閣議決定した「骨太の方針 2022」のDX&Web3要素をご紹介

閣議決定した「骨太の方針 2022」のDX&Web3要素をご紹介

目次

2022年6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(通称:骨太方針2022)が閣議決定されました。

こちらは毎年初夏に政府より示されるものですが、今回の骨太方針では「新しい資本主義へ」というタイトルが付けられ、これまで記載されてきたDXはもちろん、「人への投資」や「GX(グリーントランスフォーメーション)」、「Web3.0」という表記が盛り込まれ、​​より「大きな政府」としての中長期的な財政支出の旨が明記されています。

具体的にどのような内容が語られたのか。本記事では、主にDX、そしてWeb3.0に関する記載箇所のあらましと、その周辺情報についてご紹介します。

骨太方針2022の全体骨子(個別トピック付)

まずは、今回閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2022(以下、骨太方針2022)の構成を俯瞰したいと思います。目次内容に個別のトピックを交えたものが以下となります。

  

第1章 我が国を取り巻く環境変化と日本経済

 1.交際情勢の変化と社会課題の解決に向けて

 2.短期と中長期の経済財政運営

  (1)コロナ禍からの回復とウクライナ情勢の下でのマクロ経済運営

   ・当面のマクロ経済運営

   ・経済社会活動の正常化に向けた感染症対策

  (2)中長期の経済財政運営

第2章 新しい資本主義に向けた改革

 1.新しい資本主義に向けた重点投資分野

  (1)人への投資と分配

   ・人的資本投資

   ・多様な働き方の推進

   ・質の高い教育の実現

   ・賃上げ・最低賃金

   ・「貯蓄から投資」のための「資産所得倍増プラン」

  (2)科学技術・イノベーションへの投資

  (3)スタートアップ(新規創業)への投資

  (4)グリーントランスフォーメーション(GX)への投資

  (5)デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資

 2.社会課題の解決に向けた取組

  (1)民間による社会的価値の創造

   ・PPP/PFIの活用等による官民連携の推進

   ・社会的インパクト投資、共助社会づくり

   ・イノベーションを促す競争環境の整備

  (2)包摂社会の実現

   ・少子化対策・こども政策

   ・女性活躍

   ・共生社会づくり

   ・孤独・孤立対策

   ・就職氷河期世代支援

  (3)多極化・地域活性化の推進

   ・デジタル田園都市国家構想

   ・分散型国づくり・地域公共交通ネットワークの再構築

   ・多極化された仮想空間へ

   ・関係人口の拡大と個性をいかした地域づくり

   ・中堅・中小企業の活力向上

   ・債務が増大している企業や家計への対応

   ・観光立国の復活

   ・文化芸術・スポーツの振興

  (4)経済安全保障の徹底

第3章 内外の環境変化への対応

 1.国際環境の変化への対応

  (1)外交・安全保障の強化

  (2)経済安全保障の強化

  (3)エネルギー安全保障の強化

  (4)食糧安全保障の強化と農林水産業の持続可能な成長の推進

  (5)対外経済連携の促進

   ・国際連携の強化

   ・対日直接投資の推進

   ・外国人財の受け入れ・共生

 2.防災・減災、国土強靭化の推進、東日本大震災等からの復興

   ・防災・減災、国土強靭化

   ・東日本大震災等からの復興

 3.国民生活の安全・安心

第4章 中長期の経済財政運営

 1.中長期の視点に立った持続可能な経済財政運営

   ・官民連携による計画的な重点投資の推進

   ・単年度予算の弊害是正

   ・持続可能な債務管理に向けて

   ・効果的・効率的な支出の推進とEBPMの徹底強化

   ・税制改革

 2.持続可能な社会保障制度の構築

   ・全世代型社会保障の構築

   ・社会保障分野における経済・財政一体改革の強化・推進

 3.生産性を高め経済社会を支える社会資本整備

 4.国と地方の新たな役割分担

 5.経済社会の活力を支える教育・研究活動の推進

第5章 当面の経済財政運営と令和5年度予算編成に向けた考え方

 1.当面の経済財政運営について

 2.令和5年度予算編成に向けた考え方

  

