DXとは?定義から国内外の事例まで解説
目次
日本でビジネスに関わっていると「DX」という言葉をよく耳にしますが、中には、「DXが何なのか分からない」「DXについて知っているが、重要性までは知らない」「DXの事例はどのようなものがあるのか知りたい」なその悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
DXは、今後の世界でより大きなトレンドになっていくことは明白です。今回は、DXの基本的な知識や重要性、事例などをご紹介します。
なお、「DXとは何か?」について体系的にチェックしたい方は、以下の記事でxDX編集長が詳しく3万字で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
▶︎[編集長が3万字で解説]DXとは?注目の背景から行政/民間/生活者への影響、活用技術、推進のポイント、最新トレンドまでを体系的に解説
DXについて
事業をより良い方向へ進めるためには、ITを活用してDXを促進させることが不可欠です。
インターネットやスマートフォンの普及によって世界がめまぐるしく変化する世の中において、今まで通りに事業を展開していくことは危険だといえます。
事業を良い方向に転換するためには、DXについて知ることから始めましょう。DXの定義とIT化との違いについて、詳しく解説します。
DXの定義とは
DX(Digital Transformation / デジタルトランスフォーメーション)は、IT技術などを用いることで、人々の生活をより良いものへと変化させるという概念です。Transformationが「X」と訳されることが多いため、DXと呼ばれています。
日本では経済産業省により「データとデジタル技術を活用して、製品やサービスだけでなく、ビジネスモデルや組織を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。
DXという言葉自体は、普通に生活しているとあまり聞くことがありません。しかし、国が企業にDXを勧めているため、ビジネスに関わる人はDXの定義についてしっかりと理解しておくことが重要です。
DX=IT化ではない
DXとIT化は、言葉の定義が異なります。DXはあくまでも「人々の生活をより良い方向へと変革させる」という概念のことであり、IT化はそのための手段の1つにすぎません。
IT化の定義は「既存の業務プロセスの効率化を目指すために、ツールなど利用すること」です。対して、DXはデジタル技術の活用で、製品やサービス、またはビジネスモデルに変革を起こすことを目的にしています。
DXの必要性について
日本では近年、DXという言葉をよく耳にするようになりました。しかし、なぜここまで必要とされているのかしっかりと理解している人は少ないのではないでしょうか。
DXの必要性について、主に以下の3つが挙げられます。
- 働き手の不足
- インターネットの普及によってユーザーの行動形態が変わった
- 事業の継続と優位を獲得
それぞれの必要性について詳しく解説します。
働き手の不足
日本では、少子高齢化が進むことで、働き手が少なくなってきています。総務省の調べでは、2018年の段階で65歳以上の人口は28.1%に迫っており、2065年には38.4%まで上昇すると予想されているため、早期の対策が必要です。
今後、さらに深刻な人手不足に陥ることは明白であり、人手を補うためには、デジタルの力を用いてビジネスモデルの変革をする必要があるでしょう。
インターネットの普及によってユーザーの行動形態が変わった
インターネットが普及したことにより、消費者が商品やサービスを選ぶ際に、より安価な値段で手に入る方法を調べられるようになりました。
これまでは、近くの店舗がビジネスの競合でしたが、今では全国の店舗やネットショップを相手に戦わなければいけないため、デジタル化は必須な条件です。業種や業態にかかわらず、時代の変化に対応する力が求められています。
事業の継続と優位を獲得
国がDXの促進を求めることで、国内のさまざまな企業がDXに取り組み始めています。DXはビジネスモデルを大きく変えるため、乗り遅れてしまうと競合に勝てず、事業の継続すらも難しくなる可能性があります。
DXの推進により、製品・サービス・ビジネスモデルを変革することで、競合への優位と事業の継続を獲得していくことが重要です。
DXのメリット
DXを取り入れることで、さまざまなメリットを得られます。
主なメリットとして挙げられるのは以下の2つです。
- 生産性向上
- コスト削減
DXを取り入れる前に、まずはDXのメリットをしっかりと知り、自社にとって有益なのか判断しましょう。それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
生産性向上
DXを推進することで、業務効率の改善や生産性の向上が図れるため、スタッフの業務負担の削減が可能です。ITの力を活用することで、人が行っていたものを機械に任せられるからです。
特に、単純作業などの簡単なものであれば、すぐにでも業務効率を改善できるため、早期で取り組むことが重要になります。DXをいち早く取り入れ、生産性向上を目指しましょう。
コスト削減
デジタル技術を導入することで、コストの削減ができる場面はさまざまですが、最も顕著なのは「レガシーシステムの修正」です。レガシーシステムは、簡単にいえば「使い方は理解しているが、仕組みまでは理解できていないシステム」のことを指します。
レガシーシステムは保守や運用に費用が必要になってしまうため、古いシステムは修正して、使用していたお金や人材を、他のところで有効活用していきましょう。
DXのデメリット
DXを導入することでさまざまなメリットを獲得できます。
しかし、DXにはメリットだけではなく、デメリットも存在します。
主なデメリットには以下の2つが挙げられます。
- DXに精通した人材が必要
- 効果が出るまでに時間が必要
