あらゆる業界の垣根を超えて仕事をしよう。それがDX時代のエンタメだ|VVQ

あらゆる業界の垣根を超えて仕事をしよう。それがDX時代のエンタメだ|VVQ

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月曜は月9ドラマを楽しみに仕事を早く終わらせ、日曜は家族みんなで『サザエさん』を見る。私たちの生活はずっとTVと不可分な関係にあったわけだが、ここ十数年でその関係性も大きく変化してきている。2000年代中頃にブロードバンドが急速に普及していったことと合わせて、世の中では「放送と通信の融合」なんてテーマが盛り上がり、放送インフラやコンテンツそのもののデジタル化によるトランスフォーメーションと、それに伴う新たなビジネスモデルの模索がさけばれた。

それから十数年。業界を見渡してみると、人々の映像関連行動はどんどんとYouTubeやNetflixのような“黒船”に流れていっており、国内放送局は抜本的な改革を迫られてはいるものの、なかなか苦戦しているように見受けられる。本質的な放送と通信の融合と、それに伴うビジネスモデルの成立は、今のところはYouTubeやNetflixに軍配が上がっているようだ。

今回はそんな激動のTV業界において、業界の垣根を超えた活動を推進している株式会社VVQ(バーベキュー)代表・谷田彰吾氏に、DX時代のエンタメ業界感を伺った。

株式会社VVQとは

https://vvq.tokyo/
放送作家をはじめ、TV業界で活躍するクリエイターたちが多数所属する、未来をつくる企画集団。マスマーケティングの最前線で培った知恵と経験を、TVの枠を超えて活かしながら、企画から制作、その先までのクリエイティブやブランディングまでをワンストップで実行。登録者数300万人を超えるYouTubeチャンネルを手がけるディレクターや放送作家から、コンサルティング、デザインやコピーライティングまで、業界や領域を超えた多様なプロフェッショナルが存在する。この夏、「DXラボ」を設立し、AI・VR・NFTといったジャンルでもコンテンツを開発予定。

インタビュイー

谷田 彰吾[Showgo Tanida]
クロスボーダークリエイター/放送作家
株式会社VVQ 創設者&CEO

ドキュメンタリー番組『プロ野球戦⼒外通告』『バース・デイ』『情熱⼤陸』、有吉弘⾏、乃⽊坂46、池上彰などのバラエティ番組を担当。YouTubeでは過去に芸能人チャンネル運営事業を経験。現在は『上原浩治の雑談魂』をプロデュース。広告では、Nikon、Amazonなどの動画もプランニング。業界の国境を飛び越える「クロスボーダークリエイティブ」を提唱し、TVクリエイターの才能を他業種と掛け算すべくVVQを創業。今日もオフィスのキャンピングカーでどこかを疾走中。

「谷田、今からTV業界はどんどんと落ちていくから、思い切るなら今だぞ」

--まずはここ最近の放送・エンタメ業界について、谷田さんが感じている変化を教えてください。

色々な変化が本格的に来ているな、と思ったのは5〜6年前ぐらいからですね。

僕はその頃、TV業界にどっぷりといたわけですが、年々制作費が減るんですよ。「〜%カットになりました」みたいなことが、すごく頻繁に起きるようになってきて、TV業界は確実にシュリンクしていると感じていました。

--テレビ自体、ずいぶんと前から「若者に見られていない」みたいな話ってありましたよね。

もちろん、10年以上前から「TVってどうなの?」という話が出てはいましたが、そうはいっても制作費は全然ありましたし、正直、ほとんどの方は危機感というものがなかったと思います。

それが5〜6年くらい前から、YouTubeの仕事が発生したりだとか、Webを使った動画コンテンツの仕事が来るなどして、徐々にそっちの方が盛り上がるようになってきました。Abema TVが出てきたのも5年前(2016年4月11日開局)ですよね。お金がどんどんとWebの方に集まってきている感覚がありました。

--去年、電通が発表した「2019年の媒体別広告費」では、インターネット広告費がテレビ広告費を超えていましたよね。

まさにあれなんかは、象徴的なデータでしたね。そこに新型コロナも来て、ほとんどのスポンサーが影響をくらっているわけなので、TV局も売上がものすごく減っているわけです。

今だから感じることとして、制作の人間は客観的に自分たちのことを見れていなかったんだなと。10年以上前、まだ僕が20代だった頃に、尊敬していた局のプロデューサーから「谷田、今からTV業界はどんどんと落ちていくから、思い切るなら今だぞ」と言われたのを、今でも覚えています。TV業界から飛び出すなら若い方がいいといことで。何かこう、あらがえない諦めみたいなものが、その人の中にはあったんだと思います。

業界という国境で区切ることには、なんの意味もない

--谷田さんのお名刺には、放送作家の他に「Cross-Border Creator(クロスボーダークリエイター)」という表記があります。これはどういうことなのでしょうか?

