DX時代の経営者に必要なこと、それはインプット能力と採用力|FABRIC TOKYO

DX時代の経営者に必要なこと、それはインプット能力と採用力|FABRIC TOKYO

目次

組織の評価制度を含め、D2Cを基軸とするサプライチェーン全体の変革を続ける株式会社FABRIC TOKYO。日本全体に広がる自前主義文化によって、DXの成功例がなかなか誕生しない土壌の中、同社では丸井グループとの協業をはじめ、大手小売やメーカー企業等とのポジティブなオープンイノベーションを積極的に進めている。

今回は、そんなFABRIC TOKYOが、現在のDX時代に対してどのような姿勢で事業展開を考えているのか。同社の理念や具体的な施策、DX時代における経営論について、引き続き、代表の森雄一郎氏にお話を伺った。

※この記事には前編があります。
▶︎前編はこちら

株式会社FABRIC TOKYOとは

「Fit Your Life.」をブランドコンセプトに、体型だけでなく、顧客一人ひとりの価値観やライフスタイルにフィットする、オーダーメイドのビジネスウェアを提供するブランドを展開。一度来店し、店舗で採寸した体型データがクラウドに保存されることで、以降はオンラインからオーダーメイドの1着を気軽に注文することができる。リアル店舗も自社で展開し、関東・関西・名古屋・福岡の合計14店舗を運営中。2020年10月からは、大手小売・メーカー企業を中心に、新規ブランドの立ち上げや売り場の新たな体験価値創出などを中心に支援を行うパートナー型コンサルティングサービス「RETAIL X」の提供も開始している。

インタビュイー

森 雄一郎[Yuichiro Mori]
株式会社FABRIC TOKYO
代表取締役CEO

1986年生まれ岡山県出身。
大学卒業後、ファッションイベントプロデュース会社「ドラムカン」にてファッションショー、イベント企画・プロデュースに従事。

その後、ベンチャー業界へ転向し、不動産ベンチャー「ソーシャルアパートメント」創業期に参画した他、フリマアプリ「メルカリ」の立ち上げを経て、2014年2月、カスタムオーダーのビジネスウェアブランド「FABRIC TOKYO(旧・LaFabric)」をリリース。

「Fit Your Life.」をコンセプトに、顧客一人ひとりの体型に合う1着だけではなく、一人ひとりのライフスタイルに合う1着の提供に挑戦中。

2〜3年に1回のペースでバリュープロポジションをアップデート

--DX時代の難しさって、どこにあるとお考えですか?

例えばですが極端な例として、DXを進めようとなった時に、往々にして起こるのは、ECサイトを作るのが仕事になっちゃうということです。ECサイトって砂漠の中にお店を建てるようなものなので、誰にも見つけられないんですよ。

本来的にはECサイト単体ではなく、その入り口・出口を含めた全体のカスタマージャーニーをどう設計するかが大事だし、設計したあとは、クオリティレベルがそれぞれ高いプロダクトを
実現しなければいけないわけです。

そういう意味で、DX時代は経営の難易度がすごく高いと感じます。

--ずばり、DX時代の経営で必要なスキルやノウハウって、何であると考えられますか?

難しい質問ですが、我々としては2つだと思っています。「インプット能力」と「採用力」です。

--どういうことでしょうか?

「インプット能力」とは、すなわち情報収集力のことです。一次情報の把握からテクノロジーへの理解まで、総合的に読み取る概念としての能力です。

VUCAでスピードが求められる時代において、軌道修正力や仮説検証力が非常に大事なので、そこのベースとなる情報収集力はすごく大事なんじゃないかなと思っています。

そこを的確に捉えて、自社のフィールドで自分たちのポジショニングやバリュープロポジションを定義して、それをしっかりとプロダクトへと落とし込んでいく。そこで今度は、「採用力」が強く求められることになると考えています。

--FABRIC TOKYOの場合、バリュープロポジションをどのように決めているのでしょうか?

明確に時期を決めているわけではないのですが、2〜3年に1回のペースでアップデートしていますね。ちょうど今年アップデートしています。

特に最近は、ビジネスの消費期限が短くなってきているので、なにごとも2年も経つと陳腐化してしまいます。必然的に競合が増えますし、新規性としてもお客様は慣れちゃうわけです。
だからこそ我々としては、常にアップデートを行っていき、常に先進的なことに取り組んでいるワクワクするブランドだよね、というイメージをもってもらえる企業にしていかねばならないと考えています。

プロダクトマーケットフィットを実感したリアル店舗

--それぞれのバリュープロポジションの変遷も教えてください。

2014年時点の最初のバリュープロポジションは、「オンラインで簡単で誰でもオーダースーツを作れる」というものでした。この時はまだリアル店舗をやっていなかった時代で、かつスーツやシャツをオンラインでオーダーメイドしたことのある人自体も少ない頃です。

ただこれだとプロダクトマーケットフィットしなくて、フィットしたなと実感したのが、リアル店舗を作ったときでした。

--いきなり出店されたのですか?

