細胞農業のルール整備に向けて。日本がグローバル市場で発言力をもつためのポイントとは 〜超DXサミットレポート

細胞農業のルール整備に向けて。日本がグローバル市場で発言力をもつためのポイントとは 〜超DXサミットレポート

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地球温暖化やロシアのウクライナ侵攻といった問題が取り沙汰され、将来的な食料危機が懸念されるなか、生物や植物の細胞を培養増殖することによって食肉や魚介類を製造する「細胞農業」が脚光を集めている。

去る2022年9月6日から3日間開催された「超DXサミット (Super DX/SUM)」では、「フードテック最前線 〜『細胞農業』ビジネスの展望と可能性〜」をテーマにしたトークセッションが行われた。

各界の有識者らを交え、「細胞農業」の社会的意義や現在地を確かめつつ、今後日本で細胞農業ビジネスが発展していく上での課題やその解決策についてディスカッションがなされた。

  • 羽生 雄毅(インテグリカルチャー 代表取締役CEO)

  • 吉富愛望 アビガイル(細胞農業研究会 事務局広報委員長/欧州系投資銀行 アナリスト)

  • 中山 展宏(衆議院議員 細胞農業によるサステナブル社会推進議員連盟 事務局長)

  • 辻本 直規(西村あさひ法律事務所 弁護士)※モデレーター

官民それぞれの細胞農業への関わり方

まずは細胞培養に携わる登壇者3名、それぞれの活動紹介がなされた。

吉富愛望 アビガイル(細胞農業研究会 事務局広報委員長/欧州系投資銀行 アナリスト)

吉富愛望 アビガイル氏が事務局広報委員長を務める細胞農業研究会は、多摩大学のルール形成戦略研究所(CRS:Center for Rule-making Strategies)にて、2020年1月24日付で創設された団体だ。

世界人口の増大や食料安全保障という論点を含めて、幅広い有識者によるディスカッションの場を提供しつつ、細胞農業や細胞農業製品の定義の構築や、日本の細胞農業製品や技術が国際競争力を持つための条件の明確化、細胞培養肉の食品として製造時の安全性・販売時の表示の在り方の検討、日本の政治家や省庁に対する有効なアドボカシーアプローチの特定などの活動を進めている。

吉富氏は、細胞農業の概要についてこう説明する。

「細胞農業は培養肉という言葉から聞いたことがあると思いますが、通常の大豆などから作る代替肉とは異なり、動物や植物の細胞を増やすことで資源を作っていく新しい技術のことです。細胞農業には現在、非常に関心が高まっており、国内ですと80団体ほどの会社やNPOが集まって細胞農業研究会を立ち上げています。私は事務局広報委員長として、業界の推進のためにはどういったルール整備が必要なのかを、官民の視点から考えています」(吉富氏)

羽生 雄毅氏(インテグリカルチャー 代表取締役CEO)

細胞培養の国内スタートアップと言えば、インテグリカルチャーを思い浮かべる方は多いだろう。同社で代表取締役CEOを務める羽生 雄毅氏は「よく培養肉を作る会社と言われるが、実際には消費者ブランドを創る肉屋さんではなく、さまざまなプレーヤーが細胞農業の技術を使い、何かを作れるような技術インフラの会社だ」と説明する。

同社の独自技術は、「CulNet® システム」(以下、カルネットシステム)と呼ばれる細胞培養技術にある。カルネットシステムは、動物体内の“臓器間相互作用”、つまりは臓器同士が血管によりつながって細胞成長をすることを、システムによって擬似的に構築する装置だ(特許取得済み)。

カルネットシステムを使うことで、動物細胞を大規模かつ安価に培養することが可能であり、また、エネルギー使用量や温室効果ガス排出量、水や土地の使用量など、生産による環境負荷も大幅に削減できることが期待されている。

既にラボスケールでは、高コストの一因であった「血清様成分」の作出を実現しているとのことで、原料調達・管理・コストの面で課題となる牛胎児血清(FBS)や高価な成長因子が必要なくなり、細胞培養生産の大幅なコストダウンと、より高度なサプライチェーン管理が可能になっているという。