ご覧いただくとお分かりのとおり、DXはこの骨子の中のあらゆる計画に浸透した概念であり、チャプターとしては[第2章 2-(5)]で項目設置されているものの、全体としてデジタルによるトランスフォーメーションに起因するパラダイムシフトへの対応が求められていることがわかります。

今回はこの中でも、第2章「新しい資本主義」のDXチャプターを中心に、水色の網掛けをした部分について補足解説を加えながらご紹介していきます。

新しい資本主義とは

そもそも「新しい資本主義」とは、上図にあるとおり官民が協力して「成長」と「分配」の好循環を実現し、かつて表現されていた“一億総中流”よろしく、分厚い中間層の復活を目指すというものです。

これは岸田首相の看板政策であり、持続的な成長に向けた需要創出とともに、供給力を高める効果を持つ「投資」の拡大が、今回の骨太方針では不可欠だと明記されています(第4章 1-官民連携による計画的な重点投資の推進)。

具体的には、「第2章 新しい資本主義に向けた改革」に掲げられた5つの領域「人への投資」「科学技術・イノベーションへの投資」「スタートアップへの投資」「GXへの投資」「DXへの投資」が重点分野として位置付けられています。特に、「人への投資」は他4領域に共通する基盤への中核的な投資であるとされており、働く人への分配を強化する賃上げの推進や、職業訓練・生涯教育等への投資、多様な働き方を選択できる環境の整備等が[第2章 2-(1)人への投資と分配]で説明されています。

DXへの投資について

DXについてはこれまでの骨太の方針でも何度も明示されてきたものではありますが、今回は「新しい資本主義」に向けた重点投資分野の一つとして、以下の事項が提示されています。参考情報として各資料へのリンクを飛ばしているので、気になったものはぜひ別ページ資料もご参照ください。

  • 今後3年間の集中改革期間における「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」に基づく目視規制や常駐専任規制等の法令等の見直しの実施とデジタル原則への適合
  • あらゆる技術を活用するためのテクノロジーマップの整備と実装の加速
  • 法人設立時の手続の迅速化・費用軽減を含む規制改革の推進
  • 予算編成プロセスなどでEBPM(証拠に基づく政策立案)に基づく意思決定を推進するなど、より機動的で柔軟な政策形成・評価を可能とする取組の推進
  • ベンダーロックインなどの課題を解消するため、政府の情報システム調達の見直しに向けた検討
  • サイバーセキュリティ戦略」に基づく取組の推進
  • 携帯電話市場における公正な競争環境の整備と料金の低廉化の推進
  • 準天頂衛星等の更なる整備や地理空間情報の高度活用と、衛星データの利活用の促進
  • デジタル庁を中心に、政府全体で「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に基づき、デジタル3原則を基本原則とする行政のデジタル化の着実な推進
  • マイナンバーカードの普及と、それに伴う利活用拡大等の国民の利便性を高める取組の推進
  • 包括的データ戦略」に基づく医療・介護、教育、インフラ、防災に係るデータ・プラットフォームの早期な整備
  • 個人や法人の税務始め各種手続の負担軽減に向けた検討(マイナポータルの利便性向上等)
  • 給付事務等への活用を念頭にした行政機関間の情報連携の推進
  • 地方自治体におけるデジタル化の取組の推進

特に今年度の骨太方針より、昨年発足された「デジタル庁」の存在が正式に加わったことで、国全体のデジタル化に向けた施策への取り組みとその舵取り役としての同庁の存在が改めて強調されています。(「デジタル庁」という表現自体は2021年度の骨太方針から明記されています)

政府肝いりで進むマイナンバーカードの普及については、2022年5月1日現在の総務省データによると交付枚数は5500万枚を突破して人口に対する交付枚数率は44%となっており、普及機に突入したと言えますが、2022年度末までに全国民への交付完了という目標に対してはまだまだ厳しい数字なのではないかと言えます。

なお、デジタル庁を中心とする行政DXについては、これまでxDXでも何度もイベントレポート等を通じて取材をしてきましたので、こちらもぜひご覧ください。

Web3の推進と環境整備、Trusted Webの実現に向けて

ここ一年で耳にすることの多くなった「Web3」(同方針では「Web3.0」と表記)については、[第2章 2-(3)多極化された仮想空間へ]にて以下のように明記されています。

