テクノロジーが進化しても変わらない、DXの根底にある「普遍的な原理」とは

テクノロジーが進化しても変わらない、DXの根底にある「普遍的な原理」とは

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AI、ビッグデータ、IoT、VR・AR、...。ビジネスシーンで、これほどテクノロジーに関する言葉が飛び交う時代があっただろうか。DXという言葉があらゆる企業で叫ばれるようになり、時代はまさに大転換を迎えている。

「AIを用いた社会課題解決を通じて幸せな社会を実現する」をミッションに掲げる株式会社エクサウィザーズでは、2021年5月18〜19日にかけてExaForum2021を開催。激変する時代に何をすべきか議論するため、国内外の第一人者を集め、さまざまなセッションを展開した。

こちらでは、未来学者で元インテル エバンジェリストのSteve Brown氏が出演した「複数の技術融合で起こる変化の津波」の内容をレポートする。

全ての企業がテックカンパニーになる

この10年、ビジネスパーソンはかつてないほどテクノロジーの存在を意識するようになった。

最もわかりやすいのはスマートフォンの登場だろう。iPhoneが登場して以来、スマートフォンはわずか数年で世界中に広がり、日常生活やビジネス活動を大きく変えた。さらに、通信速度が向上することで、スマートフォンの利活用の幅は広がった。電話やメールなどのテキストメッセージだけでなく、画像や動画まで当たり前のようにやり取りできるようになった。

スマートフォンで利用するアプリケーションの進化も著しい。ユーザーの行動履歴を踏まえ、AI技術を活用してレコメンドする機能は多くのアプリケーションで実装され、当たり前のように活用されている。

またビジネスシーンでも、BtoB向けのSaaSが浸透し、インターネットさえつながればあらゆる業務がブラウザで完結するようになった。業務用アプリケーションがクラウドベースに移行することで、働く場所すら縛られなくなりつつある。リモートワークが推進できるのも、その背景にテクノロジーの進化があるのだ。


しかし、ビジネスシーンにおけるテクノロジーの活用は今後さらに加速するかもしれない。Brown氏は、これを予見する上で6つのテクノロジーに注目する必要があると述べる。

「通信の5G、AI、IoT、AR、ブロックチェーン、ロボットなどの自動化技術の動向は、注視すべきです。現在は、これらの技術単体に注目が集まりがちですが、今後はこれらの技術を組み合わせて、さらに多くのことができるようになるでしょう。テクノロジーを取り入れるか否かで、企業間の競争力の差がより浮き彫りになるはずです。これら6つの技術をかけ合わせて企業を成長させる”画家”のような存在も登場するでしょう」

全ての業種が、この6つを活用するかどうかと問われれば、必ずしもそうではないかもしれない。例えば、自動化技術は自動車の自動運転や製造現場のロボット化など、比較的限られた場面でのみ利用されるかもしれない。しかし、ビジネスパーソンは、今は関わりがないテクノロジーの動向も把握しておくのが望ましいだろう。これについては、改めて後述する。

一方で、Brown氏は全ての業種に関わるテクノロジーについて「AIとIoT」を挙げる。確かに、先ほど紹介したAIのレコメンデーションエンジンなど多くのアプリケーションですでに活用が進んでいる。さらに、デジタル空間上の行動だけでなく、フィジカル空間の行動履歴なども踏まえて分析すれば、より精度が高いレコメンドが可能になるかもしれない。これはあくまでAIとIoTを活用する、ほんの一事例に過ぎない。この組み合わせは、今後あらゆる場面でより活用されるはずだ。

DXという果てしない旅を歩み続ける

さらに、Brown氏はテクノロジーの活用に終わりがないと語る。

「現在は先ほど挙げた6つのテクノロジーの活用がポイントになりますが、2030年代になればまた新たなテクノロジーが登場します。つまり、テクノロジーを取り入れDXを起こすのは、ゴールではなく”終わりのない旅”の過程の1つに過ぎないのです」

だからこそ、ビジネスパーソンはテクノロジーを学び続ける必要がある。技術革新などの影響で、企業の寿命は短くなると言われている。そして、これを乗り越えるには、絶えずテクノロジーに関心を持ち続け、新たなキャリアを歩む時に備えてこれまで関係がなかったテクノロジーにも知見を持っている必要がある。

「だからと言って、プログラミングを学ぶ必要は必ずしもありません(笑)。各々のテクノロジーがどのような特性を持ち、どう活用されうるか。それを私が執筆した書籍などで学べば、ほとんどの場合は事足りるでしょう。現代のビジネスパーソン、特にエグゼクティブ層は多忙を極めています。できる限り、効率的に学び続けるのが理想です」(Brown氏)

