Coincheck・bitbank・bitFlyer・Coinbase。暗号資産取引所から見たWeb3談義 〜Astar Week参加レポート

Coincheck・bitbank・bitFlyer・Coinbase。暗号資産取引所から見たWeb3談義 〜Astar Week参加レポート

目次

日本発のパブリックブロックチェーンとして知られる「Astar Network」。スマートコントラクトプラットフォームとして、マルチチェーンにおける相互運用性の問題に取り組んでおり、Web3時代の基幹インフラを目指しているプロジェクトだ。

その一方で、空前の盛り上がりを見せるWeb3は、まだまだ入り口に立ったばかりとも言える。目まぐるしく変わっていくWeb3のトレンドはもとより、技術的な課題や制度上の課題など乗り越えていく必要のある壁がいくつも存在し、Web3に関わる各プレイヤーはその解決策を模索しているような状況だ。

去る2022年8月29日には、 Astar Network主催で「Web3と暗号資産の未来 Astar x 暗号資産取引所」をテーマにしたイベントが催された。国内外を代表する暗号資産取引所・販売所を運営するスピーカーらを招き、暗号資産の未来と展望についてのクロストークが行われた。本記事では、その様子をレポートする。

  • 大塚 雄介(コインチェック株式会社 共同創業者)
  • 桑原 惇(ビットバンク株式会社 事業開発部 部長)
  • 金光 碧(株式会社bitFlyer 新規事業開発部 部長)
  • 金 海寛(Coinbase株式会社 マーケティング・ビジネスオペレーション部長)
  • 渡辺 創太(Stake Technologies Pte Ltd)※モデレーター

※本記事では「暗号資産」と「仮想通貨」という表現が登場しますが、いずれも指す対象は同じで、各登壇者の発言に準じた表現としております。

グローバルで勝ちにいくAstar Networkの戦略

冒頭では、Astar Networkを運営するStake Technologies 代表取締役の渡辺 創太氏が「Astar Networkのこれからと日本がいまWeb3でやるべきこと」と題したプレゼンテーションを行った。

2019年に同社を創業して「Astar Network」と「Shiden Network」という2つの日本発パブリックブロックチェーンプロジェクトをスタートさせた渡辺氏が目下目指しているのは、ブロックチェーンにおけるインターオペラビリティ問題の解決である。前者は「Polkadot(ポルカドット)」に、後者は「Kusama(クサマ)」に接続しての解決を試みており、創業3年目となる2022年1月17日にAstar Nwtworkは、テスト環境での展開を経てメインネット(いわゆる本番環境)をローンチ。Polkadot上でのプレゼンスを高めている状況だ。最終的にはDAO化を目指し、パブリックブロックチェーンとしてのさらなる認知度向上を目指しているという。

そんななか、渡辺氏はWeb3の概要を次のように説明する。

「Web3.0の本流と言われているのが、2014年にEthereumの共同創設者であるGavin Wood(ギャビン・ウッド)が『プライバシーが守られた“Secure Social Operating System”』と定義したことです。そして、米国大手ベンチャーキャピタルのAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)がWeb3特化の投資部門『a16z crypto』を組成し、Web3をWeb 2.0の対比と捉えて『ユーザーと開発者によって組織化された未来のインターネット』と定義し、ちまたで言われるようなWeb3やWeb 3.0、web3という形でより大衆化させたのです。ただ、現在バズワードとして捉えられているWeb3は本流とは方向性が異なり、ビジネスを考える上ではギャビン・ウッド氏が提唱した本流を理解しておくことが、初手としてかなり重要になります」(渡辺氏)

AstarNetworkも、いわば「早い、安い」で勝機を見出すSolanaやAvalancheといったパブリックチェーンをベンチマークするのではなく、トラストレスなチェーンの互換性が重要になってくる未来を見据え、プロジェクトを推進しているという。

「国内勢のプレイヤーは、『わかりやすさ』や『入りやすさ』という観点からアプリケーションレイヤーに寄っている状況ですが、世界的にはプロトコルレイヤーに資本が多く集まっています。こうした潮流を読み解き、グローバルで勝ちにいくには、プロトコルレイヤーでの付加価値を高めていく方が良いわけです」(渡辺氏)

