Coinbaseが捉える「日本市場の魅力」とは?グローバル目線で捉えたWeb3時代の安全・安心を考える

Coinbaseが捉える「日本市場の魅力」とは?グローバル目線で捉えたWeb3時代の安全・安心を考える

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国内外問わず、Web3の領域には大きなモメンタムが形成され、さまざまなプロジェクトが立ち上がっている。そのムーブメントも千変万化の様相を呈し、刻一刻と潮流が変化する激動の時代だ。Web3のもたらす新たな経済フロンティアを求め、業界・業種を超えてその動向に注目が集まっていると言えるだろう。

その一方で、暗号資産の価格は不安定極まりなく、さらにはサイバー攻撃の標的にさらされるなど、暗号資産市場は依然としてリスクの高い状態が拭えない。ここ最近では、暗号資産の「冬の時代(クリプトウィンター)」に突入したという見方もされており、まさに真価が問われているのではないだろうか。

そんななか、世界最大級の暗号資産取引所として知られるCoinbase(コインベース)は、2021年に日本市場へ参入。メガバンクの三菱UFJ銀行を決済パートナーとして迎え入れ、「ビットコイン」や「イーサリアム」といった主要暗号資産の取引を開始した。

先行き不透明な未来が予想されるなか、Web3時代における仮想通貨取引所のあり方やビジネスの展望について、Coinbaseはどのように考えているのだろうか。今回は、同社でマーケティング・ビジネスオペレーション部長を務める金 海寛(キム・ヘガン)氏に話を聞いた。

創業から一度もハッキングされていない「Coinbase」

Coinbaseと言えば、2012年に米国シリコンバレーで創業し、2021年4月にはクリプト業界で初のナスダック市場を果たした暗号資産取引所だ。現在100カ国以上でサービスを展開しており、日本では2021年8月に暗号資産販売所としてのビジネスをスタート。グローバルで圧倒的な支持を受ける「取引所の黒船」として、その動向に注目が集まっている。

同社は「暗号資産取引のグローバルスタンダード」を掲げており、世界基準の堅牢なセキュリティやコンプライアンス基盤を有している点が、大きな特徴と言える。なにせCoinbaseは創業以来、10年の間に一度のハッキングも許しておらず、サイバーセキュリティ対策に関しては万全を期している。

「ハッキングされないのは当然だ」と思うかもしれないが、国内外へ目を向けると、暗号資産に関するハッキング事件は後を絶たない。今年に入っても、Play to Earnの注目株として人気絶頂だったAxie Infinity(アクシーインフィニティ)のRonin Bridgeが不正アクセスを受け、その被害額が770億円相当(当時)にも上った。

また日本においても、特に記憶に残っているのが、2018年に起きたCoincheckのハッキング事件だろう。日本円にしておよそ580億円分の暗号資産「NEM(ネム)」が流出してしまい、そのニュースは瞬く間に広まって、暗号資産市場全体にネガティブなインパクトをもたらした。

このような背景もあり、日本では特に暗号資産に対するセキュリティ面への警戒心が強いからこそ、Coinbaseが有する堅牢なセキュリティやコンプライアンス基盤は、安全・安心な取引等に向けた非常に大事なポイントであり、これこそが同社がグローバルでも信頼を集める大きな要因の一つと言えるだろう。

もう後戻りすることはないWeb3の世界的なムーブメント

こうした状況のなか、Coinbaseが日本でのサービスを開始してから1年が経過した。日本国内では2022年を「Web3元年」と呼び、そのポテンシャルや将来性に活気立っている状況だが、金氏は市場環境の変化や動向についてどのように捉えているのか。同氏は「NFTの台頭によって、日本における市場の風向きが変わった」と説明する。

「2021年頃までは暗号資産がメインストリームになっていませんでしたが、DeFiやDApps等のブロックチェーン技術を活用したアプリケーションレイヤーのサービスやプロジェクトが登場してきたこと、そして何よりNFTが世界的に注目の的となったことで、日本でもクリプトトレンドやWeb3への熱い視線が寄せられるようになりました」

