日本の成長戦略としてのWeb3の未来と、あるべき政策の進め方 〜Fintech Japan 2022レポート

日本の成長戦略としてのWeb3の未来と、あるべき政策の進め方 〜Fintech Japan 2022レポート

目次

テクノロジーの進展とともに、2010年代後半から国内でも聞かれるようになった「Fintech」。いわゆる“金融 × テクノロジー”による新しいサービスやプロダクトが生み出され、金融業界の革新に大きく関わる領域として、これまで注目を集めてきた。

そして、昨年から急速に盛り上がりを見せるWeb3が、さらなる成長への一助となるのは、もはや周知の事実なのではないだろうか。

去る2022年7月19日に開催された「Fintech Japan 2022」内で行われたセッション「デジタルマネーとWeb3」では、今まさに金融業界で何が起こり、何が変わってきているのかを有識者らが語り合う場となった。

グローバルやローカルで実際に起きている事象やWeb3の本質を交えながら、FintechとWeb3の可能性を掘り下げていく模様をレポートとしてまとめた。

  • 伊藤 祐一郎(株式会社Finatextホールディングス 取締役CFO)
  • 神田 潤一(衆議院議員(青森2区))
  • 久保田 雅也(World Innovation Lab(WiL)パートナー)
  • 沖田 貴史(一般社団法人Fintech協会 代表理事会長/ナッジ株式会社 代表取締役)※モデレーター

Web3の技術でいかに金融サービスをアップデートするか

まずは各パネリストの自己紹介が行われた。

衆議院議員の1期目を務める神田 潤一氏は、新卒で日本銀行(日銀)へ入行して約20年間勤めながら、途中で金融庁へと出向してFintech担当を経験したのちに、マネーフォワードへと転職してFintech協会の理事も務めた人物。昨年に衆議院議員へ初当選して現在に至るという。

「これまで、日銀や金融庁、Fintechのスタートアップ企業、そして議員とさまざまな立場から金融やFintechに関わってきました。そういった観点で今日はお話しできればと思いますが、Web3については自民党のNFT政策検討PT(プロジェクトチーム)でホワイトペーパーをまとめており、それについてもお話しできれば幸いです」(神田氏)

これまでのWeb 2.0までの世界においては、残念ながら日本は目立ったイニシアチブを握ることができておらず、インターネットが台頭した平成時代を、諸々の要因も加味して「失われた30年」と揶揄する人も少なくない。

だからこそ、特に今年度より注目されているWeb3の可能性に着目し、日本が新たに主導権を取っていけるための法制度のあり方を考えていくのだという。

「ゲームやIP、スポーツなど、日本が世界に打ち出していけるコンテンツをNFT化し、グローバルで戦っていけるのではないかと思っていて、この部分を政府としても後押ししていきたい。そう考えています」(神田氏)

2014年にスタートしたVC「World Innovation Lab(WiL)」でパートナー/投資家として活動する久保田 雅也氏は、「次世代を担うグローバルの起業家に対して投資を行っていて、メインの運営ファンドは3つ、それ以外にも活動の幅を広げている」と話す。Web3については「既存の産業ルールを根本から変えるもの」だと捉えており、大きなイノベーションになるのではと感じていると語る。

また、金融サービスのクラウドインフラを提供するFinatextホールディングスで取締役CFOを務める伊藤 祐一郎氏は、Web3で大きく秩序が変わるというよりも、金融サービスの主なカテゴリーである資産運用や保険、レンディング、送金決済などがどのようにアップデートされていくかが焦点になるだろうと語る。

「金融サービスのそれぞれのカテゴリーが、Web3でどのように再編されていくかに注目しています。そういうなかで、一番最初にユースケースになりそうなのはステーブルコインです。今後、どのようなシーンでステーブルコインが活用されていくのかを色々と意見交換していければと思います」(伊藤氏)

Web3は国家の成長戦略として位置づける重要なものになる

続いてはメインセッションということで、まずはモデレーターを務める沖田 貴史氏(一般社団法人Fintech協会 代表理事会長/ナッジ株式会社 代表取締役)より、官民両方でFintechに従事してきた神田氏へ「自民党では、NFTホワイトペーパーの取りまとめを行っているが、Web3の議論が生まれた背景や描いている青写真について伺いたい」と質問が投げかけられた。

神田氏は「Web3は国家の成長戦略や骨太の方針に入れ込んでおり、非常に重要視している状況である」と語る。

※2022年度の骨太方針については以下の記事をご参照。
▶︎閣議決定した「骨太の方針 2022」のDX&Web3要素をご紹介

「自民党のプロジェクトチームがNFTやメタバースといったWeb3に注目したのは、これまでDXやブロックチェーン関連の先導をやってこられた平井卓也前デジタル大臣や平将明先生、木原誠二先生らの蓄積があってのことだと感じています。これまで議論してきた成長戦略の文脈のなかで、次なるゲームチェンジが起こる分野としてWeb3に関心が高まっていきました」(神田氏)