培養肉はもとより、魚肉や化粧品、毛皮、木材、医薬品など、細胞農業の技術を活用することで多様な資源が製造可能になるそうだ。このように、インテグリカルチャーの目指すところは“細胞農業の大衆化”だと、羽生氏は語る。

中山 展宏氏(衆議院議員 細胞農業によるサステナブル社会推進議員連盟 事務局長)

衆議院議員の中山 展宏氏は、昨年から自由民主党の議員の仲間たちと細胞農業および培養肉に関わる勉強会を実施しており、今年6月には「細胞農業によるサステナブル社会推進議員連盟」を立ち上げ、そこの事務局長として携わっている。

「サステナブル社会推進議員連盟は甘利明先生、赤沢亮正先生、そして松野博一官房長官の3名が共同代表となって立ち上げられた団体です。特に、松野博一官房長官は以前から細胞農業分野に興味関心を示しており、我が国におけるこの分野のルールメイキングや社会的受容性を育んでいくために、みなさまと知見を共有しながら取り組んでいるところです」(中山氏)

黎明期の細胞農業ビジネスが発展していくために必要なこと

ここからセッションの本題に入っていく。まずは「細胞農業の現在地と今後の展望」についてだ。細胞農業ビジネスにおける国内外の動向や細胞農業の価値について、各登壇者はどのような考えを持っているのだろうか。

インテグリカルチャーの羽生氏は「細胞農業について、まずはもう少し掘り下げていきたい」とし、細胞農業のあらましについてこのように説明する。

「細胞を培養することで生物資源を生産するという内容ですが、これに近しい分野としては、遺伝子を導入して酵母を培養し、そこからアミノ酸やインシュリンを採るといった『精密発酵』が挙げられます。ただ、細胞農業の場合は酵母などのバクテリアの類ではなく、動物細胞や植物細胞を培養するものになりまして、特に動物細胞は培養肉として非常に注目を集めています」(羽生氏)

細胞農業は、ビジネスとしてはまだ黎明期であり、収益化を実現できている企業はまだ1社も出ていないという。その一方で、将来的にはマネタイズの見立てから資金調達を実施しているスタートアップも世界で数社でてきている状況から、まだ発展の余地がある領域だと羽生氏は分析している。

「細胞農業をやる意義はさまざまな観点がありますが、当初欧米で多かったのが『動物愛護』の観点です。一方、日本やシンガポールでは早くから食料安全保障の可能性を見出していました。少ない資源で生物資源が製造可能というのが、細胞農業の大きな意義になっていると言えるでしょう。食料の多くを輸入に頼っているイスラエルやシンガポール、もしくはサステナビリティをリードするべきだと考える国を中心に細胞農業を支援していて、関連するスタートアップも盛り上がりを見せているような状況です」(羽生氏)

では、ビジネス化にあたっての課題はどこにあるのだろうか。最も大きいのは「再生医療にかかるコスト」だと、羽生氏は説明を続ける。

「細胞培養には主に2つ、原材料として細胞の栄養になる“基礎培地”と、細胞を増やすためのシグナルを出す物質(ホルモン)となる"成長因子”が必要となるのですが、後者のホルモンが、場合によって80億円などの巨額なコストが発生します。今まで再生医療の分野ではコスト関係なく使えていましたが、細胞農業を経て作られたハンバーガーが1個3,000万円では話になりません。医療で作られていた仕組みをそのまま流用する形では、 コストが5桁も6桁も異なる必要がある細胞農業分野では全く歯が立たないので、新しくゼロから仕組みを作らなければなりません。そこに技術開発の大きなハードルがあると言えます」(羽生氏)

また、細胞培養に関する設備についても、従来の細胞培養設備の場合は1台につき1億円ほどかかるものを、100円/台で作れるかどうかといった議論が必要になってくるという。

このように発展途上の細胞農業ビジネスではあるが、国益という視点からはどのような見解を国は示しているのだろうか。衆議院議員の中山氏は「培養肉に関しての食料安全保障というのは、我が国の国益よりも地球益だと考えたい」と持論を展開する。