いえ、まずは2015年11月に初めてのポップアップストアを開きまして、そこで手応えを感じて、翌年の2016年1月に初の常設店を出店しました。

それまでFABRIC TOKYOを使いたいと思っても、オンライン採寸のハードルや敷居の高さで「買えない」というお客様がたくさんいました。興味自体はもっていただけていたので、会員やメルマガへの登録だけはしてくれていたりとか、Facebookの「いいね」とかはしてくれていたのですが、その人たちが実際に購入までには至ってくれませんと。

そんな中、ポップアップの開催で過去最大のKPIを記録しまして、そこで出店が正式に決定。「やはり店頭でプロの人に測ってもらったらいですね」というフィードバックを受けることになりました。

(画像出典:FABRIC TOKYO会社紹介資料

--なるほど。そこが転機だったと。

はい。その時から我々はのバリュープロポジションが、「一度の採寸で、オンラインで、簡単に買えるオーダーメイドブランドスーツ」になったわけです。

さらにもう一つ、今度は2018年にブランドリニューアルをしたのですが、その際に大切なこととして改めて明確に示したのが、ライフスタイルに寄り添う、ということです。

それまでの「Wear Your Personality」というブランドコンセプトから、現在の「Fit Your Life.」、つまりはファッションだけではなく、お客様の生活そのものにフィットすることを明示したのです。

他企業は「Fit Your Body」、我々は「Fit Your Life.」

--なぜ、ファッションではなくライフスタイルなのでしょうか?

FABRIC TOKYOの理念がそうだからです。我々は「だれもが自分らしいライフスタイルを自由にデザインできるオープンな社会をつくる」をビジョンとして掲げていまして、ブランドコンセプトもそれに合わせた形になります。

ここには、ライフスタイルは自分でデザインして欲しいという想いが込められていまして、社名も、実はFABRIC TOKYOの前の創業時は「株式会社ライフスタイルデザイン」だったんです。

他企業は「Fit Your Body」なのですが、我々はファッションを提供しているのではなくて、お客様のことを本当によくわかった上で、お客様が本当に満足する「体験」を提供したいと思っているんです。

有楽町電気ビル1階の体験型店舗「b8ta」に設置されたSTAMPブランドのSCAN BOX。1.5坪のスペース内で、全身約500万箇所をスキャンできるようになっており、スキャンしたデータはクラウドに保存され、 ジャストフィットした製品を気軽にオーダーできる。

--先日、有楽町電気ビルにあるSTAMPのSCAN BOXに行ってきました。「体験」を重視されているとのことで、こちらはどんな体験を想定されての設置なのでしょうか?

STAMPを体験されたお客様が共通して言うのが、「履いた瞬間に感動した、びっくりした」「フィットするってこういうことなんだ」「むしろこれまで履いていたジーンズはフィットしてなかったんだ」といったものです。

足を入れた瞬間に感動する。そういう顧客体験なんですよ。それで口コミで広がる。
LINEからの登録しかできないユーザー動線で、かつ半紹介制なので、基本的にはITリテラシーが高い人に使っていただいている印象です。

--このような新しい生活習慣って、ライフスタイルとしてどう定着するイメージでしょうか?

自動採寸だけを切り取ったら、ぶっちゃけいらないと思っています。もちろん仕事上でやるかもしれませんが、消費者として真に求めているわけではないじゃないですか。

求めているものって、その先の商品や体験だと思うので、自動採寸はあくまで、そのための一手段だと捉えています。

もちろん、その前提で、将来的にはプリクラみたいに全世界に設置したいとは思っていますよ。

テクノロジーはあくまで手段のひとつ

--御社は「テックカンパニー」を標榜されていますが、テクノロジーというものをどのように捉えているのでしょうか?

今お伝えした通り、テクノロジーはあくまで一つの手段だと捉えています。我々はファッションを題材にしている会社なので、ファッションをテクノロジー起因で買うことはないと思っています。

体験的に使いやすいとか、欲しいからそれを使い続ける、ダイレクトにお客様にコミュニケーションできるといった形で、一つの手段として捉えているのであって、テクノロジーにお客様がお金を払ってくれている、という認識はないですね。

--創業時からそういう考えなのでしょうか?

