「NFTは企業の新たな広告ソリューションになる」HARTi代表が語るWeb3時代のマーケティング

「NFTは企業の新たな広告ソリューションになる」HARTi代表が語るWeb3時代のマーケティング

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2021年の「NFT元年」から時が経ち、企業におけるWeb3への関心が以前にも増して高まっている。

クリエイターらによるNFTプロジェクトが多く生まれ、NFT関連のビジネスを手がけるWeb3事業者やスタートアップも頭角を現してきており、まさに2023年はさらなる飛躍が期待されることだろう。

こうした状況のなか、国内初のアプリ型NFTプラットフォームとしてiOS/Android版のモバイルアプリを展開しているのが「HARTi(ハーティ)」だ。

暗号資産やウォレットの事前準備が不要というシンプルなUI/UXを提供しているのが特徴で、国内登録ユーザーは6,000名を突破したという。

また、全国の商業施設での「NFTイベント」も定期的に開催しており、NFT活用の実証実験も積極的に行っている。

今回は同プラットフォームを運営する株式会社HARTi 代表取締役の吉田 勇也氏に、商業施設でのNFT利活用の事例やWeb3産業の活性化に必要な勘所についてお話を伺った。

映画産業から着想を得たNFTプラットフォーム

2017年に英国・ロンドンへと留学した吉田氏は、アートマーケティングを専攻し、現地の文化芸術に対する意識の高さやアートが都市に息づく景観に惹かれ、「都市で機能するアート」に将来性を見出したと言う。

「現地で特に刺激を受けたのが『アート×不動産』でした。治安が悪い地域に気鋭のアーティストが住み着き、そこにカッティングエッジなアートを次々と生み出していったことで、富裕層も寄りつくようになる。そして、地域全体の質が向上し、地価が高騰していくようなジェントリフィケーション(都市の高級化)を目の当たりにしたときに、アートの可能性をものすごく感じたんです」

他方、日本のアート市場は基本的に「クリエイターが創作したアートをどう売っていくか」という視点が強く、アートを生かした産業振興や都市インフラとして機能させていく取り組みが少ないことに気づいたという。

そこで、2019年にHARTiを創業し、現代アーティストのプロダクション事業からビジネスをスタートさせた。

そこから、どのようにしてNFTに勝機を見出し、マーケットプレイス事業へとピボットさせていったのか。

「2017年からブロックチェーン自体は学んでいて、アート作品の証券化に着目していたこともあり、アートとNFTの親和性は前々から感じていました。そこに2021年初頭に話題になったビープルのデジタルアートが高額で落札されたり、海外のNFTプロジェクトであるBAYCやAzukiの動向をキャッチアップしたりしていくうちに、『NFTは投機的な目的以外のユーティリティが重要になる』と感じたんです。こうした背景が、NFTマーケットプレイス事業を始めたきっかけになっています」

さらに、具体的なNFTプラットフォームの構想については、実は映画産業におけるチェーン展開のモデルから着想を得たそうだ。

「映画館はIP(作品)を作ってどう供給していくかを考えるのではなく、全国にネットワークを張り巡らせ、どこでもみたい映画を鑑賞できるようにした。だからこそ、映画文化も育まれ、我々のライフスタイルにも根づいきたわけです。このような流れを参考に、HARTiを通してNFTを一般層に普及させていくためには、百貨店や商業施設といったリテール業界を抑える必要があるなと。リアルな空間で気軽にNFTを体感できる機会を作れば、NFTに興味を抱く人も増えると思い、サービスを設計していきました。イメージとしては人の目の前に置かれた自動販売機に近く、いかにHARTiを第一想起してもらえるかを重視しましたね」

NFTを配布することで「顧客接点の強化」や「再来店促進」に寄与

こうしてHARTiは、大手商業施設でNFT販売の実証実験を手がけるようになる。

「NFTは聞いたことがあるけど、どんなものか知らない」、「暗号資産を買ったりウォレットを開設したりするのが面倒」といったユーザーに対して、HARTiはプラットフォームを通じてどのようにNFTの有用性や魅力を訴求しているのだろうか。

吉田氏は実証実験のユースケースを踏まえつつ、このように説明する。

「実証実験に関しては2021年12月から取り組んでおり、2022年3月〜5月にかけて実施した東急不動産との実証実験では、チンアナゴをモチーフにしたジェネラティブNFTコレクション『浅瀬のおともだち』を東急プラザ渋谷内に1,111点展示し、会期中は来館者全員が貰えるノベルティNFTを配布しました。NFTアートについては1点4,900円で販売しましたが、600点ほど購入され、当初の想定を大きく上回る売上を達成することができました」

通常、NFTアートを購入する場合はメタマスクなどのウォレットを開設し、暗号資産取引所からイーサリアム(ETC)やビットコイン(BTC)を購入後、ウォレットに送金しなければならない。

このようなUXの悪さゆえ、NFTアート購入時のハードルの高さが課題になっているわけだ。

その一方で、HARTiではウォレットも暗号資産も必要ない。

「イベント会場のその場でアプリをダウンロードしてもらい、日本円をアプリ内通貨『HARTi Coin』に変換することで、NFTアートを購入する体験を味わってもらい、話題に上がっているNFTに“初めて触れる機会”を創出できたことが反響につながったと考えています。全体の8割くらいがNFTアートを購入したことのない方で、広く一般層のお客様にリーチできたのも大きな収穫でした」

NFT保有後の体験設計を作ることで、LTV向上につながる

さらに、実証実験で得られた成果として商業施設の再来店促進に寄与したという。

これは既存のデジタルマーケティングやOMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)施策とは異なる新たなマーケティングとして可能性があるとのこと。

