大学生が作る「大学生活のDX」アプリ。「Summer」は学生ライフをどのように変革するのか

大学生が作る「大学生活のDX」アプリ。「Summer」は学生ライフをどのように変革するのか

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2020年より本格的に始まったコロナ禍において、多くの方々の生活が強制的にトランスフォームしている。中でも、遊びたい/学びたい盛りの学生のライフスタイルは一変。外出自粛に伴う慣れないオンラインでの授業やサークル活動が続いていることで、特にコロナ禍での入学となった大学1、2年生には多大な影響が及んでいる。全国大学生活協同組合連合会が8月10日に発表した調査結果でも、1・2年⽣は3・4年⽣に⽐べて相対的に友達が少ない傾向にあり、また就活への影響も色ごく出ていることが定量的に判明している。

そんな中、ここ1年で増えてきているのが「大学生向けSNS」だ。中国発の「Summer」をはじめ、台湾発の「Dcard」(日本版はDtto[ディット])や国内発の「Union」など、コロナ禍において国内展開が急加速している。

大学生向けSNSは、学生生活をどのようにトランスフォームするのか。今回は、Summer日本版を提供するSummerJAPAN株式会社CEOであり、現役東大生でもある当房和樹氏にお話を伺った。

バイトダンスからの出資を受ける中国版Summer

そもそも「Summer」とは、北京大学の学生(当時)が2017年夏に開発・リリースした大学生専用SNSだ。現地アプリのコンセプトは「友人作りと恋人探し」にあるといい、主に同年代の学生との出会いを目的に設計されたものであった。

その大きな特徴の一つは、在籍大学のメールアドレスを登録することで、利用者を対象大学の在校生に限定したことにある。大学生専用メールアドレスは在学生にのみ配布されるものであることから、必然的にそれ以外のユーザーによる登録を防止することができる。かのFacebookも、リリース直後はハーバード大学専用のドメインアドレス(harvard.edu)を登録条件としていたことで有名だ。2018年11月には、TikTokなどを運営するByteDance(バイトダンス)から数億円規模の出資も受けており、中国本土で急速に普及が進んでいるアプリだと言える。

そんなSummerが日本に上陸したのは2020年。北海道札幌市を拠点にする株式会社Earthistが国内展開を担うということで、2020年7月に日本の全ての大学・大学院・専門学校の学生を対象にリリースをした。その後、同社と中国サイドの法人、および株式会社Wizによる3社で合弁会社「SummerJAPAN株式会社」が設立され、2021年8月より運用主体が同社へと引き継がれた。

そこでCEOをつとめるのが、先述した現役東大生である当房氏というわけだ。同氏は元々、2021年2月よりEarthistのインターン生としてSummerの運用に携わっていたのだが、国内展開の方向性を変える機能の企画・開発を推進していったことで、新会社のCEOとしてサービスを牽引していくことになったという。

当房:「DttoやUnionといった類似サービスが多く日本上陸する中で、大学生同士がつながるという機能だけでは不十分だと感じていました。リサーチを進めていく中で、もっと大学生と企業がつながる場があるべきなのではないかと考え、『ガクワリ by Summer』機能を追加して法人向けプランを展開することにしました。」

企業との繋がり創出で差別化を図る日本版Summer

ここで改めて、Summerの機能について。登録時には中国版と同様に、大学から発行されたメールアドレスが必要となる。これにより、現役大学生であるという認証を済ませるわけだ。

登録すると以下のような画面が表示される。「近く」タブではスマホの位置情報機能を使って、任意の半径距離内にいるユーザーを探せるようになっている。Tinderやクロスミーといった、位置情報連動型のマッチングアプリを使ったことがある方であれば、おなじみの機能である。気になるユーザーがいた場合は、友人申請を送ってマッチングすることになるわけだが、距離設定を無しにすればSummer日本版に登録している全てのユーザーをチェックすることもできるので、理論上は全ユーザーとつながるチャンスがあるというわけだ(距離が近い順に表示がなされる)。

提供:SummerJAPAN株式会社

ここでSummerの特徴となるのが、いわゆる「テスト」機能と呼ばれる仕組みだ。画面に表示されている通り、友人申請を送る際には3つ以上の質問に回答し、それに合格する必要があるという。アプリが提供する標準的なプロフィール項目では、多様化するZ世代の興味関心をカバーできないであろうことから、このような仕組みになっていることは大きく頷けるだろう。

