デジタルトランスフォーメーションの基礎知識|企業への導入を成功させるポイントは?
目次
「デジタルトランスフォーメーション」というワードを耳にする機会が増えているものの、実はあまりよく分からないと悩んでいませんか?
そこで本記事では、デジタルトランスフォーメーションとは何か、基本概要やITとの違い、企業にどんな変化が起こるかなどを解説します。自社への導入を検討する際のご参考にしてください。
なお、「DXとは何か?」について体系的にチェックしたい方は、以下の記事でxDX編集長が詳しく3万字で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
▶︎[編集長が3万字で解説]DXとは?注目の背景から行政/民間/生活者への影響、活用技術、推進のポイント、最新トレンドまでを体系的に解説
デジタルトランスフォーメーションの意味・定義とは?
そもそも「デジタルトランスフォーメーション」とはどういうものなのでしょうか?まずは、基本的な概念や日本のビジネスにおける定義を見ていきましょう。
デジタルトランスフォーメーションの意味
デジタルトランスフォーメーションは、スウェーデンにあるウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した概念のこと。進化を続けるITの浸透によって、人々の生活をあらゆる面でより良く変化させるというものです。
デジタル技術によって起こる変革を意味しており、社会全体の生活に影響を与える広義的なデジタルトランスフォーメーションと、ビジネスシーンに特化した狭義的なデジタルトランスフォーメーションがあります。
「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」は「DX」と略称されることも。「~を横切る」といった意味を持つ「Trans」の同義語とされているのが、「交差する」という意味の「cross」です。英語圏では交差を視覚的に表現した「X」が代用されることが多いことから、「Digital X-formation」=「DX」と略称されています。
日本のビジネスにおけるデジタルトランスフォーメーションの定義
ビジネスシーンにおける狭義的なデジタルトランスフォーメーションについて、日本では経済産業省が定義をまとめています。2018年12月に発表されたのが「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」です。
ビジネス環境の激しい変化への対応が求められている中で、データとデジタル技術の活用によって、顧客や社会が求める製品やサービス、ビジネスモデルの変革を実現すること。あわせて業務自体や組織、プロセス、企業文化・風土の変革により、競争する上での優位性を確立することを、デジタルトランスフォーメーションの定義としています。
デジタルトランスフォーメーションとデジタル技術の関係
続いて、デジタルトランスフォーメーションの技術面について解説していきます。IT化との違いやどんなデジタル技術が使われているかチェックしましょう。
デジタルトランスフォーメーションとIT化の違い
IT化は業務を効率化するのが目的です。既存の業務プロセスを効率良くするためにデジタル技術を手段として活用します。たとえば、手書きの帳簿作成にかかっていた時間を、パソコンの会計ソフトを使うことで短縮するといったイメージです。
デジタルトランスフォーメーションでは、ビジネスモデルの変革を目的にデジタル技術を活用します。たとえば、顧客管理に会計ソフトのデータを活用するためのフローを作ることで、ビジネスモデルを変革させていくイメージです。
ITツールの導入やデジタル技術を活用したデジタル化に、ビジネスモデルの変革を加えたものがデジタルトランスフォーメーションといえるでしょう。
デジタルトランスフォーメーションを実現させるデジタル技術
デジタルトランスフォーメーションによって、リアルな空間とサイバー空間をシームレスにつながる世界を実現させるためには、次のようなデジタル技術が必要です。
・AI
「Artificial Intelligence」の略称で、人工知能のこと。自律性や順応性を持っているのが特徴です。画像判別や音声判断になどの認識系、数値やニーズ予測などの予測系、デザイン設計や作業の自動化などに活用される実行系の3タイプに分類されています。
・IoT
「Internet of Things」の略称で、モノ・センサー・ネットワーク・アプリケーションで構成されています。モノに装着したセンサーが感知した情報をデータ化、ネットワークを通してアプリケーションに送信され、データの分析や最適化によって数値化できる技術です。
・ICT
「Information and Communication Technology」の略称で、情報伝達とコミュニケーション深度を高める情報通信技術のこと。情報処理に加えて、インターネットなどの通信技術を活用して情報や知識を共有します
・ビッグデータ
既存の管理システムでは記録や保管、解析が困難だった巨大なデータ群のこと。データの量、データの種類、データの発生・更新頻度で構成されており、リアルタイムでの高速処理が可能です。
・RPA
「Robotic Process Automation」の略称で、単純作業にロボットを代行する取り組みのこと。業務効率をアップさせることで、生産性の向上につながります。
経済産業省が推進する企業のデジタルトランスフォーメーション
最後に、日本の企業におけるデジタルトランスフォーメーションの現状や課題について、経済産業省のレポートなどを元に解説していきます。
企業におけるデジタルトランスフォーメーションの現状
2020年に経済産業省が公表した「デジタルトランスフォーメーションレポート2」の中間とりまとめでは、デジタルトランスフォーメーションに想定以上の遅れが見られることが分かりました。
2019年に行われた自己診断結果の分析によると、デジタルトランスフォーメーションの部門横断的な推進~推進を持続している企業は約5%しかありません。一部部門での実施~未着手の企業が約95%を占めているのが現状です。
独立行政法人情報処理推進機構が2020年度におこなった「DX推進指標」の自己診断結果によると、大企業では前年よりもデジタルトランスフォーメーションの取り組みが進んでいます。一方で、中小企業における取り組みが進んでいるとはいえないことが分かりました。
企業におけるデジタルトランスフォーメーションの課題と対策
経済産業省が2020年に公表した「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会」の報告書によると、デジタルトランスフォーメーションの実現が進まない背景にあるのが、既存システムの問題です。長年利用されてきた既存システムは、短期的な観点から仕様の追加や開発が行われています。
安定稼働していることから問題がないように見えますが、システムが複雑で調査に時間を要する、現状の仕様が分からずブラックボックス化しているといった技術的な負債が隠れているのです。
約80%の企業が時代に適していない既存システムを抱えており、維持管理に予算を取られています。デジタルトランスフォーメーションを実現させるためには、新規構築するシステムと既存システムを相互に連携しながら段階的に見直すことが必要です。
企業がデジタルトランスフォーメーションを成功させるポイント
デジタルトランスフォーメーションの導入は、「推進指標の自己診断」「具体的なゴールの設定」「予算などの計画立案」「システム開発などの推進」と、4つのステップで進めるのがポイントです。顧客を意識したプロセス変革や顧客満足度の向上、需要にマッチした製品、データ活用、持続的成長、正しい意思決定、顧客との相乗効果といった要素も欠かせません。
小規模企業や個人事業主でデジタルトランスフォーメーションの推進が困難な場合は、よろず支援拠点や商工会議所などの支援機関を利用するのも選択肢の1つです。資金面では、「IT導入補助金」「持続化補助金」といった補助金が利用可能です。デジタルスキルを高める人材育成には、経済産業省のHPで紹介している「巣ごもりDXステップ講座情報ナビ」が活用できます。
デジタルトランスフォーメーションを導入して変革をもたらそう
デジタルトランスフォーメーションは必要な要素を押さえて、ステップを踏みながら導入するのが成功のポイントです。小規模企業や個人事業主向けに、資金面や教育面でのサポートも用意されています。ビジネスに変革をもたらすデジタルトランスフォーメーションを推進しましょう。
文:xDX編集部 画像提供:Getty images, photoAC