NFTはご存知の通り、唯一無二性を証明できる「非代替性トークン」のことで、当初は主にアート領域での活用が主流であったが、現在ではファッションやスポーツなどさまざまなジャンルに応用され、多くのユースケースが出てきている。金氏は「この変化が大きなターニングポイントになっている」と強調し、「NFTを保有するためにビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)を購入してウォレットを開設する人が増えている」と所感を述べる。

これまで、耐改ざん性や取引の透明性を担保できる次世代の技術として関心が寄せられていたブロックチェーンだが、ユーザー起点における実際のユースケースが少なく、一部の投資家や投機目的で参入するプレイヤーに限られていた。それがNFTの爆発的な盛り上がりによって、一気に裾野が広がったというわけだ。

「さらにこのムーブメントが盛り上がり、いわゆるマスアダプション(一般層にまで浸透し、当たり前のように日常的に使われること)していくには、コンテンツやライフスタイルへはり込んでいく必要性があるでしょう。投機的に暗号資産を売買するだけでなく、実際にユーザー自身がアプリケーションを動かし、プロダクトの体験を享受できるようなものが求められると思います。今のトレンドとして『X to Earn』のユースケースが増えてきていますが、この先もユーザーがアクションを起こすことで対価が得られるようなプロダクトのニーズが高まっていくのではと考えています」

NFT、DeFi、DAO、GameFi、SBT etc…。Web3のムーブメントは刻一刻とうごめいており、新たな経済フロンティアとして多くの企業やクリエイターがその渦中に身を置き始めている。Coinbaseは、こうしたムーブメントを“暗号資産取引所”としての立場からサポートしているわけだ。

金氏は「 Web3の潮流は、もう後戻りしないところまできている」と断言する。

「日本ではトークン発行の法規制が相対的に厳しいことから、欧米諸国に比べてDAppsのプロダクト自体は少ないものの、将来的には間違いなくWeb3が日常のライフスタイルに染み出てくるでしょう。今年の8月からは、デジタル資産やNFTを簡単に管理できる『Coinbase Wallet』を提供しており、ユーザーのDappsへのアクセスやDeFiの活用をサポートしています」

「海外ではNFTのマーケットプレイス『Coinbase NFT』やデベロッパー向けに『Coinbase Cloud』といったようなブロックチェーンのインフラを提供し、開発者体験の向上に努めていますが、今後日本がWeb3に対する規制緩和や法改正が進んでいけば、Coinbaseとして提供するサービスを拡充することも視野に入れています」

Web 2.0の世界では、ブログやSNSのようなデジタルプラットフォームが隆盛を極め、UGC(ユーザーが作成するコンテンツ)を起点に、ユーザー同士のインタラクティブなコミュニケーションやコネクト体験が醸成されてきた。Web3においては、そこに「非中央集権」の概念が加わり、DeFiやNFTなどの分散型コミュニティが活発化している。このようなWeb 2.0とは異なる新たな秩序が浸透してくれば、Web3のユースケースはさらに増加するのではないだろうか。

「ご存知の通り、NFTの特徴はブロックチェーンを活用することで、ユーザーがデジタル資産のオーナーシップをもてることです。こうようなイノベーションは我々の生活を多岐にわたって変えていくでしょう。ビジネスとしてはすでにNFTのマーケットプレイスやエンタメのIP管理やファンコミュニティを形成したりなどに利用されています」

Web3だからこそできるようなプロダクトを見出すべき

Web3への注目度が増している一方で、どうしても不確実性への“不安”が先行し、事業進出に二の足を踏んでいる事業者も少なくない。また、いち早くトレンドを取り入れようと、コンソーシアムチェーン(複数の企業間で管理するブロックチェーン)やプライベートチェーン(特定の管理者のもと、参加者が限定されたブロックチェーン)上にNFTを付与する動きも顕著だ。

パブリックチェーン(誰でも自由に参加できるオープンなブロックチェーン)では、文字どおり公共性が高いゆえ、セキュリティ上のリスクと隣り合わせであり、先に挙げたハッキング等のサイバー犯罪の被害を受ける危険も相対的に高まるだろう。