そんなAstar Networkの特徴として、渡辺氏は3つの要点を掲げる。

「まず、既存のWeb 2.0でサービスやプロダクトの開発経験があるデベロッパーが、容易にオンボーディングできるよう、Ethereum(イーサリアム)互換ではなくWASM(WebAssembly)互換のスマートコントラクトをサポートしています。次いで、“Build to Earn”というコンセプトを開発し、デペロッパーの開発における貢献度に応じたベーシックインカムを配布する『dApps Staking』の仕組みを設けているのも大きな特徴です。さらに、Polkadotに接続している他のチェーンと、トラストレスブリッジでトークンの送受信ができ、Ethereumなどの他のチェーンともやりとりが可能になっています」

今後目指すのは「“PolkadotならAstar”と言われるようなプレゼンスを獲得すること」だと言う渡辺氏。直近では、Astar経済圏のさらなる発展を目指す「Astar Japan Lab」を設立し、Astar経済圏の創出や参加企業内での情報共有、シナジーを生み出していくという。

「Astar Network上にはさまざまなdAppsが生まれており、現在までに2,800万以上のトランザクションが発生しています。その一方で、まだまだ成功した成功したプロジェクトは少ないのも現状です。これからもトライアル・アンド・エラーを繰り返しながら、Polkadotでナンバーワンを取れるように尽力したいです」(渡辺氏)

加えて、Astar Networkが注力しているのがエンタープライズ案件だ。2022年7月には博報堂と連携し、企業のWeb3市場への参入支援を開始した。今年中には、あと2〜3つほどのプロジェクトを発表できる見込みが立っているとのことだ。日本発のパブリックブロックチェーンとして、さらなる期待が高まっていると言えるのではないだろうか。

各登壇者が考えるベアマーケット(弱気相場)の乗り越え方

続いては「Web3と暗号資産の未来」をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。

最初のトピックは「仮想通貨のベアマーケット(弱気相場)」について。乱高下が激しく、価格変動の波が荒々しい仮想通貨市場では、いわゆる“冬の時代”の再来により先行きが見通せない市況が続いているのだが、これはある意味で、この市場の大きな特徴とも言えるだろう。

こうした市場環境を、各スピーカーはどのように捉えているのだろうか。コインチェック株式会社 共同創業者の大塚 雄介氏は、ベアマーケットの乗り越え方について「スタートアップは出費を抑えて売り上げを立てることが最も重要」とし、こう意見を述べる。

「特にクリプトは相場に依存してしまうところがあるので、儲けが出ているときは浮かれてしまうこともあるかもしれません。そのような調子が良いときでも、地に足つけて、粛々とビジネスを進めていくことが大事になります。今みたいに冬の時代と呼ばれるときこそ、今日のようなイベントをやって情報交換したりお互い励ましあったりすることも必要になると思っています」(大塚氏)

また、株式会社bitFlyerで新規事業開発部 部長を務める金光 碧氏は、「冬の時代だからこそ、次なる浮上に向けて野心を抱いているプレイヤーは着々と仕込んでいる」と語る。

「DeFiやNFTが台頭してきた時にこそ、事前に仕込んでいれば一気にドライブできるチャンスになるわけです。冬の時代であっても、やれることはしっかりと行っておくことが大切だと考えています」(金光氏)

さらに、ビットバンク株式会社の事業開発部部長である桑原 惇氏は、「マーケットの影響を受けるのは、半ば仕方ないことだと正直思っている」とコメントする。

「弊社は2014年に創業し、当初からBitcoinを中心した技術にフォーカスして取り組んできました。そういったなかで、中長期的なトレンドを見ると、国内での暗号資産の口座数は600万口座ほどで、人口のおよそ5%〜6%くらいにしか満たない状況です。インターネット黎明期の頃を例に出すと、10%のユーザーがインターネットを使い出したのが1997年ごろと言われています。そういった意味で考えても、今のようなインターネット世界が普及し、GAFAMが世界を席巻する未来は予想できなかったと思うんです。なので、今後のWeb3の将来を占うのは難しいことであり、だからこそ月並みかもしれませんが、しっかりと準備をしていくのが重要になってくると感じています」(桑原氏)

