デジタルツインとは?メタバース時代における活用方法や具体事例まで解説

デジタルツインとは?メタバース時代における活用方法や具体事例まで解説

目次

ここ最近のメタバーストレンドの高まりに併せて、「デジタルツイン」という言葉への注目度が高まっています。

デジタルツインとは、IoTやAI、ARなどさまざまなテクノロジーを活用して、シミュレーションや将来予測をするための仮想空間技術のことを指します。

具体的にどのような技術で、どんなユースケースが存在するのでしょうか。本記事では、デジタルツインの概要や歴史、要素となる技術、そして活用の具体事例等についてご紹介します。

デジタルツインとは

デジタルツインとは、フィジカル空間(私たちが住む物理世界)にある物体や環境そのものを「デジタルデータ」に変換して収集し、サイバー空間(仮想空間)上でその様子を再現する技術の総称を指します。

現実世界を仮想空間にコピーする技術となることから、「(現実世界と対になる)デジタルの双子」という意味から、「デジタルツイン」と呼ばれています。

人や場面によっては「ミラーワールド(mirror world)」と表現されることもあり、主には現実世界での諸条件を前提にしたシミュレーションを行う際に使われるものとなっています。

よく「デジタルツイン=シミュレーション技術」と捉える方がいますが、半分正解で半分間違いです。シミュレーション技術とは、現実空間で起こりうるものを他の場所(デジタル空間上を含む)で模擬する技術のことです。つまり、デジタルツインはシミュレーション技術のひとつとして存在している技術だと言えます。

デジタルツインの歴史

デジタルツインという言葉は、米イェール大学のデビッド・ゲレルンター(David Gelernter)氏が1991年に発表した著書「Mirror Worlds」 で初めて使われたとされています。その後、当時ミシガン大学に在籍していたマイケル・グリーブス(Michael Grieves)教授がデジタルツインの基本原則を発表し、製造業への応用を提唱したことで、2002年の製造技術者協会で正式に紹介されました。

そんなデジタルツインが技術的に初めて活用されたのは、NASAのアポロ計画で使用されたペアリングテクノロジーだと言われています。アポロ13号で事故が発生したことは有名な話ですが、その際にNASAは13号に似せたレプリカをスピーディーに作成し、それを基にシミュレーションを実施して、地球への帰還までのアクションを正確に式できたというのです。

現在のようにネットワーク回線網が普及しているわけでも、回線が強いわけでもないのでデジタル“全面の”ツインというわけにはいきませんでしたが、それでも現実世界の複製データを用いて高速にシミュレーションして現実世界のアクションいフィードバックした、という点で、元祖デジタルツインであったと言えるでしょう。

2017年には、米調査会社のガートナーがデジタルツインを戦略的テクノロジー・トレンドのトップ10の1つに選んだことで認知が広まり、現代では多くの企業がデジタルツインの活用を進めている状況です。

デジタルツインの前提となるSociety 5.0とCPS

次に、デジタルツインを考える上で知っておくべき、我が国の「Society 5.0」構想とCPSの考え方について、それぞれご紹介していきます。

Society 5.0とは

出典:Society 5.0 - 科学技術政策 - 内閣府

Society5.0とは、「サイバー空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより、 経済発展と社会的課題の解決を両立する、 人間中心の社会(Society)」のことだと、内閣府のページでは紹介されています。

Society 1.0は狩猟社会、Society 2.0は農耕社会、Society 3.0は工業社会、Society 4.0は情報社会と、人類や文明の発展革命に準じて社会も変化してきました。その先に、政府の第5期科学技術基本計画で提唱された新たな社会Society 5.0が誕生したのです。

Society 5.0では、後述するIoT技術によってあらゆる人とモノがデジタルデータを使って、それにより様々な知識や情報が共有されることになります。また、AIが社会全体に浸透することで、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、自動運転をはじめ、様々な社会課題解決のためのアプローチが可能になる未来像が、内閣府のページで語られています。

