「発想はクレイジーに、やり方はクレバーに」。DXにはワクワクが欠かせない | 株式会社muse 代表取締役 勝 友美

「発想はクレイジーに、やり方はクレバーに」。DXにはワクワクが欠かせない | 株式会社muse 代表取締役 勝 友美

目次

YouTubeチャンネルを立ち上げて、わずか1年半足らずでチャンネル登録者35万人を突破。

現在はチャンネル登録者100万人を目標に掲げる、株式会社muse 代表取締役 勝 友美氏は、前回お伝えした通り「大きな壁」に直面しているという。

急成長を遂げるYouTubeチャンネルが直面する課題とは何か。後編の今回は、YouTubeチャンネル運営の“いま”に迫り、そこから波及したオーダーメイドスーツブランド『Re.muse』へのビジネスインパクト、さらにDXに挑む変革者たちへのメッセージをお届けする。

*YouTubeのチャンネル登録者数は2020年3月6日時点のものです。

インタビューイー

勝 友美

株式会社muse 代表取締役。アパレル販売員から始まり、入社初日でトップセールスとなる。

ヘッドハンティングにより国内外でのスタイリスト経験を経た後、テーラーの世界へ転身。

28歳で自社ブランド『muse stylelab』を立ち上げ、独立。

「夢を叶えるヴィクトリースーツ」として多くのエグゼクティブより支持を受け、現在に至る。

2017年6月、ブランド名を『muse style lab』改め『Re.muse』へ改名。

著書に『営業は「バカ正直」になればすべてうまくいく!』(SB クリエイティブ)

2018年2月、9月にテーラーとしては日本初のミラノコレクション出場を果たす。

10月にはインドファッションウィークに出場。 NHK、日本テレビを始め、多数のメディアに取り上げられている。

100万人を超えるために「人気フォーマット」を創る

ーーチャンネル登録者100万人を目指している中で感じられている「壁」の存在について教えてください。それは、チャンネル登録者10万人に到達する前に感じた壁とは異なるのですか?

 明らかに異なります。

前回の壁に直面した時は、他のチャンネルなどを参考にすれば突破口があると感じられました。実際、YouTubeショートという突破口を発見して、チャンネル登録者30万人まで理想的な成長曲線を描けました。

しかし、30万人を超えてから、思うような結果が出ていません。その背景には、YouTubeのアルゴリズムの変化もあるでしょう。アルゴリズムが洗練され、ユーザーがチャンネル登録しなくても観たい動画をレコメンドできるようになりつつあります。

また、そもそもビジネス系YouTubeチャンネルの限界点が30万人なのかもしれません。

そんな中、どうすればチャンネル登録者100万人を達成できるか。考え抜いた先に出した結論は「これはもう、自分たちが新たなフォーマットを生み出すしかない」ということです。

YouTubeには、人気動画の定番フォーマットがあります。「モーニング・ルーティン」や「100の質問」、「メイク動画」などはその典型です。

現在の壁を突破するには、このような新しいフォーマットを創り出すことが求められていると感じます。

ーーその新しいフォーマットは発見できたのですか?

最近、ようやく発見できました。「これは、YouTubeの世界にまた進撃を起こすのでは?」とワクワクしています。

 

もちろん、このフォーマットを生み出すまで色々なアイデアが出ました。しかし、限られた時間などのリソースを踏まえると現実的でなかったり、どれも「ワクワク」しませんでした。

しかし、そこで諦めてはいけません。大事なのは「研ぎ澄ませ続ける」ことです。

ただ闇雲にやるのではなく、あらゆるリソースから情報を集めて、成功例からそのエッセンスを徹底的に洗い出すなど、少しでも成功する確率を上げる努力が欠かせません。

そして、それを積み重ねることで、現代の「推す」や「エモい」などの感覚を自分たちでつかんで、その先に浮かんだアイデアがヒットを呼ぶのではないかと感じられるようになります。

ワクワクをどこまで研ぎ澄ませられるか。これはとても重要だと思います。

誰もが知っているブランドに肩を並べたい

ーーYouTubeチャンネルがグロースして、museの本業であるオーダーメイドスーツブランド『Re.muse』のビジネスにもポジティブな影響があるのではないでしょうか。

確かに予約は確実に増えています。またRe.museの店舗がない地域で受注会を開催すると告知すれば、即日予約が埋まるほどです。

しかし、これはまだ、単なる「流行り」にすぎません。

流行りはいずれ廃れます。私がYouTubeをやっているのは、あくまでRe.museの「本質的なブランド価値」を高めるためであり、流行りを作るためではありません。

社員にもそれはしっかり伝えていますし、そこでよく引き合いに出すのが、ディズニーやリッツカールトンなど誰もが知っているブランドです。

これらのブランドに肩を並べるにはどうすればいいのか。チャンネル登録者100万人という目標も、それがYouTubeにおいてある程度の権威性を持つ数字だからであり、YouTubeの世界で確固たるブランドを築くためのマイルストーンの1つだからです。

また人材採用でも、大きな変化があります。2021年7月は、採用に関する問い合わせが急増して、業務に支障が出かねないほどでした。

そこで、正式な募集ページを作り、アンケートへの回答が必須など高めのハードルを設けて採用活動を行いました。しかし、それでも多くの方にお申し込みいただき、とてもありがたかったです。

おかげさまで、近い感覚を持つ人材を採用できたと思います。そして、それと同時に私の考え方が変化しているのも感じます。

ーーそれはどういうことですか。

最近は「出勤してくれてありがとう」と社員の存在自体に感謝できるようになりました。特に、2021年末から採用した方が入社するようになって、より一層感じるようになったと思います。