学び、自らの知識をアップデートする。これは自ら”変化”することに直結する。そして、これらの行動は、企業などの組織でも求められる。しかし、ここで1つの壁に直面する。

「人が変化することは難しい」

一個人だけでなく、人で構成される組織も、変化を厭いがちなのは、古今東西変わらない真理だ。これを打破するために、Brown氏はビジネスリーダーたちにこう訴えかける。

「まず明確なビジョンを持ち、それを繰り返し訴えかける必要があります。そして、その際のポイントは“WIIFM”(= What's In It For Me?)です。変化することで、どのようなメリットがあるのか、これも明示するのが望ましいです」

テクノロジーが人を救い、進化させる

人間がどんなに変化を拒もうとも、テクノロジーは日進月歩で進化を続ける。そして、その勢いはさらに増し、コロナ禍では想像もしていなかったソリューションが誕生しているとBrown氏がある事例を挙げる。

「イスラエルのVocalis Healthという企業が、マイクに話しかける際の音声データからコロナウイルスに罹患していないか検査できるソリューションを開発しています。PCR検査であれば、検査用の棒を鼻に入れて結果が出るまで数日かかります。しかし、音声解析ならわずか20分で完了してしまう。しかも音声が録れる環境にいれば、誰もが検査を受けられます。全ての人を平等に救う可能性があるのです」

さらに、先ほど挙げた6つのテクノロジーとの関わり方も大きく変わろうとしている。その1つが「拡張クリエイティビティ」だ。Brown氏はその一例として、設計ソフト(CAD)のメーカーであるAutodesk社のソリューションを挙げる。

「例えば、設計者がある設計案を1つ考えるとします。そうすると、AIがあらゆるパラメーターを変化させ、そのデータに対してシミュレーションをかけて、より良い設計案を示します。このパラメーターを変えれば強度が増すとか、材料費の削減が期待できるなど、何千通りも類似案を提示する。これにより、人間の創造性が拡張されるのです」

またテクノロジーによって新たな職業機会の提供も可能になる。それはARの活用がキーポイントになる。

「炭鉱で働いていた人をロボット修理工にするのは、これまででは非常にハードルが高かった。しかし、現代ならARで支援することができます。どの部品をどこに付ければいいのか、作業しながらARが補助するのです。これにより、技能取得にかかる時間やコストが大幅に削減され、あらゆる人に就業のチャンスが巡ってきます。テクノロジーは、人を失業に追い込むだけではありません。チャンスも与えるのです」(Brown氏)

DXに欠かせない「センスメイキング」

Brown氏の話しを聞いた後、株式会社エクサウィザーズ 代表取締役社長 石山 洸氏は「大変興味深い話しですね」と振り返った。

「まず6つのテクノロジーを組み合わせて企業に貢献する”画家”のような役割が登場すると仰っていましたね。これはプロダクトマネージャーの進化版のようなポジションになるかもしれませんが、今後どのような人材がそこに付くか興味深いです」

またBrown氏が触れていた”WIIFM”についても石山氏は言及する。”WIIFM”はいわゆるセンスメイキングの1つであり「企業経営においてイノベーション理論と並ぶくらい、センスメイキング理論は重要だ」と指摘する経営学者もいると指摘した上で、センスメイキングより重要なことを明かす。

「それは”人間関係”です。しかも、それを端的に示す事例もあり、これがまた興味深い。フランスでAIを用いた最新の介護システムを導入する際に、3日間の期間が設けられました。すると、初日に何をするか?普通は、システムの説明をすると思いますが、この時は関係者同士で”ひたすら踊った”らしいです。とにかくお互いの関係性を深めることに1日使う。すると、3日目にはシステムの話ししなくても、ユーザーになる介護関係者はシステムをすんなり受け入れてくれるのです」

テクノロジーは日々進化する。しかし、どんなに進化しようとも、それを受け入れて使うのは人間であることを忘れてはならない。石山氏が挙げた事例は、DXの普遍的な原理を私たちに伝えている。

取材/文:山田雄一朗

※xDXでは他のExaForum2021セッションも記事化しています。以下、併せてご覧ください。
医療従事者と患者がWin-Winになる「医療×AI」の未来像
妄想力を高めて、想像を超えるアイデアを生み出せ。本質的なX(トランスフォーメーション)に向けて

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