トークノミクス設計は複雑に考えない。DEAの共同創業者が語る「Metaverse as a Service」への未来

トークノミクス設計は複雑に考えない。DEAの共同創業者が語る「Metaverse as a Service」への未来

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Axie InfinityやSTEPNといった「Play to Earn」が注目されたことで、ブロックチェーンゲームへの関心がより一層の高まりを見せている。

Web3事業者はもとより、大手ゲームパブリッシャーもブロックチェーンゲームへの参入を視野に入れた動きを見せていることからも、今後ブロックチェーンゲーム市場の拡大はさらに加速していくことだろう。

その兆候は、直近で開催された「東京ゲームショウ2022」でも大いに感じ取ることができた。世界有数のブロックチェーンゲームギルド「YGG Japan」がブース出展し、多くの来場者から熱い視線が送られていたからだ。

そのような状況のなか、シンガポールを拠点にグローバルでGameFiプラットフォーム事業「PlayMining」を提供しているのが、Digital Entertainment Asset Pte.Ltd.(以下、DEA社)である。同社も東京ゲームショウ2022にブースを出展し、NFTゲームの試遊体験やステージイベントなどを行い、精力的にWeb3エンターテインメントの魅力を伝えていた。

今回は東京ゲームショウの合間を縫って、DEA社のFounder & Co-CEOを務める山田 耕三氏を直撃。GameFiに勝機を見出した理由やブロックチェーンゲームの将来性について語ってもらった。

ニコニコ動画などのインターネットカルチャーが原体験に

2002年にテレビ東京へ入社し、番組プロデューサーとして音楽やバラエティ番組など、さまざまな地上波テレビ番組の制作に携わってきた山田氏が「転機だった」と振り返るのが、ニコニコ動画を中心としたインターネットカルチャーに触れたときだったという。

通常、地上波テレビ番組では「視聴率」がビジネスモデルの基盤となっており、いかに視聴率を取るかが焦点になっている。つまり、視聴率が一種のKPIとなって、それに見合うようにスポンサーを獲得して予算を作っていくわけだ。他方で、ニコニコ動画と連動したテレビの企画を立てると、「来場者数やコメント数といった視聴率以外のKPIも創出することができる」と山田氏は説明する。

「例えばシニア層をターゲットにした地上波演歌番組を作れば、視聴層的に視聴率を取ることができるわけです。でも、若者向けのコンテンツを作ろうとしたときは、テレビ自体を見る人が減少している手前、なかなか良いものが生み出せない。それがニコニコ動画と連動させることで、半ば決まりきったKPIをずらすことにつながり、小手先の話に走らないハックにつながったのが、今の起業家としての原体験になっています」

そんな中、ブロックチェーンやNFTに興味を持つきっかけになったのは、2017年にリリースされたCryptoKittiesだったという。

「これからの時代、ブロックチェーンがエンタメの未来を切り開く」

そんな直感がよぎった山田氏は、テレビ東京時代にやりきれなかったエンタメへの思いを実現するため、2018年に起業を決意する。

「テレビ東京を辞めた後、シリアルアントレプレナーの吉田直人とともに起業し、シンガポールに法人を構えてビジネスを展開していくことになりました。初めからグローバルで勝負するという視座を高く持ち、走り出していきましたね」

JobTribesがインドネシア市場でユーザー拡大した理由

ここからは、現在DEA社で運営しているサービスやプロダクトについて見ていきたい。

同社では、GameFiプラットフォームの「PlayMining」を軸に、NFTを購入・所有できるオークションサービスの「PlayMining NFT」や、NFTのマーケットプレイスである「PlayMining NFT Premier」を運営している。また、今年1月にはメタバースプロジェクト「PlayMining Verse」を発表し、第一弾として漫画家の藤原カムイ氏がデザインした「ランドNFT」の販売をしている。

『藤原カムイ国』のコンセプトアート。「PlayMining Verse」はいくつかの "クリエイター国 "で構成され、上記の藤原カムイ国のランドNFT所有者は、そこでの市民権を得ることができる

