金融&デジタル大手が語る、金融プラットフォーマーとしての戦い方

金融&デジタル大手が語る、金融プラットフォーマーとしての戦い方

目次

2021年3月29日〜31日にかけて、金融庁と日本経済新聞社が共催した「FIN/SUM FINTECH SUMMIT 2022」。3日目のセッションとなるパネルディスカッション「金融プラットフォーマーになるのは誰だ 〜DX 時代のリーダーの条件〜」では、アフラック、新生銀行、SMBCグループ、AWSの4社のボードメンバーらが、それぞれの取り組みを紹介し、また各社が考える金融プラットフォーマーとしての勝ち筋や、DX時代におけるビジネスの潮流について議論した。

後編となる本記事では、後半部分のディスカッション内容についてレポートする。

・谷崎 勝教(三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO)

・川島 克哉 (新生銀行 代表取締役社長)

・二見 通(アフラック生命保険 取締役専務執行役員 兼 CTO・CDIO)

・飯田 哲夫(アマゾン ウェブ サービス ジャパン 金融事業開発本部 本部長)

・佐藤大和(日本経済新聞社 編集局 NIKKEI Financial 編集長)※モデレーター

​​この記事には前編があります

日本の市場に固執せず、海外へ進出した方がビジネスチャンスになる

SBIグループはプラットフォーマーとして、これまで地方銀行との資本提携を推進してきた。

そういった流れのなかで、2021年にSBIグループが新生銀行を買収したわけだが、成長戦略の一環としてはどのような位置付けになっているのだろうか。

新生銀行 代表取締役社長である川島 克哉氏は、SBIグループ全体における成長戦略のテーマについて、「地域の経済主体となる地域企業や地域住民、地方公共団体との価値共創を通じて、どのように地方創生へ貢献していくか」だと述べる。

「SBIグループの一員になったことで、地方創生をいかに実現できるかを最重要視しています。とりわけ、そのなかでも新生銀行の強みになっているのがノンバンク事業です。SBIグループの提供するサービス価値を補完する形で、ノンバンク事業を推進していくわけですが、実はこの事業のビジネス領域はまだ金利が残っている数少ない市場なんです。つまり、地方銀行にとっては大きなビジネスチャンスにつながっている。ただ、地方銀行全てが自前でノンバンク事業を推進できるわけではないので、我々が持っているノウハウを提供し、サポートしていければと思っています。プラットフォーマーとしての観点から見ても、我々がSBIグループ入りしたことで、広範囲にわたるサービスの提供が可能になり、金融プラットフォームとして果たす役割が増えたと感じています」(川島氏)

次に、SMBCグループは大手金融機関のなかでもDXに成功している企業として定評がある。

DX推進にはシステムやテクノロジーに精通している経営陣が必須になってくるわけで、それは昨今メガバンクのシステム障害の問題からも改めて浮き彫りになった。

そんななか、同グループ 執行役専務 グループCDIO氏である谷崎 勝教氏は、巨大金融機関におけるDXを進めていくなかで直面している課題や、苦労している点についてこのように話す。

「正直、課題や悩みはたくさんあるわけですが、今日は2つだけ紹介したいと思います。まずは、まだまだ顧客接点の部分が弱いということ。要するに、お客様に対して色々なサービスを提供しようと試みても、タッチポイントが増えていかなければそれが実現できないわけです」(谷崎氏)

デジタルの世界では、点と点がばらばらに存在しているだけだと、ビジネスとして成立させるのが難しい。面で押さえていかなければならず、さらに質の向上にもつなげていく必要性がある。よって、谷崎氏は「プラットフォーマーとして、まだまだやるべきことがある」と強調する。

「最近よく思うのが、日本人は地道なものづくり精神に長けている反面、レイヤーとしてはかなり低いところから着手する傾向にあります。一方で、欧米のプラットフォーマーの仕事の仕方を見ていると、バーティカルのレイヤーの上の方から顧客接点をしっかりと構築している。この違いがあるからこそ、事業成長におけるスピード感が異なってくるわけであり、我々としてももっと上の方からデジタルによる顧客接点を構築しなくてはならないと感じています」(谷崎氏)

