DXは、もっと遊びと余白の要素があった方がいい|VVQ

DXは、もっと遊びと余白の要素があった方がいい|VVQ

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クリエイターギルドとして既存のTV業界で活躍するクリエイターが集まって、TV以外の業界の活性化に貢献する。そんな業界を問わない共創活動を推進しているのが、クロスボーダークリエイターである谷田彰吾氏率いる株式会社VVQ(バーベキュー)だ。

その活動の真意を聞いていくと、そこにはTV業界への恩返しをしたいという同氏の強い思いがあった。TV業界の人間を業界外へと放出する動き方からは、一見矛盾があるように感じるが、そこにはTV局を含めたエンタメDXへの曲がらない姿勢が垣間見える。今回も引き続き、谷田氏にお話を伺った。

※この記事には前編があります。
▶︎前編はこちら

株式会社VVQとは

放送作家をはじめ、TV業界で活躍するクリエイターたちが多数所属する、未来をつくる企画集団。マスマーケティングの最前線で培った知恵と経験を、TVの枠を超えて活かしながら、企画から制作、その先までのクリエイティブやブランディングまでをワンストップで実行。登録者数300万人を超えるYouTubeチャンネルを手がけるディレクターや放送作家から、コンサルティング、デザインやコピーライティングまで、業界や領域を超えた多様なプロフェッショナルが存在する。この夏、「DXラボ」を設立し、AI・VR・NFTといったジャンルでもコンテンツを開発予定。

インタビュイー

谷田 彰吾[Showgo Tanida]
クロスボーダークリエイター/放送作家
株式会社VVQ 創設者&CEO

ドキュメンタリー番組『プロ野球戦⼒外通告』『バース・デイ』『情熱⼤陸』、有吉弘⾏、乃⽊坂46、池上彰などのバラエティ番組を担当。YouTubeでは過去に芸能人チャンネル運営事業を経験。現在は『上原浩治の雑談魂』をプロデュース。広告では、Nikon、Amazonなどの動画もプランニング。業界の国境を飛び越える「クロスボーダークリエイティブ」を提唱し、TVクリエイターの才能を他業種と掛け算すべくVVQを創業。今日もオフィスのキャンピングカーでどこかを疾走中。Twitter:VVQ_SHOWGO

最初のYouTube仕事は『妖怪ウォッチ』

--フリーとして独立されてから、TV以外にもYouTubeのお仕事を受けるようになったとのことで、最初のYouTube案件はどんなものだったのでしょうか?

『妖怪ウォッチ』公式YouTubeでのオリジナル動画コンテンツです。こんな仕事も出てきたか…と思いました。予算の規模としては、もちろんテレビ並みじゃないし潤沢じゃないけど、若手がやる仕事としては成立していました。

それ以前も、時代の流れとしてWebなどの動画コンテンツは幅広く増えていくぞと思ってはいましたが、ここで、いよいよ時代が変わってきたなと思いました。

--『妖怪ウォッチ』のお仕事は、どんな経緯で来ることになったのでしょう?いきなり「お願いします」と来たのですか?

いや、TV番組を一緒に作っていた制作会社が『妖怪ウォッチ』のライセンス関連の仕事をしていて、YouTubeチャンネルを立ち上げるということで、手伝うことになりました。

TVの制作会社としては新しい動きだったので、変化を感じましたね。YouTubeは今ほど媒体としての注目度はまだなかった時代ですが、面白いかもしれないと思って、公式YouTubeオリジナル動画の構成を担当することになりました。

VVQを通じて、TV業界に恩返ししたい

これをきっかけにYouTubeの可能性がよくわかったので、2018年に38歳で初めて起業をしました。VVQとは別の会社だったんですが、企業のYouTubeチャンネルやインターネット番組の制作を行っていました。それくらいになると、世の中にYouTuberという言葉も浸透してきて、YouTuberさんと企画会議もするようになっていました。

--2018年というと、まだ芸能人の方々がYouTubeへと参戦し始める前ですね。

制作の現場にいると、TVを創っているプロたちの需要をすごく感じていたので、いずれ本格的なWebへの移動が始まるはずだなとは感じていました。現に今では、芸能人YouTubeの大半には、何かしらTVクリエイターが入っている状況です。

起業して芸能人YouTubeの制作を本格的に事業化して、20人ぐらいの芸能人のチャンネルを立ち上げ、運営していました。結果的に激務で体を壊してしまって、その会社からは退きましたが。

--お話を伺っていると、谷田さん、フットワークが非常に軽いですね。一方で、TV業界からしたら、あまり嬉しい話でもない気がするのですが、その辺りは実際のところどうなのでしょう?

そんなことはありません。その「業界」という言葉が悪いんですよ。同じ映像、同じエンタメなんだから、クリエイターはどちらもやればいい。プラットフォームは、お互いの良いところを取り入れて新しいエンタメを作ればいいんです。

僕はむしろ「TVのためになる」と思って、新たにVVQを2019年11月に立ち上げました。TV業界で働いているクリエイターたちにとっての、外の業界での経験の橋渡しをする存在になりたいと思っています。

一見TVを否定しているように見えますが、そうではなく、TVそのものをアップデートするためには、外の世界の知見が間違いなく役に立つと思っているからこそ、そのような取り組みを積極的に進めています。

これまでのTV業界は、『進撃の巨人』でいう壁の中の村だったと思っていて。YouTubeやNetflixの足音が近づいているのに、壁の中に閉じこもっていた。それでは巨人に勝てっこないですよね? 調査兵団が必要なんですよ。巨人と戦った経験をフィードバックする人が一人でも多い方がいいじゃないですか。

--なるほど。説明されるとよくわかるのですが、なかなか理解を得られないケースもあるのではないでしょうか?

