【石山アンジュ】社会のDXを進めるために「ミレニアル世代の声」が必要な理由

【石山アンジュ】社会のDXを進めるために「ミレニアル世代の声」が必要な理由

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私たちを取り巻く「法律」。日本は法治国家であり、国家における全ての決定や判断は、国家が定めた法律に基づいて行われる。

しかし、いざ新たなことにチャレンジしようとするとき、その存在をどこまで意識しているだろうか。世の中では、DXの必要性が叫ばれ、イノベーティブなサービスをローンチしようと挑戦する起業家も増えているが、もしそのサービスが「法律」や「規制」の問題にぶつかったら、どうすればいいのだろうか。

実際、シェアリングエコノミー(以下、シェアエコ)のサービスの中には、海外で普及が進んでいるにもかかわらず、日本では法律や規制の関係で展開に苦戦しているサービスもある。そして、これにより、イノベーションの芽が潰れているケースもあるかもしれない。

このような社会課題を解決しようと、2018年10月にある団体を立ち上げた社会起業家がいる。それが、石山アンジュ氏だ。石山氏の存在は、メディアなどを通じてご存知の方も多いだろう。

石山氏は、シェアリングエコノミーの推進やコメンテーターとして活躍する一方で、一般社団法人Public Meets Innovation(以下、PMI)の代表理事を務めている。今回は社会起業家として活動する石山氏にスポットを当て、全3回に渡ってDXを実現する社会のあり方を考える。

第1回目の今回は、石山氏がなぜPMIを立ち上げたのか、その背景に迫る。

「Public Meets Innovation」のプロフィール

新しい「公」=New Public を掲げ、2018年10月に誕生したミレニアル世代のシンクタンク・コミュニティ。
公共イシューに向き合う官僚、弁護士、ロビイストらがイノベーターと協働しながら、 現代社会の現実や本質を見抜き、未来や社会思想を構想する「ビジョンメイキング」と、新たなアイデアを社会実装する手法「ルールメイカー」を創出し、この国の未来の景色を変えることをミッションに活動を行っている。

インタビューイー

石山アンジュ


一般社団法人シェアリングエコノミー協会 常任理事として、規制緩和・政策推進・広報活動に従事。総務省地域情報化アドバイザーほか厚生労働省・経済産業省・総務省などの政府委員も多数務める。2018年10月ミレニアル世代のシンクタンク一般社団法人Public Meets Innovationを設立。ほか羽鳥慎一モーニングショーコメンテーター NewsPicks「WEEKLY OCHIAI」レギュラーMC出演を務めるなど幅広く活動。世界経済フォーラム Global Future Council Japan メンバー。著書に「シェアライフ-新しい社会の新しい生き方(クロスメディア・パブリッシング)」がある。

イノベーティブなサービスが直面する課題

ーーPMIを立ち上げた経緯を教えてください。

石山 私はリクルートに新卒で3年半働いた後、シェアリングエコノミーという新たなビジネスモデルに惹かれ、スキルのシェアリングサービスを提供する株式会社クラウドワークスに経営企画担当として入社しました。

当時は上場直後で、IRや他社とのアライアンス、広報など経営企画業務全般を担当していましたが、その1つに、クラウドワークスが加入していた経済団体や業界団体などの渉外業務もありました。その時にシェアリングエコノミー協会の立ち上げに関わり始めたのもこの頃で、途中からは週の数日出向をしていました。

この時感じたのは「ベンチャー企業は創業から法律や政策に触れる機会がほとんどない」ということです。

ビジネスモデルなどが新しいがゆえに、まだ法律が存在しない領域の事業や、適法内ではあるものの、間接的に細かい規制に触れる可能性がある事業などがあります。

創業時から規制課題が明確にあるベンチャー企業は、最初から弁護士やロビーチームを抱えていますが、そうではない企業は、知らない間に自分の業界に関連する制度や政策の議論が進んでしまっているということもあります。

またIPOをしたフェーズあたりで、初めて業界の安心安全に関する環境整備や消費者トラブルに対する取り組みなどの期待が、政府からかけられることもあるでしょう。

「ベンチャー企業と行政の距離が遠いこと」。これは、日本でイノベーションを加速していく上で大きな課題になると感じました。

ーー法律や規制の課題とは、具体的に何を意味するのでしょうか?

そもそも適した法律やルールがなく、特にCtoCビジネスなど、これまでは考えられなかった枠組みでビジネスを展開しようとする際に、課題が浮き彫りになります。

例えば、ミールシェアというサービスが海外にはあります。これは、家庭料理のシェアリングサービスで、ユーザーは、一定の金額を支払えば個人が作った料理を食べることができます。すでに、海外ではいくつものサービスが立ち上がっています。

しかし、これを日本で実現しようとすると非常に難しい。なぜなら、日本にはミールシェアに適した法がないからです。食品衛生法上、一般家庭で調理した料理を不特定多数の人に販売する行為は、飲食店営業許可がなければ行うことができない。一般家庭のキッチンを飲食店と同様に保健所に衛生許可の申請をしたり、調理場に火災報知器を取り付けたりするのは現実的ではありません。

