  • 第八条:思いやる
  • 第九条:決断する
  • 第十条:真摯さ

いずれも、強烈な自分ごと化と熱量・パッションがあるからこそ、逆境があってもむしろそれを力に変えて、目標に向かって前進できるのだと思います。

ぜひ、本記事を読んでDX推進へのテンションを上げていただき、自社のDXプロジェクトの旗手として活躍していただければと思います。

文:長岡武司

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