「PlayMining Verseは、さまざまなクリエイターとのコラボを継続的に予定しているメタバースプロジェクトです。中長期的には、PlayMining Verse内に構築する“クリエイター国”を自由に行き来できるようなサービスを考えており、クリエイターとNFTホルダーが共にクリエイター国を創り上げていくのを念頭にサービスの開発にあたっています。将来的にはWeb3におけるエンタメのあり方というか、新しい形のIPを創造するための“Metaverse as a Service”という形で広めていければと思っています」

さらにブロックチェーンゲームとしては、正式版をリリースしているトレーディングカードバトルゲーム「JobTribes」のほか、β版・βテスト版として鋭意開発を進めている「Cookin’ Burger」や「麺屋 ドラゴンラーメン」、「Lucky Farmer」、「Graffiti Racer」など、多様なタイトルを有している。

なかでもJobTribesはインドネシアで火がつき、ユーザーが拡大していったことは有名だ。

その理由について山田氏に聞くと「マーケットの調査をしていくと、インドネシアでのユーザーの反応が良かった」と答える。

「我々は、Axie Infinityよりも早くPlay to Earn型のトークンエコノミーを創出しました。2020年7月にはインドネシアで最大手の暗号資産取引所である『INDODAX(インドダックス)』に、PlayMining上で使用されるNFTを購入するためのユーテリティトークン『DEAPcoin(以下、DEP)』を上場させたのですが、現地の法定通貨であるルピアでの取引が可能だったこともあり、マーケティング観点から考えてもインドネシア市場のポテンシャルを強く感じました。人口も十分で、かつエンタメへの飢えも潜在化していると思い、現地の広告代理店と組んでプロモーションに本腰を入れながら、JobTribesの普及に努めました」

所得水準や物価が日本との相対比較で低いインドネシアでは、JobTribesが提供するPlay to Earnの体験価値が見事にマッチし、確実にユーザー数を伸ばすようになる。ゲームで稼いだトークン・暗号資産を現金へと換金し、家賃の支払いや生活費へと充当させたり、はたまた田んぼを購入したりと、実世界で活かすユーザー事例も出てきたという。

複雑に構築したトークノミクスよりも「ゲームとして成立するか」が重要

ここまでご覧いただいたとおり、ブロックチェーンゲームやWeb3の展開においては、「トークノミクス設計」が肝になってくる。さまざまなゲームタイトルを生み出している山田氏にとって、Web3時代のゲーム体験を作るにあたって意識していることは何なのか。

「よくトークノミクスを考える上で、複雑に考えすぎたり色々とこねくり回したりする方もいますが、実はシンプルで、トランザクションが発生するポイントをいかに用意できるか、さらにそれがサスティナブルであるかどうかが重要になります。トークンの枠組みを構築する上では、ゲームとして構造的な欠陥がないかを確認することが大事です。暗号資産はもらえるのにそれが使えないなんてことになっていないか、ゲームの難易度が高くて暗号資産がもらいづらくなってないかなど、ゲームとして成立するかの分析をしっかりと行う必要があります」

言ってしまえば、「トークンエコノミー=ユーザー行動」の裏返しなわけであり、複雑に考えすぎないことが一番だということかもしれない。

「界隈ではよく、Web 2.0とWeb3は別物であり参考にするべきじゃないという意見がありますが、個人的にはそれを懐疑的に思っています。Web 2.0の領域で流行っているサービスやプロダクトなどを参考にすることで、経済圏の作り方や持続可能性について、十分な考察ができると思うんです。なので、そういった視点を持って、ブロックチェーンを連動させたゲーム体験を見出していくことが大切になると考えています」

大手企業がNFTゲームに参入すれば大きなモメンタムが起こる

ブロックチェーンゲームにおける現在の潮流は、よりソーシャル性を高めたりDAOの属性を有したりする「GameFi 2.0」のフェーズだと言われている。グローバル視点で捉えると、ユーザーがもつニーズやプレイする動機はどのように変化しているのだろうか。

これについて山田氏は「クリプトの冬にプラスして、実体経済も落ち込んでいるので、マーケット自体の元気がない」と分析する。

「我々以外に、Play to Earn型のトークンエコノミーを提供できているゲームが、まだまだ少ないような状況です。ただ、大手企業によるNFTゲームの参入が見込まれるので、来年の夏以降には大きな動きがあるのではと見立てています。ゲームギルドのYGGやブロックチェーンプロジェクトのOasys、あるいは我々のようなゲームタイトルなど、どこかひとつでもNFTゲームのヒットが誕生すれば、一気にモメンタムがやってくると確信しています。そういう意味で考えてもWeb3は、もう後戻りできないムーブメントだと捉えて間違いないでしょう」

