テクノロジーで家族を幸せにする。AgeTechとBabyTechには「DXの本質」が詰まっている

テクノロジーで家族を幸せにする。AgeTechとBabyTechには「DXの本質」が詰まっている

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日本社会の大きな課題となっている「少子高齢化」。抜本的な策が見出せない中、テクノロジーを活用した解決策が今後台頭するかもしれない。

2021年6月3日(木)に開催された株式会社ファーストアセント主催のオンラインセミナー「【高齢者DX×子育てDX】未来の生活を考えるプレーヤーによる対談」は、その期待を抱かせるのに十分な内容だった。

登壇者は、高齢者DXを推進するAgeTech(エイジテック)企業・株式会社チカクの代表取締役 梶原健司氏と、子育てDXを推進するBabyTech(ベビーテック)企業・株式会社ファーストアセントの代表取締役 服部伴之氏。両社ともVCから数億円規模の出資を受けるなど、さらなる事業規模拡大に向けて、DXの最前線で奮闘している。

今回はそのリアルが明かされたオンラインイベントの内容をレポートしよう。

BabyTechとAgeTechの旗手が手がけるサービスとは?

対談の冒頭、まずは両社の紹介からスタートした。

まず、梶原氏よりチカクのサービスについて紹介された。高齢者の世帯数が1500万世帯を超え、うち単身世帯が700万を超える現代では、さまざまな問題が生じており、「孤独」や「見守り」は喫緊の課題となっている。特に「孤独」は認知症の原因にもなりかねず、対策が求められている。

そこで、チカクでは「まごチャンネル」をリリース。これは、テレビで子ども世帯とつなぎ、その様子を見られるようにしたサービスだ。すでにホームセキュリティを提供するセコム株式会社と協業を進めており、自治体などとの連携も進んでいるという。

まごチャンネルの特徴の1つは、デバイスの接続先を「テレビ」にしたことにある。これは、現代は高齢者もスマートフォンを所有する時代になったものの、使いこなしている高齢者が少ないこと、逆にテレビとの接触頻度は多く抵抗もないためである。実際、設定も楽なため使用する際のハードルは低いという。

続いて、服部氏よりファーストアセントの紹介があった。同社は子育てのDXを目標の1つに掲げ、様々なサービスを手がけている。

その1つに「パパッと育児@赤ちゃん手帳」がある。服部氏が育児を通じて「育児記録を簡単につけられ、かつ家族で共有できる使い勝手のよいアプリがない」と感じて開発されたこのサービスは、すでに60万人以上が利用している。

また同社は、データの蓄積にも積極的に取り組み、サービスに反映している。例えば、赤ちゃんの泣き声のデータを蓄積して、それを赤ちゃんの感情診断に用いるサービスをローンチして、20万人以上のユーザーを集めている。さらに、蓄積したデータは研究機関を連携して、共同研究も進めている。

テクノロジーだけでDXは実現できない

両社の紹介が終わり、続いて梶原氏と服部氏のトークセッションが始まった。

まず最初のテーマは「市場環境の変化」について。これはスマートフォンなどテクノロジーの変化だけにとどまらず、高齢者や子育て世帯を取り巻く常識の変化が大きかったようだ。

特に、子育てについてはその傾向が顕著だ。服部氏によれば「サービスを開始した8年前は、育児記録をアプリケーションで管理して共有することにネガティブ意見もあった」という。記録を見える化することで、むしろ男性から色々と言われるのではないかと懸念する女性も多かった。

しかし、近年は考え方が大きく変化した。服部氏は「今では子育てについて家族で共有するのが当たり前で、男性も以前に比べて子育てに積極的になった。最近ではネガティブな意見は無くなりつつある」と語る。今後、男性の育休取得が奨励されれば、変化はさらに加速するかもしれない。梶原氏も「最近、以前ほど"イクメン"という言葉が聞かれなくなったが、これは男性が育児に参加するようになってきた証かもしれない」と服部氏のコメントに共感を寄せた。

そして、トークセッションのテーマは「テクノロジーで変わること、変わらないこと」に移る。

テクノロジーで変わることについて、服部氏は「オペレーションの負荷軽減」を挙げる。家電の登場で家事に費やす時間が大幅に減ったように、AIなどの技術を活用すれば同様の効果が見込めると予測する。

しかし、その裏には変わらないこともある。服部氏は「あくまで育児をするのは”人間”の役目だ」と語る。例えば、AIで赤ちゃんの泣き声診断をして「お腹が減っている」という診断が出続けたとしよう。その際に、ただ食事を与え続けてしまうと、赤ちゃんは適正体重を超えてしまう。これでは、AIを使いこなしているとは言い難い。

では、どうすればいいのか。服部氏は「これだけお腹が空いているのは、満腹中枢がまだまだ成長段階だからかもしれない。だったら、一緒に遊んで空腹を紛らわせた方がいいのではないかなど、人間が考えて育児をする必要があるのではないか」と語る。オペレーションの負荷が減れば、心に余裕を持って、考えることにフォーカスできるはず。これはテクノロジーとの付き合い方を考える良い例になるだろう。

また梶原氏は高齢者の孤独の問題に取り組む中で「寂しい、人とつながりたいという根源的な欲求は変わらない。これを満たすためにテクノロジーでどう補完できるか、これからも考えたい」と語った。そして「高齢者の中には、スマートフォンを難なく使いこなす人もいる一方で、LINEを使うので精一杯という方もいる。少しでも多くの人たちがデジタルの恩恵を受けられる“デジタルバリアフリー”の社会の実現を目指したい」と強調する。

DXの中心に”人間”の存在を忘れてはならない

活発に続くトークセッションに触発されたか、参加者からは質問が相次いだ。その中で「欧米と日本にある、子育てに対する感覚の違い」について質問があった。

ファーストアセントは、赤ちゃんの寝かしつけデバイス「ainenne」をCES2021に出展し、Innovation Awardを獲得している。CES来場者のコメントが印象的だったと服部氏は振り返る。欧米では、親と赤ちゃんが別室で寝るケースが多い。そのため「見守りカメラがあれば、スマートフォンを通じて見守ることができる」とデバイスによる見守りにポジティブな意見が多数あったそうだ。一方、日本では親と赤ちゃんが同じ部屋で寝ることが多い。そのため、デバイスによる見守りは赤ちゃんから目を話す事を暗示するため抵抗感があり、子育ての慣習などの違いにより、ソリューションが受け入れられるどうかも決まるのではないかと指摘した。

トークセッション、Q&Aセッションが盛り上がりをみせ、あっという間に終了の時間となった。最後にお二人から参加者へメッセージが送られた。

梶原氏「つい“How”から入りがちですが、人が何を感じているのか察して、つながり含めて“心理”などを大切にするのが重要ではないでしょうか」

服部氏「やればやるほど“人”が大事だと痛感します。だからDXといえど、まず人の存在を考えるべきです。あくまで主役は人間ですから」

なぜ、DXを進めるのか。お二人のコメントには、その示唆に満ち溢れている。

取材/文:山田雄一朗

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