あると思います。でも、この1年で見方も変わってきたのかなと。例えばYouTubeで再生回数を稼ぐためのノウハウって、TVの視聴者数を増やすのにも間違いなく活かせると思っています。TV局もYouTubeの利用に積極的になりましたし。

例えば僕が20代でこれをやったら各所から嫌われたと思いますが、僕はTVに育ててもらったし、なんとか飯を食っていけるようになったのはTV業界のおかげなので、心の底からめちゃくちゃ感謝しています。だから、直接的にも間接的にもTVを盛り上げる仕事ができればという思いをもってます。

次なる挑戦はAIやVR企業とのコラボレーション

--「企画脳 × テクノロジーでエンターテインメントのDXに挑戦」というタグラインを拝見したのですが、具体的にどんなお取り組みを進めていく予定かを教えてください。

DXにチャレンジするとなったのは、実は今年に入ってからです。VVQがもつ企画力やコンテンツ制作力とテクノロジーを掛け合わせることで、エンタメ業界でイノベーションを起こそうということです。

具体的にはVVQに「DXラボ」のセクションを作り、YouTubeやTikTokの次にくるであろうデジタルコンテンツの猛者たちに声をかけて、VVQに入ってもらっています。まずは収益どうこうではなく、何かしらの領域でアップデートされたコンテンツを作っていこうという流れです。

--具体的にはどんな方々が参画しているのでしょうか?

例えば、「大喜利AI」を開発している「株式会社わたしは」さんに先日ジョインいただきました。AIって圧倒的にソリューションとしての活用が多いと思うのですが、もっとエンタメとしても活用できるよなと。

--大喜利AI、初めて知りました。

LINE経由でお題を入力すると、AIが面白い返しをしてくれるというものです。コミュニケーション型AIとしてすごく面白いですよ!「わたしは」さんはすごくコンテンツを創る力に長けている珍しいAI開発企業なので、きっとおもしろいことになると思います。

あとは、VRの会社さんにも入ってもらっています。僕はあつ森やフォートナイトといった「メタバース」に注目していて、将来的に間違いなく人々の生活が変容することになると感じています。

ここについては仮想空間を作れる企業さんと、VVQの企画力やTV局・芸能事務所との連携力を掛け合わせて、新しい世界や文化を創っていきたいですね。

他にも今盛り上がりを見せているNFTのチームもいて、これらがどんどんつながっていくとよりおもしろい。詳しいメンバーはこの夏VVQから発表させてもらいますので、ぜひ見てください。

AIもVRもNFTも、まだ一部の人が利用しているにすぎません。それを大衆化するには、テクノロジーの進歩もさることながら、魅力的なコンテンツが欠かせません。VVQのメンバーの多くは、TVというマスコンテンツを創ってきた経験、YouTubeをバズらせてきた経験、どちらも持っている。広く多くの人に楽しんでもらうためには、僕らのスキルが必ず活きてくると思っています。

とにかく、恐れずに首を突っ込んでいく

--エンタメのDXという観点ですと、これからどんなことが大切になると思われますか?

とにかく、恐れずに首を突っ込んでいくことですね。YouTubeだって、5年前はこんなに多くの人々の生活に浸透しているイメージなんかなかったと思います。何事もいつか必ず馴染む瞬間があるからこそ、いいなと思ったらまずはやってみることが大事だと思います。VRだって、今はまだゴーグルが重くて価格が高いですが、5年もすれば状況は変わっているでしょう。

あとは、DXと聞くと、どうしてもシステムやソリューションといった固い話になる気がしています。本来はもっと遊びや余白の要素があってもいいなと思うので、そこを意識できるようになるともっと面白いと思いますし、僕たちはそこを支援するような存在でいたいですね。

--余白のあるDX、いいですね!谷田さんとVVQとしては、変化する環境に柔軟に対応しつつ、最新のテック企業とも積極的にコラボしていくことで、どんな未来像を描いているのでしょうか?

正直、コンテンツやエンタメの将来がどうなるかは、僕には分かりません。おそらく無茶苦茶なスピードで変わっていくと思うのですが、その流れの途中に、必ずAIやVRがエンタメの大きなジャンルになる時代が来ると思っています。そしてそこに当然、TVやYouTubeやTikTokも連携していく。

そんな世界において、VVQがクロスボーダーでコラボできるリーディングカンパニーになっていたらいいなと思います。

編集後記

今回のインタビューで谷田様がおっしゃる通り、DXの文脈になるとどうしてもソリューション色が強くなり、「課題解決」という命題に向かう姿勢が強調されます。一方で、先日xDXで配信したイベントレポートでもお伝えした通り、余白のある姿勢とそれに伴う“妄想”からのアプローチにも、企業のトランスフォーメーションにつながる種はたくさん潜んでいると感じます。

「もっと楽しめ。遊び心あってこそのテクノロジーだ。」

そんなことを思い出させてくれる時間でした。

取材/文:長岡武司
撮影:編集部

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