パン屋と販売店、そして食べる人の「三方よし」を実現するプラットフォームを目指す|パンフォーユー

パン屋と販売店、そして食べる人の「三方よし」を実現するプラットフォームを目指す|パンフォーユー

目次

学校帰りにいつも買っていた駅前のパン屋さん。子どもの頃から変わらない味のクリームパンを出す実家近くのパン屋さん。日曜の朝食の定番になっていた、隣町のちょっと高級なフランスパンを焼くパン屋さん etc...

パン好きな人もそうでない人も、誰しも記憶に残るパン屋というものがあるのではないだろうか。都会では様々な食にアクセスすることができるものの、そういった「記憶の味」となった地域のパンに触れる機会は、その地域にでも行かない限り、なかなか難しいものである。

今回は、そんな地域のパン屋さんのパンを、いつでもどこでも美味しく食べることができるサービスを提供する株式会社パンフォーユーについて。パン業界の構造的なDXを通じて、パン屋と販売店、そして買い手である私たちの三方よしを実現するプラットフォームを展開している、群馬県桐生市にあるベンチャー企業だ。

同社はパンにまつわる世界をどのようにトランスフォームしようとしているのか、代表の矢野健太氏にお話を伺った。

株式会社パンフォーユーとは

https://panforyou.jp/
「地域パン屋のプラットフォームとして、地域経済に貢献し、新しいパン経済圏をつくる」ことを事業ミッションとして、個人向け冷凍パンのサブスクサービス「パンスク」や法人向け冷凍パンの福利厚生サービス「パンフォーユー オフィス」の企画・運営のほか、パン屋向けSaaSプロダクトとなる「パンフォーユー モット」や、パンを小ロットから発注できるOEMプラットフォーム「パンフォーユーBiz」、冷凍庫さえあればパン屋を開業できる「ゴーストベーカリー」などを展開している。

インタビュイー

矢野 健太[Kenta Yano]
株式会社パンフォーユー
代表取締役

1989年生まれ。群馬県太田市出身。京都大学経済学部卒業後、新卒で電通入社。その後、教育系ベンチャーを経て、地域系NPOへ。パンフォーユーの企業ビジョンに「魅力ある仕事を地方に」を掲げ、2017年1月に株式会社パンフォーユーを設立し、代表取締役に就任。2018年5月にMBOを実施し、冷凍とITを活用して地域のパン屋さんと全国の消費者をつなげる現在のプラットフォーム事業モデルへ。好きなパンはバゲット。

NPOの行を通じて、人生で初めて「おいしいパン」に出会った

--まずは、矢野さんのパンフォーユー創業に至るまでの経緯について教えてください。

新卒では広告代理店に入社しまして、名古屋の方で電車の中吊りや駅の広告などを担当していました。そこで3年間勤めた後に、まずは東京にある教育ベンチャーに転職して、新規事業の立ち上げを担当することになりました。

でも、並行して何か地元にもビジネス面で貢献したいなと思っていて、毎週のように地元である群馬県桐生市に戻っていました。その後、桐生で若者や子育て世代の暮らしと仕事を支援している、キッズバレイというNPOに声をかけてもらい、本格的に地元へと戻る形で転職をすることになりました。

--そこではどんなことをされていたのですか?

事務局長として、アフタースクールのカリキュラムなどを作っていました。教育ベンチャーにいた時もそうなのですが、もともと都市と地方、もっというと裕福な家庭とそうでない家庭との間にある「教育の格差」をどうにかしたいという思いがあって、その仕事についていました。

そこで出会ったのが、パンの世界でした。

--どういうことでしょう?

NPOなので法人寄付の窓口も担当していたのですが、その中に冷凍パンメーカーさんがいました。 そこの会社さんのお手伝いをするなかで、人生で初めて「おいしいパン」に出会いまして、パンの世界がすごく面白いなと。

先ほどお伝えした通り、地元に貢献がしたいという思いが強かったこともあり、冷凍技術とパンを活用したパンフォーユーを2017年に立ち上げることになりました。

オフィス向けサブスク事業がスタート

--ここで改めて、パンフォーユーのビジネスの全体像を教えてください。

パンフォーユーでは「新しいパン経済圏をつくり、地域経済に貢献する」を事業ミッションに掲げており、パンを作る人と売る人、および食べる人それぞれに最適化したサービスを展開しています。

提供:パンフォーユー

--これを拝見すると、現時点では全部で5つのプロダクトがあるということですね。

はい。まずは2018年10月に、オフィス向けのサブスクサービス「パンフォーユーオフィス」を展開しました。こちらは、全国各地の「地域のパン屋さんのパン」を、オフィスの冷凍庫に保存して好きな時に社員が食べられる福利厚生サービスとなっています。

そこから2年半後の2020年2月に、今度は「パンスク」という、全国のパン屋さんのパンが冷凍で自宅に届く個人向けの定期便サービスを開始しました。

--BtoBのサブスクの後に、BtoCのサブスクをスタートされたということですね。

その後、今度は2020年5月に、パン屋向けに独⾃開発した業務用SaaSプロダクトとなる「パンフォーユーモット」をリリースしました。要するに、パン屋さんが簡単にECへと参入できるシステムで、現在はパンスクで使えるものなのですが、今後は他チャネルでも使えるようにする予定です。

そして、2020年9月には、パンを小ロットから発注できるOEMプラットフォーム「パンフォーユーBiz」もスタートさせ、さらに12月には、職人や焼成機械などがなくでも冷凍庫さえあればパン屋を開業できる「ゴーストベーカリー」を開始しています。

いずれのサービスも、「パンフォーユー独自の冷凍技術を駆使したパン」がポイントになります。

パン屋の出荷関連業務を効率化する「パンフォーユー モット」

--後半3つのプロダクトについて、もう少し詳しく教えてください。まず、パン屋さん向けSaaSプロダクトの「パンフォーユー モット」とは、何を解決するサービスなのでしょうか?

