X2E(X to Earn)とは?生活するだけで稼げる時代がやってくるのか、それともただのブームなのか

X2E(X to Earn)とは?生活するだけで稼げる時代がやってくるのか、それともただのブームなのか

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ここ最近、「Web3」と呼ばれるインターネットパラダイムが急速に注目されるようになっています。以下の解説記事でも言及しているとおり、Web3はブロックチェーンを基盤技術とするもので、非中央集権・分散、個人へのエンパワーメント、バーチャルファーストという3軸をキーワードとするWebのあり方を指す言葉となっています。

▶︎Web3(Web3.0)とは?自律分散型社会のあり方から、ブロックチェーン・メタバース・NFTの関係まで詳細解説

そんなWeb3界隈で現在ブームになっている考え方に、「X2E」もしくは「X to Earn」があります。Web3関連のカンファレンスやセミナーに参加すると、必ずこの言葉が登場してくるので、理解しないことにはディスカッションについていけなくなるでしょう。

本記事では、Web3において重要な概念である「X2E(X to Earn)」についてキャッチアップします。

X2E(X to Earn)とは何なのか?

X to Earnとは「Xを行うことで稼ぐ」という意味を表す言葉です。Xには何かしらの“行為に関わる名詞” が入り、それを行うことで暗号資産となるトークンを得ることができるという概念になります。

たとえば有名なX to Earnプロジェクトとしては、後述するMove to Earn(動くことで稼ぐ)というジャンルにあたるアプリ「STEPN(読み方:ステップン)」が挙げられます。

STEPNでは、アプリ内で「NFTのバーチャルスニーカー」を購入してから物理世界でランニングやウォーキングをすることで、Green Satoshi Token(GST)と呼ばれるユーテリティートークンを得ることができます。このGSTは日本円に換金することができるので、まさに「動くことで稼ぐ」ことができるようになっているというわけです。

STEPNから考える X to Earnの仕組み

STEPNを始めるには、最初にいくらかの「原資」をSTEPNに支払う必要があります。と言っても、クレジットカードのようなもので決済するのではなく、暗号資産を入金する必要があります。具体的な手順は詳しい記事が各所に出回っているので、興味のある方は以下のような記事を参照しながら進めてください。

(参考記事)https://www.cmsite.co.jp/money/stepn/

※STEPNは2022年4月18日のアップデートで、従来のソラナチェーン(SOL)の他にBNBチェーンの対応も開始しています。古い記事だとSOLにしか対応していないと記載されているので、注意してください。

STEPNで購入できるスニーカーの種類(画像:STEPN公式サイト トップページ

ここで支払われた入会金や、アプリ内におけるユーザーからのランニングコスト(スニーカーのレベルアップや修理)によって支払われた費用が運営原資となって、STEPNはユーザーの運動量等に併せてトークンを再分配するという仕組みになっています。

以下の記事でG.Gさんも記載しているとおり、新規加入者が増えれば、原資が流入し続けますし、報酬としてもらえる暗号資産の価格が取引市場で上昇すれば、日本円に換算した際の儲けがより大きくなります。

▶︎【超簡単説明】Web3がよく分からないというあなたへ

STEPNはオーストラリアのFind Satoshi Lab社によって運営されており、同社のホワイトペーパーではSTEPNのことを「Web3ライフスタイルアプリ」と表現しています。そこでは、人々を行動変容によって健康的なライフスタイルへと導き、気候変動リスクに鑑みたエコなWeb3プラットフォームとして方向性が打ち出されているのです。

一時期はX2Eの申し子的な形で評価がなされていたので、時価総額が1,000億円を突破し、ユーザーの原資回収スピードも跳ね上がって、それこそ「STAPNで歩けば短期間で儲けが出る」という状態が実現していました。一方で現在(2022年6月22日)は、新規加入者が伸び悩んだり市場評価のミニバブルが弾けたりしたことを要因に価格が下降トレンドとなっており、時価総額も600億円程度となっています。

一方で稼ぎとは別の観点で、STEPNをきっかけにジョギングやウォーキングを習慣として続けているという声もTwitterなどであがっており、ソーシャルアクションに向けた行動変容のトリガーとしての価値は間違いなくあると言っても良いでしょう。

復習:NFTとは

ここで、NFTについて改めて復習しておきます。NFT(Non-Fungible Token)とは、日本語で「非代替性トークン」と訳される概念です。

非代替性とは何かを考える上で、たとえばお財布に入っている現金・千円札を想像してください。その千円札を「千円分の価値のある紙幣」という視点で捉えると、別の千円札と交換することが可能です。

一方で、「特定の記番号(シリアル番号)が印字されている紙幣」という視点で捉えると、該当の紙幣は唯一無二のものとなり、全く同じものと交換するという概念はなくなる。おおよそのイメージとしては、前者を「代替性あり」、後者を「代替性なし(非代替性)」と捉えていただければと思います。