このように、Society5.0が目指しているのは、経済発展と社会的課題解決の両立です。現代の社会システムではこの両立は困難とされてきましたが、Society5.0ではあらゆる最新技術を活用することで、これを目指すことができるとしているのです。

CPS(Cyber-Physical System)とは

出典:CPSとは | JEITA

このSociety 5.0を技術的に支えるものとして考えられているのが「サイバーフィジカルシステム(Cyber-Physical System、以下:CPS)」です。CPSは、現実世界の多様なデータを収集し、サイバー空間でデータ処理をして分析や知識化を行ったうえで、それらの情報を活用して産業の活性化や社会問題解決に役立てるという役割を担っています。

これまでの情報社会では、分野ごとの合理化・最適化が主な目的でしたが、テクノロジーの進化によりデータの収集から蓄積、解析、結果のフィードバックまでの全てのサイクルを社会規模で可能にしました。

実世界とサイバー空間の連携する社会では、さらに密にデータが連携するため、実世界で抱えるさまざまな社会課題の解決にもつながることが期待できるというわけです。

このように見ていくと、本記事のトピックであるデジタルツインと、日本が掲げるSociety 5.0は非常に密接に結びついた概念であることがお分かりいただけるでしょう。

デジタルツインに必須の技術6つ

ここで、デジタルツインの実現に向けて必須となる技術について、簡単な概要と合わせて6つご紹介します。

クラウドコンピューティング技術

1つ目は、私たちが日々生活をするうえでおそらくは“必ず”使っているであろう「クラウドコンピューティング」です。

クラウドとは、ネットワーク上に存在するサーバーの提供するサービスを、物理的なサーバー群を意識・購入等をせずとも利用できるサービスのことを指します。

クラウド化する前は、私たちはコンピューターのハードウェアやソフトウェアのライセンスを購入し、ソフトウェアに関しては個別にインストールをする必要がありました。しかしクラウド化が一般的になり、信頼性のある安価なクラウドコンピューティングサービスが普及したため、それらのことを個別に実施せずともコンピューティング技術に付随したサービスを享受することができ、事業としても格段に実装しやすくなりました。

ロケーションに左右されずに、情報を取得、加工、共有できる技術として、特に欠かせないものとなります。

IoT技術

IoTとは、建物や機械などが直接インターネットへと接続される技術を総称した言葉です。遠隔であってもモノに対して操作等が可能になり、センサーがより普及すると、究極的にはモノ同士が通信できる状態(Machine to Machine)にもなることから、「モノのインターネット」とも表現されます。

身の回りのあらゆるものが少しずつIoT化していることを、日常生活の中で感じている人も多いのではないでしょうか。IoTにより、生活が便利になるだけではなく、デジタルツインを再現するための高速かつ双方向でのデータ流通を実現する点においても、非常に重要な役割を担います。

AI技術

人工知能として古くから注目されているAI技術ですが、従来は特定の課題にのみ対応できる特化型人工知能技術として、主に機械学習が活用されていました。

それが、2006年に考案されたスタックトオートエンコーダを起源とするディープラーニング(深層学習)などのブレイクスルーにより、AIのできることが格段に広がり、膨大なデータの高速処理や複雑な条件の中からデータを見つけだすことができるようになりました。

このようなAIの発達によって、デジタルツインの活用シーンにおいても、より複雑でリアルなシミュレーションができるようになっています。

xR(VR/AR/MR)技術

VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などの技術の総称を、xRと表現します。昨今でメタバースが盛り上がる要因として、このxR技術の進化が挙げられるでしょう。

VRは仮想空間をリアルの世界のように体験することができる技術で、ARは現実世界に対して、ディスプレイ等を通してデジタル情報を重ねて見せられる技術です。また、MRは現実世界をデジタル情報化し、そこに架空のデジタル情報を配置して自由に操作できるようになる技術です。