要するに、TVもYouTubeも広告も、あらゆる業界の垣根を超えてコンテンツを創ろう、という意思表示です。

今や、業界という国境(ボーダー)で区切ることには、なんの意味もありません。そこの垣根を越えるべく、クロスボーダークリエイターと名乗っていますし、そのようなコンセプトでVVQを創業しています。

--VVQの説明に「クリエイターギルド」とありますね。

まさに、TV業界の最前線で活躍している放送作家やディレクターを中心に、様々なジャンルのクリエイターたちにお声がけをして、一つの組織として、TV以外の仕事をするように推進しています。

『水曜日のダウンタウン』(TBS系)の放送作家や『世界の果てまでイッテQ』(日本テレビ系)のディレクター、Netflix作品『全裸監督』のプロデューサー、『中田敦彦のYouTube大学』のような登録者数300万人を超えるYouTubeチャンネルのディレクターまで、業界や領域を超えた多様なプロフェッショナルが所属していますよ。

みんなで実績をシェアし、チャンスもシェアして、お金をシェアする。それが回っていけば会社としての実績も大きくなり、結果として、より大きなチャンスが巡ってくるようになると考えています。

--まさにクロスボーダーですね!TV業界のクリエイターさんって、TVの仕事以外には興味がないのだと思っていました。

そう思われているのを変えたいんです。少し前まではおっしゃる通り、どうしても「TV案件>他案件」という意識が強い人が多かったです。

でも、今はそうも言えなくなってきたし、そもそもTV以外にも面白い仕事はたくさんあります。でも、出ていくTVクリエイターが少なかった。一方で、企業や代理店もTV制作会社に仕事を頼んでみたくてもツテがない。なんとかたどり着いてWeb動画を依頼すると、どうしてもエース級ではないスタッフがアサインされる傾向がありました。発注者からしたら「なんだ、TVの人ってつまんないじゃん」ってなってしまう。これ、TV業界全体の評価にすり替わる可能性もあるので、すごく勿体ないんですよ。一線級のTVクリエイターは、こんなもんじゃないぞって証明したい。

だからVVQで、TVクリエイターに対するイメージを変えていきたいと思ったんです。コンテンツならどんな仕事を頼んでもいいんだって。その思いと熱量に共感してくれたメンバーが、次々と参加してくれました。

--なんで「VVQ(バーベキュー)」なのでしょう?

これはもう正直、バーベキューという名前がひらめいたから。色んなクリエイターとクライアントが一緒になって、垣根を取っ払って青空の下で1つのグリルを囲みましょう、というイメージから付けています。

その上で、クライアントとクリエイターが同じ「Vision(ビジョン)」を見つめて、 熱い「Vibes(バイブス)」で、互いの「Value(バリュー)」を高める。 ついでに、Video(ビデオ)業界のVの意味も含めて、BBQではなくVVQにしています。Vでも発音よく読んだら「ヴィーヴィーキュー」でしょ?

パチンコ映像の仕事から感じた違和感

--まさに、xDXと同じくクロスボーダーな意識を持たれているわけですが、どうやってその意識が醸成されていかれたのでしょうか?

そもそもですが、僕自身が「放送作家として邪道なキャリア」だと思っています。
この業界に入ってもう15年以上になりますが、元々は制作会社所属の放送作家として活動していました。

放送作家は、レギュラー番組を何本もつかが、売れているかの一種のバロメーターになると思います。番組の中でもみんなが目指すのは、やはりゴールデンタイムの番組ですね。でも制作会社に所属していた20代は、なかなかそういった仕事を増やせずにいました。
頑張っても頑張らなくても固定給で、仕事は社長や先輩からおりてくるのを待てばいい。そんなぬるま湯の環境にいて、クリエイターとして一種のジレンマを抱えていたわけです。

--まだその頃は、TV番組の仕事が中心なのですか?

むしろ、ほぼTV番組です。その頃は『すぽると』(フジ系)、『プロ野球戦⼒外通告・クビを宣告された男たち』(TBS系)や『バース・デイ』(TBS系)といった、スポーツ系を担当することが多かったです。

そんな中、20代後半にパンチの効いた仕事がおりてきました。パチンコの液晶画面に流れる映像の仕事です。

--リーチが始まったりすると、動く映像のことですか?

そうです。当時の僕は、「こんなの放送作家の仕事じゃないじゃん!」と、一種の劣等感をもちながら仕事をしていました。

でも一方で、いざプロジェクトが始まると“お金の潤沢さ”を実感する仕事でもありました。末端の存在だったので実際の予算額は分かりませんが、明らかに潤沢だったことは、手を動かしていればよく分かります。そこで初めて違和感を感じ始めたわけです。TVよりもパチンコの方がお金があるかも、って。これが、後ほどの価値観に影響を及ぼすことになりましたね。

「放送作家=TVの人」という考え方自体がナンセンス

他にもう一つ、広告業界にいるプロデューサーとの出会いも、今の僕の考え方に大きく影響しています。VVQを一緒にやっている品川一治(取締役)です。
彼はナショナルクライアントの広告を何個も手掛けていて、僕も彼から広告の仕事を頼まれるようになりました。

なぜ僕なのか聞いたら、「長尺の動画は広告よりTVの人間の方が上手だから」と。じゃあ何時間の動画ですかと聞いたら、「1分だ」と言われて衝撃でした。15秒のCMを創っている広告の方々からすると、1分でも長尺なんです。

作業時間はTV番組の方が大変なのですが、ギャラは広告の方が5倍近くも高かった。それを知った時に、パチンコ仕事の時の違和感が戻ってきました。

--どうやらTV以外の方が儲かるぞ、と。

儲かる仕事がいい仕事かは人それぞれだと思います。でも、放送作家ってどんな現場であっても、作業自体はさほど変わりません。だったら、「放送作家=TVの人」という考え方自体がナンセンスなんじゃないか。この考え方が、30代前半で固まっていきました。

その後、有り難いことにTVだけでも食べていける感触があったので独立をしたのですが、一方でTV以外の現場の仕事も転がってくるようになりました。

その一つがYouTubeでした。

▶︎後編記事につづく

取材/文:長岡武司
撮影:編集部

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