「我が国にとって、安価で質のいい食料を安定的に供給してもらうという一般的な食料安全保障も大事ですが、昨今のSDGsで叫ばれているような地球市民全体が満遍なく食にアクセスできる環境を作ることが、食料安全保障の本質だと思っています」(中山氏)

しかし、先般におけるウクライナ情勢の悪化によって、人類が食する穀物はおろか飼料用穀物の調達も難しくなっている。加えて、人口増に伴い所得が上がってくると肉食の需要が増えてくる。

「日本人は他国と比べて穀物を多く食べるため、食肉の需要は意外と低いのですが、これから所得が上がっていく地域では、食肉の需要が高まっていくことが予想されます。こうなれば、現存する我が国の畜産業の方々も販売先が変わってくることになるでしょう。よって、食肉のひとつの選択肢として、細胞農業から培われる培養肉を作っていくことが重要になると考えています」(中山氏)

細胞農業に可能性を見出した国内外のプレーヤーが参入してきている

続いて細胞農業研究会の吉富氏は、細胞農業の領域にどのようなプレーヤーが参入しているのか、市場の成長可能性に触れつつ、自身の考えを述べた。

「ただいま食料安全保障の話がありましたが、イスラエルのとある会社では冷蔵庫ほどの大きさのバイオリアクターで、1〜2週間培養すると100羽分のチキンができるくらい、今後の生産効率が上がっていくという試算を出しています。またコストの面についても、現在はかなりの高額ですが、シンガポールではすでに培養肉の販売が開始されていて、1食当たり20ドルほどで売られています。そのほか業界のNPOの試算によりますと、2030年までに1kg当たり700円くらいの生産コストでできるのではと言われています」(吉富氏)

タイソンフーズ(アメリカ)やJBS(ブラジル)といった食品業界のプレイヤーをはじめ、三菱商事や味の素、日本ハム、日清食品などの国内勢も、細胞農業に興味を示しているような状況とのことだ。

また、細胞を培養する技術が再生医療にも転用ができると非常に裾野が広がる領域になりうるとのことで、こうした観点からも、多くの国内外の企業が細胞農業に注目しているという。

「細胞を培養するときの品質管理の観点から参入する企業が増えており、例えば培養液の消費が今後増えてくることから、培養液自体も需要も高まってくるので、メルク(ドイツ)やDSM(オランダ)といった化学品を扱う会社もこの業界に投資をしています」(吉富氏)

そのほか、未来の畜産のあり方に不安を抱える畜産事業者が、自分たちの育てている動物の細胞をライセンサーとして細胞農業事業者へ販売するという新しいビジネスモデルの構築を模索している動きも出てきているという。

インテグリカルチャーの羽生氏はこれまでの議論を踏まえて、今後の展望について次のように説明する。

「細胞農業が発展していくには、当然ながら段階を経る必要があります。まずは細胞農業製品が現実的な価格になり、そのあとにさまざまなニーズに合わせたものが作られ、最終的に大衆化していくという、このような手順を踏むと思っています。弊社で取り組んでいるバイオリアクターの設計思想そのものを変える取り組みや、培養設備における効率化、規模の拡大などの研究開発が進んでいけば、単に動物細胞を増やして食べるというだけであれば、2025年や2026年くらいには現実的なコストに落ち着くのではと予測しています」(羽生氏)

その次の段階として鍵になるのが、“食感のある培養肉を作ること”だと、羽生氏は続ける。この食感問題は非常に難度が高く、いかに細胞の塊に血管などを入れ込み、組織として成立させるかという、再生医療分野でも長年苦しんでいる技術的なハードルがあるという。

ブレイクスルーを起こすためには、通常の培養液だと運べる酸素濃度が圧倒的に足りないため、培養液よりも酸素の運搬能力が約40倍もある「血液」が必要になってくるという。つまり、“培養血液”が細胞農業のさらなる発展に寄与するポイントになるというわけだ。