そのため、パブリックチェーン以外の選択肢を選ぶのは至極真っ当なわけだが、ブロックチェーンの持つ耐改ざん性や分散性といったメリットを十分に活かせなくなってしまうのもまた然りである。

これについて金氏は個人的な見解として、「これまでのWeb 1.0やWeb 2.0の流れを汲んだビジネスをWeb3で表現するのは、あまり理にかなっていないのでは」とし、次のように意見を示す。

「やはり、ブロックチェーンという技術を生かす手前、Web3だからこそできるようなプロダクトやサービスを創造するのが肝になるのではないでしょうか。デジタルファイルやデータのオーナーシップが持てるという、今までにない体験を提供することが大切だと考えています。Web3のトレンドに乗り遅れまいと安易にビジネスに手を出すのではなく、ユーザー目線で価値がない場合は、無理にユースケースを出す必要もないでしょう」

また、Web3におけるブレイクスルーのきっかけについては「メインストリーム層でも知っているようなブランド・有名人等がNFTを発行したり、Web3関連のプロジェクトに参画を表明したりする流れが続けば、突破口を開けるだろう」と金氏は見立てる。

「個人的にWeb3のプロトコルレイヤーやDAOから収益を得ている感覚は、Web 2.0で言えば、アフィリエイトビジネスに近いと思っています。SNSやブログサイトを使ってアフィリエイト商材を販売して成果に応じた報酬を得るように、Stepnでは歩けばトークンをもらえますよね。アフィリエイトビジネスが10年以上かけて成熟したように、Web3のモデルも時間をかけながら正しい形を模索していくのではないでしょうか」

Coinbaseは日本市場について、非常に好意的に捉えている

ここまではWeb3および暗号資産を取り巻く現状と未来について伺ってきたわけが、では今後の日本市場はどうなるのだろうか。多くのビジネスパーソンは、グローバルから端を発するWeb3のトレンドに対して、日本は乗り遅れているという見方をしていることだろう。

だが一方で、日本は他国に先駆けて暗号資産に関するルールをいち早く整備し、レギュレーションを整えてきた国でもある。2017年4月の改正資金決済法の施行によって暗号資産交換業の登録制度がスタートし、それに付随する事業者への規制が設けられたことから、法的なOK・NGラインの線引きが明文化された。

また最近だと、2022年6月に参院本会議で改正資金決済法が可決・成立し、ステーブルコインの流通の仲介を担う業者に対する登録制度(電子決済手段等取引業等の創設)についても、世界に先駆けて導入されている。

グローバルにビジネスを展開するCoinbaseとしても、こうした国内の動向を受けて「日本市場について非常に好意的に捉えている」と期待を寄せているという。

「海外の著名な暗号資産取引所のKrakenやLiquid by FTXなど、Coinbaseだけではなくグローバル勢が日本市場にもつ期待は大きいと感じています。それは日本が、世界第3位の経済大国でありながら暗号資産としてのパイオニアでもあるからです。たしかに日本における暗号資産の税制は厳しく、ビジネスの観点では利益を出しにくい構造ではありますが、新規にトークン発行する際などのルールがしっかり明確化されており、ルールに沿って展開すればOKという線引きがなされているのは評価できる点です。これが他国の場合だと、多くのケースが『グレーゾーン』になるので、後になって取り締まりの対象にされてしまい、市場からの撤退を余儀なくされることが起こってしまいます。実際にそのようなケースは枚挙に暇がありません」

とはいえ、現状の日本のルールでは、クリプトスタートアップや事業者にとってはアンフレンドリーな側面が目立つ。たとえば法人が暗号資産を保有する場合、期末時点(事業年度の終了時点)の時価法によって評価した金額で計算する必要があるので、たとえばトークンの発行を行う類の事業の場合、多額の税金を納める必要があるわけだ。手元のキャッシュフローが潤沢でないクリプトスタートアップにとっては致命的な制度だと言えるだろう。