一方でCoinbase株式会社 マーケティング・ビジネスオペレーション部長の金 海寛氏は、「個人的に、日本はまだ冬の到来はしておらず、秋の時期だと思っている」と述べ、国内と海外のベアマーケットに対する考え方の違いについて話した。

「海外だと“Crypto Is Dead(クリプトは死んだ)”と言われることもありますが、こと日本においてはWeb3が国家の成長戦略に組み込まれたりと、将来性に期待するような流れがあるため、そのあたりの温度感は海外と比べて違うなと感じています。弊社としては、もちろん市場の厳しさからレイオフを発表したりとダウントレンドの部分もありますが、うちのCEOであるブライアン(Brian Armstrong)は『ベアマーケットがようやく到来した』と逆に好機に捉えており、機能の新規開発やブラッシュアップにコミットできる時期だと考えています」(金氏)

Web3のマスアダプション実現に必要なことは?

続いてのテーマは「Web3をどうマスアダプション(大衆へ適応)させていくか」について。マスアダプションの実現に対し、多くの意見や見解が示されるなか、暗号資産取引所を運営する各スピーカーはどのように考えているのだろうか。

Coinbaseの金氏は「個人的に思っているのは、まだユーザー側がセルフカストディ型のウォレットを使いたがらない傾向がある」とし、持論をこのように示した。

「USのCoinbaseでは、KYC(本人確認)をパスしたユーザーがすでに1億人くらいおりまして、そこにDeFiやNFTをつなぎこむリテールアプリを提供しています。『Web3=分散技術』というのはよく言われることですが、あくまで分散しているのは一部分だけであると思っていて、DeFiやNFTをもっと使いやすくして、誰でも活用できるようにするのが、マスアダプションに向けては必要になってくると考えています」(金氏)

これに対してモデレーターの渡辺氏も「金さんの意見は非常に重要なことだと思っている」とコメントする。

「SNS等でもマスアダプションについて、喧々諤々と議論がなされていますが、Web3はWeb 2.0をリプレイスするものではないと思っています。たとえばPolygonのファウンダーが『Web3は選択肢を増やすことが重要だ』と言っているように、既存のウォレットやトークンに対して懐疑的に思っているのであれば、自分自身でビルドして新しいものを作っていける。こういう世界観が今後もっと主流になるのではと感じました」(渡辺氏)

さらにbitFlyerの金光氏は「GameFiがすごく鍵になるのでは」と予想しているという。

「これまで暗号資産の領域といえば、投機目的で参入してくる方が多かったわけですが、GameFiやNFTは“稼ぐ目的ではない層”でもリーチしやすくなったと思っています。STEPNはその最たる例で、『プレイしていて楽しい』や『コミュニティの人と繋がれる』などのニーズから、Web3に興味を持ち始める人も増えている印象です。ただ、私自身も初めてMetaMaskをダウンロードして使いこなそうと思ったときに苦労してしまい、これは一般層の人も使いこなすのは難しいだろうと。やはりウォレットが、マスアダプションしていくためのキーポイントになってくると思っています(金光氏)

これに続けて、ビットバンクの桑原氏も「金光さんが仰るようなGameFiの領域はすごく面白いと思っている」と述べ、このように意見を話す。

「クリプトはインターネットの世界の中で、何かしらの価値をいろんな人が保有することができたり、それを売買したりできるのが面白いと感じています。特にGameFiの領域ではビルダーとしてもデザイナーとしても関わっていけますし、ゲームをプレイし続けることで稼ぐことにもつながる。そういう意味では、ひとつのユースケースになっていて今後の可能性を秘めている領域だと思っています。
一方で課題として、機関投資家や法人の方々がクリプトに興味はあっても使えていない状況があります。たとえば、経理担当者が事業部の方にMetaMaskを使いたいと言われても、使い方や監査の観点で留意すべきことなどがなかなかイメージできないかもしれません。弊社は今年5月に三井住友トラストさんと連携し、暗号資産カストディ事業を立ち上げましたが、現状の課題を一つひとつクリアしていくことが、マスアダプション実現に向けて大事なことだと考えています」(桑原氏)

