レガシーシステムを放置するのは危険!どうやって対応すればいいのか?
目次
世の中では今、急激なDX化(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいます。そんなDX化を阻害しているシステムが、「レガシーシステム」と呼ばれるものです。今回の記事では、レガシーシステムとは一体何なのか?どのような方法で、レガシーシステムに対処すればいいのか?などについて、詳しく解説します。ご参考にしていただき、早速自社のレガシーシステム見直しに取り掛かりましょう。
なお、「DXとは何か?」について体系的にチェックしたい方は、以下の記事でxDX編集長が詳しく3万字で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
▶︎[編集長が3万字で解説]DXとは?注目の背景から行政/民間/生活者への影響、活用技術、推進のポイント、最新トレンドまでを体系的に解説
レガシーシステムとは一体何?
レガシーシステムとは、柔軟性や機動性に欠ける最新技術を導入しにくい古いシステムのことです。さまざまな企業において、メインフレームやオフコン(オフィス・コンピューター)などのブラックボックス化されたシステムで永らく改修されず使用され続けているため、新しいシステム導入の妨げになっています。具体例を簡単に挙げておきましょう。
・COBOLのプログラムをそのまま移行して使用しているため、COBOLの技術者しか活用できなくなっているシステム。幅広いプログラマーが携わりにくい。
・コンバージョンツールでJavaに変換しただけのプログラムで、プログラムがうまく作動せず、メンテナンスも行いにくい状態になっている
このように、正しいシステム構築を行っていれば発生しなかった問題が、システム開発者に属人化してしまったことで、中身がブラックボックス化されている状態なのが、レガシーシステムと呼ばれるものです。システム開発を行ったプログラマーがいなければ、全ての中身を把握することは難解です。
レガシーシステムがDX化を阻害する?
レガシーシステムをそのまま放置していると、企業のDX化がどんどん遅れてしまう懸念があります。例えば、レガシーシステムの保守管理に多くのエンジニアを割り当てなければいけないため、DX化を行う人材が社内に不足してしまうのです。
本来ならば、レガシーシステムを適切なタイミングで改修し、より多くの技術者が携われる汎用性の高いシステムに変更していなければいけなかったものの、改修を適切なタイミングで行えていないのです。
どうしてこのようなことになってしまっている企業が多いのか?という点ですが、経営者がレガシーシステムに対して無頓着だったからというケースが多いです。つまり「まだまだ使えるから昔のシステムをそのまま活用しよう」と、メンテナンスを先延ばしにした結果、レガシーシステムを産み出してしまっているということになります。
レガシーシステムをなんとか改修し、最新技術を搭載したシステムに変更していかなければ、DX化で競合企業に大きく差をつけられてしまうかもしれません。
レガシーシステムと2025年の崖とは?
レガシーシステムをこのまま放置し続けると、2025年の崖という問題にぶち当たると言われています。2025年の崖とは、日本企業の多くが世界中の企業と比べ、DX競争から乗り遅れてしまう問題です。レガシーシステムを導入したままであれば、企業が抱えるIT人材の90%以上をレガシーシステムの保守管理に割り当てなければならず、世界中の企業から遅れをとってしまうのです。
そのターニングポイントが2025年ごろだとされていて、今からすぐにでもレガシーシステムを刷新し、最新技術を導入しやすい仕組みに作り変えていく必要があるのです。日本国内の企業が、海外企業との競争に負けるようになるため、日本全体で毎年12兆円もの経済損失が生まれるとの試算もあります。あなたの会社のシステムは、きちんと改修され、最新技術が導入しやすい環境に整えてあるでしょうか?
レガシーシステムをモダナイゼーションする方法とは?
レガシーシステムは、適切な方法で「モダナイゼーション」していく必要があります。モダナイゼーションとは「現代化、近代化」といった意味の英単語で、IT関連システムを最新鋭のものに改修する際によく使用されます。
レガシーシステムをモダナイゼーションする方法には、大きく分けて以下の3通りの方法があります。
・「リホスト」でインフラだけを刷新する方法。アプリケーションなどはそのまま利用する。
・「リビルド」を行って、全てのシステムをゼロベースで再構築する。リビルドとはシステムを一から再度作り上げる方法です。
・「リライト」でアプリケーションを最新のプログラミング言語で書き換える。リライトとは使っているプログラミング言語やプラットフォームを変更する方法です。
最も多く使われているモダナイゼーションの方法は「リライト」です。アプリケーションの内容を別のプログラミング言語で書き換えるだけなので、「リビルド」「リホスト」よりも低予算で行うことができます。ただし、言語を置き換えるだけなので、処理性能がイメージされずに組み替えられる事例も多く、運用開始後にトラブルが発生してしまうこともあるので、注意が必要です。
また、重要なのはシステムをモダナイゼーションした後の「データ移行」です。データ移行は、それまで蓄積された膨大なデータを移行する作業になるため、かなりの時間や手間のコストがかかります。モダナイゼーションする際の40%程度の負担は、データ移行にあるとも言われるほどです。そのため、アプリケーションの改修に時間をかけすぎない事も、モダナイゼーションをする上で大切なことになります。
レガシーシステムのモダナイゼーションを失敗しない取り組みとは?
レガシーシステムをモダナイゼーションする際に、多くの企業が失敗をしてしまうとも言われています。それでは、モダナイゼーションを行う際に、どんなところに注意をすればうまく行えるのでしょうか?2つのポイントをご紹介します。
規模が大きすぎるモダナイゼーションは行わない
1つ目のポイントは「規模が大きすぎるモダナイゼーションは行わない」ことです。会社では、レガシーシステムのモダナイゼーションによる、費用対効果を必ず求められます。本来ならば、シンプルなリライトのみで対応すれば簡単に終わっていたモダナイゼーションを、より複雑化してしまい、結局コストに見合った利益を回収できなくなってしまうのです。
モダナイゼーションを行う前には徹底して計画を練り、きちんと利益を出せるよう最低限のコストで実行するのがおすすめです。最新技術の導入さえ行えるようになれば、システムはシンプルで問題ないのです。
完璧なシステム作りを目指すよりも、まずはシンプルで誰もが使いやすいシステムを目指しましょう。使い続けるうちに新しい機能は後から追加することも可能です。
生産管理システムや、販売管理システムにこだわりすぎない
2つ目のポイントは「生産管理システムや販売管理システムにこだわりすぎないこと」です。多くの日本企業は、自社の抱える顧客ごとに「個別要件」を設定したがります。そうした個別要件を取り入れられるシステムにすると、仮設定による単価発注や契約締結前の生産着手などの仕組みを導入する必要があり、複雑なシステム開発になりがちです。
システムを複雑化しようとすると、レガシーシステムをモダナイゼーションする際に、資金が足りなくなってしまい、計画が頓挫しやすくなります。まずは「System of Record」という「記録のためのシステム」をきちんと構築することが重要です。その後、余裕があれば「System of Engagement」である「顧客との関係強化のためのシステム」に着手すればよいのです。
レガシーシステムを見直して、更にDX化を推し進めよう!
今回は多くの日本企業が抱える問題「レガシーシステム」について解説しました。自社の中にもレガシーシステムがあれば、早急にモダナイゼーションを行いましょう。今行えば、DX化の遅れから早期に脱却でき、世界中のライバル企業に負けない可能性が高まります。今回紹介したポイントに注意しながら、早速行動を開始することをおすすめします。
文:xDX編集部 画像提供:Getty images, photoAC