このように、CtoCをビジネスを日本で展開する場合、BtoCビジネスを念頭に策定された業規制に従う必要があります。シェアリングエコノミーは、個人が主体になって行うことがほとんどです。多くの法律や制度が個人間の取引を想定してつくられておらず、個人をサービスの提供主体とする、様々な新しいビジネスモデルの妨げとなっているのです。

しかし、一般的に、法律をつくるのには数年単位で時間がかかります。事業者としては、事業スピードに法制化が追いつかないまま、クローズする判断を余儀なくされてしまうケースもあります。これでは社会を変革するようなテクノロジーやイノベーティブなビジネスも潰れてしまいかねません。

法律が制定されるには、社会背景や政府の方針を踏まえて、法律を作るべき理由となる「アジェンダ」が求められます。シェアエコなら、いわゆる「民泊新法」が良い例です。インバウンドの観光客が増え続け、政府も訪日外国人観光客の目標数を設定しました。しかし、その方々が宿泊できる施設が圧倒的に足りない。このようなアジェンダができたことで、法整備が一気に進みました。

「シルバー民主主義」に、風穴を開ける方法

ーーシェアリングエコノミーの中でも、ライドシェアのように法律の壁によって広まらないビジネスもあります。

ライドシェアは道路運送法第4条、いわゆる「白タク」の問題に引っかかってしまいます。またタクシー業界の政治への影響力も、非常に大きいです。古い歴史をもつ業界の多くは、長い間、業界団体を運営し、政治家とのリレーションを構築してきました。一方でミレニアル世代が担い手の中心となるベンチャー企業は、業界団体がなかったり、そもそも有権者人口の中でマイノリティの世代です。

このように、日本の政治における構造的な問題も、世の中のイノベーションやそれによって起こるDXを阻害する要因になっています。さらに、国会議員の高齢化が進み、若い世代の投票率が低い「シルバー民主主義」の日本では、イノベーションを促進するために法律を変えるなどのアクションが取りづらくなっています。

この問題を解決するためにどうすればいいのか。行き着いたのがPMIの設立です。半年ほど準備期間を経て、2018年10月に設立しました。

ミレニアル世代の声を発信して、社会変革の機運を高める

ーーこの社会問題をクリアするために、PMIはどのようなアクションを取ろうとしているのでしょうか?

PMIは、次の50年の当事者であるミレニアル世代を中心とした国家公務員、弁護士、ロビイストらが、各業界のイノベーターらと協働し、社会のイノベーションを目指していく官民コミュニティです。

正解のない時代の道しるべとなる思想・価値観を提示するとともに、ひとりひとりがその実現に向けた主役となれるよう、政策、テクノロジー、文化・社会規範といったルールの在り方を一緒に考え、世の中に発信していくことを通じて、未来へとつながる「今」を変えていくことを目的としています。

そのために、まずは、官と民の距離を縮め、フラットにつながり相談ができるようなコミュニティをつくっています。

先ほどお伝えしたとおり、ベンチャー企業は政策立案に関わる機会がほとんどありません。一方で、中央官庁の官僚の方々も民間企業で働いた経験などがなくベンチャー企業の現場感がほとんど無い。日本のトップクラスの大学に入学して、国家公務員試験を受けて、合格したら入省してキャリアを歩んでいる人がほとんどです。イノベーション領域は、どのような構造になっていて、どう生まれるのか知識や経験もありません。

だからこそ、この両者をつなぐことに価値がある。イノベーションの創発を繰り返すベンチャー企業と政策立案のプロである中央官庁の方々が手を組めば、日本社会でのイノベーションがより活発になるはずです。

ーーPMIは「ミレニアル世代」と年代をあえて区切っています。その意図は何でしょうか?

イノベーションの担い手の中心がミレニアル世代の方々が多いのが理由の1つです。ミレニアル世代の起業家や活動家たちが中心となって、社会を前進していくためには、この世代の声を反映した法律を作ったり、制度や社会の文化・規範までアップデートしていく必要があります。

また、現在のシルバー民主主義化している日本社会に対して、ミレニアル世代に特化した提言を行うという意図もあります。これは世代間の対立を煽るためではありません。20-30代の国会議員はほとんどおらず、しかも選挙における若年層の投票率も低い状況で、若い世代の声をより際立たせて、明確に伝えるのが狙いです。

そして、その声が政策のアジェンダになり、法律の制定や改定が促進につながるよう「発信」し続けます。

PMIの活動の柱は、正解のない時代の未来や社会思想を描き、構想していく「VISION MAKING」と、そのビジョンやアイデアを社会に実装していくためのルールメイキングにおける新たな手法や人材を育成していく「RULE MAKING」になります。

また政治家や中央省庁にアプローチすると聞くと、陳情など「お願い」が思い浮かぶ方が多いでしょう。しかし、PMIの活動は、そこと一線を画しています。

次回は、PMIの具体的な取り組みや社会における立ち位置について、お伝えします。

*第2話に続く

*第2話に続く(2021年9月14日配信予定)

編集:長岡 武司
取材・文:山田 雄一朗
撮影:遠藤素子

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