そうですね。基本的にファッションはカウンターカルチャーなので、現在のテックトレンドとは真逆な、ノームコアみたいな方向にいったりするものだと考えます。だから、我々も超アナログなことをやったりしています。真夏に採寸にいらっしゃったお客様にビールをお出ししたり。お酒を出してコミュニケーションをとることで、日々のファッションの悩みを伺えたりするので、インサイトを深めたりとかしています。もちろん、コロナ前の話ですよ。

--それはいいですね!

あとはストーリーテリングも大事だと思っています。

例えば2016年にリリースした、新商品「THE ROOTS」シリーズの第1弾「#001水の都」(現在のAUTHENTICシリーズ)は、我々の一番のヒット商品です。

これ、水がきれいな地域として有名な岐阜県大垣市で生産されている生地を使っています。昔から生地生産が盛んな土地で、水がキレイなのでしなやかな素材になるし、染色もキレイなんです。バブル崩壊で、たくさんあった生地工場がどんどんと倒産していった中で、いまだに残っている数カ所の工場と連携をして、大垣の水だけを使ったウール素材によるスーツをご提供しているわけです。

--なんともエモいお話ですね。

お客様は、そういうところに魅力を感じていただいていると思っていて、テックはこのようなストーリーを伝える手段だと感じています。

DX時代、人やリアルの役割は「五感での体験」提供

--デジタルネイティブなリテールカンパニーの旗手として、これからのお取り組みやビジョンについても教えてください。

シンプルにお答えすると、うちの強みをテック使って唯一無二のブランドにしていきたいなと思っています。

先ほどお伝えした通り、我々はものづくりをすごく大事にしているし、そのストーリーの企画もすごく大事にしています。ファッションブランドだけを立ち上げても、ほとんどは誰にも知られずに撤退してしまうことになるので、だからこそ、テクノロジーを使ってお客様へのアプローチを徹底的に行いたいと思います。

ダイレクトにアプローチしたり、パーソナライズしてインフォーメーションを送ったり、体験設計などもパーソナライズしたり、購入体験だけでなく利用体験をカスタマイズしたり。

--なるほど。DX時代において、人の役割をどう捉えていますか?

すごく情緒的な表現をすると、人が接客することで、しっかりと体温の乗ったサービスにしたいという感じです。

ただ、僕自身が理系ということもあり、もう少しサイエンスしたくて、その中で考えているのが「五感での体験」です。五感でブランド体験を設計すると、記憶に定着しやすい。記憶に定着すると、リピーターになってもらいやすい。なので、ビジネス的にもメリットがあるわけです。

5つ揃った時点で、ものすごく強固なブランド体験ができると思っていまして、だからこそリアル店舗は絶対に欠かせないし、アパレル業界においてリアル店舗は絶対になくならないと考えています。

--ありがとうございます。それでは最後に、読者にメッセージを一言お願いします!

まず申し上げたいのが、FABRIC TOKYOへのご来店、そして会社にご興味を持っていただいた方はご入社を、それぞれお待ちしています、ということです(笑)

いや、本当にそう思っていまして、うちほどスムーズにDXに取り組んでいる会社はあんまり聞いたことがないですし、柔軟性もありますし、テクノロジーのレベルも上がってきているので、今後やることもたくさんあります。広範囲でサプライチェーンのデジタル化を学べるし、成果も出しやすいと考えています。

また、顧客体験をしていただくのもすごく大事だと思っているので、ぜひ、全然買わなくてもいいので、体験しにきていただけたらと思っています。
あと最後に!RETAIL DXという、うちのCFOが執筆した本があるので、それもぜひ読んでみてください。

編集後記

インターネットネイティブなサプライチェーンを構築するためには、それに最適化された組織のあり方が必要不可欠。理論だけを考えれば、そりゃそうだとなるでしょうが、では実際に実践できているかと問われると、ほとんどの企業はそこまで抜本的なCX(コーポレート・トランスフォーメーション)に着手すらできていないのではないでしょうか。

長いサプライチェーンであっても、適切な評価制度を整えて、D2Cブランドとして有機的に機能する環境を整えているからこそ、DX時代における「リアルの価値」が際立って貴重なものだと感じるのだろうと、お話を伺っていて実感しました。

取材/文:長岡武司
撮影:編集部

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