Web3で予想される、ディストリビューション革命の次の「プロダクト革命 」〜Fintech Japan 2022レポート

Web3で予想される、ディストリビューション革命の次の「プロダクト革命 」〜Fintech Japan 2022レポート

目次

2022年7月19日に開催された「Fintech Japan 2022」内で行われたセッション「デジタルマネーとWeb3」。

後編記事では引き続き、官民それぞれのFintech有識者らが語るWeb3の本質についてレポートする。

  • 伊藤 祐一郎(株式会社Finatextホールディングス 取締役CFO)
  • 神田 潤一(衆議院議員(青森2区))
  • 久保田 雅也(World Innovation Lab(WiL)パートナー)
  • 沖田 貴史(一般社団法人Fintech協会 代表理事会長/ナッジ株式会社 代表取締役)※モデレーター

※この記事には前編があります。

取引市場を再構築するのに有用なステーブルコイン

DeFi(分散型金融)の文脈で、ステーブルコインはどのように使われているのか。これについて、株式会社Finatextホールディングスで取締役CFOを務める伊藤 祐一郎は、「決済で使われるのが前提だが、パブリックに使われるステーブルコインでは、どうしてもマネーロンダリング(資金洗浄)の問題が拭えない」と懸念点を語る。

「マネーロンダリングの規制をグローバルで作っていくのは、とても大変なことだと思っています。一方で、グローバルにお金の移動をすぐにできるのは、送金コストを圧倒的に下げることにつながるでしょう。ただ、現実のユースケースとして適法にステーブルコインが使われるまでには、多くの時間を要すると思います。
個人的にステーブルコインのユースケースとして考えているのは、『取引市場を再構築していく』ことです。これは何かというと、株式やデリバティブを取引する市場は現状かなり非効率であり、こういったところをステーブルコインを用いて効率化していけるのではと見立てています」(伊藤氏)

既存の取引市場の効率化が遅れている理由として、伊藤氏は「お金の動きが遅いこと、そしてある条件を起こしたときに、お金を動かすことが容易にできないことが挙げられる」と付け加える。

「現状では、いわゆるカウンターパーティーリスク(取引先が債務不履行に陥った際に被る損害リスク)をどうしても抱えてしまいますが、ステーブルコインを使えばお金をすぐに移動できたり資産を売却してすぐにお金に変えることができたりするので、非効率な取引市場を変えることができるのではと捉えています。この流れを作ろうとしているのが仮想通貨取引所の『FTX』です。この仕組みを既存のデリバティブ市場に持ってくることができれば、効率化に寄与できると考えています」

伊藤氏によると、従来型金融のところにおいても、ここ一年のWeb3文脈で考えられたアイデアを少しずつ受け入れようとする機運が高まっているという。ここ1〜2年の間に、ステーブルコインのユースケースが出てくる可能性も十分にあるだろう。

この伊藤氏の意見に対して、モデレーターを務めるFintech協会 代表理事会長の沖田 貴史氏も、「Web3を占う未来という観点においては非常に面白い」と同調する。

「もちろん、頭ごなしに現在のやり方が非効率とも言い難く、過去からの連続性を考えるとカウンターパーティーリスクだったり技術の制約だったりと、その時点における“最適解”として日々運用を回しているわけです。ただ、未来から逆算するとおっしゃる通り非効率とも言えるので、仰った意見はとても参考になると思いました」(沖田氏)

また、WiLでパートナー/投資家として活動する久保田 雅也氏も議論に加わるように「クリプトはユースケースがないとよく言われるが、金融的な利用で言えば、海外送金がある」と述べる。

「たとえばアメリカからメキシコへの送金では、4%がクリプト経由というデータがあります。ちなみにメキシコはインドに次ぐ送金受取が多い国として知られています。通常の送金だと1週間から10日ほどかかり、手数料も発生しますが、クリプトの場合はwallet-to-walletなので瞬時に送金でき、かつ手数料も微々たるもので収まります。投機目線でクリプトの動向に注目が集まりやすいですが、グローバルではすでに送金のユースケースが生まれていることに対しては、アンテナを立てておくといいのではないでしょうか」(久保田氏)

国としては具体的なユースケースがないと議論が前に進まない

そんななか、衆議院議員の神田 潤一氏は「政府としてWeb3やNFTを推進していくには、ユースケースがとても重要になる」と話し、このように意見を表明する。

「政府としては、国民の理解を得ながら進めていく必要があると思っています。なぜWeb3が必要なのか、どうしてNFTやメタバースが重要なのかという話をしていくなかで、やはりいろんなユースケースが出ていれば、国民の理解も進展しやすいでしょう。これから来年の国会に向けて法案を変えていったり、日本の企業にとってネックとなっている税制度などを含めた、さまざまな制度整備をしていったりすることが求められていますが、具体的なユースケースがないと議論を進めていく上での推進力に欠けてしまうわけです」(神田氏)

