大企業がWeb3事業を進める時に考えるべきこととは 〜NFT Summit Tokyoレポート

大企業がWeb3事業を進める時に考えるべきこととは 〜NFT Summit Tokyoレポート

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Web3の潮流が生まれ、スタートアップやベンチャー企業のみならず、大企業もWeb3時代に合わせた新規ビジネスを創出しようと試みる動きが活発化している。だが、組織内のガバナンスや法規制などの観点から思うように立ち上げに着手できず、先送りしてしまうケースも少なくないと聞く。

Web3が世の中のどんな課題を解決するか。そして、新しいパラダイムとしてのウェブ社会において、どうしたら新しいビジネスを生み出せるのか。Web3黎明期の現在において企業がWeb3事業に取り組む際には、これらを避けて考えることはできないだろう。

2022年12月13日〜14日にかけて行われた「NFT Summit Tokyo」のDAY2では、「Web3ビジネスでどのように自社利益につなげるか」をテーマに掲げたセッションが行われ、大企業の立場からWeb3ビジネスを推進するための心構えやスタンスについて議論が交わされた。

登壇者:

  • 高野 悠(全日本空輸株式会社 CX推進室 業務推進部 価値創造チーム)

  • 磯野 太佑(SMBC日興証券株式会社 Funder Storm)

  • 篠崎  功(株式会社D2C 上席エキスパート/青島クラフト株式会社 CMO)※モデレーター

各登壇者の自己紹介

ANAの高野氏は、もともと航空機整備に関わる仕事に従事していたが、2022年にWeb3関連の新規事業立ち上げのため、社内新規事業提案制度を活用。現在はWeb3を活用した新規事業開発に取り組んでいる人物だ。

SMBC日興証券の磯野氏は「次世代のヒト・モノ・カネを考えた際、証券会社として何ができるか」という考えをもとに、オープンイノベーションチーム「Funder Storm」の立ち上げに参画。以下のようにコメントする。

「社内よりも世の中を見据えたときに、どういったエコシステムを作れるかを重点に置いており、図でお示したようにNFTやメタバースといったWeb3関連は注力している領域のひとつです。これまで証券会社は、企業という大きな箱に株や債券といった形で価値をつけるのは得意でしたが、これからは規模は小さくても魅力的なプロジェクトといかに共創し、オープンイノベーションを生み出していけるかが重要になってくるでしょう」(磯野氏)

「何のためにWeb3をやるのか」をライトパーソンに伝える

大企業でWeb3の新規事業を提案していく場合、多くの障壁が立ちはだかることだろう。

たとえば、多くの人にとってはWeb3は身近なテーマではなく知見が乏しいことから、事業テーマとしての理解を得にくい。また、現時点ではまだまだビジネスとしての実体が伴わないケースが多いがゆえに、既存の主力ビジネスとの親和性や将来性が見出しにくいことも挙げられる。未来への投資よりも足元の利益が重視されることも多く、すぐに売上に繋がりにくいことからも、Web3ビジネスを始めるまでのハードルは高いと言えるだろう。

こうしたなか、登壇企業はそれぞれどのように提案を進めていったのだろうか。

高野氏は「航空ビジネス一辺倒では、この先における事業継続性の危機感にもつながり、何のためにWeb3をやるのかについて、一人ひとり説明していった」と答える。

「新規事業を通して地方創生に貢献し、地域をエンパワーメントしていきたいという思いを胸に提案したところ、採択されることになりました。自分の構想しているアイデアや目指す目標を、経営戦略会議で頭出ししながら、地道にWeb3を取れいれたときのメリットや活用方法が認知されるように動きました」(高野氏)

また磯野氏は、「地方創生×トークンに可能性を見出し、社内でのプロジェクト立ち上げに奔走した」と語る。

「日本における地域の狭さに比して、地方ならではの魅力や土着の文化が持つポテンシャルの高さに着目していました。『失われた20年』と言われるなか、そこにこそ、国力向上のための大きな鍵になるのではと考えたんです。提案については、社内のことなら経営会議にかけ、社外のことなら経営会議のことは気にせずに外部の事業者と進めていきました。いずれにせよ、規制が厳しい状態では『何がやれるかよりも、何をやりたいか』が重要なので、そこをまずは定めていきながら、議論を重ねていった状況です」(磯野氏)

部署ごとの縦割りが前提となる大企業の組織体において、もしオープンイノベーションを進めるなら、スピード感はもちろんのこと「ライトパーソン(プロジェクトの適任者)にどれだけ早くアプローチできるか」が大事になるという。

「Web3関連では、法規制の面から事業や立ち上げは慎重にやるべきですが、部署横断の動きがとれるかで、プロジェクトの進捗度合いにかなり差が生じると思います」(磯野氏)

いずれ「ピュアなサービスの良さ」を競う時代が到来する

トークンエコノミーやDAOについても、各スピーカーそれぞれの意見が飛び交った。

高野氏は「長年のビジネスで培ってきたANAマイレージクラブ会員の優位性やユニーク性が、今後何をするにもキーになる。今後Web3時代に突入すれば、マーケティング力やPRの上手さよりも、ピュアなサービスの良さで競い合うようになるのでは」と所感を述べる。

また磯野氏は「ピュアなサービスの良さを競う」という意見に同調しつつ、「あらゆる産業がコモディティ化し、業界の枠組みが曖昧になっている。それゆえ、どこが競合なのかもわからない時代になっているため、Web3のパラダイムはそれ以前のものとは全く異なってくるだろう」と意見を述べる。

セッション後半では、「自社の利益向上から業界発展への貢献」へと時代がシフトしていくことに対し、登壇者の見解を伺うパートとなった。

高野氏は「前提として、Web3は違う業界の人と話すことがとても大事」だと話す。

「今まで壁打ちや対話してこなかった事業者と会って情報交換すると、自分が想像もしなかった活用事例が浮かんでくることがあります。このようなことを繰り返していくうちに、地域のエンパワーメントにはNFTが向いているということが、腹落ちするようになりました」(高野氏)

Web3は時間もエネルギーも要することを理解しておく

一方、磯野氏は「Web3はエコシステム立ち上げの黎明期なため、時間もエネルギーもかかることを念頭に置いておくべき」だと言う。

「我々がWeb3とアートを活用して進める、新たな街づくりのプロジェクト『NEO KYOTO NFT ARTs』は、利益というよりもまずは実際にアクションを起こし、アウトプットまで結びつけることを意識した取り組みになっています。とかくWeb3は、メタバースやDAOなどのバズワードに引っ張られ、トレンドに乗るだけになってしまったり、机上の空論だけで終わってしまうことも多い印象です。それでも、プロジェクトをやってわかることもあるので、そこから課題を見つけ、ブラッシュアップしていくことが大切だと捉えています」(磯野氏)

最後にセッションのラップアップとして、今後の展望を両者が語った。

「まだまだ道半ばであり、具現化できていない状況なので、Web3の新規事業を形にするべく、これからも尽力していきたいと思います」(高野氏)

「今後もトレンドに迎合しすぎず、本当にやりたいことやビジョンは何か。その目標に向けてどんな仕組みを入れるべきかを考えながら、一歩ずつ前へと進んでいきたいです。まだ弊社としてもユースケースが少ない状況なので、もし次回以降も登壇する機会があれば、実際にプロジェクトの成果を発表したいと思います」(磯野氏)

  

取材/文/撮影:古田島大介
編集:長岡 武司

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