瞑想 to Earnやストーリーライン参加型NFTゲームまで、Web3ピッチ大会が面白かった件
目次
2022年6月16日、スタートアップ特化型SNSを運営する株式会社PROTOCOLが、オンライン合同企業説明会「PRO Pitch: Web3」を開催した。テーマがWeb3ということで、国内外でWeb3に関連した事業を展開する起業家16名がWeb上に集まり、最新の事業展開状況をプレゼンしていった。(公式イベントレポートはこちら)
非常に先進的なピッチが多かった中、xDXではその中でも特に気になったプロジェクトについて、前後編に分けて計6社の内容をご紹介する。
前編となる本記事では、最新のX to Earnモデルとなるマインドフルネス to earnやユニークなGameFiタイトル、Web3時代のデジタルアセット管理プロジェクトについて、それぞれ見ていく。
マインドフルネス to earnの「Mindland」
プレゼンター:湯川直旺(Mindland CEO:東京大学工学部システム創成学科を2022年3月に卒業。東京大学在学中は松尾研究室にてAIや脳波関連の研究を行う。2021年8月から2022年5月まではSan Francisco State Universityでの1年間の修了証プログラムに参加。ニューロテックに興味があり、NeurotechJPというオンラインメディアの運営に携わる傍ら、現在はtokenインセンティブと組み合わせることでmindfulnessの習慣化を目指すmindfulness to earnのアプリを開発中)
プロジェクトURL:https://twitter.com/MndlndOfficial
サンフランシスコを拠点に活動する湯川氏がCEOを務めるMindlandでは、「トークンインセンティブを使って人々をマインドフルにする」ことをビジョンに掲げ、mindfulness to earnサービスの開発を進めている。X to Earnスキームの中でも、瞑想を行うことでトークンが配布されるというものだ。
※X to Earnの詳細についてはこちらの記事をご参照
▶︎X2E(X to Earn)とは?生活するだけで稼げる時代がやってくるのか、それともただのブームなのか
具体的には、スマホとフィットネストラッカー(Apple Watch)、それからBCIs(Brain Computer Interfaces:脳波等を計測する機器)を活用して腹部振動と心拍数、脳波のデータをセンシングし、瞑想の質をスコア化した上で、スコア内容に応じたトークンを得ることができるという。スマホ以外のデバイスを持たないで利用することもできるというが、その場合はセンシングが一部となるので、トークンの配布もその分少なくなる設計となっている(トークン計上の優先度としては「スマホのみ<フィットネストラッカー<BCIs」とのこと)。
すでに多くのプロジェクトが登場しているMove to EarnやPlay to Earnと比較して、メンタルヘルスに特化したX to Earnプロジェクトとなるので、同じマインドステートのユーザーが多くなることが想定される。よって、Web3時代の要となるコミュニティとしてのソーシャル性により強みを持てることが期待できると、湯川氏は強調する。
なお、プロジェクト収益源としてはユーザーによるアプリ利用開始時のNFT購入代が初期段階ではメインとなるが、中長期的にはアプリに溜まる瞑想データの研究機関等への提供やデバイス関連企業とのプロダクト開発の協業、トレーニングプログラムの開発・提供など、複数の収益ポイントを想定して設計を進めているとのこと。
記事執筆時点で公開されているロードマップは以下のとおりとなっている。
【Roadmap】
— Mindland | Web3 Meditation App (@MndlndOfficial) July 2, 2022
July 7th: Website
July 21st: Discord
End of August: Closed Alpha
January 2023: Public launch
2024: Phase 2 starts
2027: Phase 3 starts pic.twitter.com/4yZnIYVjUf
xDX編集長のひとこと
当メディアでX to Earnの記事を配信した際に「マインドフルネス分野のto Earnが欲しい」というコメントをいただいたことがあったので、まさに待ってましたという気分です。プレゼン冒頭で湯川氏が強調していたことですが、STEPNがウォーキングの習慣を創出したように、Mindlandは瞑想の習慣化を創出することが期待されます。一方で、BCIsはまだまだデバイスとしてはニッチなものなので、to Earnの動機でどこまでデバイス購入を含めた巻き込みができるのかが注視ポイントだと感じました。
死後のデジタルアセット管理をなめらかにする「Webacy」
プレゼンター:五十川舞香(Webacy CEO:元シルク・ドゥ・ソレイユのアクロバット、スタンフォード大学卒業後、マイクロソフトで政府のサイバーセキュリティエンジニアを経て、Webacy を創業し、CEO就任。世界中の人々のクリプトやデジタル資産を守り継承するためのサービスを運営)