また、もうひとつ大事なことは「新しい技術を発展させていく上で起こりうる事件・事故といったデメリットと利用者保護とのバランスをうまく保っていくことだ」と、神田氏は続ける。

「不正アクセスによる仮想通貨の流出など、大なり小なり事件は起こりうるわけですが、『攻めと守り』のバランスを意識しながら進めていき、国民の理解を着実に得ながらWeb3を推進していくのが肝になると考えています」(神田氏)

ユースケースについてさまざまな意見が飛び交うなか、Finatextホールディングスの伊藤氏は「もっと日本からユースケースを出していきたい」と思いを示す。

「すでにユースケースが出ているものを、どう盛り上げていくかも大事だと感じています。先ほどお話しした『ステーブルコインを使って取引所を効率化させる』というのは、実は三菱UFJ銀行さんの手がけている 『Progmat Coin(プログマ・コイン)』がかなり近いです。個人的に見ても、Progmat Coinはグローバルに先駆けた先進的な取り組みを行おうとしているのが伝わってきます。2023年に施行される改正資金決済法を視野に、法的な枠組みに沿った形でProgmat Coinのプロジェクトを始動させたのは、世界の中でも相当進んでいると思っています。国内でもWeb3関連の注目すべきプロジェクトが出てきた際に、先のNYC.NFTのようなもっと盛り上がる機運を作っていきたいです」(伊藤氏)

これに続ける形で、久保田氏は「NYCで驚いたのは、日本のコンテンツがグローバルの中でもものすごく競争力があると言われたこと」だと話す。

「DeFiやクリプトを差し置いて、NFTが日本で盛り上がり始めたのは、コンテンツを生み出す土壌や歴史があるからだと思うんです。Web 2.0の世界においてプラットフォームを作るのは、残念ながら日本は得意ではなかったわけですが、コンテンツをプラットフォームの上に乗せてコミュニティを形成し、エンタメを提供して価値を届けることであれば、勝筋が見出せる。そういった思いがあるからこそ、Web3が日本のスタートアップや大企業など多くのプレイヤーに脚光を浴びている理由だと考えています」(久保田氏)

Web3の技術で変わっていく地方創生や金融商品のあり方

また、NFTを地域で活かすことについて、神田氏は「仮想通貨が出てきた頃から、地域で循環させる仕組みになると捉えていた」とし、次のように考えを述べる。

「日本のいくつかの地域では、仮想通貨を地域通貨として扱うプロジェクトが進行していますが、今回NFTやDAOの仕組みを私も勉強していくなかで感じたのが、『地域のコミュニティを強め、そこにいろんな形で参加していく人が増えていく』ということです。地域住民のみならず、その地域に関わりがある人、興味関心を寄せる人など、さまざまな関わり合いが生まれる可能性があるということです。NFTやDAOは、地域の新しい魅力を発見し、発信していくことができるツールになりうると考えています」

先日xDXで報じた旧山越村(現新潟県長岡市)の事例は、まさにこれを体現するプロジェクトと言えるだろう。

神田氏の意見を聞いたモデレーターの沖田氏も、中央と地方の「共生関係」への可能性に言及する。

「これまでの地方創生は、ある種中央が地方を食い物にしたり、そもそもの当事者意識を持ちにくかったりという側面があったと感じます。それがNFTを利用していくWeb3の時代になると、コミュニティの部分が大事になるため、中央と地方が良い共生関係を作ることができるかもしれないと思います」(沖田氏)

セッションの最後には、Finatextホールディングス伊藤氏が「事業会社としての立場から意見を述べると、Web3における未来を創造していくためには、言わずもがな新しいものを作り続けなければいけない」とし、会を締めくくった。

「今Fintech業界で起きていることは『ディストリビューションの革命』です。それを我々はエンベデッド・ファイナンス(組込型金融)と呼んでいて、今まで金融サービスを提供できなかった企業が、既存の金融商品をできるようになりました。その背景になっているのは、金融が2010年ごろからいろんな商品が出てきてコモディティ化し、さらには2020年代からは、こうした金融商品をどうユーザーへ届けるかということに焦点が集まっていることです。

ではその次は何が起こるかと言えば『プロダクトそのものの革命』になってくるわけで、それは確実に既存の金融ではなくWeb3が担っていくと予測できるでしょう。2030年からの次の10年は、Web3の技術を用いた新しい金融商品が使われていく時代になると思うので、今から仕込んで準備をしておくことが重要になってくるのではないでしょうか」(伊藤氏)

取材/文:古田島大介
編集:長岡 武司

Fintech Japan 2022 レポートシリーズ by xDX

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