このようなxR技術が発展することで、デジタルツインではよりリアルで現実に近しいデータを仮想世界に重ねて、シミュレーション等を実施できるようになるでしょう。

5G通信技術

5G通信(第5世代移動通信システム)とは、次世代の高速通信規格のことを指します。従来比で大容量かつ高速のデータ通信が可能になるので、先述のIoT活用において特に威力を発揮する技術となります。

5G通信が普及することで、街や建物はもとより、通信センサーが内蔵されたモノ一つひとつからの膨大なデータのやり取りが高速で実現するようになるので、より精緻なデジタルツインの運用が可能になると期待されています。

ブロックチェーン技術

ブロックチェーンとは、邦訳で「分散管理台帳技術」と呼ばれるもので、複数のオンライン上のコンピューターにまたがって、一定期間内のさまざまな取引データ(専門的に「トランザクションデータ」と言います)を「ブロック」単位でまとめて記録・管理する、新しいデータ管理技術のことを指します。

2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる人物により発表された論文「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」で、そのコンセプトとなる技術体系が示され、今日に至るまで世界中のエンジニアがこぞって、この論文の理想に基づいたブロックチェーンの開発・運用を行っています。

ブロックチェーンの用途を端的に表すと「記録」にあります。自立分散的に運用され、耐改ざん性があり、かつトレーサビリティが高い記録手段だからこそ、そのようなニーズのあるデジタルツイン活用シーンにおいて期待される技術と言えます。

デジタルツインを構築するメリット5点

デジタルツインを構築することのメリットには何があるのでしょうか。各業界における具体例を紹介しながら見ていきましょう。

シミュレーションの精緻化

ここまでお伝えした通り、デジタルツインの活用により、現実世界のリアルタイムなデータを通して現状を定量的に把握したり、それをベースにより精密に未来をシミュレーションしたりできるようになります。

たとえば製造業の工場ラインを想定すると、その製造ラインを新しい製品用に組み替える場合、まずはデジタルツインを活用して事前にシミュレーションをすることができます。その中で、仮に生産性の高さを判断する際には、いくつかのパターンのラインをデジタルツイン上で再現することで、より生産効率の高いやり方を事前にリサーチすることができるというわけです。

プロジェクトの円滑化とコスト削減

デジタルツインでは検証に必要な環境があらかじめ構築されているので、仮説検証の時間の短縮につながります。時間短縮により、プロジェクトの円滑化につながり、コスト削減にも貢献できます。

製造業の管理部門の業務では、デジタルツイン上で遠隔の監視までできれば何かトラブルが起きた時も出向く必要がなくなります。デジタルツイン上で現状把握と対策、修復対応をすることで時間の短縮やコストの削減ができ、管理部門は更なる生産性アップに注力できるので、事業の発展に貢献できるでしょう。

予知保全に役立つ

工場内の「予知保全」にも、デジタルツインは役立ちます。予知保全とは、工場内の機械等の故障や不具合をあらかじめ検知し、常に最適な状態を維持・管理することを指します。

これまでは製造ラインにおけるトラブルが発生した際には、現場や顧客のフィードバックなどをもとに原因の究明や対応を行う「事後保全」や、定期的な点検・メンテナンス等を行う「予防保全」が行われていました。

デジタルツインを導入することにより、製造ラインを走らせながら並行して製造機器の稼働状況を常時把握することができるので、手動による定期点検等を行わなくても未然に故障予測が行うことができるというわけです。

品質の向上

上述のとおり、予知保全による商品の製造が可能なので、デジタルツインを活用すると自ずと品質が向上します。

また、複数のシミュレーションを並行して実施できるので、テストの回数も従来比でより多く実施でき、結果としてさらなるアウトプットの品質向上につながります。高い品質を担保することで、顧客の満足度アップにも貢献するでしょう。

アフターフォローの充実化

商品・サービスが顧客の手に渡った後も、センサー等からの情報をデジタルツインと連動させることで、問合せ等の迅速化や適切なタイミングでの事業者サイドからのアナウンス等が可能となります。