また、一般的なSNSのように、「モーメント」機能を使ってタイムライン投稿をすることもできる。大学ごとに検索ができるので、在校キャンパスをまたいで、全国の大学生とつながることが想定されている。

提供:SummerJAPAN株式会社

ここまでが中国版をベースにした機能となっているのだが、日本版では追加して、当房氏が企画した「ガクワリ by Summer」機能が8月より実装されている。こちらは、学生を応援したい企業や店舗がサブスクリプションで加入することで、アプリ内にて学割情報を発信、現役大学生ユーザーとリアルにつながることができるというもの。リリース直後は「カタール航空」のみ表示されているのだが、これから順次増やしていく想定だという。

提供:SummerJAPAN株式会社

当房:「大学生同士がつながるのであればDttoがあるし、大学と学生が繋がりたいのであればUnionがある。また、バイトと学生が繋がりたいのであればタイミーがあるし、恋愛をしたいのであればマッチングアプリがあります。

一方で、大学が人数制限をしている中で目下課題になっているのが就活です。対面でのやりとりがなくなった分、企業に関する情報収集に悩む人が多いと感じており、私自身、学部3年生の当事者として課題に感じています。だからこそSummerでは、企業と学生を結ぶプラットフォームへと舵を切ります。」

法人プランは月額数十万円程度で提供しており、学割プランの掲示による認知の向上の他に、リクルートやインターン目的で学生にダイレクトメールを送ることもできるようになっている。

5年以内の上場を目指す

学生運営チームの皆さま(当房氏は真ん中)

昨年からのコロナ禍はもとより、学生はそもそも、企業や友人、恋人との出会いを積極的に求めているものなのだろうか。これについて当房氏は、東京大学が毎年発表している「学生生活実態調査報告書」を引き合いに、根強いニーズがあることを強調する。

当房:「コロナ前の調査データですが、将来の進路や生き方に悩みがある人は80%近くいますし、就職サポート体制への不安も多く出ています。また、新入生の約3分の1は友達が増えていないというデータもあります。

今のようなオンライン前提の社会になる前から、出会いや横のつながりに対するニーズは実態として高まっていると言えますし、コロナの状況が追い討ちをかけているケースも多いと感じています。少なくとも、家とバイト先の往復になっている学生は非常に多いでしょう。」

先述した学生向け各種アプリの他にも、TwitterやInstagramなどといった圧倒的なネットワーク効果のあるアプリがある中で、Summerはどのように事業展開をしていく予定なのか。

当房:「会社目標としては、5年以内に上場を考えています。そのためにも、まずはユーザーを増やしていくのが最優先です。Summerは日本全国800以上の大学に所属する学生が利用できるので、いかにオンライン上のキャンパスライフの需要を満たせるかがポイントです。私たちは、これまでの大学生同士の繋がりのほかに、企業とのつながりに勝機を見出しています。」

Summer日本版では、運営法人こそSummerJAPAN株式会社となるが、各種機能の企画やブラッシュアップ、実装は全国の現役大学生による学生運営チームが担っている。現状は当房氏含めて7名だが、随時募集中で、まさに大学生の、大学生による、大学生のためのサービスを目指しているという。

当房:「元々は中国発グローバル向けのアプリですが、日本版は日本向けにローカライズすることをコンセプトにしています。中国版がVer1.0だとすると、昨年からEarthistが提供していたものがVer2.0、そして法人プランへと舵を切った現在のものがVer3.0という位置付けです。サービス名自体は同じですが、Ver1.0では恋人・友達づくりに特化しているので、全然別物の“国産プラットフォーム”にしていく予定です。」

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大学生向けSNSが複数立ち上がる中で、各社オンラインコミュニケーションの切り口を工夫して展開しているわけだが、次のフェーズとしては、いかにオフライン部分も巻き込んだ体験設計を組み込めるかがカギになるだろう。DXの本質はデジタルでは決して完結せず、オフラインも含めた全体のUX設計がポイントになるからこそ、今回伺ったSummerの今後の展開も注視していきたい。

インタビュイー

当房 和樹[Kazuki Tobo]
SummerJAPAN株式会社 CEO
Summer学生運営チーム代表

取材/文:長岡武司

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