また2つ目の課題について、谷崎氏は「プラットフォーマーとしての戦い方」を挙げる。

「ビジネスはとかく、GDPの成長とともに拡大していくといわれていますが、日本のマーケット内に閉じこもっていて、果たしていいものなのかと疑問に思うところがあります。もちろん、日本のマーケットの中で市場占有率を高めていけば一定の収益性が見込めるわけですが、なかなかGDPが上がらない日本に固執するよりもASEANや米国に出ていく方が、確実にビジネスチャンスは広がると思うんです。そこをもっと突き詰めてもいいのではと感じています」(谷崎氏)

DXにおけるトライ&エラーのスピードを早め、スケールを大きく捉えることが重要

続いては、アフラック生命保険で取締役専務執行役員 兼 CTO・CDIOを務める二見 通氏が、DX時代のリーダーの条件について私見を述べた。

同氏は、保険業界における「DXの伝道師」として活躍しているわけだが、アフラックのDXを担うなかでプラットフォームづくりをどのように進めているのだろうか。

「(前編にて)先述したリアルとデジタルの融合に一歩でも近づけるよう、『Aflac digital as a Service(AdaaS)』というお客様や保険代理店向けのクラウドサービスを作りました。保険業界全体がなかなかデジタル化が進まず、保険代理店を見渡してもDXに着手できていないところもあるなか、我々が何か支援できないかという思いから、今回のAdaaSを立ち上げるに至ったわけです」(二見氏)

AdaaSは、メニュー化されたUIになっており、保険代理店は好きなメニューからツールを選定し、すぐに使えるような仕組みでDXをサポートできるものになっているという。例えば「デジタル空間上に保険ショップを作りたい」となった場合、すぐに保険代理店の看板をつけたデジタル保険ショップを立ち上げることができるというわけだ。

「そこでは保険商品のみならず、生活に関連した情報を取り扱っていて、さらにはAIがお客様の属性や住む地域を分析して、最適な保険営業マンをピックアップしてくれます。また、保険会社が新商品を出すときの営業マンのロールプレイング時にAIを活用し、アバター相手に練習ができるのも、AdaaSの大きな特徴になっています。先ほど谷崎さんが、顧客接点の少なさについて言及されていましたが、我々保険業界はさらに顧客接点が少ない状況なので、デジタルテクノロジーを使って増やしていければと考えています」(二見氏)

各登壇者が、金融プラットフォームを目指して試行錯誤している状況を示すなか、アマゾン ウェブ サービス ジャパンの飯田 哲夫氏は、DXをめぐる日本企業の現在地について説明した。

「よく、海外に比べて日本のDXは遅れているといわれていますが、必ずしも海外企業の方がDXに成功しているわけでもありません。一方で最近強く感じるのは、デジタルの力を使ってトライ&エラーを繰り返していくスケールとスピード感が、ものすごく加速していることです。例えばゴールドマン・サックスが、これまで手をつけてこなかったリテール・バンキングを北米で参入し、その後イギリスに早々に展開したり、JPモルガンであれば数年前にデジタルバンクを立ち上げ、一度は畳んだもののイギリスで再度復活させたりしています」(飯田氏)

このほか、欧州であれば規制そのものを変えていくことでチャレンジャーバンクが次々と立ち上がり、日本ではまだあまり見られないような、クラウドネイティブな勘定系システムを作るベンターが増えている状況だ。

「このようなエコシステムが醸成されているわけでありますが、今度はそれがアジアでのデジタルバンク立ち上げや南米にも広がっていっている状況です。こと日本においてもDXを推進していくには、やはりどれだけトライ&エラーのスピードを上げ、スケールアップできるかがポイントになると考えています」(飯田氏)

IPOを目指すくらいの気概を持って取り組め!

