Climate Techスタートアップピッチ大会レポート(Green Li-ion、NovoNutrients、Closer、Orbillion Bio、Lingrove)

Climate Techスタートアップピッチ大会レポート(Green Li-ion、NovoNutrients、Closer、Orbillion Bio、Lingrove)

目次

代替肉、次世代クリーンエネルギー、地球環境に優しいアップサイクル素材etc…。

イノベーティブなプロダクトやサービス、システムを創造し、二酸化炭素の削減や地球温暖化問題と向き合うのがClimate Tech(クライメートテック)だ。

2022年3月16日に開催された「Global Climate Tech〜SUITz Launch Event〜」では、日欧米の有望スタートアップ11社が集い、熱いプレゼンテーションが行われた。

今回は、各社のピッチ内容をサマライズし、Climate Techの現状について追っていきたいと思う。

Green Li-ion Pte Ltd.(シンガポール)

Leon Farrant氏(Green Li-ion Pte Ltd. CEO)

Green Li-ionはリチウムイオン電池のリサイクル事業を手がけるスタートアップで、画期的な「湿式精錬技術」を開発している企業だ。

リチウムイオン電池は、全体の95%がリサイクルされていないと言われており、その理由について、CEOを務めるLeon Farrant氏は「産業構造としてのリサイクルする仕組みがないことに起因する」と述べる。

「リサイクル市場の発展は目覚ましく、かつては2000億円規模だった市場が2030年には2兆円規模へと拡大することが予想されています。その中でGreen Li-ionは、リサイクル事業を持続可能かつ商業的に成り立つようにしています。具体的には電池を解体することで残る『黒い塊(black mass)』を再利用し、1日当たりiPhone約56,000台分の電池に相当する量を処理させ、リチウムイオン電池のリサイクルビジネスを推進しています」

Green Li-ionのマルチカソードプロセッサーとコントロールユニット「GLMC-1」は、現在のリチウムイオン電池のリサイクルラインを強化し、純粋な電池グレードの正極材を生産することができるという。

また、このGLMC-1は全種類のリチウムイオン電池を処理することができるため、既存技術と比べて処理効率が200%以上向上するとも強調されている。black massと電池の素材となるものが混ざっている状態を素早く仕分けるので、リサイクル技術としては非常に秀逸とのことだ。

さらに、「収益性としても優れている」とLEONは続ける。

「既存企業はblack massを作り、その後韓国や日本などのアジア地域へと流通させ、最終的に電池企業へと出荷する商流となっています。他方、我々は全て自社で一貫したサプライチェーンを有しているので、中長期的なビジネス性として非常に有望だと捉えています。今後は、リサイクル企業やサステナブル文脈で収益性を高めたいと考える企業とコラボレーションしていく予定です」

同社のホームページを見ると、ソリューションとしては機械的処理と化学的処理の両アプローチによる制御システムによって、リサイクル過程においては従来比で最大4倍の利益をもたらす出力が得られるとしている。

現在は、コマーシャルサイズのマシンを絶賛開発中で、新たなビジネスの活路を見出している最中とのことだ。

NovoNutrients Inc.(米国)

Kumiko Yoshinari氏(Novonutrients Inc. Senior Vice President Strategic Partnerships & Finance)

NovoNutrientsは、工場から排出されるCO2を独自のガス発酵技術をもとに、微生物を高付加価値の代替タンパク質へとアップサイクルする技術を開発し、事業展開しているスタートアップだ。

ここ数年で我が国でも課題意識が飛躍的に高まっているCO2排出問題はもとより、中産階級の人口増によるタンパク質需要の高まりや水資源の減少という、3つの根源的な課題に対応するため、NovoNutrientsではCCU(Carbon capture and utilization)という技術を開発。5000億ドル規模の巨大なタンパク質市場でのリーダーシップを目指しているという。

Senior Vice Presidentを務めるKumiko Yoshinari氏は、同社の開発した技術について次のように説明する。

「独自の発酵機へ、CO2、水素、酸素、アンモニアなどと共に微生物を一緒に加えて発酵させます。そうすることで、図の右側にある粉状の単細胞タンパク質が最終的に生成されます。これはアミノ酸構造が魚糞に近しく、サーモンやハマチなどの餌に適していることから魚の飼料として使われています。飼料会社は、サステナブルではない魚糞の代替になる新しいものをどうやって開拓できるかを常に探っているため、我々の技術に興味をもっていただいている状況です。いずれは人間やペットフードへの応用も視野に入れています」

さらに、遺伝子組換えを行った微生物を使った場合、生成される単細胞タンパク質にアスタキサンチンなど高価なカロテノイドを表現でき、飼料添加物という形で高価な値段で販売できる可能性をもっているという。

株式会社Closer(日本)

杉江ニック氏(株式会社Closer 副代表)

Closerは、独自のAIロボティクス技術で作った小型のロボットによって、食品工場や物流現場の手作業工程を効率化し、革新的な生産性向上を実現するスタートアップだ。

同社副代表である杉江ニック氏は「日本の工場の多くは、未だに目視検査や選別作業を手作業で行っている実態となっている」とし、現状の課題と取り組みについてこう説明する。

「日本の労働人口は減少の一途をたどり、労働力の確保が非常に難しくなっています。こうした課題を解決するために、ロボットシステムインテグレータ(ロボットSIer)の工場への導入が重要になってきていますが、設備投資にかかる費用対効果が見合わず、ロボットによる自動化のハードルが高くなってしまっています。そんななかでCloserは、小型で拡張性の高いロボットシステムを開発し、低コストかつ高い汎用性やスケーラビリティを持ったソリューションを提供しています」