「そして大衆に受け入れられるためには、当初はニッチな需要に対応する製品が出てくるかもしれません。弊社としては安く大量に培養して、かつ筋とかを入れるなど、さまざまなニーズに応えられる肉が求められているので、細胞培養を低コストで行え、組織化できるような技術インフラを作っていきたいと考えています」(羽生氏)

そのため、インテグリカルチャーでは細胞農業のオープンイノベーションプラットフォーム「CulNetコンソーシアム」を立ち上げており、幅広い業種が参加する共同研究開発体制をとっているという。多数の事業者と共創しながら、サプライチェーン構築に向けて取り組みつつ、細胞農業を取り巻くルールとどう擦り合わせていくかも考えていくそうだ。

国内で早急に求められる「培養肉を試食できる」環境


市場に培養肉が販売され、消費者が普通に購入できるようになるためには、まず「培養肉を食べても大丈夫」という環境づくりが避けては通れないことになるだろう。これについて衆議院議員の中山氏は「培養肉の市場においては、心置きなく販売できる環境がまだ整備されていない」と語る。

「まず、我々の議員連盟の中では『試食したい』という声が挙がっています。直近ではインテグリカルチャーさんがフォアグラを議員連盟に持ってきてくださいましたが、眺めるだけで食べることはできませんでした。食品衛生法においては、健康への安全性が確証できないものに関しては販売を禁止することができるという条文が書かれています。培養肉の安全性の確証をどう考えていくかについては、厚生労働省が研究しているところでございますが、他方でJAS法においては培養肉が発酵しているのか、醸造しているのか、加工肉なのかが問われています。
例えば、細胞を培養していることが、従来の醸造に近いという見方で、畜産物の一部を材料として加工した“加工物”という定義になれば、試食や販売などの活路が近くなってくるでしょう。そういう意味では、培養肉とは何かというのを国民のみなさまと一緒に受容してもらうための議論を重ねている段階です」(中山氏)

時間軸としては、なんとか年内にも培養肉の試食ができる環境を整えていく方向性で考えているという。この中山氏の意見に同調するように、吉富氏は「ぜひ培養肉の試食環境を整えていただきたい」とし、以下の感想を述べる。

「海外の事例ですと、来年には培養肉を市場に売っていきたいという動きが活発化してきています。シンガポールやアメリカ中東諸国など、短いタイムラインの中で上申の見立てができている国がいくつも出てきていて、数百億円規模の調達に成功した企業も現れています。このような流れのなかで国内に目を向けると、細胞農業を意識したルールがまだない状況なので、まずは法整備をしていくことが国内外の投資を呼び込むことにつながっていくと考えています」(吉富氏)

これに付随して、細胞農業研究会では、ルールメイキングをする際に心がけている観点が2つあるという。

「ひとつは業界としてどのようなルールを整えるべきかということです。培養肉の定義や保健所の申請カテゴリー、生産工程における品質基準など、実際のオペレーション周りのルールについて、足並みを揃えてやっていくことが重要です。もうひとつは、国としてどう向き合うかという観点になります。今までデジタルの領域ではGDPRなどの規則を欧州が中心となって整備してきましたが、こと食においては日本が強みを持っています。日本食や世界に通用するハイエンドな食肉など、ブランド食材を有している日本が他国に先んじてルールメイキングをしていくことで、この業界をリードできる余地があると考えています」(吉富氏)

そんな意識の中、細胞農業研究会では提言書と政策提言の両方を行っているという。提言書については業務オペレーションに近い内容での取り組みがなされているが、今後関心が高まりそうなものとして「食材の細胞が今後、資産として認識され、市場に流通していくこと」だと吉富氏は続ける。

「トレーサビリティや細胞に対する権利など、細胞そのものの価値が認められることによって、それに関する情報のやりとりが重要になってくるでしょうから、現在はその辺りのルール整備を行っています。一方で政策提言としては、国内事業者の細胞農業への参入障壁をどのように下げていくかを焦点に考えています」(吉富氏)