メガバンクの一角を担うSMBCは、近年多くのデジタル子会社を立ち上げている。

今後、成長が見込まれる事業あるいは会社はあるのだろうか。

谷崎氏は「コロナ禍が追い風になって、日本のデジタル化が遅れているという危機意識が世の中に浸透していったことが、大きなポイントになっている」と語る。

「今現在、ビジネスとしてスケールする見込みが十分にあるような企業は2〜3社出てきており、アーリーステージからミドルのフェーズへと移行しているような現況と言えます。たとえば生体認証のビジネスを手がけているサービスに関しては、延べユーザー数が1,000万人を超えてきたりと順調に成長していると感じています。そういった意味では、コロナ禍を通じてようやくビジネスとして成立するようになったことで、SMBCグループの中でも『やればできる』という手応えが生まれています。既存の銀行ビジネスは事業成長のスピードは緩やかですが、デジタル領域の新規事業であれば、1年で2倍や3倍の成長をしたりとスケールが違うので、非常に面白い領域だと捉えています」(谷崎氏)

SMBC内でデジタル子会社をやり始めた頃、同グループCEOである太田 純氏が言う『社長製造業』のシンボルとして、金融の枠組みを超えたSMBCの企業カルチャーを体現するものとして、同グループでは捉えられていたという。

「さらに、太田からは『IPOを目指すくらいの気概を持って取り組んでくれ』と言われていて、本腰を入れてビジネスに取り組める環境が整ってきたと思っています」(谷崎氏)

他方で、新生銀行の川島氏が取り組む地方創生とDXの関係性で言えば、地域の金融機関や企業の中にはDXが進んでいないところも多い印象を受ける。

その状況に鑑みて、SBIグループと新生銀行がどのように連携して支援していくのだろうか。川島氏は「近時、圧倒的にDXに関連するサービスの提供が多くなっている」とし、次のように説明する。

「例えば、SBIグループの持つネットワークを活かし、中小企業のDX化をサポートするソリューションをラインナップした『SBI DXデータベース』によって、地域の事業会社のDX推進を支援する取り組みを行っています。もちろん、こういった場合は地元の金融機関との連携が重要になってくるわけですが、併せて地域金融機関そのもののアプリケーションを、我々がホワイトラベル化してベースとなるバンキングアプリを提供するサービスも展開しています」(川島氏)

ゼロからアプリケーションを構築するのではなく、同社が黒子に徹することで、アプリケーションを立ち上げるスピード感の向上や維持、運営のコストを大きく引き下げることに貢献するというわけだ。新生銀行がSBIグループに加わることで、地域銀行のサービスがアプリケーションとしてシームレスに提供できるようになり、そのことが「グループとしてのさらなる強みになっている」と、川島氏は強調する。

「我々のグループ企業にアプラスという会社がございますが、『BANKIT(バンキット)という金融プラットフォームのアプリケーションを持っています。このアプリケーションは信販サービスのほか、BNPL(Buy Now Pay Later:後払い決済)のノウハウや給与の前払い機能などを幅広く備えています。これまでアプラス単体のサービスとしてBANKITが存在していたのが、SBIグループ全体のサービスの一環としてワンストップで提供できるようになったことで、我々の金融プラットフォーマーとしての価値をさらに高めることに寄与していると感じています」(川島氏)

金融デジタル時代における、法規制のあるべき姿とは?

企業のDX化が注目され、金融デジタル時代といわれるなかで新しいビジネスを生み出して育んでいく場合には、従来型の法制度や規制では追いつかなくなる懸念もあるだろう。

特に、DXが社会課題の解決に資する取り組みであることからも、医療分野が非常に肝となってくる領域とも言える。

そんななか、がん保険の最大手であるアフラックは、病院やヘルスケア業界との連携に際して感じているハードルや、PHR(パーソナルヘルスレコード:個人健康情報管理)、カルテの電子化などと向き合うなかでの問題について、どのような意見を持っているのだろうか。

