ビジネスに欠かせないPoCって何?やり方とポイントを分かりやすく解説
目次
「良いアイディアがあって製品化したいけど、できるだけ小さいリスクで実現可能かどうか検証したい」という場面は、ビジネスシーンでよくあるでしょう。そんなときには、PoCがおすすめです。
この記事では、PoCの用語解説ややり方、実際にどのような業界で活用されているのか、失敗を避けるためのポイントなどを紹介します。PoCとは何かを知りたい人から、実際にPoCを検討している人までご確認いただき、メリットの多いPoCを是非とも試してみましょう。
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PoCとは何?簡単に解説
PoCはさまざまな業界で活用されています。PoCの定義とともに、確認していきましょう。
PoCの定義
PoCは「Proof of Concept」の略称で、ポックまたはピーオーシーと呼ばれています。 技術、理論、原理や手法、もしくはアイディアなどが新しく生まれた場合、それらが実現可能かどうか、また、狙った効果が見込めるかどうかを確認するために行う検証実験工程のことです。
概念実証と言われることも多く、狙った効果を得るために欠かせない要素や仕様をあぶりだす目的としているケースもあります。
PoCの最大の特徴は、理論や計算などで検証するのではなく、実際に製品やシステムの簡易的な試作品を作ることです。それによって、より具体的な検証を行うことができます。
PoCはどのような業界で活用されている?
PoCは、身近な業界で既に活用されています。自社が似たような業界に属していれば、PoCを検討する余地は十分にあると言えるでしょう。
・医療業界
医療業界ではPoCは欠かせません。具体的には新薬の研究や開発といった場面でPoCが活用されています。
計算上や理論上では完璧な新薬が開発されたとしても、検証なしで量産し、いきなり大勢の人に投与するのはリスクがあります。新薬は、動物や人間に実験的に投与された後、薬の有用性や効果が認められてから初めて量産することができるのです。
・ITビジネス業界
ITビジネス業界でもPoCは活用されています。新しいシステムを導入するときやセキュリティの構築をする場面では、PoCはなくてはならないものです。
例えば、クライアントへ新システム導入を営業したいとき、実際の現場でPoCを実施して検証することで、システムが有効かどうか証明することができます。完全なシステムを開発するにはコストがかかるので、クライアントの目的にマッチした最低限の機能を持つシステムでデモンストレーションを行っているのです。
・研究開発業界
研究開発には多くのコストがかかります。予算があればある程研究は進むので、まずは確実に予算を獲得することが必要になってきます。そのためにPoCが重要なカギとなるのです。
バイオテクノロジーといった最先端の分野では、まずはPoCによるデモンストレーションや具体的な提案を行います。PoCで、実現可能性をアピールして研究予算の獲得を目指します。
・映像業界
映像業界でもPoCは活用されています。一般的に、長編映画や長編映像には人件費や製作費など多大なコストがかかります。
そのため、まずは低コストの短編映画やデモンストレーションの映像を作成してPoCを行います。長編映画の元となるプロットやCG映像を盛り込んだ短編映像で、視聴者の反応を見るのです。
基本の工程は4つ!PoCのやり方
ここでは「顧客満足度を高めるための対話式AIの導入」を例に挙げて、PoCの流れを説明します。AIを導入することで、どのような効果が得られるのか、お客様にとってどのように利便性が上がるのかなど、具体的なゴールを設定しましょう。
1.目的の設定
まずは、PoC の目的を明確にします。この目的がブレてしまうと、思ったような効果が出ないので注意が必要です。なぜPoC を行い、どのような効果を得たいのか、目的を明確にしましょう。
2.実施内容の決定
次に、検証方法や具体的な実施内容を決めていきます。
PoCの目的に向かって、どのようなものが必要になるか洗い出しましょう。ここで大切なのは、できるだけ現場に即したものを作ることです。
「顧客満足度を高めるための対話式AIの導入」の例では、実際に顧客対応を担当する人の立場に立って、どんな作業がAIによって自動化されれば便利になるのか、そのためにどんなシステムが良いのか、顧客満足度はどのように測るのか、といったことを考えていきます。
3.実証
いよいよPoCを行います。
用意したものを実際の現場で試して、実証していきましょう。仮に、小規模な現場で実証するとしても、対象者全員に使用してもらって意見をもらうことが大切です。一部の人からだけの評価だと意見が偏ってしまうので、年齢、性別、役職問わずできるだけ多くの人の試してもらって客観的な意見を集めましょう。
4.結果の評価
最後にPoCの結果を評価してきます。ここで大切なのは、実現性や効果、コストなどを厳格に評価することです。
PoCの結果、「思ったよりもAIの導入にコストがかかりそうだ」「AIを導入しても現場の大変さは変わらなかった」「顧客満足度も思ったほど上がらなかった」となる場合も大いにあり得ます。そうなったときに、「PoC用のシステムも用意したし、実証も大変だったから実現可能性が低かったとしても何とか進めていきたい」と、感情に流されて推し進めていっては、PoCを行った意味がありません。ネガティブな結果が出たとしても、しっかりと受け止めることが大切です。
PoCを成功させるための秘訣
PoCを行うのは大変そうなイメージがありますが、取り入れる価値は十分あります。ここではPoCのメリットと失敗を避けるためのポイントを解説します。
PoCを取り入れるメリット
PoCには主に3つのメリットがあります。
・リスクを軽減できる
PoCは試験的に行うため、製品の開発リスクを抑えることができます。試作した実物で製品の動作等を検証することができるので、「製品を開発して販売したのに、動作が安定せずにクレームの嵐」といったリスクを減らせます。
・コストや工数の削減が叶う
コストや工数の削減ができるのもPoCのメリットです。どんなに素晴らしいアイディアを形にしようとしても、実現性が低く、消費者から受け入れられないと、それまでつぎ込んだコストや工数、人件費が無駄になってしまいます。PoCは早い段階でアイディアが実現可能か判断できるので、無駄なコストや工数を生みません。
・客観性のある判断材料になる
PoCで技術や効果を投資家に示すことができれば、製品やサービス実現のための出資も集めやすくなります。実際の製品やサービスに近いもので実証できるので、客観的な判断材料となります。
PoCの失敗を避けるためのポイント
PoCの結果をより正確なものにするために、できるだけ同じ条件や環境で検証しましょう。また、小さな規模から始めるのも大切です。コストをかけ、いきなり大規模なPoCを行った場合、失敗したときのリスクが大きくなってしまいます。
PoCが目的化しないようにするのもポイントです。PoCはあくまでも手段です。最初に設定した本来の目的を見失わないようにしましょう。
具体的な検証ならPoCがおすすめ
できるだけコストをかけず、具体的に検証したいならPoCがおすすめです。PoCなら、実際の製品やサービスと同じようなもので検証することができます。できるだけ多くの人に使ってもらい、率直な意見を聞くことが大切です。仮にネガティブな結果が出たとしても、PoCによって得たデータや意見はきっと次に役立つでしょう。
文:xDX編集部 画像提供:Getty images, pixabay