さらにコインチェックの大塚氏は、「マスアダプションについては3つの観点を持っている」と述べる。

「1つは社会のルールとしての会計や税務を変えていく必要があるということ。要はルールメイキングしている人たちに、クリプトを理解してもらい、社会のルールに反映させていく動きが求められるわけです。
2つ目は先ほどカストディの話も出ていましたが、Web3はアーリーアダプターにとっては盛り上がるものですが、ほとんどの人がチェーンやクリプトに一切関係ないことですし、実態が掴めないものだと思うんです。わかりやすくお伝えすると、いかにWeb 2.0のUI・UXと同じような形でWeb3の技術が使え、Web3ならではの体験を享受させられるかが重要だということです。
そして3つ目は、こういった課題や問題を圧倒的に凌駕するようなアプリケーションレイヤーのプロダクトが出てくることです。これが実現できれば、まさにゲームチェンジャーとなって、マスアダプションのトリガーになると考えています」(大塚氏)

2025年の市場環境と暗号資産取引所の役割

セッションの最後に議論されたのが「2025年の市場環境と暗号資産取引所の役割」について。今から2〜3年後のクリプト界隈、ひいてはWeb3全体の市場感について、どのような見通しを登壇者は抱いているのか。

コインチェックの大塚氏は「DeFiやNFTの勃興もそうだが、突然降って湧いたムーブメントゆえに全く想像がつかない」と述べる。

「アプリケーション側で何が来るのか、に関しては全く予想できないのが正直なところです。もちろん、GameFiの領域で今よりさらにブラッシュアップされたものが流行りそうというようなイメージも抱けますが、やはりtoC側は読めないと言えます。ただ、それでもやれることは沢山あると思うので、粛々と仕込んでいくことが大事なのではないでしょうか。取引所の役割としても、変わりゆくムーブメントの中で求められる活動を後押しするような立場として関われるのではと考えています」(大塚氏)

ビットバンクの桑原氏は「今から2〜3年前を振り返ってみても、今のようなGameFiやNFTの盛り上がりを見通せた人は少なかった」と、大塚氏と同様に先の読めない未来について持論を展開する。

「もし、未来を予測しうる捉え方を考えるとすると、たとえばGameFiならDeFiやNFTの掛け合わせから生まれたものと解釈することができます。翻って、今流行っているものをどのように掛け合わせしていけば、次に来るアプリケーションレイヤーで攻めていけるかを見通す一つの指標になるのではとも思っています。おそらく2〜3年後は、私たちの想像もしないものが出てくると考えていますが、多くの人が取引に迷わないようなUXを作り、ユーザーをサポートしていく役目が取引所の担うべきことだと感じています」(桑原氏)

そんななか、bitFlyerの金光氏は先に寄せた意見とつなげる形で「2〜3年後はGameFiが今より盛り上がっているのでは」と予測を立てる。

「Axie Infinity(アクシーインフィニティ)やSTEPNでの課題を乗り越えようと水面下で動いているプロジェクトがたくさんあると思っていて、ちょっとずつ改善しながら、2~3年後にはすごくワークするようなゲームが登場するのではと期待を寄せています。他方、取引所としてはAML/CFT(マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策)をしっかりと守りきるフィアット・ゲートウェイのような役割はどうしてもやらなくてはならないことです。そこをやりきるのが、取引所としての価値にもつながってくるのではないでしょうか」(金光氏)

最後に、Coinbaseの金氏は「Web 2.0・Web3、それぞれいいところがある手前、Web3ならではの独自のUXを見出すことが肝になる」と語り、セッションを締めくくった。

「『これって、今までなぜできなかったんだろう』と考え、そのアイデアを具現化できるかが、面白いものが生まれるかどうかの分岐点になるでしょう。GameFiもそうですが、広範囲に考えると2~3年後にはメタバースも面白くなるのではと考えています。クリプトだけでなく、AIやVR/AR/MRなどさまざまなテクノロジーがマージしてくると感じていて、これらの技術をもとにして何か面白い体験を作ることができれば、新たな布石を生み出すきっかけになるのではないでしょうか」(金氏)

取材/文/撮影:古田島大介
編集:長岡 武司

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