  

より分散化され、信頼性を確保したインターネットの推進や、ブロックチェーン上でのデジタル資産の普及・拡大など、ユーザーが自らデータの管理や活用を行うことで、新しい価値を創出する動きが広がっており、こうした分散型のデジタル社会の実現に向けて、 必要な環境整備を図る。

そのため、トラステッド・ウェブ(Trusted Web)の実現に向けた機能の詳細化や国際標準化への取組を進める。また、ブロックチェーン技術を基盤とするNFTやDAOの利用等のWeb3.0の推進に向けた環境整備の検討を進める。さらに、メタバースも含めたコンテンツの利用拡大に向け、2023年通常国会での関連法案の提出を図る。Fintechの推進のため、セキュリティトークン(デジタル証券)での資金調達に関する制度整備、暗号資産について利用者保護に配慮した審査基準の緩和、決済手段としての経済機能に関する 解釈指針の作成などを行う。

  

Trusted Webとは

Trusted Webとは、2020年10月15日からタスクフォース「Trusted Web推進協議会」で議論・検討が進められている次世代型インターネットのあり方を指します。以下の記事でも言及しているとおり、現行のインターネット構造の仕組み(Web2.0)では、一部のデジタルプラットフォーム・組織体への極度の依存(中央集権化)やプライバシー情報を含めたデータのガバナンスなど、様々な課題があります。

たとえばデータガバナンスの面でお伝えすえると、2020年6月に公表された「デジタル市場競争に係る中期展望レポート」には、HTTPなどでデータの受け渡しのプロトコルが決められている現在のWebの仕組みにおいて、そのデータが本来「誰がコントロール」 すべきもので、どのようなデータに対して誰がどのような条件のもとでアクセスすることができ、誰がそのデータの内容に介入することができるのか、データのアクセスや移転の履歴がどうなっているかといった点を把握・検証するメカニズムが存在しないことが言及されています。

このような背景をもって上述のレポートで、今後のインターネット構造が目指すべき方向性として示されたのがTrusted Webというわけです。前述の中央集権型のデータのガバナンス構造ではなく、「データへのアクセスのコントロールを、それが本来帰属すべき個人・法人等が行い、データの活用から生じる価値をマネージできる仕組み」を構築し、データ社会における「信頼」を再構築するということが示されました。コンセプトとしては以下のとおり、データ・ガバナンスのレイヤーを設けるというイメージとなります。

画像出典:デジタル市場競争会議「デジタル市場競争に係る中期展望レポート」p32

そして、2021年3月には「Trusted Web White Paper ver1.0」としてアウトプットされ、Trusted Webの設計・運用などに当たって考慮されるべき10の原則が提示されるに至りました。こちらについては、また追って解説記事を配信する予定です。

支える仕組み

持続可能なエコシステム

ステークホルダーがそれぞれの責任を分担し、責任を果たすインセンティブがあること。

マルチステークホルダーによるガバナンス

マルチステークホルダーがガバナンスに関与し、ステークホルダーの責任が明確で、問題が発生したときに原因究明ができること。

オープンネスと透明性

アーキテクチャー設計、実装とそのプロセスがオープンであり、透明性が高く相互に検証可能であること。

機能をシステムとして実装する際に必要なこと(ユーザーの観点)

データ主体によるコントロール

データへのアクセスのコントロールは、データ主体(個人・法人)に帰属すること。

ユニバーサル性

誰も排除せず、弱い立場にある人を取り残さないこと。誰でも自由に参加できること。

ユーザー視点

ロックインフリーでユーザーに選択肢があること。ユーザーにとって分かりやすく安心し

て使えること。

機能をシステムとして実装する際に必要なこと(システムの観点)

継続性

既存のインターネットアーキテクチャーを基礎として、上位に構築することとし、transitional な形で現行ウェブに付加されること。既存のトラスト手段とのフェデレーションも考慮すること。