二見氏は「こうした医療分野における社会課題について、当社だけでは解決できないため、他のプレーヤーとともに問題を克服していきたい」と語る。

「我々のお客様、患者様のペインポイントというのは、もし何か事件・事故による保険給付金を受け取りたいとなった場合、基本的には診断書が必要になることです。そのため、病院に診断書をもらいに行くわけですが、発行まで時間を要しますし、複数の病院にまたがっている際には、そのぶんだけ診断書が全て出揃うまでに時間がかかります。これこそ、ペインだと思うんです。この課題を解決するために医療機関、保険会社、お客様の三方を結ぶプラットフォームを構築できれば、その中で保険金の請求や、診断書の取り寄せなどができるようになるでしょう。当然、お客様自身のデータはセンシティブなものなので、その取り扱いが重要な課題になってくると思っています」(二見氏)

もう一つ、銀行も典型的な規制業種のひとつに数えられるだろう。よく「楽天は銀行を持てるが、銀行はECを持てない」と言われるように、規制があるからこそビジネスに制限が起きてしまっているのも周知の事実となっている。

谷崎氏は規制のあるべき姿について「今後、デジタルの世界に金融のみならず、他のプレーヤーもどんどん参入してくることが予想される。そうしたなかで、レベルプレイングフィールド(共通の土俵論)の確保を行い、同じ条件のもとで競い合えるようになっていくことが必要になる」と持論を展開する。

「日本企業がこれから業界をリードしていくためには、『機能本位の規制のあり方』を議論していくことが求められると思っています。そうなると、金融やEコマースなどいろんな業界がその機能に基づく適切なリスク管理とコンプライアンス、ガバナンスを遵守した上で、新しい競争が生まれてくると思っています」(谷崎氏)

新サービス開発で大切な「Working Backwards」の考え方

他方、世界的な巨大テック企業としてすでにプラットフォームを確立しているアマゾンは、今後金融サービスの新たな展開として「アマゾン銀行」を手がける可能性はあるのだろうか。飯田氏はこのように見解を示す。

「立場的に、私がアマゾン銀行を作るか否かについてコメントできるわけではありませんが、参考としてお話すると、よく『アマゾンが銀行を作ったら便利になる』という意見も存在しますが、前提として『アマゾンが銀行を作れば儲かる』という目的から議論がスタートすることはまずあり得ないでしょう。アマゾンが何か新しいサービスを開発するときには、Working Backwards(ワーキングバックワーズ:お客様起点で考えること)という考え方を大事にしていて、お客様の利便性やメリットがどこにあるのかという議論から始めるんです。そういう意味では、どういう風にフリクションを減らし、生活を楽にできるのか。本当にアマゾンが価値を提供する意義があるのかなどを試行錯誤していくなかで、今後何か新しい金融サービスが生まれてくることは考えられると思っています」(飯田氏)

また、AWSというクラウドサービスに目を向けても、すでに多くの事業会社がシステム基盤として活用している事実が存在する。それゆえのポテンシャルを伝えていくことも重要だと、飯田氏は続ける。

「もうひとつコメントすると、AWSというクラウドサービスは、アマゾンはもちろん金融機関、フィンテック企業、事業会社などすべての企業に開かれているわけです。すでに、短期間でバンキングビジネスをクラウド上で立ち上げている企業も多いことから、AWSを活用して新しい金融サービスを作れるというポテンシャルを、もっと多くの企業へ伝えていくことが、私の役目になると感じています」(飯田氏)

最後に、飯田氏は「金融機関がDXを推進していく上では、経営トップのリーダーシップが大切になる」と説いており、金融機関がDX時代の勝者になるための条件について「時代が変遷し、お客様のニーズが変わっていくなか『顧客が何を求めているのか』にフォーカスし、そこを再定義した上で手段としてのデジタルをどう活用できるかを考えていくことが重要になる」と意見を述べ、セッションを締めくくった。

「つまり、DXが目的になってしまい、顧客視点がないがしろになっては意味がないわけです。デジタルあるいはテクノロジーはあくまで手段であり、お客様が何を求めているかを把握し、そのニーズに対してデジタルを組み合わせていくことが肝要になるでしょう」(飯田氏)

編集:長岡 武司
取材/文:古田島大介

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