半導体や自動車などの耐久消費財に関してはフルオートが進んでいるものの、化粧品や金属部品など一般消費材は多品種少量であり、自動化がなされていないのが現状だという。そこにCloserは着眼し、2021年11月に会社を立ち上げたわけだ。

Closerの特徴としては、ロボットそのもののハードウェアを作っているのではなく、人間で言う「脳」や「目」にあたる部分を開発しているという点。ロボット自体が自律的に学んでいける画像処理技術を強みとしており、さらには他業界では当たり前なユーザーフレンドリーなソフトウェア体験も実装しているとのことだ。

Closerのロボットコントローラーは、ロボットの制御、AIによる画像解析、タブレットやWebにも対応したインターフェースの機能を有しており、「工場ラインにおけるラストワンマイルを自動化する」ことを提供価値として同社は掲げている。

「工場のオペレーションで手作業で行われている目視検査や仕分け、ベルトコンベアへの投入、収集から包装、箱詰めにいたるまで、自動化できるあらゆる工程をロボットの力で代替していくのを目指しています。自動化が進んでいない洋菓子やパン、米菓、菓子などの工場をターゲットに、市場規模は約750億円と見込んでいます。さらに物流や化粧品、医薬品などへ横展開していけば、さらなる市場拡大も視野に入れることができると考えています」

先行するスタートアップと比較すると、Closerはまずは食品領域に特化していること、そして小型で多品種に対応できるロボットであるゆえ、拡張性が高いのが優位性になっていると言えよう。また、ハードウェアではなくロボットコントローラーを開発している手前、さまざまなロボットにも応用を利かせることも可能になっているのも同社の強みになっていると言えるだろう。

Orbillion Bio Inc. (米国

Samet Yildirim氏(Orbillion Bio Inc. COO, Co-Founder)

Orbillion Bioは、シリコンバレー界隈のフードテックで、今最も注目を集める代替肉開発スタートアップだ。

サービスローンチ以来、わずか数週間で500万米ドル(約6億円) の資金調達を、著名ベンチャーキャピタルのYCombinatorから受けるなど、今後さらなる飛躍が期待されている。

Orbillion Bioの特徴としては、代替肉市場初の「高級な和牛」の培養肉などを市場に投入している点だ。4種類の風味を用意しているほか、競合他社に比べ1/10程度の価格で提供できているのが大きな強みになっている。

グローバルにおいても、食肉市場は50年前に比べて3倍の成長をしており、消費量も年々増えている。しかし、2050年に世界人口100億人が予想されるなか、食の安全性や持続可能性、食肉の生産環境など、これまで通りの消費慣習をアップデートしていかなければならない。

ここについて同社COOのSamet Yildirim氏は、「動物を使わずに肉を作る代替肉を広めることで、地球環境にも優しく、さらには最適化コストでの提供も可能になる」と話す。

「時代の変化とともに食への関心が高まり、今後ますますサステナブルやヘルシーを求める消費者が増えることが予想されるため、将来的に大きくスケールする可能性を秘めています。我々が細胞培養で開発した肉を食べる市場規模として、2040年までに4,500億ドルへと成長するという試算が出ています。全体の2/3の大人が、我々の代替肉を食べるようになるかもしれません」

立ち上げから5ヶ月で生産コストを半分に下げ、さらには生産量も増大させ、順調にビジネスを成長させているOrbillion Bio。今後は北米、アジア、中東などにも広げていきたいと考えているとのことだ。

Lingrove Inc.(米国)

Joe Luttwak氏(Lingrove Inc. CEO)

2017年に設立されたLingroveは、鉄の7倍の強度と炭素繊維の軽さを持つ、植物由来の硬質木材「Ekoa」を製造・販売し、森林破壊の緩和やカーボンニュートラルの実現を目指しているスタートアップだ。

現在、木材は世界中で需要が高い一方で、多くの森林が次々と伐採されていることが大きな問題となっている。例えば、IKEAは毎年200万本の木を使うために大量の森林資源を使っていたりと、どうしても持続可能な状態になっていないことが課題というわけだ。

そんななか、Lingroveが開発・提供するEkoaは、非常にユニークなアプローチでこの社会課題に対応しているという。同社CEOを務めるJoe Luttwak氏はEkoaについてこのように話す。

「通常であれば木を植えてから何十年も経たないと木材として活用できませんが、Ekoaの場合はわずか90日で素材として使うことができます。そして、通常の木材よりも幅広い用途で使用できるのもメリットになっています。ソリューションの提供側として、今後は会社のブランドに合うようなものを作っていければと考えています。将来的には北米、アジア、ヨーロッパにも進出していく予定で取り組んでいる状況です」

具体的には、亜麻などの天然繊維と樹脂の複合材で、CO2削減に貢献可能なカーボンネガティブな素材を提供。木材のような自然で高級感のある外観でありながら、比較的低廉なコストで、木材や高圧ラミネート材、プラスチック材、金属といった既存材の代替として使用可能なサステナブル素材となっている。

従来のものづくりにおけるコンクリートや木材、鉄などの素材は、すべてC02排出の問題に関わるものだったが、Ekoaは非常に環境にやさしい素材になっている。また、多用途への展開やテクスチャの豊富さなど、素材の汎用性にも優れているのがEkoaの強みと言えるのではないだろうか。

ちなみに同社は、日本の三菱ケミカルホールディングスより、米国シリコンバレーに設立したCVC子会社であるDiamond Edge Ventures, Inc.を通して出資も受けている。日本で、Lingroveによるサステナブル素材を活用したプロダクトを日常生活で活用する日も近いかもしれない。

編集:長岡 武司
取材/文:古田島大介

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