こうした税制度が改正され、暗号資産に関する規制緩和が実施されれば、「クリプトスタートアップのさらなる活性化につながる」と金氏は期待を寄せている。

将来的な「ペイメントスタンダード」に向けて

もう一つ、特定の運営法人を有さないような分散型取引所(DEX)についても、Coinbaseのようなグローバルに根を張る暗号資産取引所はどのように捉えているのだろうか。

金氏は「暗号資産の取引の潮流として、今後は取引所のビジネスやNFTの販売ビジネスなどは分散型取引所に流れていく」と予測しつつ、以下のような「共存」の未来を語る。

「結論として、CoinbaseはDAppsやDeFiの入り口となる役割を担いたいと考えています。世界基準のコンプライアンス基盤やセキュリティ、十分な暗号資産の取引量を有していることから、Coinbaseがハブとなって他のDAppsを使ったりDeFiと連携したりする流れが生まれてくるのではと思っています。その前提で、いわゆる実際の取引執行や売買についてはUniswap(ユニスワップ)のような分散型プレイヤーに寄っていくのではないでしょうか」

ここでの役割分担として金氏が強調するのが、KYC(本人確認)やAML(アンチ・マネーロンダリング)に向けた施策を厳格に実施しているか否かである。ここまでのお話の中では、レギュレーションとして主に資金決済法に触れてきたが、当然ながらお金を扱う事業者が準拠すべき法律はそれに留まらない。

たとえばAMLおよびCFT(テロ資金供与防止)対応等にまつわる規制を定める犯罪収益移転防止法では、Coinbaseのような暗号資産取引所は「特定事業者」に分類され、特定業務に対する法施行規則等に準じたKYC(本人確認)などの実施も義務として課されている。分散型取引所の場合、その事業体の性質ゆえにどうしても国の法律に準拠したKYCの徹底などが難しいだろうからこそ、Coinbaseはその部分についてのゲートウェイ的な役割を担うことが想定されているというわけだ。

「今後Web3がさらに進展していくには、ステーブルコインの存在が一つの肝になってくると思うのですが、ステーブルコインでも暗号資産でも、基本的にはどこかの国家に紐つく事になるので、法定通貨の立ち位置が今よりも強くなっていくでしょう。こうした大局観があるなかで、ユーザーのKYC情報をたくさん持っていて、かつ取引量が多いCoinbaseだからこそ、より良いUXを追求していき、取引執行や売買に関わるプレイヤーを支援する立場になれたらと考えています」

最後に、Coinbaseの今後の展望について金氏に語っていただいた。

「繰り返しになりますが、Coinbaseの大きな強みは、世界基準の堅牢なセキュリティやコンプライアンス基盤にあります。先日、暗号資産の取引に関するプライバシー性を高めるトルネード・キャッシュ(Tornado Cash)が『マネーロンダリングを阻止するもの』として米財務省の制裁対象になったことからもお分かりのとおり、今後ますます、世界的な暗号資産の規制環境は整っていき、企業に求められるコンプライアンスも時代とともに変わっていくことが想定されます。
直近では世界最大の金融資産運用会社であるブラックロック社と提携し、同社の機関投資家向けに暗号資産の取引を提供するサービスを始めました。ブロックチェーンの情報と弊社がもつKYCやKYBの情報を紐づけ、将来的にはペイメントのスタンダードとして展開していきたく、引き続き世界最高レベルの安全性やセキュリティをユーザーに提供できるよう努めていきたいです」

編集後記

現在利用できる分散型取引所はまだまだ大衆が利用しやすい体験設計にはなっていないと感じるからこそ、Coinbaseのようなアプリの存在が、今後も暗号資産の活用促進において重要な役割を担っていくことは間違いなさそうです。
以下、本記事のインタビューイーである金氏が登壇されたイベントのレポート記事でも言及されているとおり、「Web3ならではの独自のUX」創出が、次なるプラットフォームの最低条件になるはずです。今後のペイメントスタンダードに向けてCoinbaseがどのような施策を打っていくのか、引き続き動向をチェックしていきたいと思います。

取材/文:古田島大介
撮影/編集:長岡 武司

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