リードナーチャリングで顧客を育成?方法やメリットを解説
目次
リードナーチャリングは、アメリカ発祥のマーケティング手法です。何となく言葉は聞いたことがあっても、正しく理解している人は少ないのではないでしょうか。顧客にアプローチする際、経験豊富な営業担当なら、適切なタイミングで購入を促すこともできるかもしれませんが、そうでない場合は顧客を逃してしまったり、「営業がしつこい」などマイナスの印象を与えてしまったりします。リードナーチャリングを取り入れれば、そのような悩みは解決するかもしれません。そこでこの記事では、リードナーチャリングの基礎知識や方法を解説していきます。
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リードナーチャリングの基礎知識
ここでは、リードナーチャリングの基礎知識とメリットを解説していきます。
リードナーチャリングとは何か
リードナーチャリングとは、「見込み顧客の育成」のことです。自社の製品やサービスなどの購買意欲を高めるための、手法やプロセスを指します。
従来の営業方法といえば、展示会やWeb広告、テレアポなどの方法で集めた顧客に対して、メールや電話、DMなどで継続的にコミュニケーションを取り、商品の検討度が上がったタイミングで商談を切り出すのが一般的でした。
一方リードナーチャリングは、潜在的なニーズを抱えるリード(見込み顧客のこと)に、Webコンテンツやメルマガ、セミナーといったアプローチを通して、リードにとって有益な情報を中長期的で適切なタイミングで提供します。
リードナーチャリングをおこなうメリット
リードナーチャリングにはさまざまなメリットがあります。
・長期フォローの仕組み化ができる
今や一つの物を購入するときに、長期間にわたって悩むのは珍しくありません。例えば、10万円以上するブランドバッグを購入するとき、一般的な人は、何度も店に足を運んで実物を見たり、Webで口コミや仕様をチェックしたりして、今ある洋服に合うか、生活パターンに合っているかなど、さまざまなことをじっくり考えてから購入に至ります。
しかし、その度に営業担当者が何度も接客をし、DMやメールを送り、長期にわたってフォローし続けるのは難しい上に、効率的ではありません。
もしここでリードナーチャリングを営業活動に組み込めば、営業担当の記憶や勘など、経験に裏打ちされた技術に頼ることなく、誰であっても効率的にリードフォローが可能です。
・見込み顧客の創出が可能
どの企業も、リード獲得のために多かれ少なかれ投資をしています。不動産や車といった高価なものなら、投資もそれなりの額になることもあるでしょう。
リードナーチャリングを取り入れれば、新たな投資に頼ることなく、既に企業が獲得している休眠顧客情報を活かして、見込み顧客の創出ができます。
休眠顧客とはいえ、一度は商材に関心を持ってくれた顧客です。新たなリードを高額のコストをかけて獲得するよりも確実性が高く、コストパフォーマンスに優れています。
・再アプローチができる
リードナーチャリングのプロセスでは、見込み顧客の行動パターンや興味の対象が可視化されます。
見込み顧客目線だと、わざわざこちらから出向いたりメールをしたりするなどのアプローチをしなくとも、欲しいタイミングで必要な情報が自動で送られてくるので、家にいるだけで受動的な情報収集ができます。
また、顧客の中には「検討中にしつこく営業をされるのは嫌だ。一人でゆっくり考えたい。」という人もいます。このようなタイプの人は、検討段階や他の商品と比較している段階で、しつこい営業を受けることを嫌います。リードナーチャリングだと、不必要な営業を受けることがなくなるので、顧客にとって快適になります。
企業にとっては、営業の効率化と営業担当のストレス軽減に役立つというメリットがあります。見込みのない顧客を開拓したり、飛び込み営業をして断られたりするのは、大きなストレスになります。リードナーチャリングなら、見込み度合いの大きい顧客にのみピンポイントでアプローチできるため、憂鬱なテレアポや自宅訪問、飛び込み営業を減らすことが可能です。
このように、リードナーチャリングは企業にとっても顧客にとってもメリットが大きいのです。
リードナーチャリングのプロセス
営業の効率化を図るために、いきなりリードナーチャリングを行うわけではありません。リードナーチャリングには準備が必要です。この章では、リードナーチャリングの位置づけとプロセスを解説していきます。
リードナーチャリングの位置づけ
リードナーチャリングは、リードジェネレーションとリードクオリフィケーションの間に位置しています。順番に見ていきましょう。
- リードジェネレーション
リードジェネレーションとは、「リードの獲得」です。展示会やセミナー、商品説明会のほか、異業種交流会や名刺交換などのオフラインでの交流、オンラインでのアンケートや資料請求などを通して、できるだけたくさんのリードを集めます。
- リードナーチャリング