たとえば営業職を考えた場合、製品のバッテリーや部品の寿命予測に合わせて適切なタイミングでサポート案内を顧客へと自動送信できるので、多数の顧客把握に時間が取られず、さらに適切なアフターフォローの提供ができます。

サポートの充実度が、デジタルツインの導入でより高まるでしょう。

メタバース とデジタルツインの関係

ここまでデジタルツインの概要についてご紹介していきましたが、メタバースとの違いは何になるのでしょうか。

メタバースは「仮想世界」全般のことを指し、参加者がインターネットを経由したバーチャル空間上で自由に行動できる場として活用されているものです。メタバースは必ずしも現実世界と連動したデジタル空間である必要はなく、全くのオリジナルのデジタル空間のメタバースもあれば、一部の区画に現実空間と連動させたメタバースもあります。また、全てが現実空間と連動したメタバースも存在します。

デジタルツインは現実空間との連動が前提になる技術の概念なので、仮想空間という切り口で考えると、デジタルツインはメタバースの一部を構成する要素であると言えるでしょう。

デジタルツインの活用例3選

最後に、実際にデジタルツインを活用しているプロジェクトを3つご紹介します。

Project PLATEAU(国土交通省)

2020年12月に国土交通省が発表した「Project PLATEAU」は「都市情報を持った3Dモデル」を構築するものとして、日本国の国家プロジェクトとして推進されているものです。

2021年度は全国56都市の3D都市モデルのオープンデータ化を完了させていますが、2022年度は新たに3D都市モデルの整備、活用システムの構築に向けて取り組みを進めています。既に公式サイト上では、3D都市モデルのマニュアルや仕様書をオープンにしており、それらに紐づくシュミレーション等の事例も紹介しています。

っこでは、すでに78件のプロジェクトが採択されており、なかでもデジタルツインを活用したものには「AR屋外広告の管理システムを実証」「ARによる災害時の現状把握及び救援活動支援の実証」が採択されています。

まちづくりのDX基盤の構築が今後期待されるでしょう。

スマートコンストラクション(コマツ)

スマートコンストラクションとは、コマツが進める建設領域のDXソリューションです。請け負う建設生産プロセス全体のデータをデジタル上でつなぐことで、現場のデータを定量的に見える化し、安全で生産性の高い未来の現場を創造していくものとなっています。

ここで積極的に活用されているのが、クラウドコンピューティングの雄であるAWS(Amazon Web Service)です。AWSを活用しながら、現場でIoTを駆使することで、現場と同じ世界をデジタル上に再現し、施工管理や運用の効率化を実現しているというわけです。

地球のデジタルツイン(blackshark.ai)

より引いた目線でのプロジェクトとして特記したいものが、世界規模のデジタルツインを開発するblackshark.aiです。同社では、衛星データとAIをベースに「地球規模のデジタルツイン」を生成し、グローバルで地理空間や環境シミュレーションを利用できるプラットフォームを構築しています。

2021年12月には、メタバース・イノベーションを推進するために2,000万ドルの資金調達も発表しており、世界中の地理“空間”の情報が整理される日も遠くないかもしれません。

多様な産業へのデジタルツインの応用に向けて

デジタルツインそのものは製造業等に従事されている方であれば、ある種当然のようにご存知のものだとは思いますが、一方で製造等以外の分野での活用が可能になってきているのは、ここ数年の爆発的な技術革新によるところが大きいでしょう。

より現実に即したシミュレーションやトラブル予測が可能となることから、多くの企業が大小さまざまな形でデジタルツインの導入を始めています。デジタルツインは、アフターサービスにおいても活用の幅が広がっているので、今後もますます注目されてくるでしょう。

企業のDXプロジェクトを検討する際には、このデジタルツインも一つの選択肢として考えてみてはいかがでしょう。

文:xDX編集部 画像提供:Getty images

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