DXを導入する前に、プラスの面とマイナスの面の両方を知ることが重要です。それぞれのデメリットについて詳しく解説します。
DXに精通した人材が必要
DXを促進させるためには「DX人材」と呼ばれる人材が必要です。しかし、現在の日本ではDXが大きなトレンドになっているため、DX人材の需要もかなり高くなっています。そのため、即戦力としてDX人材を採用することは、困難な状況だといえるでしょう。
優秀な人材を採用するには、それなりの資金も必要になるため、DX人材を起用したい場合は金銭的な負担もかかります。
効果が出るまでに時間が必要
DXは基本的に長期を目的とした改革です。成果として実が出るまでは、数年単位の時間が必要になります。日本において、DXの推進は始まったばかりであり、決まった方程式がないことも要因の一つです。
なるべく早い段階でDXに取り組み始めることが重要ですが、短期の売り上げを重要視している企業にとっては、デメリットであるといえます。
国内における大企業のDXの成功事例
国内において、DXの導入により大きな成長を遂げ、ビジネスモデルを変えた企業は多く存在しています。
今回紹介するのは以下の2つです。
- 株式会社メルカリ
- 三菱電機メカトロニクスエンジニアリング株式会社
実際に成功した具体例を知ることで、より具体的にDXの理解を深めていきましょう。
それぞれの企業について詳しく紹介します。
株式会社メルカリ
株式会社メルカリは、ネットショップの常識を変えたフリマアプリ「メルカリ」を運営しています。ネットショップ業界では、オークション型のネットショップが一般的であり、値段が徐々に上げられていく仕組みでした。しかし、オークション型のネットショップは「価値のあるものしか掲載してはいけないのではないか」という思い込みを与える傾向があります。
メルカリがフリーマーケット型のネットショップを立ち上げることで、ネットショップそのもののハードルを下げることに成功しました。2021年現在、メルカリは全世界で1億を超えるダウンロード数を誇り、大企業に成長しています。
三菱電機メカトロニクスエンジニアリング株式会社
三菱電機メカトロニクスエンジニアリング株式会社は、産業メカトロニクス製品のサービスで顧客の問題解決を行っている企業です。同社は「顧客の稼働工場でトラブル発生時に、状況判断に時間がかかってしまうため、対応が遅れる」という課題がありました。
課題解決のために、稼働工場の詳細をオンラインで診断ができる「iQ Care Remote4U」というIoTサービスを提供しています。「iQ Care Remote4U」の機能により、工場などの現場管理の常識を大きく変えました。
国内における中小企業の成功事例
DXは大きな企業だけではなく、中小企業にも欠かせない要素です。今後、多くの企業がDXによる業務改善やビジネスモデルの変革を進めていく中で、中小企業こそ、差別化のためのDX導入が重要になります。
日本では、すでにDXの導入で利益を得ている中小企業がいくつか存在しています。
- 株式会社NISSYO
- のぼり屋工房株式会社
それぞれの企業について紹介していきます。
株式会社NISSYO
株式会社NISSYOは変圧器の製造を手がける会社であり、いち早くDX化の波に乗った中小企業です。製造工程にDXを取り入れることで、品質の向上と業務効率の改善に成功しました。
作業をする際は、一人1台のiPadが支給され、QRコードを読み込むことで手順書が出力される仕組みになっています。文系社員でも高品質のモノがつくれるように、工程がしっかりとマニュアル化されているため、高水準の品質に定評があります。
クラウド上でマニュアルを保管し、情報共有を効率的にすることで、品質と業務効率を改善させた代表的な例です。
のぼり屋工房株式会社
のぼり屋工房株式会社は岡山県に拠点を置いている企業であり、のぼり旗などの製造を手がけています。のぼり屋工房株式会社は、DXによって業務の自動化と効率化に成功した企業の1つです。
受発注の管理をしていた社員の異動があり、後任がなかなか見つからないことがDX導入の始まりでした。受発注を管理するために人力で5時間ほどかかっていたこともあり「WinActor」というツールを導入することにしたのです。
結果的に単純作業を効率化させることができ、作業時間の大幅な短縮につなげています。
海外のDX成功事例
海外では、さまざまな企業がDXを取り入れ、成功を納めています。
主な事例は以下の2つです。
- Uber
- Amazon
上記2つの企業は私たちの生活にも深い影響を与えており、DXの成功事例としてよく取り上げられています。それぞれのDX事例について、詳しく解説します。
Uber
日本においては「Uber Eats」の認識が強いですが、主な事業は「自動車配送サービス」です。Uberが掲げる事業の仕組みはスマートフォンを使った効率化にあります。
決済はアプリ上で行われるため、降車時に料金を払う手間がなく、ドライバーの評価もアプリ上で行うことができます。Uberのサービスは、インターネットの力を応用して、消費者の手間をなくしたことにより、あらゆる国で利用されるようになりました。
Amazon
AmazonはDXによって今までのビジネスモデルを変えた代表的な企業です。従来からある物流の仕組みを変革し、ネット上で購入と決済ができるようにしたことで、消費者のニーズを満たし、大企業へと躍進しました。
今では、クラウドサービスやVODサービスまで手がけており、世界を代表するIT企業へと変貌しています。
DXを促進するためには事例から学ぶことが重要
インターネットの普及により、消費者の行動形態が変化したことで、DXの推進は必要不可欠なものになりました。DXの導入をする際には、メリットやデメリットをしっかりと考慮し、自社にあった手段を選びましょう。
DXを成功に導くためには、基本的な知識はもちろんのこと、成功事例から自社にあった導入方法を学ぶことが重要です。
文:xDX編集部 画像提供:Getty images, pixabay, photo AC