BtoBメタバースソリューションの勝機とは?グリー傘下「REALITY」のアプローチを学ぶ

BtoBメタバースソリューションの勝機とは?グリー傘下「REALITY」のアプローチを学ぶ

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ここ最近、メタバースをビジネスに取り入れようとする企業・プロジェクトが飛躍的に増えてきており、「〇〇×メタバース」を掲げ、現実世界とは異なる仮想空間に理想郷を築こうとしている

しかし、多くの企業がメタバースに熱い視線を送る一方で、明確な有用性や活用事例を見出せているところは未だ数少ないと言える状況だ。

最先端技術ゆえに、具体的なユースケースやビジネスとの親和性における抽象度が高く、企業もどのように取り入れるのが最適解なのか、ということを決めあぐねている。

こうしたなか、REALITY株式会社(大手インターネット企業のグリー傘下)が2018年から提供しているスマートフォン向けメタバース「REALITY」は、市場において頭一つ抜きん出ている。

世界63の国と地域および12言語で展開し、世界中で累計1,000万ダウンロードを突破したアプリとして、急速に成長を遂げているのだ。

来るべきメタバース時代に向けて、サービスをどうグロースさせていくのか。Web3との連携についてはどう考えているのか。

REALITY株式会社 XR cloud事業部 部長を務める春山 一也氏にお話を伺った。

2〜3年でグローバルに100億投資。スマホメタバースの勝機

春山氏は開口一番、「メタバースは幻滅期に入っていると言われるなか、REALITYを運営する事業者としては既にメタバースの波が来ている」と述べる。

「2018年からスマホ向けメタバースのプラットフォームを運営、開発してきて、今年で4周年を迎えますが、アプリの伸長率やユーザーの熱量からも、メタバースの隆盛を身をもって感じています。当初はいつでも誰でも簡単にVtuberになれるアバター制作アプリとして開始し、他のライブ配信アプリと同様の『1対N』の機能から提供してきました。その後はユーザー同士がアプリ内で交流できるチャット機能や、アバター同士がコラボ配信できるコラボ機能、最近ではユーザーが所持しているアバターデータからスタンプを作成できるアバタースタンプ機能など、SNSとしてアプリを進化させることで、独自性の高いユーザー体験を追求してきました」

2020年にアプリと同名の「REALITY」(前身はWright Flyer Live Entertainment)へと社名変更。本格的にアプリグロースに注力することを掲げる。

そして、2021年にはグリーが2〜3年かけてグローバルで100億円を投じ、世界で数億ユーザーの獲得を目指すための事業投資を行っていく方針を発表した。

REALITYがなぜ、国内外問わず多くのユーザーを獲得できたのだろうか。春山氏は「GREEが培ってきたアバターやSNSの運用ノウハウ、サービスのスケーラビリティを意識した」と説明する。

「バーチャルは以前から注目されていたものの、VRデバイスの普及が追いついておらず、事業としてのスケールを考えるとスマホにフォーカスした方が賢明だと判断しました。さらに2016年以降に台頭してきたVtuber市場に着目し、『なりたい自分で、生きていく。』というコンセプトのもと、誰もが自分のアバターを作れるプラットフォームを立ち上げたのです。SNSとして、あるいはクリエイターエコノミーの広がりを考えたときにスマホは最も可能性があり、かつゲーム開発で蓄積されたCG制作や手触り感、操作の快適性など、ユーザーファーストでUI/UXをブラッシュアップさせてこれたのが、順調にサービスが伸びている要因だと考えています」

ユーザーの海外比率は8割。REALITYが国内外で支持される理由

ユーザーファーストを意識したサービス体験の具体例は次のようなものがある。

まず回遊性の向上については、先述したSNSとしてのサービス展開はもとよりアプリ内でプレイ可能なゲームを多く作り、ユーザーの好みに応じてゲームが楽しめる設計を加えていったことが挙げられる。

また、ユーザビリティの改善に関しては、2020年に実装した「低遅延モード配信機能」が大きなインパクトとなったという。

ライブ配信の視聴時に生じるタイムラグやデータ消費量の高さ、画質の荒さといった課題に対し、低遅延モード配信をリリースしたことで、「ラグなし・ギガ安・高画質」の配信・視聴体験が可能になったのだ。

直近では、アバターを毎月200〜300個リリースしたり、イベントを70〜80本企画したりと、常にユーザーを飽きさせない体験価値の提供を行っている。

「顔出ししなくても人気者になりたい。ギフティングをたくさんもらって稼ぎたい。このようなニーズがベースとしてありつつ、REALITYが形成するコミュニティ内で誰かと話したいという需要も高くなっています。そして安全・安心にREALITYを楽しんでもらうため、ハラスメントやポリシーなど、コミュニティガイドラインを制定し、何かあれば運営がサポートする体制も整えていることも、ユーザーが気兼ねなくバーチャルコミュニティに入っていける大きな特徴のひとつとなっています」

また、海外のユーザーへとサービスの魅力を伝えることに成功している点も、ユーザーファーストを意識したサービス体験として重要なポイントとなっている。

海外と日本におけるユーザーの割合はおよそ8:2。海外比率の方が高くなっている。

とりわけ、北米やアジア圏のユーザーが伸びているとのことだが、「日本のアニメテイストで、可愛いらしいアバターを誰でも簡単に制作できるユーザー体験が評価されている」と、春山氏は海外で好調な要因について説明する。