「百貨店や商業施設には、コミュニティを作って『ただ買って終わりではない、買ってから始まる繋がり』を生み出し、顧客との長期的な関係性構築をしていくニーズがありました。HARTiにはチャット機能を用いて、NFTを購入したホルダー向けに絞ってクーポンの配布やイベントの告知ができるため、オンライン上のコミュニティを通じてのリピート来館やLTV(顧客生涯価値:Life Time Value)の向上につなげやすいのです。NFTはある種、“会員証”のような形で保有できるので、『所有していると特別感』を味わえることで、デジタル施策や紙のクーポンよりも店舗回帰率が高まったと推測しています」

そのほか、大手百貨店のPARCOと業務提携を結び、全国のPARCOでも実証実験を行っている。

2022年2月に札幌PARCOで実施した企画では、「NFTでSWEETS TOUR キャンペーン」と題し、クリエイターやショップが集結したショッピングイベントと連動し、先着500名にイベント限定NFTを配布。後日、別のイベントでそのNFTを掲示するとヴィーガンクッキーがもらえるという特典を付けたところ、通常のクーポン施策よりもリピート来館につながったそうだ。

また2022年11月から1ヶ月間は関西の大手私鉄4社と連携し、「NFTスタンプラリー」を駅周遊の実証イベントとして開催している。

常日頃からNFTの普及や活用事例の創出に尽力するHARTiだが、この企画では「普段はNFTにあまり触れないファミリーやシニア層の方も、NFTスタンプラリーに参加していた」と吉田氏は説明する。

「NFTの配布駅は全部で20か所で、各駅100個限定だったのですが、およそ半分くらいは収集された状況です。駅の掲示板にNFTを読み取るQRコードのポスターを飾っただけで、特に大々的な告知をしていないのにも関わらず、お子様連れのファミリーなど、NFTをまだ知らない人にも訴求できた事例になったと考えています。こうした実証実験の成果から、観光業や自治体からも引き合いが増えています」

Web3の潮流を抑える上で重要な「入り口はNFT、出口はメタバース」の考え方

そんななか、HARTiではtoB向けのNFTコンサル事業「HARTi for Business」も手がけている。

今後さらにNFTのユースケースや成功事例が出てくれば、新たな顧客体験やサービスを生み出すべく、多くの企業が既存のビジネスとNFTを絡めようと取り組むだろう。

企業がNFTを活用して集客や販促、エンゲージメント向上などの効果を高めるには、どのようなことを意識すればいいのか。吉田氏は以下のように説明する。

「まずは新しい世代の獲得に対する有効的な手段だと思います。これはアメリカのリサーチ結果ですが、『Z世代の6割はメタバースで物を購買してもいい』という統計があります。こうしたジェネレーションギャップを埋めていくためにも、NFTを建てつけにして企業の商品やサービスをプロモーションする潮流が増加してくると予測しています。

そして、いわゆるメタバースネイティブ世代がこれから台頭してくるなか、『入り口はNFT、出口はメタバース』というマインドセットも重要になります。メタバース市場はまだ道半ばだと捉える向きがあるものの、来たるべきメタバース社会における『暗号資産ウォレットやNFT』は現実世界での『マイナンバーカードや個人情報』という位置づけになってくるでしょう。個人の行動データがブロックチェーンに記録され、それがバーチャル世界での信用スコアになるのではと思っています」

NFT導入時に踏むべき4つのステップ

加えて、「NFTは顧客エンゲージメント向上やLTVを高めるのにも活用できる」と吉田氏は続ける。

「インターネット広告が頭打ちとなり、一定以上のマーケティング効果を出しづらくなってきているなか、NFTを発行し、興味を持ってもらった人に保有してもらうことで、既存の施策よりも深い関係性が作れますし、マーケティングトレンドとしても『リーチよりも、顧客との関係性の深化』がより重要になってきています。そういう意味では、企業の新たな広告・マーケティングソリューションとしてNFT活用の有用性を十分に見出せると考えています」

NFTを活用したユースケースが生まれ、Web3エコシステムの拡大が予想される未来。吉田氏は「DXと同様に4つのステップを経てNFT導入に動くといい」とアドバイスする。

「図のようにNFTの『体験』→『活用』→『応用』→『発展』のステップを踏むと、スムーズにプロジェクトが推進しやすいと思います。まずはNFTに触れてみて、そこから徐々に深めていくといいでしょう。我々が運営するHARTiのサービスノウハウや実績で蓄積された知見をもとに、NFTを生かした事業創造を企業と連携しながら取り組んでいければと考えています。

将来的には、メイン事業であるアプリのHARTiを“スーパーアプリ化”させ、HARTi内で決済やNFTの売買、ゲームなど、あらゆる機能を充実させていく予定です。さらなるブラッシュアップを続けてアプリ内で十分な経済圏が生まれてくれば、アーティストやクリエイターにも還元できるので、『感性が巡る、経済を創る』というミッションを胸に引き続き尽力していきたいと思います」

ライター後記

HARTiを取材して感じたのは、クリプトネイティブ層ではない初心者のユーザーに向けたNFTの販促企画に長けていることだった。

思わず商業施設やイベント会場に足を運びたくなる動線設計、そして何よりHARTiのアプリ内でNFTを活用したクーポン配布やコンテンツ配信ができるのも、利用する企業にとってはマーケティング活動に生かしやすい。

NFTを通じてビジネス成長につなげていくソリューションとして、今後さらに発展が期待できるのではないだろうか。

 

取材/文/撮影:古田島大介
編集:長岡 武司

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