DX推進とは何?準備すべきものと成功をつかむポイントを紹介
目次
「我が社でも今日からDXを推進しよう」と思い立ったものの、どう進めればいいのか分からず、戸惑っている経営者も多いでしょう。DX推進は、行き当たりばったりでは失敗してしまう確率が高くなります。そこで今回は、DX推進を成功させるための秘訣を解説していきます。
なお、「DXとは何か?」について体系的にチェックしたい方は、以下の記事でxDX編集長が詳しく3万字で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
▶︎[編集長が3万字で解説]DXとは?注目の背景から行政/民間/生活者への影響、活用技術、推進のポイント、最新トレンドまでを体系的に解説
DX推進とは
最近は、ビジネスの現場で「DX推進をしないとまずい」といったことをよく聞きます。しかし、DXの意味やDX推進の必要性が理解できていないと、いまいちピンとこないでしょう。まずはDXの必要性を知ることが大切です。
そもそもDXの意味とは
DXは、Digital Transformation(デジタルによる変容という意味)の略語です。AIなどのデジタル技術を導入することで、ビジネスなどが変容していくことを指します。また、DX推進とは、このDXを進めていくことになります。
経済産業省は、「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」にて、「DXとは、企業がビジネス環境の激しい変化に対してデジタル技術を用いることで、業務やビジネスモデルを変革し、競争上で優位になるようにすること」旨の解釈をしています。
DX推進が遅れると何がまずいの?
経営者の多くは、将来的な成長や競争力強化のためにDXを推進すべきということは理解しています。しかし、中には「DXを進めなくても何とかなるのではないか」と楽観視している人もいるでしょう。
もし、DX推進が遅れてしまうとどのような問題が起こるのでしょうか?
既存システムがブラックボックス化する
既存システムが部署ごとに構築されていると、全社的なデータ活用の妨げになります。また、各部署で独自のカスタマイズがされていることでシステムがどんどん複雑化していき、仮に経営層がDXを望んだとしても、現場サイドの抵抗が大きかったり、既存のシステムが邪魔になったりして推進できないケースが起こります。
2025年の崖
既存システムのブラックボックス化や現場サイドの抵抗を克服できない場合、DXを実現するのは難しくなるでしょう。既存システムのまま続行してしまうと、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が発生する可能性(2025年の崖)があると言われています。
DX推進をする際に準備しておくべきもの
DXを進める前に戦略と体制を整備しましょう。
経営戦略・ビジョンの提示
「今日からDXを推進しよう」と急に思い立っても、すぐにできるものではありません。DX推進を成功させるためには、戦略・ビジョンが必要です。「せっかくDXを推進しようとしたのに失敗してしまった」というケースは、ほとんどの場合戦略不足が原因です。
経営者の思いつきでDXを進めてしまっては、現場は疲弊し混乱してしまいます。まずは、経営者と従業員のコミュニケーションをしっかりと取って、DXを推進することによってもたらされる価値(新しいビジネスの展望やコスト削減などのビジョン)や、経営戦略を共有することが大切です。
DX推進のための体制整備
DXを推進するには以下の3つの要素を組み入れなくてはなりません。
【1】マインドセットの醸成
【2】推進・サポート体制を整える
【3】予算の確保
【1】マインドセットの醸成
DXを推進するには、スピード感のある仮説・実行・検証の繰り返しが求められます。「我が社ではDXなんか失敗するに決まっている」「新しいシステムを取り入れて失敗するのが怖い」など、失敗することを恐れるあまり、DXが進まないのは問題です。
DXをすみやかに進めるためには、仮説・実行・検証をテンポよく回し、徐々に成功に導いていくのがポイントです。例えば、「AIの自動応答システムを取り入れれば顧客満足度は上がるかもしれない(仮説)→実際に1つの支店だけでAIを取り入れてみよう(実行)→顧客からの評判がよいから他の店舗にもAIを普及させよう(検証)」などの流れをスピーディーに行います。
経営者は、こういった成功体験を積み重ね、従業員に「DXは成功する」というマインドセットを育てていくことが求められます。
【2】推進・サポート体制を整える
DXは基本的に今までの概念を変革することなので、社員からの抵抗をおさめたり、部門間の利害調整をしたりすることが求められます。「既存のシステムの方が便利だ」「他の部署では不便かもしれないけれど、私の部署では新しいシステムを使いたい」といったDXをめぐるもめごとは、たいてい結論が出ないまま平行線をたどることが多くなります。そのため、利害関係のない人や部署がそれぞれのバランスを取りながらDXを進めることが必要です。
具体的には、DX推進担当や、DXのサポートを行う部門などを設置しましょう。専門部署を置くことで、各部署に問題が発生したときの解決のスピードが速くなります。
【3】予算の確保
中小企業や個人で経営している会社の場合、DXにかかる費用を捻出しづらいという問題もあるでしょう。しかし、単純に「お金がないからDXは見送ろう」と決断するのはおすすめできません。自社がDXに遅れをとっている間に、ライバル企業はどんどんDXを推進していきます。そうなると、競合他社に負けてしまう可能性も出てきます。
自社の資本だけでDXを進めるのが難しい場合は、国や自治体の補助金も検討してみましょう。
DX推進を成功させるポイントとは
ここでは、DXを成功させる秘訣を解説します。
社内全体の意識を1つにして改革する
DXの推進には、経営層だけでなく各従業員の意識を1つにすることがポイントです。経営トップは、「従業員の皆さんでDXを進めてください」と現場に丸投げしてはいけません。どのようにビジネスを変革していくのかを明確にし、人材と予算を割り当て、従業員との意思疎通を図ることが大切です。社内全体の意識を変えていくことが求められます。
システム構築に一貫性を持つ
DXを成功させるためには、社内全体を見て、一貫性を持ったシステムを導入しなくてはなりません。いくら最新のシステムといっても、人事部はA社のシステム、総務部はB社のシステム(これらのシステムは互換性が無い)といったケースだと、結局部署ごとにシステムが複雑化・ブラックボックス化していきます。
全社を通してデータ活用ができるようにすることが、企業の競争力をアップすることにつながります。
DX推進を担うIT人材の確保&育成
DXの推進をスムーズに成功させるには、ITに長け、データやデジタル技術を活用できる人材が必要です。まずはそのような人材を確保しましょう。社内で見つからない場合は、社外の人材を活用するのも1つの方法です。できれば、人材を確保しつつ、次世代のDXリーダーを育成していくことが望ましいです。
トップ層から社員まで全員がDX推進への意識を高めることが大切
DX推進は経営者だけ、もしくは従業員だけではできません。トップ層から社員まで、全員が一丸となって取り組む必要があります。経営層は、社員に戦略を提示し、必要なDX人材や部署を用意しましょう。予算が足りない場合は補助金を利用するなどして、積極的にDXを推進していくことが求められます。
文:xDX編集部 画像提供:Getty images, pixabay