「海外では、アニメやマンガといった日本のコンテンツが人気だと言われていますが、スマホ1台で容易に自分だけのオリジナルアバターを制作できるのは、REALITYくらいしかありません。だからこそ、海外向けにマーケティングし、カルチャライズしていくことで、REALITYの持つ『誰でもVtuberになれる』という世界観に共感するユーザーが増えていったと考えています」

グリーは2022年9月にWeb3領域への参入を発表し、ブロックチェーンゲームの開発やパブリッシングを行っていくことをアナウンスした。

現在のREALITYとはセパレートしてWeb3領域のビジネスに取り組んでいくとのことだが、将来的なビジネスの狙いや勝機についてどのように見出しているのか。

「グリー全体のWeb3も含めたメタバース事業としては、図のようにメタバースプラットフォームのREALITY、同BtoB向けソリューションのREALITY Worlds、VtuberプロダクションのREALITY Studio、Web3事業のBLRDと、4つに分かれています。いずれはメタバース経済圏構築の観点からシームレスに連携してくると考えていますが、まずはそれぞれの事業単体で、ビジネスを成長させていくことが目下やるべきことになっています」

企業のメタバース活用を促進する「REALITY Worlds」

これら事業のうち、春山氏は法人向けのREALITY Worldsにおいて事業責任者を務めている。toC向けのスマホ発メタバースとして成長させてきたノウハウや知見をtoB向けにもソリューションとして展開し、企業のメタバース活用の促進に尽力していくという。

「既存のブランディングやプロモーションに加えて、メタバースを活用することで、リアルでは伝わらない企業やサービスの魅力や価値をREALITYのユーザーやメタバースネイティブ世代へ届けたり、新しいユーザー体験を提供できるのがREALITY Worldsの強みです。すでにプラットフォームとしては1,000万人のユーザーが使うアプリとして成長しているので、集客面については悩むことなく、一定の宣伝効果や認知獲得につなげられるのがユニークなところです。
REALITYのコミュニティに向けてどんなコンテンツを提供すれば良いか。どのような魅せ方をすれば、ユーザーが喜んでもらえるか、ということを法人様と伴走しながら形にしていくのを心がけています」

REALITY Worldsのユースケースとしては、これまでにVtuber Fesの展示会や人気ゲームIPの展示会、バーチャル旅行、メタバースサウナなど、幅広い業界・業種におけるメタバース空間を手がけてきた。

三井不動産グループ(三井不動産株式会社および株式会社東京ドーム)との連携で2022年11月から3ヶ月間の期間限定でオープンさせた「東京ドームワールド」には、初週で延べ250万人程度のユーザーがワールド内へ参加し、非常に好評を博しているそうだ。

「東京ドームといえば、メジャーアーティストがライブする会場として知られていますが、今回は憧れのセンターステージ上でライブ配信を行ったり、観客席から応援することができたりと、メタバースならではのギミックや演出にこだわりました。ライブ会場として高いスペックを持つ東京ドームだからこそ、メタバースでしかできない楽しみ方を提供しつつ、ユーザーに向けて三井不動産グループのPRや広告を訴求し、リアル施設のサービス価値向上につなげていければと考えています」

ちなみに直近では、自治体からの問い合わせも増えてきており、「バーチャル上で心の豊かさをいかに市民へ提供していけるか」を行政サイドと話し合っている段階だという。

メタバース内でのユーザー体験向上にはUGCが鍵になる

REALITY Worldsは今後、イベント・プラットフォーム構築やメタバース展示会の実施、メタバース広告などさまざまなソリューションのパッケージ化を強化し、メタバースに挑戦するすべての人をサポートできる体制を整えていくとのことだ。

最後にこれからの展望について春山氏に聞くと「将来的な目標である『月間アクティブユーザー数(MAU)1億人』に向け、時間をかけて取り組んで行く」と述べる。

「ユーザー体験を向上させていくには、オリジナルのアバターが簡単に作れたり、多種多様なワールドに参加できたりと、UGC(User Generated Content ユーザー自ら生成できるコンテンツのこと)要素が鍵になってきます。REALITYが4年かけて育んできたプラットフォームとしてのコミュニティを、企業がどのように活用すれば効果を最大化できるかを意識しながら、法人向けのメタバース事業を推進できればと思っています。
また、グリーもインターネットで成長してきた会社で、まさに今は本気でメタバースやWeb3にコミットする絶好のタイミングだと感じているので、引き続き事業拡大に向けて取り組んでいきたいと考えています」

ライター後記

今回、REALITYについて取材して感じたのは、コンシューマーから法人向けのサービス展開、Vtuberのプロダクション事業まで、全て内製化できていることだ。

アニメ、ゲーム、デザインなどさまざまなクリエイターが多く在籍するグリーならではの強みであり、まさにクリエイターのプロ集団が事業を下支えしていると言っても過言ではない。

Web3事業もいよいよスタートし、今後も業界をリードしていく企業のひとつと言えるのではないだろうか。

 

取材/文/撮影:古田島大介
編集:長岡 武司

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