柔軟性

構成部品が疎結合で構成され、拡張可能なアーキテクチャーであること。

相互運用性

技術のみだけでなく、法制度、ガバナンス、組織等の社会システム全体について異なるシステム間で連携可能であること。

更改容易性・拡張性

特定の技術に依存し過ぎず、中長期での利用を意識して継続的に機能拡張が容易でスケーラブルであること。

Web3の具体像はこれから

政府は「新しい資本主義の グランドデザイン及び実行計画(案)~人・技術・スタートアップへの投資の実現~」も作成しており、ここでもWeb3やメタバース の活用に言及しています。

一方で、表現としては「検討を進める」に留めており、詳細はこれから考えていくというのが現状だと言えます。

なお、上述のTrusted Web White Paper ver1.0については、こちらに概要資料がアップされているので、全体感を俯瞰されたい場合は併せてご参照ください。

日本から世界へのコントリビューションに向けて

2019年1月23日に、当時の安倍晋三首相は5年ぶりにダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)に出席し、「DFFT(Data Free Flow with Trust:信頼ある自由なデータ流通)」という概念を提唱しました。

これは、「プライバシーやセキュリティ・知的財産権に関する信頼を確保しながら、ビジネスや社会課題の解決に有益なデータが国境を意識することなく自由に行き来する、国際的に自由なデータ流通の促進を目指す」ことをコンセプトとするもので、Society 5.0時代における国境を越えた自由なデータ流通を想定した、日本発の国際的なアジェンダとも言えます。

昨今進められているDX施策や、今後具体化が進められるであろうWeb3は、このDFFTで掲げられるデータガバナンスを実現する上では不可欠であることから、今後国家戦略としてWeb3を提唱していくことは、日本が世界へとコントリビューションできる絶好の、そしてもしかしたら最後の機会となるかもしれないと、xDX編集部では感じています。

だからこそ、今回の骨太方針2022にWeb3が盛り込まれたことは、それ自体が非常に大きな一歩であると考えています。

引き続き、xDXではDXひいてはWeb3の動向を追っていきたいと思います。

文:長岡武司

関連記事

  • メタバースプラットフォームの雄「cluster」が目指すクリエイターファーストな世界

    メタバースプラットフォームの雄「cluster」が目指すクリエイターファーストな世界

  • 「Why NFT?」を明確にせよ。doublejump.tokyo COOが語る、世界が熱狂するプロダクト開発のポイント

    「Why NFT?」を明確にせよ。doublejump.tokyo COOが語る、世界が熱狂するプロダクト開発のポイント

  • 次世代の経営者が実践するニュービジネスの立ち上げ方 〜SHARE SUMMIT 2022 セッションレポート〜

    次世代の経営者が実践するニュービジネスの立ち上げ方 〜SHARE SUMMIT 2022 セッションレポート〜

  • コインチェックが取引所以外の事業を展開する理由。Web3エコシステムの創出に向けて

    コインチェックが取引所以外の事業を展開する理由。Web3エコシステムの創出に向けて

  • Web3を日本に根付かせる条件とは? 〜SHARE SUMMIT 2022 セッションレポート〜

    Web3を日本に根付かせる条件とは? 〜SHARE SUMMIT 2022 セッションレポート〜

  • 世界中のZ世代に寄り添うVTuber「Tacitly」。NTTコノキューが進めるIPファースト戦略を探る

    世界中のZ世代に寄り添うVTuber「Tacitly」。NTTコノキューが進めるIPファースト戦略を探る

News

  • Industry Alpha㍿がピッキング順序最適化モジュールを開発

  • ㍿エスプールの子会社の㍿エスプールグローカルが、島根県ならびに浜田市と立地協定を締結し、同市に隣接する複数の自治体業務を受託するシェアード型のBPOセンターを開設

  • タリスマン㍿が昨今需要が高まるPMOの人材・チーム組成を、クイックにアウトソーシングできる新サービスを開始

  • ㍿クロスキャットがDX支援サービスのさらなる強化を目的に、データ分析領域に強みを持つ㍿セラクとデータ分析支援事業において協業を開始

  • AOSデータ㍿が、働き方改革の実現を支援するSaaSトリニティ製品「DataShare3.0」「AIパピルス」「AOS Webinar」の販売促進に伴い、販売パートナーを募集

FREE MAILMAGAZINEメルマガ登録

DXに特化した最新情報配信中