NFTとは、ブロックチェーン技術を活用して「コンテンツの非代替性」を担保する仕組みのことを指します。これまでパソコン上にあるデジタルデータは簡単にコピペして量産することが可能だったわけですが、「このデータは、◯年◯月◯日に発行された識別番号XXXXXXXXのデータである」(簡易例)というメタデータを付与することで、デジタル空間においても先ほどの紙幣の例でみたような唯一無二性が与えられるということです。

ちなみによく勘違いされることですが、ビットコインやイーサ(イーサリアム)のような暗号資産は、個別の識別情報を考慮しない形で資産価値あるデジタルデータとして流通しているので(同じ1ビットコインでも、そのアドレスやメタデータ等によって価値が変わる、というものではないですよね)、NFTではなく、代替性トークン(Fungible Token)であると言えます。

このNFTには、以下のような特徴があります。特に3番目のプログラマビリティは、NFTの拡張性という観点で非常に重要な概念となります。

  • 唯一性
  • 取引可能性
  • プログラマビリティ

詳細は以下の記事に記載しているので、こちらも併せてご覧ください。

▶︎Web3(Web3.0)とは?自律分散型社会のあり方から、ブロックチェーン・メタバース・NFTの関係まで詳細解説

ここ数ヶ月で注目度が高まっているX to Earnプロジェクトでは、このNFTの仕組みをうまく活用したSTEPNのようなアプリがたくさんあります。

様々なX to Earn

それでは具体的なX to Earnアプリを見ていきましょう。

Play to Earn(ゲームで遊んで稼ぐ)

元祖X to EarnといえばP2E(Play to Earn)です。ここでいうPlayとは、具体的にはゲームのことを指します。広義な意味においては、たとえば後述するMove to EarnやSleep to Earnも全てアプリをPlayすることで稼ぐものとなっているので全てP2Eになるのですが、ここでは狭義な意味として、ゲームをプレイすることで稼ぐものをご紹介します。

Play to Earn型のゲームでは、以下3通りいずれかの方法でユーザーが稼ぐことができる仕組みになっています。

  • ユーティリティトークン獲得
  • NFTアイテムの取得と販売

まず、Play to Earn型ゲームでは、ユーザーがプレイして各種条件をクリアするごとにユーティリティトークンを報酬として取得することができるようになっています。条件内容はゲームタイトルによってまちまちですが、たとえばゲーム内のクエストをクリアしたり、運営サイドが企画する各種大会でランクインするなどが考えられるでしょう。先述したSTEPNと同様に、ゲーム内トークンを日本円に換金することができるので、ゲームで成果を出せば出すほどに稼ぐことが可能となっています。

また、多くのPlay to Earn型ゲームでは、ゲーム内アイテムがNFT化されており、アイテムの価値が保証されています(以下、このようなゲームのことをNFTゲームと表現)。非NFTゲームではアイテムの発行数を運営会社が独断で決めることができるので、レアなアイテムだとうたわれていても後から追加発行することができるのですが、NFTゲームでは運営会社であってもアイテム発行数を変動させることはできないので、「レアなものはレア」であり、アイテムの価値が保証されることになります。そのような保証されたNFTアイテムを、ゲーム内外で売買することができるので、そのような稼ぎ方もできるというわけです。

現にこちらの記事では、Play to Earnで家計を支えている家族の話が取材されており、一種の金融包摂として機能していることがわかります。

https://www.coindeskjapan.com/77546/

ちなみに、Play to Earnのようにゲームと金融がつながる概念を、GameFi(読み方:ゲームファイ)と表現します。

以下の書籍では、このPlay to Earn/GameFiの概念も含めたブロックチェーンゲームのイロハが解説されているので、興味のある方にはオススメです。

『ブロックチェーンゲームの始め方・遊び方・稼ぎ方』(廃猫 @hainekolab 著)。「マイクリプトヒーローズ」や「クリプトスペルズ」なのか国内タイトルから、「THE SANDBOX」や「Axie Infinity」なのか海外タイトルまで紹介されています

Move to Earn(動いて稼ぐ)

Move To Earnは先述の通り、走ったり歩いたり、もしくは運動したりすることで稼ぐ仕組みのアプリです。X to Earnブームが到来するきっかけとなったもので、STEPNの他にも以下のような様々なプロジェクトが国内外で展開されています。Run to Earn、 Walk to Earn、Ride to Earnなど、多様なMove to Earnがあることがお分かりいただけると思います。

※正式ローンチ前のものも含まれます

Aglet

https://aglet.app/

Stepwatch

https://stepwatch.io/

ステラウォーク

https://twitter.com/Stellar_Walk_JP

Walken

https://walken.io/

iStep

https://istep.io/

Sweatcoin

https://sweatco.in/

THE SNKRZ

https://www.thesnkrz.com/

Dustland Runner

https://www.thedustland.com/

CALO RUN

https://calo.run/

Moon Step

https://moonstep.app/

RunBlox

https://runblox.io/

Iotex Monster Go

https://www.iotexmonstergo.com/index.html

Genopets

https://www.genopets.me/

WIRTUAL

https://wirtual.co/

dotmoves

https://www.dotmoovs.com/

Fitmint

https://fitmint.io/

Dustland Runner

https://www.thedustland.com/

Step App

https://step.app/

MoveZ

https://www.movez.me/

PyramiDao

https://pyramidao.finance/

Sleep to Earn(眠って稼ぐ)