パン屋さんがパンをEC販売する時、お店側で何をやっているかというと、大量の注文に対する出荷手続きや、そもそものシステム登録作業です。すでに何店舗もチェーン展開しているお店ならともかく、個人店でこの作業は非常に煩雑です。

なので「パンフォーユー モット」では、これらの手続きや作業、管理を不要にして、初期費用をかけずにEC展開までできるようにしているものです。

--具体的にはどんな機能があるのですか?

「パンスク」を例にご説明すると、発送用の伝票作成や、資材準備などが一切不要になります。弊社では全国各地の運送会社とシステム連携しているので、冷凍でパンを発送する時に必要となる伝票記入や送料の支払い管理などが必要ありません。

具体的には、冷凍用の袋や出荷用の箱・パンフレットなどの同梱物といった、様々な資材とあわせて、作成が大変な原料・カロリー表記のラベルも、弊社が一つずつヒアリングして作成します。

なので、パン屋さんにんやってもらうことは、とにかくパンを焼いて冷凍し、箱に詰めて集荷に来てもらうだけです。

--なるほど。システム導入前は、すごく煩雑なことをしているんですね。

そうなんですよ。また、Web上であらかじめ受注スケジュールの把握ができるので受注管理専用のスタッフも不要ですし、パンスク経由で提供したお客様からのメッセージも見ることができます。特に全国のお客様からの生の声を見れる、というのは実店舗ではなかなかないものなので、大変ありがたいとのフィードバックをいただいています。

「ゴーストベーカリー」で小スペース開業も支援

--パン屋さんと販売店を繋ぐサービスについても教えてください。まず、「パンフォーユーBiz」とはどういうサービスなのでしょうか?

こちらは、飲食店やスーパー、イベントなどの様々なニーズに合わせて、焼成済みの冷凍パンを全国のパン屋さんからお届けするOEMプラットフォームになります。1種類100個の少数から注文をすることができるので、例えばスーパーの店頭でパンの販売試験導入などに活用していただくことができます。

パンを一定のロットで販売したいパン屋にとってのメリットはもちろん、美味しいパンの展開を考えている販売店サイドにとってもニーズのあるサービスだと捉えています。

--なるほど。パン屋さんにとっては店頭だけでなく、より大きな販路を展開するための仕組みということですね。もう一つ、「ゴーストベーカリー」についてはいかがでしょうか?

こちらは、冷凍庫さえあれば、誰でもどこでもパン屋さんを始めることができる、開業支援サービスになります。

--冷凍庫だけ、ということは、一般的な店舗もいらないということですか?

そうです。弊社が用意している全国各地のパン屋さんの焼成済み冷凍パンを提供することになるので、オーブンなどを使う必要がなく、駅ナカスタンドやスタジアムグッズ売り場などの狭小スペースや、マンションの共有スペースといった火気厳禁の場所でも、冷凍庫を用意するだけで開業することができます。

--まさに、最近話題のゴーストキッチン(シェアキッチンなどによるデリバリー販売メインの飲食店舗)みたいな仕組みですね!

特にゴーストベーカリーの場合、冷凍パンが商材になるので、賞味期限が1ヶ月以上あり、フードロス対策にも有効です。冷凍のままで販売するも良しですし、すぐに食べられるように自然解凍して販売してもいいので、ニーズに合わせた販売形態をとっていただけるでしょう。

パンフォーユー初のゴーストベーカリーとなった冷凍パン専門店「パンフォーユー カジワラ」(2020年8月末〜10月末の期間限定展開)

パンフォーユー は、もともとIT企業ではなかった

--パンビジネスとなると、一般的にはtoC向けサービスをイメージしますが、最初はオフィス向けの「パンフォーユーオフィス」ということで、toB向け展開からのスタートだったんですよね。それはなぜなのでしょうか?

この会社を始めた時から「パンは冷凍させて流通させた方が美味しい」ということを、一つのキーメッセージとして掲げているのですが、冷凍での展開方法で一番喜ばれるのはどこかと考えた時に、2018年5月に試験展開した答えがオフィス向けだったのです。

おっしゃる通り、もともとは個人向けを考えていたのですが、冷凍パンを個人宅で買うというのは、当日としては習慣として弱く、オフィス向けからスタートするのは必然でした。

--確かに、冷凍パンを自宅で買うという習慣はないですね。

ちょうどその頃は、コストコさんが出し始めたくらいのタイミングだったと記憶しています。

あと、2018年頃って「送料無料」が当たり前みたいなところがあって、冷凍パンの流通で送料無料は厳しいものがあったので、タイミングとしても違うなと感じました。

--オフィス向けの展開をした中での気づきとしては、いかがでしたか?

2年後のパンスク展開も含めて、冷凍パンのプラットフォームということで始めていたわけですが、結論として、「冷凍」だけではローカルのパン食を解放することには繋がらないと感じました。そして、それに対する打ち手が、先ほどのパン屋さん向けSaaSプロダクト「パンフォーユー モット」になります。

--といいますと?

先ほどもお伝えした通り、パン屋さんとしては、冷凍から配送伝票の処理まで、やるべきことが何かと煩雑で量も多い状況です。この部分をITで効率化しないと、そもそも出荷できないということが、オフィス向けの展開で見えてきました。このタイミングで、まさにDXの投資へと一気に舵を切ることになりました。

少なくとも「パンフォーユーオフィス」と「パンスク」のタイミングではITの会社ではなかったのですが、パンフォーユー モットのタイミングで、初めて本格的にIT投資を始めることになりました。

取材/文:長岡武司
撮影:編集部

▶︎後編記事につづく

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