世界的なNFT市場の盛り上がりはもとより、日本のWeb3起業家が海外に拠点を構える事例も出ていることが「日本にとっては大きな痛手になるのでは」という議論が交わされたという。とはいえ、税制度などの制度を整備していくには相応の時間がかかるため、自民党としても問題意識が芽生え、早めに手当てをしていく方針からNFTホワイトペーパーの発表を行ったわけだ。

「ホワイトペーパーの冒頭には『Web3時代の到来は日本にとって大きなチャンスになる。しかし今のままでは必ず乗り遅れる』という一文があります。こうした危機感を持ちつつ、これまで取り組んできたなかでの反省や教訓を生かし、日本の成長戦略としてWeb3の分野を推進していく決意が表れていると考えています」(神田氏)

また神田氏は、ホワイトペーパーを取りまとめていく上で政治家自身が率先して文章を記していったことも、非常に面白く画期的なプロセスだったと続ける。

「私含め、議員の中にはこれまでのキャリアでデジタルに関わってきた者もいるので、綿密に論点整理をしながらホワイトペーパーを作り上げたのは、従前と比べて一歩も二歩も踏み込んで進められたプロジェクトになっていると言えます」(神田氏)

プロジェクトチームが2022年1月末に立ち上がってから同年3月末にホワイトペーパーを出すまでの2ヶ月間に、週2〜3回集まって議論を展開していたという。そのため、かなりのスピード感を持ってホワイトペーパーの発表にこぎつけることができたわけだ。

「政治の世界はある種、ヒエラルキーの中で議論がなされると思い込んでいましたが、Web3の議論の場は全くそういった雰囲気を感じず、フラットで建設的な話し合いをすることができました。各先生方がご自身の得意分野について議論を主導し、文章にまとめていくような形で進めていったわけですが、『こういう進め方をすれば、他のいろんな政策もスムーズに進むのでは』と感じながら、私も作業していたのを覚えています」(神田氏)

Web3は長期的な視点を持ち、今の潮流を見つめるのが大事

続いて、グローバルにおけるWeb3の状況について、WiLの久保田氏が次のように見解を示した。

「まずファクトでお伝えしますと、2022年上半期のクリプトVCにおけるグローバルの投資額は9.3Bドル(約1.4兆円)で、これは前年対比で見れば約26%減っているような状況です。ただ、マーケットで何が起こっているかというと、上場しているトークンのトップ100のうち、約70が90%以上も下落しています。また、ステーブルコイン『Terra(LUNA)』の大暴落で仮想通貨ファンド『3AC(Three Arrows Capital)』が破産したり、クリプトレンディングの『Celsius』が破産したりと、この半年はまさに“冬の時代”と言えるような感じでした」(久保田氏)

ただ、6月に開催されたNFT.NYCでは「参加者の熱気がすごいのを実感した」と、久保田氏はイベントに参加した感想を述べる。

「わざわざ海を越えてNFT.NYCのコミュニティに参加して、そこで得た情報や体験をもとに『何かをビルドしよう』という気概やパッションを持つ人が15,000人も集まっている。これは非常に興味深いことだと思いました。そして、冬の時代が到来しているといえども、それがWeb3の業界や産業をさらに強くし、浄化していくと考えています。流行りに乗って儲けたい、投機目的でNFTを購入したいというプレーヤーよりも、純粋にWeb3で社会を良くしようと考えるプレーヤーが増えていけば、Web3の業界はかなりのポテンシャルを秘めていると言えるのではないでしょうか」(久保田氏)

NFTにはユーティリティがなく、保有しているユーザーのベネフィットが見出しにくいという課題もよく言われることだ。その先がなかなか見えてこないなか、「認識しておくべきは、Web3はまだ入り口に立ったばかりだということ。長期的な視点を持って、今のWeb3の潮流を見る必要がある」と久保田氏は強調した。

NFTのユーティリティについては、モデレーターの沖田氏も「最も注目するトピックだ」と言う。

「単にトークンの売買をするだけでなく、インターネットのようにちゃんと使い道があるようなユーティリティが今後肝になってくるでしょう。ユーティリティトークンはさまざまな使い方が考えられますが、特に私が関心を寄せているのが認証手段としてのアクセストークンです。そんななか、DeFiの文脈でステーブルコインがどのように使われているのかについて、今度は伊藤さんに所感をお聞きできればと思います」(沖田氏)

※後編記事につづく

取材/文:古田島大介
編集:長岡 武司

Fintech Japan 2022 レポートシリーズ by xDX

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