動くだけではなく、眠っている間も稼げるというコンセプトのX to Earnも誕生しています。たとえば「Sleep Future」というプロジェクトでは、アプリを起動させながら眠ることで睡眠状態をセンシングし、ユーザーの睡眠の質に応じて報酬となるトークンを配分するといいます(こちらはまだリリースされておらず、ホワイトペーパー上でのコンセプト情報となります)。

まだ新しい概念ではありますが、同様のSleep to Earnコンセプトのプロジェクトは少しずつ増えて来ている印象です。

※正式ローンチ前のものも含まれます

#SLEPN

https://slepn.com/

Sleep Ecosystem

https://sleepecosystem.io/

Sleepagotchi

https://sleepagotchi.com/

The Snuggle Squad

https://snugglesquad.io/

SleeFi

https://sleefi.com/jp/

Learn to Earn(学んで稼ぐ)

日々の学びを通じて稼ぐという、一石二鳥となるコンセプトのX to Earnもあります。

稼ぐというものではありませんが、学ぶほどにトークンを獲得できるスキームとしては、株式会社techtecが運営する「PoL(ポル)」が有名でしょう。仮想通貨・ブロックチェーンを学習すればするほど「PoLトークン」がもらえるというスキームになっているものです。

このPoLを提供する同社では、2022年3月29日に、ステーブルコイン「Celo Dollar」や「Celo Euro」の開発を手がける金融包摂プロジェクト「Celo」(運営:Celo Foundation)より資金調達を実施し、新たなるLearn to Earnプロダクトの開発を進めるとしています。

この他にも、英語を学びながら稼ぐLet Me Speakなど、学びへの行動変容を進めるための仕組みが着々と増えている印象です。

その他のX to Earn

この他にも、様々なX to Earnプロジェクトが世界中で勃興しています。Twitterで「x to earn」と検索するだけでも、以下のような領域のプロジェクトが次々と出てきます。

  • Drive to earn(運転して稼ぐ)
  • Eat to Earn(食べて稼ぐ)
  • Read to Earn(本を読んで稼ぐ)
  • Mindfulness to Earn(瞑想して稼ぐ)
  • Write to earn(文章を書いて稼ぐ)
  • Listen to Earn(音楽を聴いて稼ぐ)
  • Sing to Earn(歌って稼ぐ)
  • Watch to Earn(映像を見て稼ぐ)

このように見てみると、私たちの生活は全て、何かしらのX to Earnプロジェクトに当てはめることができる未来が来るのかもしれないとすら感じます。

X to Earnにまつわる議論

いろいろなX to Earnプロジェクトのホワイトペーパーを眺めていると、多くのプロジェクトでは社会課題の解決に貢献するためのWeb3ベースのスキームが語られています。

一方で、X to Earnのビジネスモデルは結局のところはポンジスキーム(出資者から集めた資金を運用せず騙し取る詐欺の手法)なのではないかという意見が出てきています。これに対して、たとえばSTEPNでは以下の公式記事を発表し、ポンジ的になるX to Earnプロジェクトの条件を例示しています。

公式記事:https://coinmarketcap.com/gravity/articles/26001

  • お粗末な設計のトークンエコノミクス
  • "エンドゲーム"に到達するのが簡単すぎる
  • ゲームが面白くないのに、異常な高収益を宣伝している。
  • 稼ぎやすさとポンジ性のバランス

こちらの記事は、STEPNプレイヤーの黒川氏(@kuro_at_web2)によって日本語訳されているので、英語が苦手な方はぜひこちらをご覧ください(上記4点は黒川氏の翻訳をそのまま引用しています)

[翻訳:STEPN公式記事]全てのP2Eゲームは、"ポンジ"なのだろうか?

また「行動変容を起こす」という部分についても、「お金をインセンティブにすると、トークン価格が下落した際にはモチベーションが低下し、サステナブルな行動変容には結局結びつかないのではないか」という意見も散見されます。実際に、この記事を書いている最中に、上でご紹介したLearn to Earnプロジェクト「Let Me Speak」のトークン・LSTAR(Learning Star)の価格がガクッと下がり、Twitterでは悲鳴と共に英語学習へのモチベーション低下の声が見受けられました。

2022年6月22日時点のLSTARチャート(画像:CoinMarketCap

さらに行動変容が心からの自発的な行為なのか、そうではなく原資を回収するための無理やりなアクションなのかも、本人すら分かっていないケースとなっていることも想定されます。

以上のポイントから、極端な話として「X to Earn時代では日常生活を過ごすだけで稼げる」という理想がイメージされる一方で、まだまだサステナブルな仕組みだとは言えないのが事実だと感じます。

とはいえ、NFTのインパクトは、これまで価値のつかなかったモノ・コトに対して、価値を付与することができるという点にあります。実際に体験してみないことにはUXも含めた評価は下せないでしょうから、まずは気になったX to Earnを実際に始めてみてはいかがでしょうか。

文:長岡 武司

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