プロジェクトURL:https://www.webacy.com/
シルク・ドゥ・ソレイユ→マイクロソフトでの政府のサイバーセキュリティエンジニアというユニークなキャリアを積んできた五十嵐氏が率いるWebacyでは、人が亡くなった後のデジタルアセットの管理をサポートするソリューションを提供している。
ここでいう「デジタルアセット」とは、SNSやWeb上にある各種データのことで、当然ながらこの中に暗号資産も含まれる。もしもSNSやウォレットの所有者が亡くなった場合、これらデジタルアセットは所有者不在のまま放置されることになる。そのような事態を防ぐために開発が進められているのがWebayというわけだ。自身の従兄弟の死を経験したことが、本プロダクト開発の大きな動機になっているという。
いわゆる「デジタル終活」をサポートするサービスということだが、その大きな特徴は、ブロックチェーンの「Conditional Transfer Smart Contract(条件付き転送を実現するスマートコントラクト)」機能を活用した“アセット移転の自動化”にあるという。つまり、自分に何かあった時にはパスワード等を入力することなく、家族などあらかじめ設定した対象者にアセットを移転する設定ができるというわけだ。
このほかにも、ユーザーが生きている間に発生した有事の際にすぐに資産を退避できるバックアップ機能やパニックボタン機能など、デジタルアセットの安心・安全な管理に向けた各種機能を順次実装している状況である。
現在はベータ版で、まずは300名ほどのテスターが活用中とのこと。カットオーバー当初は海外での展開を想定しているので英語版しか存在しないが、いずれ日本語対応も進めていくとのことだ。
xDX編集長のひとこと
人々の活動拠点は間違いなくデジタルシフトしており、それに伴ってアセットもデジタル由来のものが多く成っています。そもそも、私たちが日々使っているお金も随分と前からビットの世界に移行しているわけで、そういう意味では全ての人はデジタルアセットの安心・安全な管理リテラシーを高める必要があると感じます。中長期的には規制のあり方にも関わるWeb3時代必須の概念だからこそ、Webacyへの期待値も高く感じています。なお、伊藤穰一氏がMCを務めるEarthshot本人へのインタビューもあるので、ぜひこちらもご覧いただきたいです。
ストーライーライン参加型NFTゲームの「Murasaki」
プレゼンター:村田晋之佑(Murasaki B.V. CEO:英国ヨーク大学卒業。青果販売業の設立、三井物産、ジラフ、数社の起業、ベルギーのサッカークラブビジネス担当を経てオランダにてMurasakiを起業。趣味はサッカーと絵を描くこと)
プロジェクトURL:https://murasaki-b-v.gitbook.io/cyberstella/concept/introduction
日本のゲームクリエイターと海外のクリプトマーケターが集まって、オランダを拠点にグローバルチームを形成しているMurasaki B.V.は、GameFi領域で事業を展開するスタートアップだ。その大きな特徴は「GameFi+Story」にあると、代表の村田氏は強調する。
ファーストタイトルは「Cyberstella」というサイバーオペラをテーマにしたNFTゲームになるとのことで、ガバナンストークンホルダーはCyberstellaのストーリーラインを埋めていくような作業をしていくことになるという。
たとえばAirDropを行った際には、ユーザーは購入したNFTのキャラクターに名前とバックグラウンドを設定することが依頼されたという。つまり、コアのストーリーラインを取り巻く様々なキャラを設定することで、ガバナンストークンホルダーはゲームのストーリーの巻き込まれるような体験を得ることが可能となるわけだ。
もしかしたら、自分が購入したNFTキャラがスピンオフ作品で登場することになるかもしれず、大きなIPとコラボするチャンスが巡ってくるかもしれない。場合によっては人気キャラとなって、クロスメディア展開されることになるかもしれない。
「テクノロジーを通じて人々の居場所を提供し、それぞれが主人公になれる社会を作る」ことをビジョンに掲げるMurasakiだからこそのGameFiモデルだと言えるだろう。
xDX編集長のひとこと
詳しくはプロジェクトページを見てもらいたいのですが、なんと言ってもネオレトロなテイストのNFTキャラがたまりません。そして、参加の仕方が「ストーリーライン」にあるというのも、個人的にはユニークで面白いと感じました。シェイプシフターかトリックスターか、それともガーディアンとして機能させるか。ハリウッドのストーリーコンサルタントであるクリストファー・ボグラー氏による「神話の法則」を引っ張り出したくなるようなプロジェクトです。
Web3関連の解説記事
▶︎Web3(Web3.0)とは?自律分散型社会のあり方から、ブロックチェーン・メタバース・NFTの関係まで詳細解説
文:長岡 武司