正直、以前は正反対でした。自分がストイックすぎるのもあって、出社して当たり前、熱量も自分と同じレベルを求めていました。

しかし不思議なことに、以前の自分とは大きく変わっています。ジョインした方が定着して成長するか。これはYouTubeでは解決できない問題であり、Re.museの成長を考える上で避けて通ることはできません。

肌身で感じた「デジタルの可能性」

ーーYouTubeチャンネルがグロースして、何かネガティブなことはありますか?SNSにおける影響力が大きいと、誹謗中傷などもかなりありそうです。

誹謗中傷は比較的少ないと思いますが、強いて挙げれば、私のプライベートな空間がどんどん狭まっていることでしょうか。

タクシーに乗っても、買い物をしていても、休日にネイルやマツエクに行っても「社長!」と声をかけられるようになりました。チャンネル登録者数が急激に伸び始めた時は、その変化に感覚が全く追いつかず、何が起きているのかわからないほどでした。

正直、少し溜息をつきたくなる時もあります。しかし、それを上回るだけのメリットを得ているので、文句を言いたくなるほどではありません。

私のキャリアは、アパレルというフィジカルなモノに携わることがほとんどでした。そのため、正直デジタルの可能性というのが見えませんでした。

しかし、現在は違います。ひょっとすると、YouTubeを通じて昨年から始めたオンラインサロンの収益や、今後挑戦を考えているオンラインを活用した物販などのデジタルを通じて得られる売上が、オーダーメイドスーツの売上を超えるかもしれません。

だから、今はそのインパクトの大きさを肌で感じられます。

ーー今後の展望はどのように考えていますか。

色々考えていますが、1つはRe.museの「人を自信に包む」というミッションのもと、新商品を開発してオンラインで展開したいです。YouTubeを通じてオンラインの可能性を感じたので、スーツ事業以外でも可能性を探りたいですね。

ーー現在の状況を踏まえると、店舗数の拡大も視野に入っているのではありませんか?

それは、現時点では考えていません。

確かに、銀座店をもっと大きくしたいですし、名古屋や福岡に出店してもうまくいくのは目に見えています。経営者なので、売上の拡大も目指したくなります。

しかし、今は社員1人ひとりの質を高めることに集中したい。社員の成長がなければ、1,2年は成功しても10年は続かないですし、出店もうまく行きません。

そこは徹底したいと思います。

またブランドの価値を高める意味でも、今は良いタイミングかもしれません。タレントで経営者でもある西野亮廣さんは、「認知度の高さと普及度の低さ、この差がブランドを作る」とおっしゃっています。まさに、私もそれに取り組んでいますし、実際ブランド価値が高まっているのを感じます。

発想はクレイジーに、やり方はクレバーに

ーー今回の貴社の取り組みは、YouTubeチャンネルを起点にしたDXの一例になると捉えています。この経験を通じて、今後DXを担う方々へどのようなメッセージを送りたいですか?

「発想はクレイジーに、やり方はクレバーに」とお伝えしたいですね。

お金や名誉は大事ですが、それに気を取られて賢くなりすぎると、心がワクワクしなくなります。

自分の幸せを考えた時、自分にしかできないことに心躍らせて実現することにあるのではないでしょうか。

そして、もしそれがあるなら、チャレンジする方が楽しいと思います。

また一昔前なら、それを実現するには会社を辞めて起業するしかなかったかもしれません。しかし現在は、企業によっては社内ベンチャー制度のような仕組みがありますし、DX推進部のような場で新規事業に関わることもできます。

また、副業でトライすることも選択肢の1つになりうるはずです。

もしそれらが可能なら、あえて会社を辞めずに、賢くチャレンジできるのではないでしょうか。そして、成功確率を高めてから、独立するのが賢明ではないでしょうか。

発想が賢く収まってしまい、やり方がリスクの大きい方法を選択するケースを目にすることがありますが、あえて一か八かの選択をする必要があるのか、考え抜くことをおすすめしたいですね。

当社でも、ある社員が独立したいと相談しに来ました。しかしその時、私はこう伝えました。

「museには、経営者をはじめ数多くのビジネスパーソンが訪れてコネクションが作れる。さらに店舗運営など経営のノウハウもある。それらを良い意味で盗んで、事業計画書を作って私に持ってきてほしい。その計画に私が出資したくなったら、成功確率は上がるよ」。

会社は人を育てる場でもあります。その子に夢があり、真剣に独立を目指すのであれば、寂しさはありますが個人的には辞められても構いません。

一方で、今いる環境で最大限やり切ることが、「夢を持って生きる」第一歩になるかもしれません。そう信じて、努力し続けるのも素晴らしいキャリアではないでしょうか。

編集後記

まさかここまでグロースするとはーー。

『勝 友美-VICTORY CHANNEL-』のチャンネル登録者の伸びを見て、ただただ驚くばかりだった。

なぜここまで成長できたのか。それを探り、DXを試みる方々に少しでもそのエッセンスを伝えたいというのが、この企画の原点だった。

取材を通じて改めて感じたのは「結果には必ず原因がある」という大原則だ。成功するために可能な限りリソースを投入し、徹底的にやり切る。それがあったからこそ、今の結果があるのだ。

とはいえ、これは「言うは易し行うは難し」の典型でもある。xDXもグロースのためにやり切れているだろうか。勝氏の言葉に心を奮い立たせ、妥協せず貪欲に成長を求めていきたい。

▶︎​​この記事には前編があります

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