リードジェネレーションで集めたリードに、段階的なアプローチを繰り返して購入意欲を高めて、自社の顧客へと育成していきます。
- リードクオリフィケーション
リードクオリフィケーションとは、「リードの選別」です。リードナーチャリングを実行したリードを、メールの開封履歴や資料請求といったの行動に応じて数値化して、特に購入意欲が高いと思われるリードのみを選別していきます。
リードクオリフィケーションを行うことで、確実に購買意欲の高い顧客をあぶりだし、営業の優先順位を明確にしてから営業担当に引き継ぐことで、営業活動が効率化できます。
リードナーチャリング実践に欠かせないプロセス
ここでは、具体的にどのようにリードナーチャリングを進めていけば良いのか、解説していきます。
・ 顧客の情報収集
リードナーチャリングで最初に行うべきは、企業内でバラバラに存在するすべてのリードの情報を集約することです。
例えば、名刺は各営業担当がそれぞれ保管、ホームページへの問い合わせ等から入手したメールアドレスはWeb関連部署が保管、というように、個人や各部署で管理している企業も多いでしょう。これらすべての情報を集め、まずは一元化してください。
・リードのセグメント
セグメントとは、顧客を分類することです。性別、住所、年齢や職業、今までの取引履歴や最近の購入行動など、さまざまな切り口で分類します。顧客をセグメントし、ニーズを分析してアプローチすべき顧客を絞り込みましょう。
・ステージの細分化
顧客が興味を抱いてから購入までの工程を細分化します。ステージを分けるには、「AIDMA」「AISAS」「DECAX」「TPCM」などが有名です。
・カスタマージャーニーマップの作成
カスタマージャーニーマップとは、顧客の感情や考え方の変化、行動を時系列で可視化したものです。セグメントごとにカスタマージャーニーを設定し、認知、検索、行動という顧客のアクションに合わせて、施策を決めることができます。
・コンテンツの作成
カスタマージャーニーが明確になったら、あとはリードへの最後の一押しです。無料や割引キャンペーンや、DMなどが有効です。
リードナーチャリングの方法とおすすめの本
最後に、具体的なリードナーチャリングの方法とおすすめの書籍をご紹介します。
リードナーチャリングの具体的な方法とは
リードナーチャリングには、さまざまな方法がありますが、自社にとって取り入れやすい方法から試していくのが良いでしょう。
・メール
メールにはメルマガも含まれます。メールの配信は比較的簡単で、リードの興味や関心に応じたメールで購買意欲を高めていけるので、多くの企業が導入しています。
・Webコンテンツ
企業ビジョンや、製品の強み、顧客が知りたがっている情報などを、発信することができます。ほかにも、記事や動画といった多様な方法で顧客の心に働きかけ、顧客を企業のファンへ育てることが可能です。
・イベント
製品のセミナーや展示会といったイベントは、商品やサービスに興味を持った顧客に直接商品説明やデモンストレーションを行えるので大変効果的です。現在は、オフラインだけでなくオンラインセミナーも増えています。
・リターゲティング広告
リターゲティング広告とは、一度企業のWebサイトや商品のオンラインサイトを訪れたものの購入には至らなかった顧客を追跡し、ほかのサイトを見ているときも、広告を表示させる方法です。繰り返しアプローチできるので、顧客の記憶に定着しやすいメリットがあります。
・SNS
若い世代を中心に、顧客と企業が近い距離でやり取りできるSNSが大きな影響を与えるようになってきました。顧客と直接メッセージをやりとりしたり、SNSに広告を掲載したりすることで、潜在的な顧客にもアプローチできます。
リードナーチャリングを学ぶためのおすすめの本
より詳しくリードナーチャリングを学びたい場合は、本でじっくり勉強するのもおすすめです。
・『Web来訪者を顧客に育てる リードナーチャリング』【上島 千鶴(著) 古賀 雅隆(著) 板倉 雅人(編集)】
リードナーチャリングの考え方や、検討段階別のマーケティング施策をはじめ、リードジェネレーションサイの活用方法についてしっかりと解説されています。
・『できる100の新法則 実践マーケティングオートメーション 会わずに売れるリード育成法』【永井俊輔(著)】
「予算がないけど、顧客を育成したい」という企業におすすめの本です。オープンソースツールの活用ですぐに導入できる、実践向きの解説書です。
リードナーチャリングを取り入れて顧客獲得を
リードナーチャリングを取り入れると、顧客のニーズが顕在化した瞬間を逃さず再アプローチをかけることができます。これは企業だけでなく、商品を求めている見込み顧客にとってもメリットです。今まで、顧客開拓に使用していた時間を、より見込みのある顧客への対応に費やすことができるようになるので、無駄な業務が減り、モチベーションがアップします。メールやイベントを通じて定期的に顧客に製品の良さをアピールし、効率的に顧客を獲得していきましょう。
文:xDX編集部 画像提供:Getty images