各国の価値観を踏まえ、国際標準をどう培っていくかが鍵に

民間事業者の立場として細胞農業に関わる羽生氏も、「大企業との連携を深めたり資金調達したりする上でも、ルールが早期に明確になることがとても大事だ」と説明する。

細胞農業への参入や投資を検討している事業者からしても、不確定要素は極力減らしたいというのが本音だろう。社会実装の段階では、いわゆる「遺伝子組換え食品」での反省を活かし、新しく作るルールが「誰にとってのルール」であり「誰にとって利益になるのか」を明確にすることが重要だと言えるだろう。

「弊社が目指しているのは、農家やレストランシェフが独自の細胞農業製品を生み出し、業界をリードしていけるような社会です。ルールメイキングするときに『マイナスをゼロに戻す』のではなく、『何か新しい価値を作る』というビジョンを提示していくのが良いのではないでしょうか」(羽生氏)

また中山氏は、「細胞農業は既存の畜産業のみなさまとの調和がすごく大事になってくる」と見解を示す。

「畜産業の事業者や、細胞を提供いただく事業者の方々に知的財産法を考えないといけないですし、貴重な細胞を培養することで、他で使われないような法整備も求められてくるでしょう。ひとつだけ食料安全保障の観点から申しますと、国際的な機関が先導して細胞農業のルールメイキングを進めていくのがいいのか、あるいは市場のデファクトとして形成されていった方がいいのかというのも考えなくてはなりません。
中国では『人の遺伝情報及び生物資源の主権は国家に有する』という枠組みの法律(生物安全法)がすでに施行されています。こういった価値観の異なる国家を踏まえて、どのように市場を作っていくのか、国際標準をどのように培っていくかが、今後議論していく余地があると思っています」(中山氏)

日本が世界に先駆けて細胞農業のルール整備する必要性

セッションの最後では、細胞農業に関する政策等の動向や議員連盟の目標を中山氏が示した。

「今年6月に議員連盟を設立し、現在では約30名の自民党議員に参加いただいております。先般8月に開催した際は、羽生さんから細胞農業の現状についてお話しいただきましたが、これから秋の国会が開かれる際には、頻度を上げて活動していければと考えています。目下の目標としては、先ほどお伝えした『試食ができる環境』を目指し、議論を深めていく予定です。政府としても細胞農業の業界を前進させるため、議員連盟でやるべきことを推進していきたいと考えています」(中山氏)

これに対して羽生氏は、「ルールを作るからには、ポジティブで楽しくなるようなものを作ってほしい」と意見を交わした。

「楽しくなるようなルールを作るというのは、まさに『価値観をどう反映していくか』というのに紐づくのではと考えています。そういう意味では、さまざまなステークホルダーの方々が集まれるようなルールに期待していますし、それに関連することとして、細胞農業の推進に絡むような政策が出てくれば、もっと業界の発展につながっていくのではないでしょうか」(羽生氏)

2021年12月には、シンガポール政府が世界で初めて培養肉の販売を承認したわけだが、吉富氏によると、アメリカでも海外企業と規制当局との間で数年に渡って議論が続いているという。

「昨年11月ごろに細胞農業の食品表示に関するパブリックコメントを募集する提示が政府の方からありましたが、表示に議論が移行したということは、安全性についての議論に目処が付いてきたのではと私の中では推察しています」(吉富氏)

また、イスラエルや韓国、オランダなども細胞農業を積極的に国策として取り入れているが、上申の事例が増えてくればステークホルダーが増え、結果として先行者利益が減る事になる。よって、「早めに細胞農業の業界へと参入し、ネットワークを作っていきたいと言っている現地当局の方は非常に多いと感じる」と、吉富氏は所感を述べる。

このようにグローバルにおける政策動向がますます積極化する中、日本が政治サイドから細胞農業の前進に力を入れていることに「海外から非常に関心が寄せられている」とし、セッションを締め括った。

「この領域で世界に先駆けてルールメイキングすることで、例えば自国にも日本のルールを反映してくれるような事例が増えてくるのではと思っています。今行動することによって、日本が細胞農業の業界である程度の発言力を持つことにもつながるので、ぜひ政策を積極的に進めてもらえるとありがたいです」(吉富氏)

取材/文:古田島大介
編集:長岡 武司

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