PlayMiningは海外を中心にシェアを拡大しており、現在では250万ユーザーを超える規模にまで成長している。

そんななか、日本における暗号資産取引所ではBITPointOKCoinJapanの2箇所でDEPを取り扱っている。日本国内におけるビジネス成長の鍵になるのが、こうしたDEPを取り扱う暗号資産取引所の拡大であることは間違いない。

山田氏は「暗号資産取引所に関しては、1個ずつ増やしていっており、もうじき3箇所目が決まる予定」だとし、日本市場でのグロース戦略についてこう説明する。

「暗号資産取引所の上場については、1社クリアしてしまえば、あとは比較的スムーズに拡大していけます。なので、粛々とDEPを取り扱う取引所を増やしていくのは今後も継続していきます。一方、成長のドライバーになるのがゲームギルドの存在です。事業者によっては『ゲームギルド不要説』も飛び交っていますが、私自身は事業を成長させる上で必要不可欠だと考えています」

ゲーム経済圏を活性化するためにはゲームギルドが必要不可欠

ゲームギルドといえば、話題のゲームタイトルに参画し、そのゲームがピークに達したときにNFTトークンを一気に手中に収め、次のゲームへと渡り歩いていくのがセオリーだった。つまり、山場を見計らいつつ、“いいとこ取り”してしまう部分が煙たがられる要因にもなっているという。

「ゲームギルドって、本質的にはゲームがないと成立しないんですよ。ゲームコンテンツがあって、初めてゲームギルドが活動できるわけで。なので、我々のスタンスとしてはゲームギルドとある種の紳士協定を結ぶような形で、共存・共栄関係を保てるように意識しています。NFTを購入する上限を定め、独占できないようにすることで、公平性や秩序を保つ。こうすることで、良いパートナーとして共にゲーム経済圏を活性化していくことにも繋がります。そういうパートナーを増やせば増やすほど、マーケティングやグロースという観点ではプラスになるわけです」

加えて最後に、山田氏は「ゲームの本質はまだまだ掘りつくされていない」とし、今後の展望を次のように見据える。

「コンシューマーゲームからソーシャルゲーム、そしてNFTゲームと移行してきていますが、これからもどんどんと変化していくことが考えられます。時代によってゲームに求められる体験価値を捉えながら、我々も成長していきたい。今で考えると、NFTゲームは投資の対象としての側面が強いですが、ひとつの価値観だけでは長続きしないと感じています。JobTribesでいえば、コレクターとして好きなカードを集めたり、ゲーマーとして稼げるようになるのを目指したり、スカラーシップ機能を利用してカードオーナーになったりと、いろんな関わり方ができるわけです。つまり、価値観を多様化させるだけで、ゲームの経済圏はもっと広がっていくと思います。先ほど挙げた例以外にも、もっとNFTゲームへの関わり方が今後出てくるかもしれません。我々やNFTゲーム好きな人はもちろん、まだNFTゲームをやったことのない人にも興味を持ってもらえるような、魅力的なゲーム作りをしていき、マスアダプション化を目指していきたいですね」

ライター後記

東京ゲームショウ2022の合間で、山田氏への取材をさせてもらったが、PlayMiningブースでのプレゼンで「最初はあえて、プライベートチェーンの中央集権で事業を行っていく」という点が印象的だった。ブロックチェーンのメリットを生かすためにパブリックチェーンを選択し、分散型でWeb3の事業を推進していくのが通説だと言われるなか、山田氏は逆張りの視点でビジネスを捉えているわけだ。Web 2.0の否定ではなく、むしろ学ぶべきものや見習うべきところは、しっかりとエッセンスを取り入れ、事業展開しているのがとても参考になった。

働いて得た収入で「楽しさを買う」時代から、エンタメを通じて「楽しみながら」収入を得る時代へ。その実現に向けて、DEA社はさらなる成長を目指し、突き進んでいくことだろう。


取材/文/撮影:古田島大介
編集:長岡 武司

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